お久しぶりの方はお久しぶりです。
4th fesのロスを紛らわすために書いてたらいつの間にか5th fesが終わっていました。
ということで懲りずに新章になります、もしよければまた読んでやってください。
第一話
とある屋敷の一室、そこに言い争いの声が響く。
「何度言ったら分かる!! これを目指すのは辞めろと言ってるだろ!!」
「うるせえ!! 俺の人生だ!! 何を目指そうが俺の勝手だろ!!」
言い争っている二人、一人は50代以上だろうか、かなり年のいっているように見えるがそれでもその年を感じさせない鋭い眼光、杖をついてるがそれを感じさせない筋骨隆々な体形の身長は180cmを超えている。
もう一人は、見た目によったら20代に見えると思うがまだ10代、同じような鋭い眼光を持ち、身長はこれも高く180cm近く、体も鍛えられているのかデカイ。そして言い争っている相手と雰囲気と顔が似ている。
「どこに子供がヤクザになるのを止めない親がいる!!」
「親父だってヤクザじゃねえか!!」
「俺にはこれしか無かったんだよ、お前はまだ若い、色々な選択肢があるだろ!! 俺のようになるな!!」
「ちっ!!」
カズマと呼ばれた人物は大きな舌打ちと同時に部屋を飛び出した。
「カズマ!!」
飛び出すカズマに静止の声を張り上げるが止まるはずもなかった。
部屋に一人カズマに親父と呼ばれた男性は大きくため息を付いた。
「…ヤクザってのは成りたくてなるもんじゃねぇ、何もかも無くなってドン底に落ちて、もうそれしか残っていないって時の最後の手段で成るもんだ」
空いた扉からスーツを着た別の男が様子を伺っていた。
「オヤジ、今若が…」
その人物はオヤジと呼ばれた男が右腕として慕っている男。
「ああ、いつものやつだよ」
そういうと杖を立てかけ、一人掛けのソファに腰を下ろす。
「…成程、いつものですか…、若も懲りないですね」
「ったく、あの頑固さは誰に似たんだか」
そりゃ、オヤジじゃないですか…、という言葉を彼はギリギリ飲み込んだ。
「茶でも持ってきてくれ」
「かしこまりました」
スーツを着た男性はそう言うと部屋を後にする。
「…今は風営法だの暴対法だのでヤクザは法で雁字搦めだ、今でさえ厳しいのに今後、将来はどんどん厳しくなるだろ。そんな世界に未来は無い、それにカズマ、お前は…」
言葉はカズマに届くことはなかった。
家を飛び出したカズマは暗くなった街中を下を向きながら歩く。
「…ちっ、くそ」
悪態を付く。
その内には色々な感情が渦巻く。
親父と将来のことで言い争いになったことは何回もあった。
そのたびにカズマは一人、夜道を歩き鬱憤を紛らわせる。
家にいたら何をするか分からないから。
「ちょっと、君少し良いかな?」
ふとカズマに声がかかった。
顔を上げる。
「(げ、警察かよ…)」
そこには二人の警察。
その目は明らかにカズマを警戒する目、そりゃそうだ。
身長は180cm超え、目つきも鋭い、歩いているだけで警察官に声をかけられるのも当たり前、というか何度もある。
加えて今は夜。
服装は気崩しているがシャツの上に羽織っているのは学ラン。
「君、学ランってことは学生だよね?」
案の定、警察はカズマが学生だということを見抜く。
だが、今のカズマは虫の居所が悪い、この後のことを想像すると嫌気が差す。
だから。
「あ、おい!! 待て!!」
逃げる。
カズマは駆け出した。
勿論警察官もそれを追うが。
「な、なんて速さだッ!!」
カズマは圧倒的な足の速さで警察官を振り切る。
「(はっ、誰がお前らなんかに捕まるかよ、鍛えなおしてこい!!)」
「…はあッ はぁッ」
どれだけ走っただろうか、息も絶え絶えになり気が付くと公園の前にいた。
流石にもう諦めただろう…
「…どこだここ」
そう思いつつもカズマは公園に入り、ベンチに座った。
夜風が体に当たり、体を冷やす。
どれだけ座っていたのだろうか。
「こんにちは」
目の前に、にやけ顔のおっさんがいた。
「…こんにちはっていう割にはずいぶんと遅い時間帯だぞ、おっさん」
「おっと、失礼しました。少しズレが発生していましたか、修正しておかないと」
「…?」
いきなり現れていきなり挨拶をしてきて今度は何を言い出すんだ?
