迷い人よ、ようこそ。   作:みなたか

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2022年 11月13日 修正と加筆


第六話

俺は森の中を走る。

 

「…はっ、…はっ」

 

修行が始まって約2週間、最初と比べて体力が付いてきたのか息切れするまでが長くなってきたのを感じる。

 

「ほいさ!!」

 

木々の間から二つの斬撃が飛んでくる。

 

「ほんとっ、なんでっ、斬撃、飛ぶんですか!?」

 

悪態を吐きながら俺は一つ目を避け、もう一つを木刀を振り抜き叩きつけてその勢いを殺し消滅させる。

普通の木刀なら今のでお釈迦になるのだが、この木刀はかつて百鬼さんが使っていた木刀、真剣を受け止めれるぐらいの強度がある。

後ろ目で避けた斬撃が通った所を見ると、そこに立っていた木々は幹の半分ぐらいが切り裂かれていた。

 

「…それに当たったらケガじゃ済まないし」

「弱かったら、修行の意味ないでしょー?」

 

その言葉が聞こえたと同時に俺は横っ腹に衝撃を受けて吹き飛ばされる。

 

「ぐへぇ!!」

 

そのまま木の幹に叩きつけられた。

 

「それに痛みを伴う修行が強くなるのに一番手っ取り早いんだよ」

 

俺はすぐさま前に転がる。

すると俺の後ろにあった木が伐り飛ばされた。

 

「…はぁはぁ」

 

木刀を支えに俺は立ち上がる。

本当に容赦が無い。

 

「…うーん」

 

すると百鬼さんが二本の刀を鞘に戻し近づいてきた。

 

「…?」

「なーんか、違うんだよね」

「…違う、とは?」

 

俺は痛みに耐えながら息を整える。

 

「確かに2週間で動きは良くなったけどさ、コタロー逃げてばっかりじゃん」

「…え?」

「いや、癖になってるのかな、攻撃よりも逃げって感じで、多分。ま、分かんないけど」

 

百鬼さんの言葉を受けた俺は正直ショックを受けた。

自分でも気づいていなかったことだ。

逃げないって決めてたのにこんな…

 

「…すんません、俺」

「大丈夫大丈夫、やり方はあるから荒療治になるけど、余に任せて」

 

この人に任せたら碌なことにならないような気がするのはきっと気のせいじゃない。

 

「さて、それじゃあ行くよ」

 

その声が聞こえてた時には既に懐に潜り込まれて鞘に入ったままの刀で叩きつけられた。

 

「ぐぼぁ!?」

「続けて行くよー」

 

え? 今までだと良いのが入ったら一旦止めて…

 

「セァ!!」

「あぐっ!!」

 

今度は顔面、俺はたまらず後ろに引こうと足を一歩下がるが。

 

「ふん!!」

 

回り込まれた百鬼さんに今度は背中を打たれる。

 

「ぐぁ!!」

 

更に百鬼さんの攻撃はスピードが上がった。

顔、足、腕、至る所に刀を叩きつけれられる。

何も出来ずにボコられる。

2週間、ちょっと体力付いただけで何を調子に乗っていたんだ。

手も足も出ない。

 

「てい!!」

 

顎下から打ち上げられるように刀を叩きつけられた。

軽く中を舞う体。

全身が痛い。

 

その瞬間俺の脳内にこの世界に来た時の記憶が次々と溢れ出した。

初めて会った白上さんと大神さん、マスターに出会い、バーで働き始めた思い出etc…

 

それが走馬灯だと気づくのに時間はかからなかった。

 

そして、ある記憶が溢れる。

あの夜、何もできずに白上さんを連れ去られたことを、あの時の白上さんの顔を。

 

『一番大事なことを、成し遂げたいことを胸の奥底に添えるんだ』

 

夢での親父の言葉も思い出される。

 

 

現実に引き戻される。

だが俺の体は倒れることなく、そして木刀を低く、構えた。

何故かはわからないがそうすべきだと俺の体がそう訴えていた。

百鬼さんがニヤリと笑ったような気がしたが今はどうでも良い。

 

百鬼さんの刀が振り下ろされる。

 

体が勝手に動いた。

 

振り下ろされる刀に添わせる形で木刀を振るい、弾く。

そして木刀の勢いを殺さずに胴体ががら空きの百鬼さんに叩きつける。

取った。

 

そう思った。

思ってしまった。

 

「最後油断しちゃったでしょー、「取った!!」って」

 

俺の木刀は百鬼さんの体を叩く前にもう一つの刀で止められていた。

 

