迷い人よ、ようこそ。   作:みなたか

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第十三話

あれから1週間。

気付けばこっちの世界にきてから捕まってる時間の方が長くなった。

変わらずカズマは椅子に縛り付けられて過ごしている。

唯一拘束が外れるのは食事の時と便所の時だ、それでも監視は付いているが。

 

だが、そんなことはカズマにとってはどうでも良かった。

たった一つ、たった一つのことのみを願っていた。

何も起こらず一週間が過ぎた。

このままずっと何も起きなければ、そう思っていた。

 

「ふむ、様子を見に来たが大人しくしてるようだ」

 

だが、そう上手くはいかなかった。

 

扉を開けて入ってきたのは若頭。

正直返事を返すのも面倒だった。

ヤツは続ける。

 

「今日は君に会わせたい人を連れてきてね、今から紹介するよ」

 

若頭は部屋を出て、別の人が部屋に入ってきた。

 

「…何で来ちまったんだよ」

 

カズマは部屋に入ってきた人を見て呟く。

 

「『何で』ってそんなの考えなくても分かるでしょ」

 

随分とご挨拶な言葉に彼女は当たり前のように返した。

ああ、そうだ。

カズマも分かってる。

なぜ彼女がこの場にいるのか。

だからこそ、カズマは怒りを覚えずにはいられなかった。

 

「…アイツらの言ってることなんざ無視しておけばよかっただろ!! お前までこんな所に!!」

 

それは誰に対しての怒りなのか、本人にも分からなかくなっていた。

 

「放っておけばよかっただろ!! 俺のことなんか!! 俺が勝手にやって自分に返ってきてるだけだ!! ヤツだって言ってたさ、これは自業自得だ!! だから態々お前が身を危険にさらす必要なんて無いだろ!!?」

 

彼女は黙ってカズマの激高を聞いていた。

 

「何で、来ちまったんだよ、放っておかないんだよッ!!」

 

「…で、言いたいことはそれだけ?」

 

「……」

 

カズマは俯き、彼女から顔を逸らすばかり。

 

「それじゃあ」

 

彼女はそう言うとつかつかと歩いてカズマの前に立った。

 

「私から」

 

次の瞬間、カズマの頬を引っ叩いた。

乾いた音が部屋に響く。

 

そして胸倉を掴み上げ無理やり彼女はカズマと顔を合わせた。

目のあったカズマは驚愕する。

 

彼女の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。

 

「放っておけばいいって!? ふざけんな!! どれだけ私たちが心配したのか分かってるの!!??」

 

「ほし、まち…?」

 

「アンタは何も分かってない!! 前のことも今も!! 周りがどう考えてるかも気にしてない!! 自業自得だとかそんな簡単な言葉で納得してんじゃねえよ!!」

 

「だって、おれ、は」

 

何かを言いかけたカズマを遮るように星街は吠える。

 

「あの時!! 癪だけど、アンタが囮になって助けてくれなかったら私やみこち、それにラプラスだってどうなったか分からない。今私がここに立ててるのはあの時のアンタの行動のおかげなんだよ!! それを自分が勝手にやったことだなんて言ってカッコつけて勝手に傷ついて!! ふざけんな!! それは私たちが負うべき傷だ!! 1人で負えるものなんて高が知れてるんだよ!!」

 

「……」

 

「それが分からないならここで一生ぶつぶつ言い訳並べて泣きべそかいてうずくまっとけ!!」

 

星街はカズマを突き放した。

 

一気に叫んだことで肩で息をする星街。

今だ項垂れるカズマを見る。

 

星街は踵を返し、部屋を後にした。

 

 

 

数時間後、町全体に桐音テクノロジーズの新超大型音楽アリーナ完成ライブに星街すいせいが出演することが発表された。

 

 

 

星街はその後用意された豪華ホテルのような一室に案内された。

ここはサクラ神社の結界内に建設されたビル。

ドームと連絡通路で直結していて、すぐに移動できるとかなんとかヤツは説明していた。

カズマの世界ではこんな建物を建てるのには数年はかかるが、この世界には魔法がある。

魔法の力でこの短期間での建設を可能にしていた。

 

『そうか、カズマは無事だったか』

 

「あれを無事って言っていいもんか分からないけどね」

 

