迷い人よ、ようこそ。   作:みなたか

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第十八話

「だって僕は星だから」

 

その歌はカズマがこの世界に来て、初めてすいせいと出会った時に聞いた曲。カズマにとっての始まりの曲。

誰もいない公園で1人、星明りと蛍光灯に照らされて歌っていた。

 

「Stellar Stellar」

 

伴奏が始まった。

カズマは流れてきた膨大な魔力に背中を押され、駆け出す。

 

ドラゴンがカズマに狙いを定め、拳を振り下ろした。

だが、その攻撃が当たるよりも早く。カズマは爆発で飛びその拳に飛び乗る。

拳は誰にも当たらず、地面を叩く。

砂ぼこりが舞う中。カズマはその腕を駆け上がり始めた。

 

「(ヤツにいくら攻撃しても回復しやがる。すいせいの話からして上限があるらしいから攻撃をしまくるって選択肢もあるがそれはだといつ終わるか分からない。持久戦に持ち込まれたらこっちが負ける)」

 

ドラゴンの体を駆け上がりながらカズマは考える。勿論ドラゴンはそれを黙って見ていない。魔力による光線をいくつもカズマに放つ。自動回復があるからか、ドラゴンの体に当たることもお構いなしだ。

 

「ふん!!」

 

カズマはそれを時にその拳で弾き、時に爆発を用いて避け。数多な魔力光線が降る中、ドラゴンの体を駆け上がる。

 

「(なら、弱点を狙う。このドラゴンの核。俺には分かる、その核がどこに位置しているか。それは)」

 

「すいせいと同じ魔力が一番集中している場所が弱点だ!!」

 

ドラゴンの胸の前に飛び出す。

カズマはすいせいと契約したことですいせいの魔力を直で感じ取ることが出来るようになった。

そして目の前のドラゴンはすいせいの。いや、すいせいから奪った星の魔力によって動いている。ならそれが一番集中している場所を探し当てるのはカズマにとって容易であった。

 

弱点。魔力が集中しているドラゴンの胸に向かって拳を振りかぶる。

 

『言っておくが、本気を出していないのは君たちだけだと思うなよ』

 

ドラゴンからそう声がした。その瞬間、その巨体には似合わないスピードで身を翻し、その尻尾

をカズマの左側面から叩きつけた。

先ほどの動きよりずっと早い。驚愕に顔を歪めながらカズマは吹き飛ばされた。

尻尾と体の間に籠手を割り込ませたことで直撃は避けたが…。

 

「…ちっ、左の籠手が壊れたか」

 

立ち上がったカズマのその左腕に付いていた籠手はボロボロに砕けていた。

 

「威力もさっきとは段違いだ。…いや、左腕が無事なだけ上出来か。ありがとよ、こより」

 

幸いにも体へのダメージは軽い。送られてくる魔力による身体能力強化と籠手のおかげだ。

目の前のドラゴンはカズマを見つめるとその大きな翼をはためかせた。

翼が生み出す突風がカズマに叩きつけられる。思わず後ろに飛ばされそうになるが、その瞬間カズマを中心にピンク色の円形シールドが張られた。

 

「生きてるよね!?」

 

そう叫ぶのはさくらみこ。どうやらこのシールドは彼女が張ってくれたようだ。

シールドは風からカズマを守ってくれていた。

 

「ああ! 助かる!!」

 

ドラゴンはダメージを与えられないと判断したのだろう、突風が止む。

するとドラゴンは翼を動かしその巨体が空中に飛んだ。

その巨体がどんどん高さを上げる。だが、それは一定の所で止まった。いや、正しくはさくらみこが新たに張った結界に阻まれていた。

 

「こっちの狙いがバレたのとスタミナ切れを狙って遠距離からの攻撃に切り替えたってところか…」

 

こうなると弱点部分へ攻撃を通すのが難しくなる。

どうしたものか、とさくらみこに張ってもらったシールド内で考える。

 

『カズマ』

 

唐突に脳内に直接すいせいの言葉が響いた。

 

「!? すいせい!?」

 

『驚かない。後、思うだけで話せるから』

 

『こ、こうか』

 

『念話ってやつね。ま、それは置いといて、それよりカズマ』

 

『なんだ』

 

驚きつつもすいせいの言う通りに従う。彼女の方をみると今も変わらず歌っている。

念話。テレパシーみたいなものか。契約をしたことで出来るようになったのだろうと結論付ける。

 

『もうすぐ最初のサビに入る。そのタイミングであれを落としなさい(・・・・・・)

 