「でも、うん。良い、その感覚と動きを忘れないようにしようね」

 

俺は力が抜け、座り込んでしまった。

同時に体中から痛みを感じる。

 

「…一体何が」

 

あの時の動き、あの感覚何が起こったのか。

 

「あの時のコタローはね、余に滅多打ちにされて、いわば火事場の馬鹿力、極限状態になってたのよ」

「成、程?」

「まあ正直一発で出来るとは思ってなかった余」

「えぇ…、もし一発で出来てなかったら」

「え? その時は出来るようになるまでやってたよ」

「鬼か、アンタは…」

「鬼ですー、ま、取りあえずあの時の感覚は忘れないように、そうすれば逃げる癖も自然と無くなっていくと思うよ。それにしても一発で出来たし、コタローは才能あるよ」

「本当ですか!?」

「うん、余の10分の1ぐらい」

「…それってどうなのよ」

 

取りあえず体中が痛いのでちょっと休みたいのですが…

 

「さて、その感覚を忘れないためにも次やるよー」

 

マジ?

 

 

 

 

コタローの修行を付けてから丁度1ヵ月になった。

 

余はコタローの死角から斬撃を飛ばす。

 

「うぉっと」

 

彼はそう言いながらも最小限の動きで避ける。

コタローが避けるのは分かっていたのでそれに合わせて近距離戦に持ち込む。

 

「ちょいさー!!」

 

二本の刀で放つ斬撃、だがそれも彼には当たらない。

コタローはそのまま木刀を振りかぶり、当ててくる。

勿論それは刀で受け止めるが。

 

成長のスピードが速い、そう思った。

修行を初めて1ヵ月でこれだ。最初の二週間はそれこそ逃げ癖があり、あまり成長を感じなかったが今は違う。あの時に何かを掴んだのか逃げ癖もなくなり、遂には反撃してくるようにもなった。

十分すぎる成果だ、一ヶ月でここまで来れるとは思っていなかった。

 

思わず口角が上がるのが分かる。

 

「ほいほいほい!!」

 

コタローの木刀を返し、こっちから反撃を加えようとさらに斬撃を放つ。

今度は避けることはなく、コタローは木刀で受け止める。

 

最初は乗り気じゃなかった。

それこそまつりちゃんに言われて仕方なくやっていたという感じだ。

 

だが、今は。

 

「セァ!!」

「てぃ!!」

 

彼の成長が楽しみになっている。

 

余とコタローは距離を取るためにジャンプし後ろに下がる。

これなら次の段階に行っても十分問題無い。

 

手に持っていた二つの刀を腰の鞘に戻す。

 

「よし上々。それじゃあ、そろそろ次の段階にいこうか」

「次の、段階?」

 

コタローは首を傾げる。

 

「そう、今までは基礎能力の向上を軸に置いていたけどそれからワンランクアップするよ」

「おお、それで何を」

「うーん、と、そろそろ来るはずだからちょっと待って」

 

するとこの結界内に二人、入ってきたのが分かった。

一歩遅れてコタローも何か気配を感じ取ったのか、入ってきた方を見る。

魔力を感じ取ったのかな、良いね、十分成長してる。

 

「さて、来たことだし、迎えに行こう」

 

 

 

 

百鬼さんが次の段階に進むと言ってたら結界内に誰かが入ってきたのが分かったので百鬼さんと一緒に迎えに行くことになった。

…なんで俺、結界内に誰か入ってきたのか分かったんだ?

これも修行の成果ってやつか?

二人で反応があった所に行くと二人、見知った人物がいた。

 

「あやめせんぱーい!!」

「どうもー!!」

「やっほー、ノエルちゃんにフレアちゃん、久しぶりー!!」

「お久しぶりですー」

「騎士団を見てもらって以来ですね」

「わざわざ来てくれてありがとう!!」

「いえいえ!! あやめ先輩の為なら例え火の中水の中、どこでも参上しますよ」

「まあノエルはこう言ってますが、私も同じ気持ちですよ」

 

そこにいたのは褐色エルフさんの不知火フレアさんに白銀騎士団団長の白銀ノエルさんだ。

 

「今日から修行相手にこのお二人、白銀ノエルちゃんと、不知火フレアちゃんにも加わってもらいます」

「え!?」

 

普通に驚いてしまった。

だって二人は騎士団の騎士、普段は忙しいはずなのに…

 

「久しぶりだね、荒川君」

「聞いたよー、フブちゃんを助けるために修行中だって」

 

どうやら事情は知ってくれているようだった。

 

