カズマ、シエン、星街、風真の4人は目的の場所に到着した。
「結構人通りあるな、いつもここで歌ってるのか?」
「そうそう、いつもここ」
そういうと星街は準備を始める。
「俺たちにも手伝えることはあるか?」
何もしないというのも居心地が悪かったのでカズマはそう進言した。
「大丈夫、すぐ終わるから」
そう言うと星街は認識阻害の魔法が付与されたフードを取り、音楽を流すスピーカーをどこからともなく取り出す、これも魔法の道具の一種だろか?
「これは…」
「ん? ああ、これ? 最近流行りのどこでも持ち運びできる音楽機器セット、普段は小さく収納されててスイッチを押すとポンっと大きくなる便利アイテムよ」
そう言うと星街はスピーカーを撫でる。
そこにはロゴマークのようなモノがあった。
「最近よく見るな、そのロゴの企業」
シエンはそう言うと持ってる携帯端末で検索をし始めた。
「ほら、この企業の魔法アイテム、最近一気に業績を伸ばしてきていてる音楽機器メーカー」
ほー、とカズマは端末を覗き込む。
そのサイトの頭には「
商品紹介のページなのだろう、スピーカーからカズマには分からない、恐らく音楽に使うのだろう機器が沢山表示されていた。
「魔法アイテム、そんなモノがあるのか」
未知なモノにまた遭遇して感心するカズマだったが、ふとそのロゴマークに目が留まった。
「(…何か、どっかで見たことが)」
「なぁ、あれって…」
「ゲリラライブか?」
カズマの思考を断ち切るように声が上がる。
道行く通行人からだった。
人々は足を止め、星街すいせいという存在に気付き始める。
「な、なあ! あれって星街すいせい!?」
「やばいやばい」
徐々に足を止める人々が多くなってきていた。
「…俺らはちょっと離れるか」
「そうだな」
「かざまはちょっと近くにいても良いでござるか? 近くですいちゃんのライブを見たいでござる!!」
そう言う風真は興奮を隠しきれていないのかそわそわしている。
「ああ、風真さんはそれが目的だからな、全然大丈夫だ」
シエンはそう答えた。
「星街、また後で」
「ほいほい」
カズマは準備をしている星街に一声かけ、シエンとその場を離れた。
「カズマも近くで見たら良かったんじゃないか?」
シエンはそういうがカズマは首を横に振る。
「ここでも十分聞こえるし、見える。それに俺みたいなやつが近くにいたら周りの奴らを怖がらせるからな」
カズマはそう言うと肩を竦める。
「…そうか」
そういうシエンは何か言いたげだった、だが。
「お、始まった」
星街すいせいのゲリラライブが始まる。
『彗星の如く現れたスターの原石、星街すいせいでーす!!』
星街が一声上げると歓声が上がった。
『それじゃあ、早速一曲目!!』
星街のその手にマイクが現れる。
『GHOST!!』
星街が歌い始めた。
「…星街さん、凄いな」
「ああ」
その歌声は元々いた観客に加えて道行く人々すらも魅了し、その歩く足を止め星街の歌に耳を傾ける。
当然、カズマとシエンもその歌声に聞き惚れていた。
気が付くと最初と比べて倍以上の人々が既に集まっていた。
『散々恨んだ明るさと意味ありげに伸びてゆく影』
気付けは既に曲の後半に差し掛かる。
さっきの盛り上がったサビと打って変わって静かな始まり。
カズマはじっと歌っている星街を見つめる。
「(…ああ、やっぱりかっこいいな)」
カズマは羨望の眼差しを星街に向けていた。
そしてまたサビに入る前、気のせいだろうか、星街が一瞬こちらの方を見てカズマは目が合った気がした。
まるでその姿を見せつけるように、これから入るサビに腰を抜かすなよと言わんばかりに。
カズマは思わず身震いした。
怖くなったとかそういうものじゃない、星街の圧倒的な自信、それを肌で感じた。