「改めてこんばんは」
「…」
正直今は誰かと喋りたいような気分ではないので放っておいて欲しい。
「何かに迷われていますね」
見透かされたような言葉にカズマは思わずおっさんを睨みつける。
「…んだよおっさん」
「ここには迷いがある人しか訪れない、そういう空間ですからね」
「何言っていやがる」
要領を得ない言葉にカズマは警戒心を抱く。
「そう警戒しないでください」
彼はそう言うとスーツの内ポケットからとある物を取り出し、それをカズマに渡そうとしてきた。
「なんだ」
それは封のされた手紙だった。
「『迷える人に告げる。その迷いを晴らすことを望むのならば、己の世界を投げ捨て、我らの”世界”に来られたし』どうぞ、受け取ってください怪しい物じゃありません」
カズマはその手紙を目にした瞬間、それを当たり前のように、自然に手に取っていた。
「あれ、何で俺勝手に…」
顔を上げるとそこにいたはずのおっさんは居なかった。
「本当に、一体何がどうなって…」
封がされた手紙を見る。
『迷える人に告げる。その迷いを晴らすことを望むのならば、己の世界を投げ捨て、我らの”世界”に来られたし』
先ほど言われた言葉を頭の中で反芻する。
気が付くとカズマは手紙の封を開けていた。
「これが出来れば後は…」
暗闇に照らされ、ある人物が大きな機械を、次は空中に描かれた大きな魔法陣をいじる。
「完成すれば、あの人にッ」
機械と魔法陣は大きな音と光を発する。
だが。
「また、ダメか!!」
機械と魔法陣の音は止まり、光もだんだん暗くなっていた。
今回の実験も失敗したことを察したその人物は地べたに座り込み、考え込む。
「…やはりコピーではダメか、原本を直接用意することが出来れば、あるいは」
するとその人物はおもむろに端末を取り出すとどこかに連絡し始めた。
「…ああ、やはり必要だ、連れてきてくれ、多少は手荒になっても構わんが、あの星の歌を潰すような行為は必ず避けるように」
連絡を終えたその人物は端末を置く。
「…必ず、たどり着く」
背後の壁に掛けられた代紋が暗く輝いた。
気が付くと見たことのない街並み。その道路にぽつりと立っていた。
「…え」
どこだ、どこだここは、さっきまでいた公園は。
カズマは周囲を見渡す。
夜の街頭に照らされた見たことのない街並み、高層ビル、そして沢山の人と喧騒。
カズマの頭の中は疑問と困惑で埋め尽くされる。
「何、だ。あれ…」
目に入ったのは道路を歩いている人、だがそれは人と言っても良いのか、頭部には動物のような獣耳がある。その隣の人間は全身が毛で覆われている、まるで動物が二足歩行になったような姿。その隣には普通の人間。
誰も気にもせず歩いている。
一人二人じゃない、人間じゃないような見た目の人が他にもいる。当たり前のように歩いている。
まるでこれが普通だと言うように。
「…ッ」
不気味に思えた。
カズマの脳裏に幼いころ見た映画のワンシーンを思い出す。
それは確か家族と迷い込んだとある街で両親が動物に変えられ一人、人ではない何かが現れだす街を逃げるように走るシーン。
幼いながらカズマはそれに大層恐怖したのを覚えている。
それを思わず思い出してしまったカズマは弾かれたように走り出した。
「(なんだ、なんだ、これッ!!!)」
走る、走る。
見たことのない街並みを、逃げるように、ひたすら走る。
「うぉ!?」
「どこ見てんだお前!!」
何人か通行人にもぶつかったがまともに気にすることのできない状態だ。
「はぁ、はぁ、はぁ!!」
だが、走れば走るほど、目に入る光景は自分の知っている街並みとかけ離れていく。
「(どこか、どこかッ!!)」
恐怖に支配されたカズマは走るしかなかった。
どれだけ走ったのだろうか。
先ほどの街灯に照らされた街並みから外れ、歩いている人も少なくなってきた。
聞こえていた喧騒も無くなり、カズマは走りつつも少しずつ、冷静さを取り戻してきていた。
「(今日、何回走ってるんだ、俺…)」
忘れていた息苦しさを思い出し、走る速度を徐々に落としカズマは歩き始めた。
「本当に、どこだここ…」
先ほど感じていた恐怖がまたぶり返してきた。
ふと、その瞬間カズマの耳にとある声が聞こえてきた。
それは歌だった。
「…歌?」
