迷い人よ、ようこそ。   作:みなたか

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第十九話

鉄のドラゴンの亡骸から伸びた光の柱。

何が起きたのか。だが、これだけは分かる。

まだ、終わっていない。

 

「ククククッ……」

 

倒れ伏した若頭は笑う。

カズマはその胸倉を掴み起こす。

 

「おい!! 何しやがった!!」

 

笑う若頭はカズマの後ろを指さした。

 

「万が一、俺が負けた時用に置いといた保険だ。まさか発動するとはな」

 

若頭は笑いながらそう言う。

カズマは若頭が指さす後ろを振り向いた。

 

「なっ…!?」

 

そこにあったのは、空に見える大きな何か。

その陰はどんどん大きくなる。

いや、あれは…

 

「落ちてきているのさ、彗星が」

 

空に見えるものが段々大きく見えるのは近づいてきているから。

あんな大きなものがここに落下してくる。そう思うと背筋が凍った。

 

「あんなドでかいもん落ちてきたらこの街どころかオマエもただじゃ済まないだろ!! 何やってんだ!!」

 

カズマは若頭の胸倉を揺さぶり叫ぶ。

 

「もう何もいらないのさ、君に負けたことで全て終わったのだ、何もかも」

 

「は?」

 

「言っておくがアレは一度発動したらもう誰にも止められない」

 

「ふっっっざけんな!!!!!」

 

それでも若頭はまだ笑う。

 

「いくら言われてもアレはもう俺の制御から離れた、もうどうにもならないさ」

 

「そっちじゃねえ!!」

 

だが、カズマは一番キレているところはそこではなかった。

若頭のその顔が、その表情が。

カズマを揺さぶった。

 

「…?」

 

「そっちじゃねえって言ったんだよ! 俺が「ふざけんな」って言ったのは彗星のことじゃねえ! 俺たちに負けた程度(・・)で全部投げ捨てて自暴自棄になってる「オマエ」のことだ!!」

 

「…は?」

 

若頭が笑いを引っ込めた。

 

「負けた程度、だと? それがどういう意味か分かってるのか!? 負けたんだぞ、俺が、俺の全てを注ぎ込んだものを使って負けたんだぞ!! それを、俺を負かした貴様が言うな!!」

 

「いいや、いくらでも言ってやる!! 俺たちに負けた程度で諦めて、手に入らないなら全て壊しましょうってか!? ふざけんな!! そんな程度の覚悟だったのか!? 桐生会を再建するってのは!! 負けたのなら地べた這いつくばっても立ち上がれよ! 諦めんなっつってんだよ!! 全て壊れたら何も出来ねえんだぞ!!」

 

「……」

 

「今のオマエは桐生会の会長ってヤツに胸張って会えるのかよ!?」

 

カズマの言葉に若頭は茫然と目を見開いた。

 

「…かい、ちょうに」

 

若頭の力が抜けるのが分かった。

カズマは若頭を手放す、若頭はどさりと倒れこんだ。

 

「そこで見とけ。諦めずに立ち上がった奴の意地ってヤツをよ」

 

カズマはそう言うとすいせいたちが待つ皆のところに向かった。

 

 

 

 

 

「カズマ!」

 

すいせいはカズマに声をかけ、カズマは軽く手を上げ返事を返した。

周りを見渡すとシエンを始め、全員が揃っていた。

 

「一体何があったんだ、それにあれは…」

 

シエン空を見上げ、カズマに尋ねる。

 

「彗星らしい」

 

カズマは若頭が言っていたことを伝える。

皆の表情が驚愕に染まった。

 

「彗星!?」

 

「え、それってつまり隕石ってことすか!?」

 

緋崎ガンマがやべぇと言わんばりに口を開いた。

こよりが空中にディスプレイを投影し、キーボードを叩き始めた。

 

「出ました! 確かに彗星、隕石です! しかもこの大きさ… 落ちてきたら街どころかこの星自体が大変なことになるレベル…」

 

「マ、マジかよ…」

 

夜十神 封魔が思わず呟く、皆口には出してないが同じ反応だ。

シエンがこよりに尋ねる。

 

「こよりさん、ここに落ちてくるのか?」

 

「…はい、間違いないです」

 

こよりはそう言いながらキーボードを叩く。

すると空間に隕石の映像が投影された。

 

「衛星の映像をジャックしました。…速度を考えると、後15分でここに落ちてきます」

 

「じゅうご…!?」

 

