迷い人よ、ようこそ。   作:みなたか

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第五話

シエンとカズマは用意されたソファに座る。

部屋を見渡すカズマ。

レンガ作りなモダンな部屋、広さはそれなりでキッチンもついている。

壁には大きなディスプレイが付いているがそれ以外雑多な物や小物が大量置かれていた。

アジトだと言われて身構えていたが、カズマはどことなく秘密基地のような印象を受けた。

 

「じゃあ、自己紹介からしましょうか」

 

そう背の高い女性が言うと角の生えた少女が立ち上がり、椅子の上に立った。

 

「吾輩の名はラプラス・ダークネスだ!! 間違ってもガキだのお嬢ちゃんとか言うんじゃないぞ!!」

 

「ラプ、行儀悪い」

 

ラプラス・ダークネスはシエンとカズマを指さし、絶対だぞ!! と言うが背の高い女性がそれを後ろから抱えて椅子から下ろす姿があまりにもシュールだ。

 

「ラプラス…ダークネス… どっかで聞いたことが…」

 

シエンはどこか引っかかることがあるのかぶつぶつと考え込み始めた。

 

「まあ、こう見えても私たちの中で一番年上だからね…一応」

 

「え?」

 

ふと聞こえてきた驚愕な事実に耳を疑うカズマ。

 

「正確に言えば時間って概念は吾輩にはないんだぞー」

 

何となしに彼女は言うが正直カズマは話に付いていけるか心配になってきた。

 

「…ラプラス、え、ラプラスッ!? お前ってあのラプラス・ダークネスか?」

 

そう叫んだのはぶつぶつと考えていたシエン。

驚愕に染まった顔でラプラスを見ている。

 

「何だ、吾輩を知ってるのか?」

 

「いや、知ってるというか、話に聞いただけだ。傍若無人、悪鬼羅刹、数十年前、とんでもない力と魔力を持ち暴れまわっていた大きな角の付いた少女」

 

「いやー、吾輩も有名になったな!!」

 

「だが、その力と魔力は封印されて久しく、最近は数人の人と組織を作って大人しくしてるって話だったが…」

 

ラプラスがニヤリと笑った。

そしてその小さな体にはオーバーサイズな服を翻し、叫んだ。

 

「そこに跪け!!」

 

「…は?」

 

「…え?」

 

急なことにカズマとシエンの思考は停止した。

 

「え、やるの?」

 

「沙花又嫌なんですけどー」

 

「やって!!」

 

ラプラスがそう言うと残りの女性たちは凄く嫌そうな顔をしながら口を開いた。

 

「えーっと確か、『はいてすてるようなげんじつをー』」

 

「『いっとうりょうだんぶったぎるー』」

 

「もっと感情込めて!!」

 

すると部屋の奥から一人、出てきた。

ピンク色の髪をしてその頭部には獣耳、そして白衣を着ている。

その女性はカズマに近づいた。

 

「その包帯、貴方がルイ姉が言っていた人ですね、はい、これ回復のお薬です」

 

そう言うと試験管をカズマに手渡した。

 

「あ、どうも」

 

「ほら次は、はかせ!!」

 

「え、何、ラプちゃん」

 

「例の口上だって…」

 

「ああ、あれ… え、やるの? この人たちに?」

 

「そう!!」

 

やはりその女性も嫌そうな顔をしながら口を開いた。

 

「『おわりなき』えっと…『りんねにまよいしこらよ』」

 

「ほら、幹部も!!」

 

「はぁ、『しっこくのつばさでいざなおう』」

 

「我ら、エデンの星を総べる者!!」

 

「秘密結社holoX!!」

 

「ひみつけっしゃー」

 

「ほろっくすー」

 

「すー」

 

「……」

 

「ござるー」

 

見事にバラバラだったが、ラプラスは中央で腕を組みドヤ顔をしていた。

 

「…ナニコレ」

 

シエンは思わずそう呟き、カズマはラプラスに目を向けず、手に持った試験管を見ていた。

 

「なあ、これどうするんだ?」

 

カズマは白衣の女性に質問する。

 

「無視するなー!!」

 

「飲んでください、こう、グビっと」

 

喚くラプラスを無視し、白衣の少女は飲み物を飲むジェスチャーをした。

 

「…分かった」

 