カズマは流れるようにその歌声の元に足を向けた。
そこは公園だった。
身長は160cm程か、青い髪をサイドテールにしている女性が歌を歌っていた。
周りに人はいない。
少女は目を閉じながら歌っているようでカズマには気が付いていない。
カズマは観客の一人となり、その歌を黙って聞いていた。
とても綺麗で透き通る歌声、胸の奥にストンと落ちてくる。
初めて感じる感覚にカズマは戸惑ったがそれは段々居心地の良い感覚に変わっていた。
だがそれも数分、気が付くと歌は終わり、その女性は目を開いた。
「…ふぅ、っ!?」
ようやく女性はカズマを認識した。
「…あ、えっと」
思わずなんて声をかけようかと思ったが言葉が出ない
対して少女は突如として目の前に現れたカズマに対して警戒の目を向けているのが分かった。
「その、凄い良かった、何というかとても心に響いたというか…」
必死に言葉を紡ぐ、ただでさえ身長は180cm近くあり、よく目が怖いと呼ばれるぐらいだ。普通なら恐怖心を抱くだろう、だから決して貴女の敵では無いということを証明するために。
そんな必死さも彼女も分かったからだろうか、彼女は警戒心を解く。
「その目…」
彼女にそう言われたカズマは自分の目元に触れた、その場所は少し湿っていた。
それは涙を流していたことの証明。
気が付かないうちに涙を流していたようだ。
「い、いや、これはっ!!」
思わず後ろを向き、まだ涙の跡が残る顔を隠す。
その様子を見ていた彼女。
「…あいつらとは違うか」
カズマは目を乱暴に擦ると改めて彼女と向き直った。
「えっと本当に良かった、あの歌声」
「よく言われる」
「そ、そうか…」
「……ふふっ」
緊張しているかのような反応を示すカズマに思わず女性は笑みがこぼれた。
「なっ、笑うことは無いだろ」
「だってアンタみたいなデッカイ図体した人がそんな反応をするなんてギャップが凄いからさ」
「だからって笑うなよ…」
今だに笑っている彼女はごめんごめんと返す。
もうそこには最初に感じていた警戒の空気は無くなっていた。
「私が言うのも何だけどさ、こんな町の外れで何やってんの? 私の追っかけって訳でも無さそうだし」
「追っかけ…? いや、俺はただ走り回ったら気が付いたらここにいただけだ」
「…どういうことよ、それ」
「どうと言われても」
事情を説明しようとした時だった。
二人しかいない小さな公園、そこにぞろぞろと人が入ってきた。
全員スーツを着た人たちだ。
「ちっ、こんな所まで…」
舌打ちをした彼女は本当に鬱陶しいという顔をしていた。
「…知り合いか?」
「そんな訳あるか」
「だろうな」そう返しながらスーツを着た人達を見たカズマはある確信を得た。
「(こいつら、堅気じゃない)」
いつも組で見ていた一般人じゃない雰囲気がこいつらにはあった。
「(目的は彼女か、複数人で女性を襲うか、ただ事じゃなさそうだけど)」
「じゃ、またね!!」
「は?」
横にいた彼女は脱兎の如く駆け出した。
「待て待て待て待て!!!」
思わずカズマも追いかけた。
「何で付いてくるの!!??」
「お前が急に走り出すからだろ!!」
「お前じゃないし!!」
「うるせえ!! というか俺お前の名前知らないし!!」
「何で知らないの!!」
「無茶言うな!!」
互いに罵り合いながら走る。
その後ろをスーツを着た集団が追いかけてきた。
「やっぱり知り合いじゃないのかあれ!!」
「本当にっ!! 知らないっ!! 最近急に連れ去ろうとしてくる集団!!」
後ろから「待てやゴラァ!!」だったり「いてこますぞ!!」だったり物騒な言葉が聞こえてくる。
「いつもあんな人数に追っかけ回されてるのか!?」
「い、いやっ、こんなにも人数が多いのは今回が初めてっ!!」
「…息辛そうだなッ!!」
「そりゃ、走ってるからね!!」
彼女の走るスピードは段々下がってきていた。
このままじゃあいつらに追いつかれるのは時間の問題だ。
狙われているのはこの彼女、カズマは全くもって関係ない、だがここで見捨てるのはカズマの沽券に関わる。
『困ってるやつがいるなら助けろ』
ヤクザの組長の言葉とは到底思えない、今時珍しい義理人情を掲げている親父とその組。
だからこそ、カズマは憧れた。