それはあまりにも短すぎる時間。

 

隕石。その規模の大きさにこの場に居る全員緊張が走る。

だが。

 

「時間も無い、俺たちで何とかするしかないな」

 

目は死んでいない。

虎太郎は拳を叩き、そう答える。

皆はやる気で満ちた顔で頷いた。

 

「…あれ?」

 

ふと、ディスプレイを見ていたクロエが何かに気付いたように声を上げた。

 

「これ、何か薄っすらと青い何かに包まれてません?」

 

皆ディスプレイを覗き込んだ。

 

「確かに何かあるな…」

 

シエンがそれに同意した。

 

「ちょっと調べますね」

 

こよりがキーボードを再度叩き、調査しようする。

すると獅白ぼたんがガサゴソと何か大きい筒を取り出した。

 

「時間も無いんだからそんなまどろっこしいことするより直接確かめたら良いんだよ」

 

「は…?」

 

いや、筒ではない。それはアクション映画とかでよくみるやつだった。

彼女はそれを肩に担ぐ。

 

「ちょちょちょちょ!!!???」

 

「ファイア!!」

 

皆が慌てふためく中、獅白ぼたんはロケットランチャーをぶっぱなした。

 

「ふぁぁぁ!!!??」

 

「いきなりぶっ放す馬鹿がどこにいるんだよ!!??」

 

水無瀬燐央はもろに発射音を聞いたのかじたばたと転げまわり、緋崎ガンマは文句を叫んだ。

その様子をみて獅白ぼたんはツボに入ったのかあっはっはとゲラ笑いをしている。

 

「ごめんごめん、で結果はどうだった?」

 

獅白ぼたんはこよりにミサイルの行方がどうなったか聞く。

画面から顔を上げたこよりは状況を説明し始めた。

 

「バッチリ観測できましたよ、調べる必要もなかったです。 …まあ、やり方はかなり無理やりでしたけど確かにこっちの方が早かったです」

 

「でしょー」

 

「…おもむろにミサイルをぶっ放すとか怖すぎるにぇ」

 

「何か言った?」

 

「いえ、何もありません!!」

 

さくらみこは直立不動で返答した。

 

「それで観測した結果なんですが、結論から言うと普通に攻撃を加えてもあの隕石は壊せません」

 

「な」

 

「え!?」

 

隕石は壊せない、その報告は全員にとって驚くべきものだった。

 

「『普通』ならって今言ったでしょ、皆落ち着いて」

 

ミオがそう呼びかける。

こよりが説明を続けた。

 

「まず、あの隕石を包み込んでいる青いもの、あれは「星歌」の魔力です。バリアのように展開していて普通に攻撃してもまず隕石にダメージは入りません。恐らく攻撃を当て続ければ魔力切れを待って突破することは可能ですが、今のこの状況で悠長に時間はかけれないので不可能です」

 

「なんつー面倒なものを…」

 

シエンがそう吐き捨てるように呟く。

 

「でも、その口ぶりからして何か対応策があるんですよね?」

 

フブキがこよりにそう確認し、こよりは頷いた。

 

「はい。目には目を、歯には歯を、「星歌」には「星歌」を。ということで「星歌」の魔力であればあのバリアに干渉することが出来るので突破することが可能なはずです」

 

こよりの説明に皆、カズマとすいせいを見た。

 

「アンコールだってさ、どうだ?」

 

「誰にモノ言ってるのよ、楽勝よ」

 

カズマはそう言うすいせいの様子を見る。

すいせいは何も無いように振舞っているが、最初のライブにカズマとの契約ときて最後にあの歌だ、相当消耗しているに決まっている。

まだ歌えるのか、そう疑問に思うがそれはやめた。

目が言ってるのだ「まだ歌わせろ」と。

 

すいせいはカズマの様子を見る。

カズマは問題ないと立っているが、その体は傷だらけ、血もいたるところに付いている。

1ヵ月近い眠りから起こされたと思ったら30階近い階段を敵を倒しながら登り、最後にはあの戦いだ。

まだ戦えるか、そう疑問に思うがそれはやめた。

目が言っている「どこまでも付き合う」と。

 

二人は顔を見合わせ、笑みを浮かべる。

笑え、辛い時ほど、苦しい時ほど。

 

 

 

 

 

 

「お前ら!! 準備は良いな!!」

 

ラプラスがそう叫び、5人は返事を返した。

 

「おーけーでござる!」

 