星街はスマホで連絡を取っていた。

相手はシエン。

サクラ神社は電波を遮断する特殊な結界が貼られ、連絡は取れないと思っていたがこよりが即興で作ってくれた特殊アプリのおかげで連絡を取り合うことが出来ていた。

 

『…そんな酷い状態だったのか?』

 

「外傷は見た感じ無かった、ただ精神の方が完全にイっちゃってた」

 

『それは… まずいな。 一か月後、いや三週間か。間に合うか?』

 

「アイツ次第よ」

 

互いに沈黙が流れる。

 

『…すまん、あまり長話は出来ないんだったな、ともかくカズマはこっちの方でも手を打ってみる。幸いこっちの方も無事バレずに成功したからな』

 

ただ、このアプリは使用するのに魔力を用いている。

長く使いすぎるとヤツらに連絡を取っていることがバレる。それはまずい。

 

「あと、懸念してた通りアイツ、魔力が感じ取れなかったわ」

 

『てことはやっぱりパスは切られたってことか、分かった。それもこっちで共有しとく』

 

「…大体伝えることは伝えたかな」

 

『了解した、こっちも聞きたいことは特にない』

 

「分かった、それじゃあ」

 

『三週間後に』

 

「うん」

 

通話は終わった。

星街はスマホをしまい、ベットに寝転ぶ。

 

「…三週間」

 

この三週間でどれだけ準備できるか。

それに全てが掛かっている。

 

既に皆はそれぞれ出来ることを。と動き出していた。

 

「私も出来ることを」

 

決心を胸に。

 

 

 

 

 

「で、早速助けに行きますか?」

 

時は戻り、シエンが全てを説明した後。

沙花叉が全員に問いかける。

だが。

 

「いや、それは待った方が良い。 桐音テクノロジーズは正規の手段を取って今回のサクラ神社のドーム建設を行ってる」

 

それに待ったをかけるのはシエン。

ルイも確かに、と続ける。

 

「もし今奴らに戦いを仕掛ければ、桐音テクノロジーズがいくら裏で悪いことをしててもこっちが悪者になる」

 

「ああ、そうなると出てくるのは騎士団のやつらだ」

 

「…あ、じゃあ侵入とかは、一応沙花叉の専売特許ではあるけど」

 

「敵の拠点も侵入する所も敵の人数も把握できていないのに侵入できる?」

 

「むりー」

 

沙花叉が苦虫を潰したように呟く。

 

「仮に時間をかけてその情報を集める場合、それに時間をどれだけ取られるか分らん。 もしそうなったらいくら人質と言ってもカズマが無事でいられるか… 精々1週間が限度って所か、これでも結構ギリギリだが…」

 

「じゃあどうすれば良いでござるか?」

 

「時間を稼いで機を待つ、俺はこれしか無いと思っている」

 

「時間と機?」

 

風真が首を傾げる。

 

「ヤツらは今から一か月後、完成したドームでライブを行うと言った。 そして星街さんを寄越せとの手紙」

 

シエンは改めてカズマの写真と一緒に置かれてた手紙を見る。

ここまで言うと全員が理解した。

 

「一か月後のライブ、いや、そもそものドーム自体が星街さんが歌う為の舞台…ってことでござるか!?」

 

「俺はそう睨んでる」

 

「加えて、桐音テクノロジーズらが動くとしたら「星歌」を十全に使える星街さんのライブ中…」

 

こよりが腕を組み、考え込むように言う。

 

「逆に言うと、そこが私たちが唯一付け入ることの出来る隙、さっき言ってた機ってことね」

 

ルイの言葉にシエンは頷いた。

 

「そして時間の方だが」

 

シエンは星街の方を見た。

 

「…私がサクラ神社に行って素直に捕まれば少なくとも人質は安全になるってことね」

 

「ああ」

 

シエンは頷いた。

星街が捕まれば人質であるカズマはライブが行われるまでの1ヵ月間は身の保証はされるだろう、その間に何かあっては人質の意味が無いからだ。

だが、この頼みは星街を敵に一人明け渡すことになる。

その意味を理解していない訳ではないだろう。

 

「ええ、分かった。 それが私の役割ってことね」

 