まるで武者震いした感覚だ。
そうしてついにサビに入る。
『見えてるの僕が、僕のこの声が届いている?』
「(…凄い)」
『Dancer in the dark!!』
ただただ凄い、沢山の人々を魅了し引き付け、その上でなお埋もれず輝く星のように。
その輝きに思わず嫉妬すら感じるほどに、彼女の歌は…。
「(…いや、何考えてんだ俺は)」
思わず過ってしまった考えを忘れるようにカズマは頭を振る。
だが、一度考えてしまったことは思考が止まらない。
「(…ああ、くっそ!! ダメだあんなもの見ちまったら)」
カズマには彼女が明るすぎる。
皆の先頭に立ち、自分の道を往くその圧倒的な輝き。
「(対して俺は…、俺には何がある?)」
父親に夢を阻まれ、進めず、燻り、今もなお迷っている。
「(…分かってる、親父の言っていることは分かってるんだ)」
それが正しいことだって。
「(そう言えば、俺、何で極道になりたいと思ったんだ?)」
ふと頭に浮かんだ、浮かんでしまった疑問。
カズマはその答えを探ろうとするがその答えは全く見つからない。
否、あったはずだ。
だが目の前の圧倒的な輝きに目が眩んでしまった。
自分の道に疑問を持ってしまった。
本当にこの道は正しいのか?
この道の往く先にこの輝きはあるのか?
浮かぶ疑問の数々。
カズマは愕然としてしまった。
「(…ダメだ、これじゃあ俺、本当に迷子だ)」
カズマは目の前の輝きから目を逸らすように俯き、
ただライブを終わるのをじっと待った。
「……ズマ」
「……」
「…カズマ」
「…」
「カズマ!!」
「なっ、何だ!?」
「何だ、じゃねえよ星街さんのライブ終わったぞ」
「そ、そうか。悪い」
「ったく、そんな俺の言葉が届かなくなるぐらい感動したのならやっぱりもっと近くで見たら良かったじゃねえか」
シエンは肩を竦めて呆れながら言うがカズマの表情は硬い。
「…いや、そんなんじゃない」
「ん? カズマ、お前何かあったのか?酷い顔してるぞ」
「えっ」
シエンにそう指摘され思わずカズマは手で顔を触る。
「…あ、あー、人が多すぎて人ごみに酔ったかもな」
「本当か?」
そう聞いてくるシエンは本当にカズマのことを心配している顔だった。
「ああ、それよりさっさと星街と風真と合流しよう」
カズマはその視線から逃げるように歩き始めた。
星街と風真、二人と合流したシエンとカズマは帰り道を歩く。
「あのすいちゃんのライブを生で見れて本当に感動でござる!!」
「どう? 良かった?」
「最高でござる!!」
今だ興奮冷めやらぬ様子で話す風真と並んで歩く星街を後ろから見るカズマとシエン。
今の星街は認識阻害のフードを付けていない、例の奴らを釣るためだった。
すると星街が後ろに振り向き、カズマとシエンに質問を投げた。
「二人はどうだった?」
「俺も風真さんと同じだ、凄かったよ星街さん」
「ふふん、何たってすいちゃんですから。で、アンタはどうなのよ」
シエンの回答に満足した星街は今度はカズマを見つめていた。
「……」
「? おーい、聞こえてるー?」
反応を返さないカズマに星街は疑問符を浮かべる。
だが、当の本人は別のことに思考を割いていた。
「……後ろから5人」
シエンはカズマが発したその言葉に驚嘆を覚えた。
「へえ、分かるか、ついでに言うと右後ろと前から追加で3人ずつだ」
そこで風真も気付いた。
「これって…囲まれてるでござるか?」
恐らくカズマとシエンが最初から想定した通りになった。
「この先にちょっとした広場がある、そこでやろう、風真さんも申し訳ないが少し付き合ってくれ」
シエンが指示を出す。
「それは良いでござるが…」
「悪いな、お詫びと言っちゃなんだがこれが昼間話していたことの回答になるはずだから」