初めて見るものに少し躊躇するもカズマは試験管の中身を飲み込んだ。

 

「…お?」

 

何かに気付いたカズマは包帯を外す。

その腕にあった傷は瞬く間に回復していった。

 

「…治った」

 

「なんたってこより印の特性回復薬ですからね!! …でもなんか想定より回復スピード早い? もしかして貴方、魔力量結構多い方ですか?」

 

「いや、分からん」

 

「…え、どういう意味です?」

 

「今言った通りだ、自分の魔力量なんぞ知らん、こちとら昨日魔力の存在を知った所だからな」

 

「カズマ」

 

シエンは何か言いたそうにカズマの名前を呼んだ。

 

「…あんまり言わない方が良かったか?」

 

「魔力の存在を知ったばかり? 今まで生きてて魔力を知らないなんてそんなこと… え、貴方もしかして…」

 

その女性は何かを思いついたようにこっちを見た。

シエンの様子を見ると、仕方なさげに手を振った。

 

「正直、伏せて起きたい情報ではあったが… まぁ、仕方ない、貴方のお察しの通りコイツは迷い人だ」

 

「やっぱり!!」

 

「吾輩を無視するなー!!」

 

 

 

 

 

「えー、コホン、大分と逸れてしまったけど自己紹介の続きをしましょうか。だからこより、その人の遺伝子情報を手に入れようと毛を抜かないように」

 

「何?」

 

「う、バレた」

 

いつの間にかカズマの背後に忍び寄っていた白衣の少女はしぶしぶ対面の席に座った。

 

「…迷い人のデータ、欲しい」

 

寒気がしたカズマ。

それはともかく自己紹介が再開し始めた。

 

「私の名前は、鷹嶺ルイ、皆からはルイ姉って呼ばれてるわ。このholoXの女幹部、って所かしらね」

 

「はーい、holoXの頭脳、博衣こよりだよー、よろしくねー」

 

「holoXの掃除屋でインターンの沙花又クロヱでーす。」

 

「既にご存じではあるとは思いますが、改めて、holoXの用心棒、風真いろはでござる」

 

つまり女幹部に頭脳で掃除屋のインターンに用心棒、と。

 

「(情報量が多くないか…?)」

 

思わず頭を抱えたくなったカズマ。

 

「次はそちらにお願いしても良いかしら?」

 

鷹嶺に促され今度はこちらも自己紹介を始めた。

 

「風真にはさっき言ったが、改めて、岩崎カズマだ。ついでに迷い人でもある」

 

カズマは軽く頭を下げると数人拍手が聞こえた。

 

「よろしくー」

 

沙花又はけだるげに返す。

 

「よろしくお願いします、ついでに毛一本頂戴!!」

 

博衣は懲りずに毛をむしろうとしてきた。

 

「嫌だわ」

 

「良いじゃないですか、減るもんじゃないですしー」

 

「…こより、ステイ」

 

「ワン」

 

あまりにも低い鷹嶺の声に思わず身震いした。

博衣は素直に従い、ソファへと戻った。

 

「あとは俺だな、俺は影山シエンだ、よろしく頼む」

 

そして最後にシエンが挨拶をした。

 

「影山、シエン? ってもしかしてあのシエン組のリーダーの?」

 

「昔の話だよ、今はただのシエンだ」

 

鷹嶺の質問に対してシエンはそう答えた。

 

「…お前って割と有名人なのか?」

 

思わずカズマはシエンに尋ねた。

 

「まあ、昔ちょっとやんちゃしてた時に、な?」

 

「…まあ良いか」

 

これ以上突っ込むのは野暮かと思いカズマはそれ以上の追及を止めた。

 

 

 

全員の自己紹介が済み、風真が全員分の飲み物を用意してくれて一服していた。

 

だが、そろそろ本題に入るべきだろう。

 

「なあ、ラプラス」

 

「何だ?」

 

コーラを飲みながらカズマに顔を向けた。

 

「何であんな路地裏にいたんだ?」

 

「昨日の夜、あそこで変な魔力が渦巻いてたからな、確認のために見に行ってみただけだ」

 

昨日の夜、あの場所、というと例の乱闘を指しているのは言うまでもなかった。

 

「(変な魔力… もしかして星街の力のことか?)」

 

カズマはシエンの顔を見ると僅かに頷いた。

同じ結論に至ったのだろう。

 