いろはは納刀した刀を持ち返事をする。

 

「はい!」

 

フブキはその体より大きい蒼い太刀を構えた。

 

「ああ、いつでも出れる」

 

虎太郎はその頭部に赤い角を生やし、静かに頷く。

 

「問題なし!」

 

シエンは残り弾数を確認した。

 

「んぐっ…。よし、俺も準備完了だ」

 

応急処置で貰ったこよりの試験管回復薬を飲み干し、口元を拭うカズマ。

まだ体に傷は残っているがそれでも少しはマシになったようだ。

 

全員の準備が完了したことを確認するとラプラスは頷いた。

 

「よし、これから吾輩の力でお前らをあの隕石に跳ばす」

 

ラプラスの言葉を引きついでこよりがディスプレイから目を離さずに話す。

 

「後の流れはさっき説明した通りにお願いします。 露払いは地上組に任せて遠慮なくぶっ壊してきてください!」

 

こよりはサムズアップした。

 

「あ、せっかくなら何か掛け声でもどうですか、カズマ君」

 

え、俺?とカズマは自分を指さし、周りを見渡すと皆頷くばかり。

 

「この一連の騒動はさ、桐生会だったり星歌だったりと色々あったが、結局元を正せばカズマが発端になって巻き起こったんだぜ? なら最後の締めはオマエしかいないだろ」

 

シエンはそう言い、カズマの肩を叩いた。すいせいも異論無いと頷く。

 

「…なら、まあ最後ぐらいは景気よく行きますか」

 

カズマは息を吸い込み一言。

 

「勝つぞ!!」

 

 

 

 

最初はまず、さくらみこ。

 

「ぼくらが育てた大きな木は ほら」

 

サクラの木にまた花が灯る。

 

「こんなにも 陽だまりのような場所になったよ」

 

会場に桜が満ちる。

それは大きな力となった。

 

「アワーツリー」

 

その力はそのまま、すいせいに流れこむ。

 

「ありがとう、みこち」

 

さくらみこから受け取った力はそのまま形となる。

 

すいせいの着ていた衣装が光に包まれる。

髪は一本に結ばれ、ポニーテールに、青と白を基調とした衣装は一転して黒を基調としたものに変わった。

 

マイクを掲げ星を指さす。

 

「さあ、アンコール! 行くよ!!」

 

軽快な伴奏が流れ始め、魔力が集まり始めた。

 

「ルイ、沙花叉」

 

ラプラスは両手広げ、二人を呼ぶ。

二人は頷き、それぞれラプラスの左右の手に自らの手を重ねた。

 

「制約を提示『是は、私欲のための戦いではない』 よし、いけるわね」

 

ルイがそう言い、その手に魔力が宿る。

 

「制約を提示『是は、誰かを守るための戦いである』 こっちも通った! いけるよ、ラプラス!!」

 

クロヱも同じく、その手に魔力が宿る。

 

二人の魔力はラプラスの手を通して、ラプラスの両手に付いている枷に流れた。

ガチャ、と音を立ててラプラスの両手に付いていた枷が落ちた。

瞬間、ラプラスから凄まじい奔流の魔力が立ち上がる。

それはラプラスが5つの枷によって封印されていた魔力。

普段なら解放されることはないが、制約の提示と特定の魔力一定量注ぎ込むことで解放することが可能になる。

今回は既に一つは解除済み、そしてルイとクロヱによる制約の提示と魔力により二つ、合計で三つの枷を開放することで得た魔力。

使用用途と時間の制限があるがラプラスの役割を果たすのには十二分なもの。

 

ラプラスは魔力の感触を確かめるように腕を動かすとよし、と頷いた。

 

「許された時間も丁度ってぐらいだな」

 

ラプラスは両手で大きく回し、宙に一つの魔法陣を完成させた。

 

「準備完了! カズマ!! このまま魔法陣に飛び込め!」

 

「おう!!」

 

一番手はカズマ。

走りだしたカズマはそのまま魔法陣に飛び込む。

一瞬の溜めの後、魔法陣が回転。

 

「ぶちかましてこい!!!」

 

ラプラスは腕を振り上げ、カズマを射出した。

 

 

 

 

凄まじい速度で射出されるカズマ。

その身は紫色の魔力に包まれ守られているため射出の衝撃を受けることはない。

 

眼前に見えるのは迫りくる巨大な彗星。

カズマの役目はあの星歌のシールドを砕くこと。

こよりの説明を思い出す。

 