「昼間の…、了解でござる」
「…さっさと行くぞ」
カズマが先行して歩き出す。
「ちょちょちょっ!? すいちゃんまた蚊帳の外なんですけど!?」
星街が小走りで先に歩き出したカズマに追いつくと横並びになった。
「これって釣れたってこと?」
「ああ、だからこっからは俺らの仕事だ、星街は大人しくしとけ」
カズマの言葉はいつもより語尾が強く、少しぶっきらぼうに聞こえた。
「…ねえ、その言い方は無いでしょ」
「あ?」
「仮にも仲間だよ? もうちょっと言い方ってもんがあるんじゃないの?」
「…そうだな、悪かった」
意外にもカズマは素直に謝った。
その反応に星街は驚く、何かしらの反論があると思っていたからだ。
「…ねえ、アンタ何かあった?」
「お前もか…」
「お前も、ってどういう意味?」
「シエンにも同じことを言われただけだ、何もねぇよ」
「そんな顔してどこが「何もない」よ」
星街にそう言われカズマは思わず自分の顔を触った。
眉間に皺が寄っていて相当険しい表情をしていたのが分かる。
「…ちっ」
カズマは舌打ちするとこれ以上追及されないように速足になった。
「ちょ、勝手に先行くな!!」
当然星街はそう言いカズマに事情を聞こうと歩幅を合わせようとするが、拒絶するかのようなカズマの歩く速度が更に上がった。
星街はその時点で「今はダメだな」と思いシエン、風真の横に並び歩き始めた。
「アイツ何かあったの?」
星街は横に並ぶシエンと風真に話しかける。
「風真はさっぱりでござるな… 影山殿はどうでござるか?」
「いや、俺にも分からん」
「ふーん」
少し星街は考える。
「(あの感じ、何かムカつくなぁ…)」
どこが、とははっきりとは分からなかった、ただ、漠然と星街はそう感じた。
「オラァ!!」
カズマが放った拳が相手の鳩尾に突き刺さり、そのまま体ごと吹き飛ばす。
「次ィ!!」
場所はシエンが指定した少し大きな広場、カズマ、シエン、そして風真は星街目当てで襲撃してきた人らを撃退していた。
だがその中でもカズマは一際目立っていた。
カズマはもう一人の相手に拳を振りぬくがそれは体で当たる直前で壁に阻まれる。
どうやら相手は魔法でシールドのようなものを張ったようだ。
だが、今のカズマには関係ない。
「オラオラオラァ!!」
関係なく拳をその魔法の壁に連続で叩きつける。
「ただの拳で!!」
その拳を受け止める相手はただの拳だと侮っていた。
その瞬間、拳を叩きつけた所から爆発を起こした。
「なっ!?」
相手が驚くがそんなことは知らんとばかりに連鎖的に爆発が起き続ける。
カズマは引き続き拳を叩きつけ続ける。
何回目かの爆発でその魔法の壁にひびが入った。
更に続く爆発でどんどんそのひびが広がっていく。
「や、やめろおおお!!!」
相手は声を荒げるが既に遅い。
カズマの爆発する拳はその魔法の壁を砕き、相手の顔面を捉えた。
「吹き飛べ!!」
顔面に拳が突き刺さった相手はそのまま爆発を起こし先ほどの相手と同じく吹き飛び、動かなくなった。
「よし」
カズマは拳を構えなおした。
なぜ、カズマがこのような芸当、魔法を使えるようになったのかは少し時を遡る。
「それじゃあ早速、魔法の扱い方を教えるでござる」
場所はHoloXの秘密基地、その地下にある広場言わばトレーニング室だ。
大きさは学校の教室一つ分ぐらいか。
あの場にいたメンバーは全員移動してきていた。
「うぇへへへへ、迷い人のデータを合法的にゲットできるチャンス、逃す手は無い!!」
「こよちゃん、涎垂れてるよ」
「おっと、これは失敬」
博衣は沙花又に指摘され、口元を拭うとどこからともなく空間にモニターとキーボードを出現させた。