「何か昔感じたことのある魔力ではあるんだよなぁ」

 

そう言うとラプラスはうーん、と唸り始めた。

 

「はぁ、ラプ、だからと言って、誰にも言わずに勝手に見に行くなんてしたらダメでしょ。案の定面倒ごとに巻き込まれていたし…」

 

「あれは!! ちょっと話を聞いたら急に切れてきたんだよ!!」

 

ラプラスがそう言い返すが沙花又が口を挟んだ。

 

「どうせラプラスのことだから高圧的に『貴様ら!! ここで昨日あったことを教えろ!!』なんて言ったんじゃないの?」

 

「うっ…」

 

「本当、心配するこっちの身にもなってよ、ただでさえラプは力が…」

 

「わーわー、分かった分かった!! ごめんってルイ姉」

 

「本当に分かってるのかしら…」

 

思わずため息を付いた鷹嶺だったが、今度はシエンとカズマに向き直ると、今度はそちらから質問をしてきた。

 

「…所で貴方たちもあそこで何をしていたか教えてもらえないかしら?」

 

「何、ただの散歩だよ」

 

そう答えたのはシエン、恐らく彼女らには何も言わないつもりなのだろう、とカズマは認識した。

 

「あんな路地裏で?」

 

「ああ、偶々道に迷ってな」

 

「…あくまで白を切るって訳ね、こより、さっき連絡した例の画像を準備して」

 

「りょうかーい」

 

鷹嶺は博衣に指示を出すと博衣は部屋にあったパソコンを操作し始めた。

それを横目に鷹嶺は話始めた。

 

「ここ最近、この街のアンダーグラウンドで妙な動きを見せる集団が増えてきた」

 

鷹嶺が取り出したものは桐生会の代紋バッジ。

 

「あの「桐生会」の代紋バッジ、これはその集団が現れた所に落ちていたものよ。まるで見せつけるかのようにあいつらが現れた場所には必ずこれがある」

 

カズマは自分のポケットに入っている代紋バッジを意識する。

 

「あんまり驚かないってことはやっぱり何か知ってるでござるか?」

 

風真からの、いやこの場にいる女性たちの圧が強くなったのを感じた。

 

「別に取って食おうって訳じゃないよ、私たちは何が起きているのか知りたいだけ。元桐生会の奴らのせいで結構こっちも迷惑してるんだー」

 

沙花又は楽観的に言うが、その表情は仮面で隠れて見えない。

まあ笑顔ではないだろう。

 

「ルイ姉準備できたよー」

 

「ありがとう、こより、早速画面に映してくれる?」

 

「あいあいさー」

 

鷹嶺に言われ、博衣がパソコンを操作し、皆が見える大きなディスプレイにとある画像が表示された。

 

「なっ」

 

「…おっと」

 

カズマとシエンは驚きを隠せなかった。

なぜならディスプレイに映し出された画像は。

 

「これは昨日のあの路地裏、ちょっと画像は荒いけどね。ここに写ってるの貴方たちでしょ」

 

確かにその画像は荒いが昨日、シエンとカズマが元桐生会の連中相手に乱闘している画像だった。

 

「初めから分かってたってことかよ」

 

思わずカズマはそう吐き捨てる。

 

「ルイ姉いつの間にこんなの見つけてきたでござるか? 拙者、知らなかったのでござるが…」

 

「沙花又もー」

 

「さっき通信を切った直後に送られて来ていたのよ。まあ、それは良いとして、貴方たちにとってこの昨日の出来事(乱闘騒ぎ)は他者には隠しておきたいこと、ということね?」

 

 

「……」

 

確認するように鷹嶺が言うがシエンは無言で返す、カズマにはそれが言うか言わないか迷っているように見えた。

 

「(全てを話すと星街を付け狙う奴らが更に増える可能性がある、なら話さない方が良いか、でもコイツらはいそうですかと素直に返してくれるか? そのことを考えると全てではなく、星街関連をぼかして話すか…?)」

 

カズマは彼女らに事情を話すことでholoXも星街すいせいを狙う、もしくはマークされる可能性が出てくることを考えた。

holoXがなぜ、元桐生会のメンバーを追うのか、本当にただ、迷惑しているからそれを何とかしたいだけなのか、そもそもその「迷惑」とは何のことなのだろうか。

そんなやつらに星街すいせいの情報を渡したらどうなるのか、カズマとシエンはまだholoXを信用しきれていなかった。

 