『作戦は単純です。カズマ君がまずシールドを破壊し、その後に大規模な攻撃を行うことの出来る人で彗星本体を破壊、地上に落ちてくるであろう細かな欠片は地上で待機してる人で処理します。ラプちゃんが飛ばせるのは5人まで。1人はカズマ君で確定なので後は大規模攻撃の行うことの出来る人が4人必要です』

 

そうして選出されたのが風真いろは、白上フブキ、荒川虎太郎、影山シエンの4人。

彼、彼女らはカズマがシールドを破壊したタイミングでカズマと同じく射出される手はずになっている。

つまり。

 

「ここで俺が成功させねえと終わりって訳だ!!」

 

テンション上がって来たなぁ!! とカズマは笑う。

 

『変わらず在っていたい きらめきのヴェールを』

 

カズマの所まですいせいの歌が届く。

青い爆発で更に速度を上げた。

 

『目元に箒星 描いて』

 

再び流星と成る。

 

「行くぞぉ!!!」

 

『瞬いた ソワレ 今だ!!』

 

彗星とついに接触する。

 

「うぉおおおおらああああ!!」

 

数多の爆発で押し出されたその拳はシールドを叩く。

 

「もっと、もっとだ!!」

 

更に爆発が響く。

すいせいの歌う曲は既にサビに入っており、膨大な魔力も送られてきている。

だが。

 

彗星は止まらない。

 

「(質量が圧倒的すぎる…ッ!!)」

 

それは単純な力比べ。

一点で攻撃しているカズマに対して、彗星はその大きな質量でもってそれを押し返す。

 

『朝未だき空を跨ぐ 栞を挟んだら』

 

「それでも…!!」

 

『行かなくちゃ』

 

 

一際大きな爆発がカズマを飲み込む。

 

 

 

 

 

地上では皆固唾を飲んで行方を見守っていた。

 

「拮抗してる、のか」

 

シエンが絞り出すように口を開く。

その視線の先にはディスプレイに映る彗星とカズマの様子。

 

「いや、ダメだ。押されてる」

 

獅白ぼたんはそう冷静に言う。

 

「そんな…っ」

 

フブキが口を押さえ、悲嘆な声を上げる。

 

「あと、一歩。あともう一歩の火力があれば、ひっくり返るはずです…!」

 

こよりがキーボードを叩きながらそう言う。

それは何もただの出まかせではない、計算で導き出した回答。

 

「すいちゃんの歌次第…ということでござるか」

 

いろはの声に皆ドームの中心で歌うすいせいを見る。

すいせいの歌がそのままカズマの力になる、故に見守るしか出来ない。

 

 

 

 

 

 

すいせいは歌う。

カズマが勝てるように、あの彗星を砕けるように。

だが、すいせいは内心で何かの違和感を感じ取っていた。

 

「(…ダメだ、このままじゃ押し切られる!!)」

 

だが、それを気にするより先にカズマが押され始める。

契約したことで見えていなくてもカズマの状況は感覚で分かるようになっていた。

 

一番が終わる。

そのタイミングで大きな爆発がカズマごと巻き起こる。

 

「(カズマ…!!)」

 

皆が見ている、表情に出す訳にはいかない。

だが、鈍ってしまった。

二番の伴奏に入り、歌おうと口を開くが上手く声が出なかった。

 

「(まずい、まずい、まずいまずいまずいまずい!!!)」

 

伴奏が止まってしまった。

焦りがすいせいを支配する。

 

「(落ち着け、落ち着け、落ち着け!!!!!!!!!)」

 

自身の早くなる心臓の鼓動と呼吸音が嫌に耳に付く。

 

『すいせい』

 

カズマの声がすいせいに響いた。

勿論近くにいるのではない、念話だ。

 

『カズマ…!』

 

すいせいにカズマの状況が伝わるように、カズマにもすいせいの状況が伝わっていたのだ。

それが逆に良かった。

カズマの声を聞いたすいせいは幾分か落ち着きを取り戻せた。

 

だが、カズマがすいせいに念話をしたのは心配したのと同時に伝えたいことがあったから。

カズマは言葉を紡ぐ。

 

『なあ、すいせい。俺がお前に憧れたのは「お前の歌っている姿」が綺麗だったから、カッコよかったから憧れた』

 

すいせいはカズマの言葉を聞く。

 