だが、星街はそれを了承する。

さも当然のように。

決して自暴自棄になった訳ではない、確固たる自信と決意を秘めて。

 

「危険な目に合わせて済まない」

 

「良いの良いの、丁度アイツの面を拝みたいって思ってたところだし。 それにドームのライブっての凄い興味ある」

 

あっけらかんと笑う。

 

『私はヤツらを許さない。 友達を、大事なものを傷つけて。しかその理由が『星歌』が欲しいからだって? ふざけんじゃねえよ、これは私が私の為に歌う「私の歌」だ。だから、それを張り続ける為にヤツらと決着を付ける。ただそれだけよ』

 

彼女は先程そう言った。

星街すいせいはブレることなく自身の為に戦う。

 

シエンはそのことを改めて認識した。

 

こうして各々が一か月後に向けて動き始める。

 

 

 

 

 

星街から報告を受けた次の日、シエンは知り合いの店に向かっていた。

理由は人集め。

相手は元桐生会構成員、それに加えて恐らく金で雇われた荒くれども、人数はどれだけになるか分からない。

対してこちらはHoloXの5人にシエンと星街の7人。

既に4人の協力者は確保したがそれでもまだまだ人は足りない。

ということで一緒に戦ってくれる、出来れば一騎当千の強い人を求めて知り合いを頼ろうとした。

 

目的の店にたどり着いたシエンは早速店の扉を開け店内に入った。

ちなみに店名は「BAR ROBEL」と書かれていた。

 

「いらっしゃー… おぉ!! シエンやん!! いらっしゃい!!」

 

「久しぶり、ロベさん。 いつの間にか昼の営業も始めたんだな」

 

「そうなんよー 確か前来てくれた時はまだ夜営業だけやったもんな。 んで今日はどうしたん? こんな真昼間から酒でも飲みに来たんか?」

 

「いや、ちょっとロベさんに頼みたいことがあって」

 

「俺に?」

 

ロベルは自分を指さし、首を傾げる。

 

「ま、今は客もおらんし丁度良いか」

 

シエンはロベルに促されカウンターに座る。

 

「で、何があったのよ?」

 

「実は…」

 

 

 

 

「…成程、え、何かえらいことに首突っ込んでない?」

 

「あはは、まあそういうことで知り合いの多いロベさんに誰か紹介してくれないかなぁと」

 

「うーん、紹介できる人… あ、オウガは? アイツならすぐに来てくれると思うけど」

 

「アイツは今、騎士団辞めた天真さんと一緒に旅に出てるっす」

 

「あー!! そうやった。オウガが天真を追いかけるって言ってたわ」

 

うむむ、と腕を組むロベル。

 

「…なあ、シエンたちがやろうとしてることって、下手したら怪我だけじゃ済まないめっちゃ危険なことだよな。 正直そんな危険なことに「協力してくれ」なんて知り合いに軽々しく言えないぞ」

 

「…それは、そうですよね」

 

それでも。とシエンは続けた。

 

「今の俺たちには戦力が足りてないんです。仲間を助けることの出来る力が。 頼む、ロベさん。俺に出来ることなら何でもする。 だから助けてくれ」

 

シエンは深々とロベルに頭を下げた。

 

沈黙が続く。

時間にして数分。

はぁ、とロベルはため息を付いた。

 

「言っとくけど俺が心配してるその知り合いにはお前も入ってるんだからな」

 

シエンは顔を上げるとロベルは苦笑していた。

 

「俺もアイツに似ちゃったかな。「助けて」なんて言われたら助けずには居られないっての」

 

「ありがとうございます!」

 

シエンはもう一度深々と頭を下げた。

 

「うーん、でもそれでも危険なことに変わりはないからなぁ、頼める人… アルさんはただのピザ屋店長DJになってるから戦えないし…」

 

腕を組み、考え込むロベル。

 

丁度そのタイミングで店の入り口が開くベルの音が鳴った。

 

「ロベルさーん、おつコンでーす!! …はにゃ?」

 

入ってきたのは白髪の狐耳少女。

元気に店に入ってきた彼女だったが、ロベルとシエンの間に漂う真剣な空気を感じ取って戸惑いの声を上げる。

ロベルはそんな彼女を見て。

 

「あ、いるじゃん」

 