どうやら本当にデータを取るつもりのようだ。
「幹部ー、コーラのお替りー、それとポテチー」
「それ以上食べると夕飯が食べれなくなるからダメ」
「…これが本当にあのラプラス・ダークネス?」
まるで親子のやり取りをしているラプラスと鷹嶺をみてシエンは思わず頭を抱えた。
「…外野がうるさいでござるが、始めるでござるよ」
「よろしく頼む」
すると風真が手を翳し、カズマの胸に手を置こうとした。
突然のことで驚いたカズマは一歩下がった。
「? なんで下がるでござるか?」
「え、いや今何をしようと」
「何って、今から魔力を感じてもらおうとしただけでござるよ?」
「そ、そうか、分かった」
カズマは目を瞑り、腕を組んだ。
覚悟を決めたカズマに対して、風真は疑問符を浮かべつつもカズマの胸に手を置いた。
「む、心拍数の上昇」
カタカタとキーボードを叩いていた博衣はカズマの様子を報告する。
「あー!! アイツ顔真っ赤だぞ!!」
「う、うるさい!!」
ラプラスはカズマの様子を見て指を差し大声で叫び、カズマも大声で言い返す、が明らか恥ずかしかっていた。
「んー、もしかしてめっちゃうぶ?」
「どうだろ、何というか女性に慣れていないって感じがするけど」
「…いや、まあ仕方ないよな、うん」
沙花又と鷹嶺がカズマの反応に疑問符を浮かべ、シエンがそんなことを言うから見ている人間の目線が全てシエンに集まった。
それに気づいたシエンはまあ仕方ないよなと口を開いた。
「あいつ、まだ思春期真っただ中の16歳だからな、あの反応も仕方ない」
「え!?」
「16!?」
「あの見た目で!?」
「吾輩よりずっとガキじゃねえか!!」
外野が騒いでいるがカズマと風真は引き続き魔法の修得を進める。
「今手から魔力を流しているんだけど、分かるでござるか?」
「…いや、すまん、全く分からん」
「謝らなくていいでござるよ、最初なら当然! でもそれならちょっと出力を上げるでござるか…」
風真の手が薄っすらと緑色を帯びる。
「これは…」
いきなり起きた現象に少し驚くカズマ。風真はその疑問に答える。
「魔力と言うのは人によってそれぞれ色が付くんでござるよ、かざまは緑色になります」
成程、と思いつつ最初は何も感じなかったカズマだったが、だんだん風真から触られたところから暖かい何かを感じ始めた。
「何か暖かいものが」
「お、感じ始めたでござるな、それが魔力でござる」
「これが…」
「やっぱり迷い人は魔力の適応が早いでござるな、普通なら何時間かかかって初めて感じ取れるぐらいでござるよ」
「迷い人であることに何か関係があるのか?」
「…本当に何も知らないんでござるな」
「…悪いかよ」
本当に驚いたように風真は言うがカズマはそれを見て思わず口を尖らした。
「い、いやいや!! そういう訳じゃなくて、ただこっちじゃ常識なので何というか、新鮮というか…」
風真は本当に申し訳なさそうに手を左右に振り謝る。
そんな様子を見たカズマは少し不貞腐れてた自分が馬鹿らしくなった。
「まあ良いか、続き教えてくれ」
「わ、分かったでござる!!」
風真はカズマに目を閉じるように促した。
「次は今感じている魔力を意識して、それと同じものを手に集中させてみるでござる」
一瞬どういうことだ? と思いながらもなんとかやってみることにした。
10分後。
「…ダメだ、全然分からん」
魔力は感じ取れたがその先に進まずにいた。
「(同じものを手に…)」
どう集中しても感じているモノが手に行かない。
まるで何かに塞き止められている感覚をカズマは感じた。
カズマは一先ず目を開ける。
目の前には変わらず手をカズマの胸に当てる風真がいた。
「……」
カズマは自身の顔が赤くなるのを感じる。