あれ。それはつまりドラゴンこと。

あの巨体を地面に落とせと彼女は言うのだ。

 

『…落とすって。そのための魔力は回してくれるんだろうな』

 

だが、出来ないとは言わない。

 

『当たり前じゃない。言ったでしょ、「まだライブは終わってない」って。この歌を聞いてくれる人がまだ大勢いるの。その人たちから送られてくる力は声援はまだまだこんなもんじゃない』

 

『成程。なら大丈夫だな』

 

すいせいの歌の力はカズマが一番よく知っている。だからこその「大丈夫」という言葉。

 

『あ、言っておくけど変な小細工とか無しだからね。正面から打ち落としなさい』

 

『その心は?』

 

『ああいうタイプは真正面から戦って勝たないとまた同じことをするわ。納得できないって。だから私たちが目指すのは完膚なきまでの勝利。それに』

 

『それに?』

 

『その方が「私たち」らしいじゃない』

 

『はっ、上等!!』

 

 

 

 

アステルは汽車を運転する。

5万人を乗せた汽車は驚くほど静かだ。もう少し混乱だったりと騒いだりするかと思っていた。

 

「みーんな。星街すいせいの曲に聞き惚れているな」

 

皆、下のドームで戦っているすいせいの様子を窓に張り付いて見守っている。

特別サービスで客席にドームの中継を見れるようにディスプレイを投影した。

 

「ああ、でも確かに良い歌だ」

 

アステルはそう呟く。そこ表情はどこか遠くの方を見ていた気がした。

 

「『星歌』か… 懐かしい響きだね。あの人の歌とはまた違った力を感じる。…うーん。僕も今度歌おうかな」

 

なんて。と苦笑しながら観客5万人を乗せた汽車は星空を駆ける。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

カズマは自分の中に意識を集中させる。次の攻撃に備えるために。

すいせいから送られる魔力の量が少なくなるのを感じた。恐らく次にくるサビに向けての溜め(・・)

ならば。とカズマはさくらみこに叫んだ。

 

「シールドを解除しろ!! さくらみこ!!」

 

その言葉を聞いたさくらみこは一瞬驚愕するがカズマの表情をみて何か策があるのだと頷く。

カズマの周囲に張られたシールドが解除された。

それは次への動作が阻害されないようスムーズに行うため。そして今のこの空気を体で感じるため。攻撃のタイミングを逃さないように。

 

ドラゴンはシールドが解除されたのを見て驚いたかのように一瞬動きが止まる。だが、何かをしてくる訳ではない。恐らく次の行動を警戒してのものだろう。

 

「(ああ、それで良い。警戒しろ。俺たちの次の一手を。そして備えろ、俺たちはそれを乗り越えて行く!!)」

 

両者睨み合う。

ドラゴンの口から炎がこぼれた。それは今まで散々放った火球。それを今度はカズマが動くそのタイミングで放つために目一杯溜める。

カズマから見てもドラゴンの火球に凄まじい魔力が溜まっているのが分かった。

カズマはただそれを眺め、そして時を待つ。

 

「その手を伸ばして」

 

瞳を閉じ、今はこの歌に身を任せる。

 

「誰かに届くように」

 

そこにあるのは満点の星空。

 

「僕だって君と同じ」

 

その星空を駆ける彗星を見た。

 

「特別なんかじゃないから」

 

目を見開く。

発火。

 

「そうさ」

 

青い爆発がカズマを押しだす。

 

「僕は夜を歌うよ」

 

彗星を追いかけるように、手を伸ばす。

 

「Stellar Stellar」

 

連鎖するように青い爆発が連続で巻き起こる。

それは爆発ごとにスピードを上げる。

その様はまるで流れ星のよう。

 

ドラゴンが今までで一番大きな火球を放つ。

一条の光と化したソレは火球にそのまま突っ込んだ。

誰もが息を飲む。

 

だが。

 

「そうだ 僕がずっとなりたかったのは」

 

ソレは火球を貫いた。

ドラゴンは目を見開く。

貫いた火球はそのまま爆発を起こし、霧散する。

 

「待ってるシンデレラじゃないさ」

 

勢いは止まらず。むしろ先ほどの爆発でさらに速度を上げた。

ドラゴンの核である胸元を捉える。

 

「迎えに行く王子様だ」

 

ドラゴンの胸元を中心に多重の魔法陣が展開される。間違いなくこの光を止めるための防御魔法。

だがそれは意味を成さない。魔法陣に触れるたびに一枚、また一枚と容易く破られる。

 

そしてついに。

 

「だって僕は星だから」

 