ポンと手を打った。

 

 

 

 

「はかせー、入るぞー」

 

HoloXアジトにて、ラプラスはノックもせずこよりの部屋に入る。

部屋に入ったラプラスはこよりの姿を探すと机に突っ伏して寝ているのを見つけた。

こよりは昨日まで徹夜で星街とシエンが使っていた連絡アプリを作っていたのだが遂に限界が来てそのまま寝てしまったのだろう。

 

仕方ないな、とラプラスはこよりの眠る机に近づく。

元々無理な体勢で寝ていたので眠りは浅かったのだろう、ラプラスの気配にこよりは気付いた。

 

「…んあぁ? ラプちゃん、どしたのー?」

 

あくびを殺しながら机から起き上がるこより、まだ眠そうだ。

 

「吾輩もはかせに作ってもらいたい物があるんだけど、出直そうか…?」

 

「ううん、ちょっと寝たから大丈夫、何かな?」

 

ラプラスはこよりに促されると、あるものを取り出した。

 

「これって…」

 

「カズマの上着」

 

それはラプラスに応急処置を施した際にカズマが掛けたもの。

新品だったそれは既に血の跡や傷で汚れていて到底綺麗とは言えなかった。

こよりはラプラスから服を預かる。

 

「それで、こよりにこの服を治す手伝いをして欲しいんだけど」

 

「…ただ直すだけならルイ姉に頼んだ方が良いのに、この博衣こよりに頼むということはそういうことで良いんだよね?」

 

「うん、お願い」

 

「がってん! 丁度昨日シエンさんから聞いた情報のこともあるし、色々とやっちゃいましょう!!」

 

うへへへへ! と少し気持ちの悪い声を上げるこより。

さっきまで眠そうな目をしていたのに今は目をガン開きにしてギラギラしていた。

それ程に、彼女にとって研究や開発事というのは三度の飯より好きなことなのだろう。

 

「でも、本当に珍しいね。ラプちゃんがここまで気にかけるなんて、あ、もしかして…」

 

こよりは今度はニヤついた顔でラプラスを見る。

その意味に気付いたラプラスは思わず大声で反論した。

 

「ち、違うから!! ただちょっと仲良くなっただけだから!!」

 

「本当にそれだけぇ?」

 

「それだけ!!」

 

顔を真っ赤にして反論するラプラスにこよりは良い物を見れたと笑顔になる。

 

「…いや、それだけじゃない」

 

さっきの勢いはどうしたのか、急にテンションの下がったラプラス。

こよりは次の言葉を待った。

 

「その上着、あの日に買った新しい服なんだ。なのに吾輩のせいでこんなにもボロボロにしちまった。だからちょっとその申し訳なさもある」

 

しゅんとしたラプラス。

こよりはそんなラプラスをみて思わずその頭を撫でた。

 

「分かった。なら猶更この服は最高のモノにしないといけないね」

 

「…うん」

 

「よし、それじゃあ早速作業に取り掛かりますか!!」

 

「あ、ごめん、吾輩はちょっと行くところあるから」

 

「えぇぇぇ!? こんなにもやる気になったのに!?」

 

「だからごめんって、帰ったらすぐ手伝うから」

 

そう言うとラプラスはいそいそと部屋を出ようとする。

 

「どこに行くの?」

 

「ちょっと宇宙人仲間に会いに行ってくる、今回の件で手伝ってくれそうなやつがいるから」

 

そう言うとラプラスは部屋を出る。

 

「宇宙人仲間? 誰のことだろう…」

 

まあ、こっちはこっちでやりますか!と、こよりは上着を作業台の上に置いて様々な道具を取り出し、作業を始めた。

 

 

 

 

 

「はーい、今日のご飯の時間ですよー、と」

 

カズマが閉じ込められている部屋の扉が開き、一人入ってきた。

その人物は今まで食事を運んできていた人とは違った。

髪は赤く、来ているスーツも着崩していてチャラいような印象を受ける。

だが、カズマはそれを一瞥しただけで何も反応を示さない。

 

「ちょっとー、飯っすよー、飯―。」

 

何も反応を示さないカズマにその青年は少し困り顔をする。

ほれほれー、とカズマの前に皿を出すが反応なし。

 