「(…ただ、まあ、悪い奴らじゃないんだよな)」

 

カズマはそう考える。

現に、最初の出会いこそ険悪ではあったがちゃんと謝罪をし、その上責任を取って手当まで行ってくれた。

それに、カズマの感覚が悪い奴らじゃないと言っている。むしろ情報共有を行い、協力体制を敷いた方が良いのでは。

考えがカズマの脳内を駆け巡る。

 

シエンが口を開いた。

 

「俺たちが持ってる情報はそう多くない。分かってるのは最近、元桐生会が活発になってきている、これぐらいだ」

 

「なら、この元桐生会との乱闘は?」

 

鷹嶺がモニターに写し出された画像を指差す。

 

「今はただ絡まれたとしか言えない」

 

「"今は"ねぇ… いずれ教えれくれると思っても良いのかしら」

 

「それは分からん、仲間全員で話し合い次第だ」

 

そう言うとシエンはカズマにウィンクをした。

 

「男が男にそういうことをするな気持ち悪い」

 

「え、ええ!? そこは普通仲間思いの俺に感激するところだろ!!」

 

「冗談だ」

 

「落とすか上げるかどっちかにしろ!!」

 

「ということだ、鷹嶺」

 

「…分かったわ」

 

鷹嶺は納得して頷いてくれた。

 

「……ん? こよちゃん、この画像のここの部分、ちょっとアップにして欲しいでござる」

 

じっとモニター写っていた画像を見ていた風真が指差す。

 

「えっと ここかな、良いけど…」

 

博衣は端末を操作すると画像が大きくなる。

 

「もう1人誰かいる…?」

 

「やっぱりでござるな… でもこの人… どこかで…」

 

アップされた画像に写っていた人物が誰なのか、カズマにはすぐ分かった、というか1人しかいない。青色の髪をした歌がとても上手いちょいサイコパス女。

 

そのタイミングでシエンの携帯端末、スマホから着信音が響く。

 

「おっと、ちょっと良いか?」

 

「ええ」

 

鷹嶺に了承を取り、シエンは電話に出た。

 

「…ああ、…オーケー、あそこだな、了解。んじゃあまた」

 

通話が終わったシエンはスマホをしまう。

 

カズマにはシエンが電話していた相手に心当たりがあった。

 

「星街からか?」

 

「ああ、集合場所は…」

 

「あああああああ!!!!!!!」

 

風真が急に大声を出した。

なんだ何だと、この場所にいる全員が風真を見る。

 

「この人!! すいちゃんでござるよ!! 彗星の如く現れたあのスターの原石!!」

 

「え、えっと、とりあえず落ち着こうかいろはちゃん」

 

沙花叉が嗜めようとするが風真の暴走は止まらなかった。

 

「これが落ち着いていられるか、でござるよ!!?? あの星街すいせいでござるよ!! 約1年前から路上でのゲリラライブで主に活動し、あの透き通るような歌声で数々の人々を虜にし、動画サイトに路上ライブの様子が上げられれば3日もかからず100万再生を突破する現代の歌姫!!」

 

「お、おお、星街のやつそんなに凄い奴だったのか」

 

カズマは風真の反応と星街ってそんなに凄いやつだったのか、という二重の意味で驚いていた、

 

「そうでござるよ!! って今、岩崎殿と影山殿、今星街って…」

 

「あ、ああ、星街さんからゲリラライブを行うって話で…」

 

「すいちゃんと知り合い!? ってゲリラライブ!?!?」

 

すると風真いろはは地面に膝を着くと両手を前に、そして頭を下げた。

 

「風真も連れてって下さい、でござる!!」

 

それはもう見事な土下座だった。

 

 

 

 

 

 

「ほ、ほ、本物のすいちゃんでござるううう!!!!」

 

「はーい、すいちゃんですよー、握手でもする?」

 

「え、い、い、良いんでござるか!? 是非!!」

 

風真は震える手でフードを被った星街と握手をした。

 

「ふおおおおお!! もうこの手洗わないでござる」

 

「それは汚いからやめて」

 

そんな様子を見ながらカズマはシエンに喋りかける。

 