「ひゃっひゃっひゃっ、まーたコイツ顔が赤くなってるー!!」
するといつの間にか側にまで寄ってきていたラプラスが笑いながら馬鹿にするように指摘してきた。
「(…我慢、我慢だ、女に手を上げるなよ、岩崎カズマ)」
思わずぶん殴ってやろうかという思考が頭をよぎるが何とか理性を持ってカズマはそれを押さえつける。
「や、止めるでござる、ラプ殿!!」
「やーい、がきー、女に触られて恥ずかしがるのが許されるのは小学生までだよねー」
煽るラプラスを咎める風真だったがその忠告を無視してラプラスはカズマを煽り続ける。
風真には何かが切れるような音が聞こえたような気がした。
発信源は目の前のカズマから。
いや、ような、ではなく、確実にだ。
しかも切れたのは恐らく堪忍袋だろう。
するとカズマはおもむろにラプラスの横の地面に拳を叩きつけた。
瞬間、すさまじい衝撃音と同時になぜか大きな爆発音がHoloX地下のトレーニング室に響き渡った。
「ひょぇ」
いきなり大きな衝撃を受けたラプラスは情けない声を出して口をあんぐりと開け、固まった。
「成程、これが魔法ってやつか」
カズマは拳を放った方の手のひらを閉じたり開いたりして感触を確かめていた。
先ほど放った爆発音はカズマが起こした魔法のようだ。
拳を放った地面は大きく抉れ、幾重にも亀裂が走っている。
かなりの威力だったのが容易に想像できた。
「で、クソガキ、他に何か言うことがあるか?」
「いえ、何もないっす、すんませんでした」
星街はカズマたちが戦っているのをその後ろで見ていた。
「何、あれ」
否、見ていたのはカズマだけ。
当のカズマは変わらず修得した魔法を用いて敵と戦ってる。
「あの爆発、魔法、だよね」
誰に言うでもなくただ独り言のように茫然と呟く。
「たった、一日で魔法を…」
勿論、星街はカズマが迷い人であることは知っている。
故に魔力の扱いに長けていることも。
ただ。
「(私は10年かかった)」
それは星街にとって、その才能はあまりにも羨ましいものだった。
「(…あ、そっか)」
星街は気付いた。
「(だからムカついたんだ)」
「(やってるなぁ、カズマのやつ)」
シエンは銃を放ちながらそう思う。
「(…だが、コイツら昨日とは違うな)」
シエンは襲撃してきた敵を見る。
「(スーツの奴らが一人もいない)」
そう、昨日の襲撃者とは打って変わってスーツ姿の人間は一人もいなかった。。
「(多少は戦えるが基本素人の奴ら、何なんだ、まるでそこら辺のチンピラを集めましたと言わんばかりな…)」
「避けて!!」
風真の声が声がその思考を断ち切った。
少し時を戻し、同じくしてカズマのことを目で追っている人がもう一人。
風真いろはは自ら戦いながらもカズマの様子を目で追っていた。
「(凄いでござるな、彼は)」
彼が魔力の扱いを修得してまだ半日。
だが既に実戦で使える程に成長していた。
「(いや、元々強かったでござるな)」
風真の脳裏に浮かんだのは最初に出会い、カズマと戦ったあの場面。
風真は手を抜いたつもりは無かった。
だがカズマは魔力を使えない状態で風真と渡り合ったのだ。
「(戦い方は我流、流派のような綺麗なものじゃない、明らかに実践に重きを置いた戦うための無駄をそぎ落とした戦闘スタイル、それをたった16で…)」
その領域に至るには並大抵の努力じゃないだろう、武人としての風真がそう感じた。
「(…まあ、魔力の使い方はちょっと特殊でござるが)」
またカズマが殴った相手に爆発を当てて吹き飛ばした。
「(魔力をそのまま相手に押し付けて無理やり爆発させる。なんて、普通の人の感覚だと間違いなく魔法の失敗作、実際、彼の爆発を放った腕は多かれ少なかれダメージを負うはずだ)」