「お腹減ってるでしょー、ご飯食べないと元気でないよ」

 

「…ほっといてくれ、それにそんな飯見せられて誰が食べたいって思うんだよ」

 

その皿に乗っているのは何かよく分からない白い塊。

 

「だよねー、俺もそう思ったんだけど燐央のやつがこれで良いって」

 

「…リオ?」

 

「ああ、ごめんごめん、こっちの話。 とりあえず食べてくれないとこっちも困るんだけど」

 

「…いらん」

 

「…はぁ、しょうがないっすね」

 

赤毛の青年はそう言うとおもむろにカズマの顔を掴んだ。

 

「なぁ!?」

 

「はい、ちょっと我慢してねー」

 

青年は皿に乗ってる白い塊をカズマの口に無理やり突っ込んだ。

 

「もがぁ!?」

 

「はい、口閉じて飲み込んで、はいはい、飲んで飲んで、いや違うか、食べて食べて食べて!!」

 

そのまま口をふさがれたカズマ。

為す術無く口に放り込まれたものを飲み込むことになった。

 

「…んぐっ!! な、何するんだ、おま、え」

 

飲み込んだとたんにカズマの視界が霞がかってきた。

それと同時に体に力が入らなくなってきた。

 

「な、何だ、これ…」

 

「いやー、ごめんね、ちょっと眠ってもらうことになるから」

 

青年の言葉を最後にカズマは意識を失った。

 

 

 

 

「よし、寝たかな」

 

赤毛の青年は気を失ったカズマの拘束を解き地面に横たわらせる。

 

「後は…」

 

「どう、出来た?」

 

「うぉあ!? びっくりした!!」

 

赤毛の青年に話しかけたのは薄い青髪を腰まで伸ばした同じく青年。

 

「お前、その登場の仕方心臓に悪いから止めろって…」

 

「はは、ごめんごめん」

 

赤毛の青年がそう言うのも無理はない。

だって薄青髪の青年は壁に体の半分が埋まっているのだから。

 

「よっと」

 

そう言うと薄青髪の青年は壁から全身を出す。

その足は常に地面から浮いていた。

 

「燐央が言ってたやつ食べさせたぞ、なんだっけあのー、よもなんちゃらみたいな」

 

黄泉戸喫(よもつへぐい)ね、あの世の食べ物だよ。 うん、ちゃんと食べさせたんだね、じゃあ二人も呼ぶからちょっと待ってて」

 

燐央と呼ばれた青年はまた壁に足を向けると先ほどと同じように体が壁を透過した。

すると扉が開き、黒髪短髪に黄色いメッシュの入った青年が入ってきた。部屋の入り口には白髪の男性もいる。

燐央が呼びに行った二人とはこの人たちのことだろう。

 

「よし、それじゃあ早速始めますか!!」

 

黒髪の人がそう言うと上着の内側から一枚の札を取り出した。

その札を地面に寝そべるカズマに張り付ける。

そして黒髪の人が何かを呟く。

同時にその人の目が青色に変化した。

 

三人はそれを眺めること数分。

瞳の色が元に戻るとふう、と息を吐いた。

 

「これで保存の方は完了、後は燐央、よろしく」

 

「任せてー」

 

燐央はそのまま寝そべるカズマの体に入り込んだ。

 

「見た目グロ」

 

「静かに!!」

 

赤髪の青年が茶化し、燐央がカズマの体から手だけ生やして反論する。

 

「えっと、これをこうやってループさせて… あれ、何だコレ、うーん、ここにあったってことは… よし混ぜちゃうか」

 

何かを行っている燐央、それを3人は見つめる。

 

「よし、出来た」

 

そう言うと燐央はカズマの体から出てきた。

 

「これで完了かな。鳥有、そっちの方は大丈夫ー?」

 

鳥有と呼ばれた白髪の青年は部屋の外から声だけで返答する。

 

「うん、まだバレてない、監視カメラの方も問題なしよー」

 

「よし、それなら大丈夫そうだな」

 

黒髪の青年が頷く。

 

「じゃあ、さっさとずらかりますか」

 

その言葉に頷き、4人は部屋を立ち去る。

 

その日から何故かカズマが拘束されている部屋には誰一人近づかなくなった。

 

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