「…なあ、連れてきてよかったのか?」

 

場所は星街が集合場所に指定した街角、そこまで人通りも多くない。その上今星街が身に着けているフードは他人からの認識を阻害する魔法と言うのが掛けられているらしく、通行人程度ならバレることは無いそうだ。

 

「…多分」

 

「ちょっと弱気になってるんじゃねえよ」

 

「あそこまでされたら断れねえだろ」

 

脳裏に浮かぶのは例の土下座。

本来なら連れてくる気は全くなかったのに意地でも付いて来ようとしたためほぼ仕方なく連れてきた。

holoXのメンバーで付いてきたのは風真だけだ。

もしかしたら鷹嶺辺りがコッソリと付いてきているのでは、とカズマもシエンも考えたがそこは仕方ないと割り切ることにしていた。

 

「…確かに」

 

「それに色々と教えてもらっただろ」

 

「シエンから教えてもらったら良かったんじゃないのか?」

 

「いや、俺じゃあ教えれねえよ、基本感覚とコイツに頼ってるからな」

 

シエンはジャケットの内側を指さす、恐らくそこには銃が仕込まれているのだろう。

 

「だから丁度良かった、昨日のことを考えると絶対に必要になってくるだろうしな。それに傍からみてても教え方が上手かった、良い先生役だったろ」

 

「まあ、おかげで感覚は掴めた」

 

「普通に考えてあれだけで修得できるなんて異常なんだがなぁ、やっぱり迷い人だからか」

 

カズマは感覚を思い出すように己の手のひらを開いて閉じる動作を行う。

 

「それに可愛い女の子から教わるの役得だったじゃねえか」

 

「…のーこめんと」

 

「やーい、照れてるー」

 

「ぶっ飛ばすぞ!!」

 

赤面したカズマは叫ぶとハハハっとシエンは笑った。

 

「ねえねえ」

 

いつの間に星街が近くまで寄ってきていた、風真の様子を確認するとまだ「ほわぁ」と言いながらトリップしてる。

 

「どうした?」

 

「多分、今回も絡まれると思うんだけど、大丈夫なの? あの子… えっと…」

 

「名前は風真いろは、大丈夫だ戦力としては申し分ない」

 

星街の質問にカズマが答える。

 

「そう、なんだ、でも良いのかな」

 

「何がだ?」

 

「全部の事情は話してないんだよね、何か騙してる感じがしてさ」

 

風真に伝えているのは俺たちも元桐生会のメンバーを追っているぐらい、星街が狙われていることは伝えていない。

 

「…星街さんの気持ちも分からなくもないが」

 

「星街の曲を聞くチケット代だと思っておけば良いだろ」

 

「……」

 

そう声をかけるカズマだったが星街は納得がいっていないようだった。

 

「なんかなぁ、こんなにもすいちゃんのファンなのに巻き込むのもなぁ」

 

「…風真も何となく気付いているだろ、何かあるって。だからあんまり重く捉えるな。ただ好きに歌って、そしたら偶々絡まれて、偶々一緒にいた俺たちが撃退する、それぐらいの感覚で居たらいい」

 

「……」

 

「それにその申し訳なさを感じるのであればそれは俺とシエンが感じるべきことだ、なんせ今から星街を囮にするつもりでいるんだからな」

 

元桐生会をわざとおびき寄せて情報を得る、そのための今回の場。

言わば、星街を餌にする、ということだ。

それを考えたのはカズマとシエン。

だからこそ、それに付随する責任は俺たちが負うべきものだ、とカズマは考える。

 

「だから気にすんな」

 

「アンタ… それってもしかして慰めてくれてる?」

 

「…悪いか?」

 

「ううん、ありがと」

 

こうも素直に礼を言われ、カズマは少し照れた。

 

「でも、やっぱり責任はすいちゃんも負うべき。だってこれは三人で考えたことだし、何より私たちはチームでしょ、仲間外れなの嫌だ」

 

「…まあ、星街さんがそれで納得するならそれで良いか」

 

「だな、それじゃあ早速行こうぜ。場所の時間は限られてるんだろ?」

 

「うん、それじゃあ、チームすいちゃんと愉快な仲間たち、行きますか!!」

 

その名前はどうかとシエンとカズマは思う。

トリップしていた風真を起こし、4人は移動し始めた。

 

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