風真の思った通り、カズマの腕、爆発を放ったその拳には火傷が出来ていた。
「(術式も工程も何も通してないから一回一回の爆発で消費する魔力は膨大なのに彼は保有しているその莫大な魔力でカバーできる、でも、その魔力の放出が上手く出来ないと…)」
風真はカズマの魔法の使い方を物凄くもったいないと感じていた。
「(あー!! 歯がゆいでござる!! もしかしたらかざまの良い好敵手になるかもしれないのに!!)」
風真はカズマの戦い方を見ながら内心で物凄く唸っていた。
完全に意識が逸れていた。
だから寸前まで敵の攻撃に気付かなかった。
「……ッ!?」
風真が気付いた時にはもう目の前に氷で出来た魔法のつららの弾丸が迫っていた。
ほぼ反射的にそのつららを刀で切り飛ばす。
だが。
「しまっ!?」
風真にそのつららが当たることは無かったが斬り飛ばされた大き目な破片が風真の背後に飛んでいく。
その先にいたのは。
「え…」
後ろで見ていた星街。
思考の海に潜っていた彼女は、迫る氷の刃に寸前まで気付かなかった。
「避けて!!」
風真が叫ぶ。
大した身体能力を持たない星街はどうあがいても回避は間に合わない。
風真の声で気付いたシエンとカズマは振り向く。
シエンはその手に持つ銃で氷の刃を打ち落とそうと狙いを定める。
だがその前に爆発が起こった。
「なっ」
驚くシエン。
何に驚いたのか、爆発音? 否。
数メートル離れていたカズマが星街の前に立ち、その氷の刃から身を挺して守っていたからだ。
「(爆発で自らを吹き飛ばしたのか!?)」
あまりにもの力技にシエンが驚く。
見るとカズマの着ていた学ランは爆風に巻き込まれボロボロになっている。
だが、それ以上にシエンはカズマの氷のつららが突き刺さった左腕に目をやった。
「くっ」
「カズマ!!」
思わずシエンが駆け寄ろうとする。
が、それをカズマは拒否した。
「先に奴らを叩け!!」
カズマの声と同時に敵の一人がシエンに攻撃が飛んできた。
シエンは立ち止まり、その攻撃を迎撃。
カズマの元へは迎えなくなった。
風真も同じ状況だ。
「アンタ!!」
カズマの後ろにいた星街が駆け寄ろうと声を上げた。
「下がってろ!!」
だが、それをカズマは拒否する。
同時に二人の敵が星街に襲い掛かってきたからだ。
「まだ終わってねえ!!」
カズマは全身痛む体を無視してその二人にラリアットをぶち当てた。
ついでに爆発も加える。
もろにその攻撃を喰らった敵は倒れこむ。
と、同時にカズマは膝を着いた。
「(体が、痛すぎる、流石に無茶しすぎたか…っ)」
相手も残り数人、だがまだ終わっていない。
星街がその手にマイクを持ちカズマの元に駆け寄ってきた。
「こんなに無茶して!!」
星街が歌おうとマイクを掲げたがカズマはそれを手で制した。
「何して」
「要らん」
「は?」
「要らん!!」
そう言うとカズマはゆっくりと立ち上がった。
「な、何言ってるの、そんな怪我して!!」
立ち上がったカズマだが変わらずふらふらとしていていつ倒れてもおかしくない。
「うるせえ!!」
カズマはそう叫ぶと同時に再び地面に膝を着く。
カズマは俯き、その表情は星街には伺い知れない。
ただ、呼吸は荒く、大丈夫ではないことは確かだった。
それでもカズマは星街からの援護を拒否する。
「…今、お前に頼ってしまったら俺は、俺は」
「っ!!」
その様子を見た星街は手を振り上げ、
膝を着くカズマの頬を引っ叩いた。
乾いた音が響く。
カズマが思わず何が起こったのか意味が分からず星街を見た。
「まるで迷子の子犬ね」
「なっ!?」
その発言はカズマを怒らせるには十分だった。
「…お前に、何が!!」
だが、次の発言でカズマの怒りは鎮火した。
「分かるわよ、私がそうだったから」