流れ星は、ドラゴンの胸を貫いた。

 

 

 

鉄のドラゴンは胸を貫かれ、地に落ちた。

カズマは倒れたドラゴンの背中に立つ。

 

「出てこいよ! まだ終わってねえんだろ!!」

 

確かにこのドラゴンの核は貫いた。だが、これで終わるとは思っていない、まだラスボスが残っているのだ。

 

ドラゴンの背の一部が崩れ、そこから人影が現れる。

 

「全く、そう叫ばなくても聞こえているとも」

 

「はっ、久しぶりに会ったのに挨拶も無しかよ。寂しいじゃねえか」

 

桐音テクノロジーズ社長。新生桐生会若頭。

現れたソイツは不敵な笑みを浮かべながら現れた。

 

「全くどうして。俺の最高傑作だったんだがな。星歌の担い手と契約した使い魔(サーヴァント)の力。見誤っていたということか。だが」

 

若頭はカズマを睨みつける。

 

「まだ、取り返しがつく。君を倒して星街すいせいを手に入れれば良い」

 

そう言うとヤツは上半身に来ていた服を脱ぎ捨てた。

 

そこには歪な機械が心臓部分に装着され、その機械から伸びるコードが全身に伸びていた。

 

「…なんだ、それ」

 

いや、カズマには分かるのだ。それが何か。

あまりにも歪なものだったために聞かざるを得なかった。

 

「このドラゴンの核の一部だよ。さっき君が砕いたものを急いで修復したのさ」

 

「…お前、今自分がどういう状態か分かってるのか?」

 

ラプラスの魔力を自分用に変換した上で使っていても多少の気持ち悪さがあったのだ。だが、コイツは今「星歌」の魔力をそのまま使っている。感じ取れる魔力もぐちゃぐちゃになっていて物凄く歪な物と化している。そんなものを扱うことはどういうことを意味するのか、カズマが想像するのは難しくなかった。

 

「ああ、勿論だとも」

 

カズマを睨みつける目は狂気を宿していた。何があっても必ず倒すというその意志。

いや、違う。今のコイツはカズマを見ていない、どこか遠くを見ていた。

カズマではなく、すいせいでもない。もっと遠くの景色を。

 

「…どこ見てんだ。てめぇ」

 

怒気を含ませて言う。

そう言うと初めて若頭の目がカズマに合った。

 

「ああ、すまない。この領域があの人の見ていた地点かと考えるとついね」

 

そう言いながら拳を構える。それを見て、カズマも拳を構えた。

 

「さあ、始めようか」

 

「…一つ言っといてやる」

 

カズマを中心に魔力が吹き上がる。

 

「今の俺たちは余所見してて勝てる相手じゃねえぞ」

 

すいせいの歌う曲が二番に入ったことでカズマのボルテージがまた一段引き上げられる。

 

「第二ラウンドだ」

 

カズマの拳が若頭の顔面に突き刺さった。

 

 

 

 

 

絶え間なく続く拳と拳の応酬。それは激しい打撃音を響かせる。

 

カズマの拳が若頭の胸板を叩く。若頭は苦悶の表情を浮かべるがそのまま拳を返す。今度はカズマの胸板にその拳が放たれる。

それを同じく胸板で受け止めたカズマだが若頭と違い、一歩後ろに押された。

 

それはカズマの拳より若頭の拳の方が威力が高いことを示していた。

 

「(コイツ! 威力がどんどん上がってきてやがるッ)」

 

カズマが拳を放つたびに若頭はそれより威力の高い拳を放つ。

若頭は徐々に実力を出していくスロースターターのタイプなのだろうか。

 

「(いや、違う。それに前神社で戦った時の戦闘を考えると間違いなく今の俺の方が強いはずだ。だというのにヤツの拳は俺の一歩先を行きやがる)」

 

カズマは戦いは熱くなりながらも、状況を冷静に分析する。

この現象にカズマは一つ仮説が立った。

一度、試しに魔力を込めずただの拳を放ってみた。

その拳はヤツの脇腹を叩き、お返しにと拳が返ってくる。

カズマはその拳を体で受け止める。

仮説が確証に変わった。

 

「…成程、俺の攻撃をそのまま吸ってる訳か。道理で最初と比べて威力が上がる訳だ」

 

「流石にバレるか。君の使う力は「星歌」の力だからね。再利用は容易いのさ」

 

「にしては顔は苦しそうだぜ。どうやらダメージは吸収できないようだな」

 

若頭が押し黙る。カズマの言うことは正解のようだ。

ならば、とカズマは再度両腕に魔力を流す。

 