今ここで彼女を見捨てて裏切るのは親父と組に対する裏切りだ。
「こいつは歌代だからな」
「え、なに」
カズマは彼女を肩に担いだ。
「舌ぁ、噛むなよッ!!」
「━ッ!?」
大きく足を踏み込み、駆け出した。
先ほどよりも速い、どんどん黒スーツたちとの間が開く。
カズマは走り出した時、違和感を感じていた。
「(いつもより、速い? 何だこれ、まだ速度が上がる…)」
まるで体の別のところから力が湧くようだった。
だが。
「な、横道からかよ!!」
今度は横からスーツの集団が走ってきた。
周囲には大通りに繋がる道、だがそこは横からその増援と鉢合う。
反対には細い建物と建物の間の道、恐らく路地裏に繋がるであろう道。
「仕方ねえっ、路地裏入るぞ!!」
肩に担いだ女性を見ると何度もうなずいた。
カズマたちは裏路地に入っていった。
路地裏の細い道を走る。
右に、左に。
だが、それでもやつらは追いかけてきていた。
「本当にしつこいなぁ!!」
壁を蹴って方向を転換。
カズマには正直今どこを走っているか分からない、とりあえず撒くことを考えて走っているが、それでも追いかけてくる、まるで発信機でも付いているかのように。
「(これなら、どっかで迎え撃った方が良いか? 追いかけてきてる足音から、人数もさっきから増えてきていない、これで全員のはず…)」
そう考えていると建物と建物の間に出来た少し大きな謎の空間に出た。
奥の道を見ると、少し長いが遠目に灯りと人影が歩いているのが見える、どうやら大通りに繋がる道のようだ。
「(しめた!!)」
カズマは肩に抱えている女性を下ろした。
急に下ろされた彼女は困惑した。
まあ、女性からしたら急に集団で追いかけられたと思ったら猛スピードで担がれてそしたら急に下ろされた、困惑するのも無理はない。
「こ、今度は何!?」
カズマは大通りに続くであろう道を指さした。
「お前はこのまま走って向こうに行け!! 多分大通りに繋がってる!!」
「た、確かに、あそこなら人通りの多い道に出れるけど…、それなら何で急に下ろして…」
「俺はここでアイツらをぶちのめす」
「は?」
「だからここまでだ、お前は大通りに出て誰かに助けを求めろ」
「いやいやいや、あの人数だよ!? 一緒に逃げた方が良いって!!」
「大丈夫だ、俺は強い」
カズマは奴らが来るであろう道を睨め付けながら拳を構えてファイティングポーズを取る。
有無を言わさないその発言はどこか確信を持っていて、説得しようとしていた彼女の言葉を詰まらせるには十分だった。
「で、でも」
そうこうしている間に沢山の足音が響いてきた。
「もう来やがったか」
「っ、どうして、ここまでしてくれるの?」
「んなこと、今はどうでも良いだろ早く行け!!」
「答えて!!」
それは彼女からしたら至極単純な疑問だった。
初対面でここまで助けてくれるような義理は無い、そう思っていた。
「…言っただろ、「歌代」だって」
「え?」
「良い歌聞かせてくれた礼だ、それに生憎と『困ってる人は助けろ』ってのが教えなもんでね」
すると、遂にスーツを着た集団がカズマたちに追いつき、この空間にぞろぞろと入ってきた。
「ようやく追い付いたでおどれら」
「兄ちゃん、そこの嬢ちゃんを渡しな? 痛い目見たくなかったらな」
そんな様子を見たカズマは鼻で笑った。
「ハッ、何だ、いかにも三下が言いそうなセリフじゃねえか」
カズマの一言でその集団が殺気立つ。
カズマはそれを横目に彼女に首を振って促す。
「行け」
「っ、待ってて、絶対に助け呼んでくるから!!」
彼女はそう言うと大通りに繋がる道を走りだした。
「逃がすか!!」
集団の一人がカズマを無視して彼女を追いかけようとしたが。
「お前らの相手は俺だ」
その進路をカズマが立つことで塞ぐ、身長は180cmを超えるデカい体、その様はまるで巨大な壁だった。
彼女を追おうとしていた奴は思わず立ち止まり、その壁を見上げる。
間髪入れずにカズマはその顔面を片手で掴んだ。
「あがぁ!?」
そのまま締め上げるとソイツを集団に向かって放り投げた。
放り投げられたやつを受け止めた集団は少し後ずさりする。
カズマは改めてファイティングポーズを取る。
「どうした、かかって来いよ」
「っ、死に晒せやボケがぁ!!」
ここに戦いが開幕した。