『だからさ、またあの時みたいに「誰かの為」じゃなくて「自分の為に」歌ってくれよ。俺はその姿に憧れたんだから』

 

ああ、全く。

 

『…アンタのおかげで思い出すなんて生意気』

 

でも。

 

『ありがと』

 

その顔にもう迷いも違和感も無かった。

 

「(ああ、そうだ。「誰かの為」じゃない、ただ)」

 

「歌いたいから!!」

 

 

 

 

 

『一晩じゃ語りつくせない悲劇も』

 

歌が聞こえる。

 

『一晩中 語り明かせたら 喜劇になってゆく』

 

それは大きな力となる。

 

「Star tail」

 

『聞かせてよ』

 

自然と口ずさんだ。

 

「Star tail」

 

『一筋の』

 

「Star tail」

 

星歌の力が流れ込む。

 

『瞬いた』

 

カズマの髪がすいせいと同じ、青色に染まった。

 

「『ソワレ!!』」

 

拳がシールドに突き刺さる。

 

初めて感じた手応え。

今だ! とカズマは絶え間なく爆破を引き起こす。

 

「こいつで、どうだぁぁぁ!!!」

 

ヒビが入り、

ソレは放射線状に伝播した。

そしてついに。

 

 

シールドを砕いた。

 

 

『朝未だき空を跨ぐ 栞を挟んだら』

 

その拳の勢いは止まらない。

 

「うぉおおおらあああああ!!!」

 

流星は彗星を貫いた。

 

『約束だ ソワレ 僕が眠るまでは』

 

地上から4つの光が放たれる。

 

『何度でも また明日』

 

カズマはそれを見届けると瞳を閉じる。

そしてそのまま重量に従い、落下した。

 

「拝啓」

 

ソワレ。

君へ読み継がれる、僕たちの物語。

 

 

 

 

 

 

若頭は彗星が砕けるのを見ていた。

一本の流星が彗星を貫いた後、4本の流星が彗星を砕くその様子を。

 

「は、はは。 ああチクショウ、綺麗だ」

 

降り注ぐ欠片はまるで花火のよう。

 

若頭は手を伸ばす。

 

「…ただ、俺は、そこに行きたかったんだ。貴方の見ていた景色を一緒に見たかっただけなんだ」

 

一際大きな彗星の欠片が若頭に迫る。

だが、若頭は避ける力が無かった、いや、言い換えれば避ける気が無かった。

地上の人らは他の欠片の対処で若頭に迫る欠片に気付かない。

 

ああ、ここが終焉か。と彼は受け入れた。

 

「なーに湿気たツラしてるんだヨ、もっとシャキっとしろ、シャキッと」

 

その大きな拳は迫りくる欠片をいとも容易く粉砕した。

 

「え……」

 

最初は理解できなかった。

だが、その姿を認識すると否が応でも理解せざるを得なかった。

 

「かい、ちょう」

 

そこにいたのは桐生会、元会長の桐生ココ。

 

 

「お、れ。おれ、ただ、アンタの横に行きたかっただけなんだ。なのに、気付いたら居なくなってて、その場所も無くなってて。だから、だから、俺…」

 

「わーってるヨ、全部」

 

そう言うと会長は若頭の頭をガシガシと乱暴に撫でた。

 

「やった事は決して褒められたモンじゃなイし、そんな方法で桐生会は絶対に復活なんてしない」

 

「……」

 

「でも、頑張ったよ」

 

「…がん、ばった?」

 

「ああ、頑張ったよオマエは。元桐生会の中で誰より。1人で桐生会を再建しようとして、ここまでデカくして強くなってサ。ま、1人ってのが良くなかったナ」

 

「…ああ、そうか。そうか頑張ったのか、俺。そう、か」

 

若頭の目からは涙がこぼれた。

 

 

 

 

 

「カズマ!! おい、起きろって! なあ!!」

 

地上に落ちてきたカズマはさくらみこの結界に受け止められ、ゆっくりと地面に下ろされた。

だが、その目は閉じたまま。

すいせいは目に涙を浮かべ、呼びかける。

 

「カズマ!!!!」

 

「……ったく、聞こえてる、っての」

 

その声は届いた。

呆れたようにカズマは目を開ける。

 

「ちょっとぐらい寝させてくれよ」

 

「…私を心配させるなんて生意気」

 

二人は拳を合わせ、笑った。

 

 

 

かくして、彗星は砕かれ。

ライブは終わった。

 

 




次回、最終話です。
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