「我慢比べと行こう。俺たちの魔力が尽きるのが先か、アンタの体力が尽きるのが先かのな」

 

これは別に自棄になった訳ではない。カズマが今若頭対等以上に戦えているのはすいせいが歌っているからだ。つまり、今の曲が終わればカズマの敗北が確定、短期決戦で勝つ必要がある。攻め続けるしか手は無い。

 

若頭からすると曲が終わるまで逃げや防御に回ることが出来れば良いが、守りに回った時点で負ける。そういう予感が若頭にはあった。星歌の担い手の使い魔としての強さとライブによるブースト。それは守りに入って勝てるようなものではない。つまり、付き合うしか手は無い。

 

「良いだろう」

 

両者改めて拳を構える。

 

先に動いたのはカズマ。

籠手を着けた右腕のストレート。

若頭はその攻撃を受け止め、吸収しようと腕を固める。

 

その拳が当たる直前、突如として拳を開いた。

 

「なッ!?」

 

驚く若頭。それは今まで拳の直接攻撃しかしないという刷り込み。

不意を突く形となった。

 

爆発。

若頭の体勢が崩れた。

すかさず拳のラッシュを叩き込む。

 

「なめ、るなぁ!!」

 

だが、それでも若頭は無理やり体勢を変え、その拳を受けきりラッシュを打ち返す。

互いの拳が打ち合い。すいせいの歌の中、激しい打撃音を奏で始めた。

 

 

 

 

 

すいせいが歌い、鉄ドラゴンの亡骸の上でカズマと若頭が戦う。そんなドーム会場に複数の人影が参戦した。

 

「ったく。本当に数だけは多かったな」

 

「うん、他の人たちが来てくれなきゃもっと時間がかかったかも」

 

先頭を走るのは虎太郎とフブキ。

 

「ふふん。もっと吾輩たちに感謝しても良いんだぞ」

 

「はいはい。無駄口叩くなら自分の足で歩く?」

 

その後ろにはルイとその小脇に抱えられたラプラス。

 

その後ろからもぞろぞろと連れ立って姿を現す。

シエンにミオ。holoXの面々にUPROAR!!の人達。そして途中から合流した獅白ぼたんの姿もあった。手を貸してくれた全員がこのドームに到着したのだ。

 

皆ドームの現在の惨状を見て息を飲む。破壊され、壁の一部が壊れたドームに鉄のドラゴン。そしてその中で歌うすいせいにドラゴンの背で戦うカズマと若頭の姿が目に入る。正直状況が読めなかった。

 

ラプラスはふと自分の魔力を感じ取った。それはカズマに付けた使い魔の気配。

 

ラプラスがルイの手を叩いて下ろしてもらうと使い魔の気配がするところに向かう。

 

「カァァ カァァ」

 

そこにいた使い魔は何かを加えていた。

ラプラスはそれを受け取ると顔を見上げる。その視線の先には若頭と戦うカズマの姿。

 

「…よし」

 

ラプラスは頷いた。

 

 

 

 

 

すいせいから送られる魔力が弱まった。

 

『…カズマ。次がラスト』

 

すいせいから神妙な声で報告してくる。

つまり曲で言う所のラスサビ前の溜め。

だが、目の前の相手は今だ健在。

 

『了解』

 

カズマは若頭から距離を取る。

 

「…ここまでやってるのにまだ倒れねえか」

 

「言っただろう。俺は君を倒す、絶対にだ」

 

その目はさっきとは違い、完全にカズマを捉えていた。

 

「すげえな、アンタ」

 

「…は?」

 

いきなり何を言い出すのかと。若頭は困惑した。

カズマは本当に関心したように言う。

 

「すげえって言ったんだよ、俺は。一人でこんなに強いなんてな」

 

一瞬フリーズした若頭だったがこの戦いで沸騰した頭をリセットするように、カズマの言葉に返答する。

 

「一人じゃないさ。会社の人間、新生桐生会の人間全てが居なければこうならなかった」

 

若頭はそう返した。

このドームも、このドラゴンも1人で出来たわけじゃないと彼は言う。

だが、カズマは心底不思議そうに首を傾げた。

 

「いや、どう見ても1人じゃん」

 

「………は?」

 

カズマの放った言葉は若頭の思考を止めた。

 

「…俺が、1人、だと…?」

 

「ああ。だって今、隣に誰もいないだろ」

 

若頭は周囲を見渡した。

そうだ。今、会場内で彼の味方は1人もいないのだ。組員も金で雇ったゴロツキも誰一人。

横には誰もいない。

それは何も会場だけではない、まるで今の若頭の立場を表しているようにも見えた。

 

「なあ、オマエって結局何がしたかったんだ? すいせいを攫って、こんなドラゴンを作って」

 

「何って、それは桐生会の復興を…」

 

「…一つ聞きたいんだが、桐生会ってのはこんなことをして復興するもんなのか?」

 

カズマはずっと疑問だったのだ。シエンやすいせいから聞いていた「桐生会」ってのはもっと義理人情に厚い任侠道の筋の通った組だって。

それがこんなことをして復興出来るものなのか、復興したところで全く別物になるんじゃないかと。

 

「……れ」

 

「金積んで、数だけ揃えても中身が伴ってなきゃ意味ねえだろ」

 

「……まれ」

 

「これがお前の復興したかった「桐生会」なのか?」

 

「黙れえええええええ!!!!!」

 

図星を付かれたのか、まるで癇癪を起すか如く周囲に魔力をまき散らし暴風を引き起こす。

カズマを血走った目で睨みつける。

どうやら言葉をまともに聞く余地は無さそうに見えた。

 

「続きはオマエを伸した後でゆっくりとしてやるよ」

 

拳を構える。

 

「夢見がちなおとぎ話」

 

歌が聞こえる。

とはいえ、このまま攻撃しても結局そのまま返されて倒せずに終わってしまうのが予想できた。

 

「おとぎ話」

 

声が聞こえた。

 

「カズマーーーーーー!!!!!」

 

どこか幼さを残すその声はカズマの耳に確かに届いた。

 

何かが投げられる。

カズマはそれを右手で掴んだ。

 

掴んだ瞬間、それが何か分かった。

これなら…!

 

「勝てる!!」

 

「そうさ 僕は夜を歌うよ Stellar Stellar」

 

青い魔力が吹き上がる。

ラスサビに入った。

 

「ありったけの輝きで」

 

カズマはそれを残った右の籠手に装填(・・)した。

 

「今宵 音楽はずっとずっと止まない」

 

今までで一番大きな青い魔力が立ち上がる。

その隙間を縫うように紫色の稲妻が迸る。

 

「ありがとよ!! ラプラス!!」

 

先ほど落としてしまったラスト一本の魔力カートリッジ。

それを届けてくれた。

 

頭がガンガンと鳴り響く。処理しきれない魔力が自らの体に牙を向く。

紫電が走るたびに血が噴き出た。

だが。

 

「それがどうした!!」

 

カズマは大きく踏み込んだ。

ラスサビの大魔力。それは凄まじいスピードを生む。

 

相手はまともに対応できない。

若頭の顔が驚愕に染まる。

がら空きな胴体に拳を叩きこんだ。

 

「ぐふぉおお!!?」

 

確かな手ごたえと同時に若頭が苦悶の声を上げる。

その瞬間、相手が上半身に付けていた「星歌」の力を取り込む装置。それが煙を上げて火花を散らし始めた。

 

「な、何!?」

 

今まで使っていたものが唐突に壊れ始めたことで驚愕する若頭。

だが、カズマにはその現象の原因に心当たりがあった。

 

「今の俺には二つの魔力が入って交じり合ってる。 すいせいから受け取った「星歌」の魔力とラプラスの魔力。アンタのその機械は確か「星歌」の魔力を吸収するんだったよな。他の魔力が混ざったものを吸収しようとするとどうなるよ?」

 

若頭はその言葉を聞き、逃げるように大きくその場を後ろに飛ぶ。その顔は恐怖で歪んでいるように見えた。

 

「消えろおおおおお!!」

 

相手はありったけの魔力光線を放ってくる。

 

「喰らうかよ」

 

その光線を避け、弾く。

 

「コイツでラストだ」

 

両の手の平から爆発が巻き起こる。

それはカズマをロケットのようにかっ飛ばした。

 

攻撃は一瞬だった。

拳は若頭の顔面を捉え、殴り飛ばす。

 

「そうだ僕は星だった」

 

若頭が付けていた機械は完全に壊れる。

 

「Stellar Stellar」

 

相手は沈黙した。

 

 

 

 

 

 

 

決着がついた、誰もがそう思った。

 

 

その瞬間、鉄のドラゴンの亡骸から一筋の光が天に向かって放たれた。

それはさくらみこが張った結界を貫通し、高く、空へ、宇宙へと届く。

 

天を見て大の字に倒れ伏す若頭はその様子を見て笑った。

 

「彗星が落ちてくる」

 

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