「お、お久しぶりです、でも良いんですか? 騎士団は…」

「大丈夫大丈夫、上の人、姫様には許可貰ってるから」

「そうそう、『フブちゃが死んじゃうなんて許せないのら!!』って、でも色々と訳があって動けるのが私とノエルしかいないのよ。それにまつり先輩とあやめ先輩から色々と事情を聞いちゃったしね」

「そうそう、こりゃ助けないわけにはいかないってことで私とフレアもこの修行を手伝うことにしたのよ」

 

…正直、とても嬉しい。

俺の修行の助けにわざわざ来てもらって。

でもただ、まつりさんから事情は聞いた、うーん、なんか嫌な予感がするんだけど。

 

「ありがとうございます、マジで助かります。…ちなみにまつりさんからは何て聞いたんですか?」

 

二人は顔を見合わせるとニヤニヤとしながら俺を見てきた。

 

「え、なんですか…」

「いやー、まさかフブちゃんにも春が来たかーって」

「うんうん、本当にめでたいねぇ」

「…いや、待ってください、待て待て、もしかして勘違いしてらっしゃる?」

「え? 好きなんでしょ? フブちゃんのこと」

「だから助けるために死ぬ気で修行してるって」

「そうだったのかコタロー」

 

百鬼さんまで何か変なことを言い始めた。

 

「いやいやいや、違いますって、ただ俺は友達として…」

 

そう、助けを求める顔をしてたから助ける。ただそれだけ、それだけだった、はずだ。

いや、待て、俺は何を焦っている。

そもそも、何故俺はこんな事で悩んで… いや、これも全て夏色まつりとかいう脳内ピンクメンヘラ女が訳の分からない説明をしたから、うん。

 

「…あんの、アマァ!」

 

結局俺はまつりさんに殺意を高めることにした。

 

「何言ってるのコタロー、さっさと修行再開するよー」

「あ、はい」

「さて、修行第二段階の内容だけど、魔力操作を覚えてもらうよ」

「魔力操作、ですか」

 

この世界には魔力と呼ばれる摩訶不思議パワー、ゲームで言うところのMPみたいな概念がある。

一応知識としては知っていたが詳しくは知らない。

 

「これを学べば身体能力の大幅向上だったり、余がやってた飛ぶ斬撃とかできるようになるよ」

「おお!!」

「といってもこの一ヶ月でコタローは気が付かないうちに魔力使ってたりするんだけどね」

「え?」

「確か荒川君って迷い人だよね?」

 

驚いていると白銀さんが質問をしてきた。

 

「はい、そうですけど…」

「迷い人ってね、殆どの人が魔力の扱いに長けてたりするんだよ」

「え、そうなんですか?」

「え、そうなの?」

 

何故か百鬼さんも一緒に驚いていた。

 

「あやめ先輩は驚かないでください… まあ元々魔力の扱いに才能のある人が迷い人に成るのか、迷い人になったから魔力の扱いに長けるのか、理由は分からないんだけど」

 

でも、それは今の俺にとっては朗報だ。

 

「多分、今までも知らずに使ってたりしたんじゃないかな。例えばそれこそ命の危機に瀕した時とか」

 

ふと、俺はこの世界に来た時のことを思い出した。

空中に飛ばされて、かなりの距離から水面に叩きつけられたような…

あの時は何も思わなかったが今思えばおかしな話だ。

普通に考えたら死んでいてもおかしくない。

後、二週間前の百鬼さんのアレ、あれも相当な命の危機だったはずだがあの時も使っていたのか?

 

「ちなみに二週間前のあの時もちょっと魔力使ってたぞ」

「今言います!?」

 

ということで魔力を使った事があるのは確定っぽい。

 

「ま、ぶっちゃけ余は魔力関係はほぼ勘で使ってるから教えられない」

「ダメじゃないですか…」

「最後まで聞いて―、だからお二人を呼びました」

「騎士団でも魔力操作は基礎中の基礎、教えたりしてるからね」

「じゃあ、早速やってみようか」

 

不知火さんが俺の背中に手を置いた。

 

「今から魔力を流すからそれを感じ取る、それが最初の一歩」

「了解っす」

 

すると背中が何かじんわりと暖かいような感覚が襲い、それが体の中を通るのが分かった。

 

「お? これが魔力ですか」

「え、今流したばかりなのにもう分かったの?初めてならもうちょいかかると思うんだけど」

「多分…」

 

俺は今の感覚を意識しながら試しに右腕にそれを集中させてみた。

 

「こんな感じで…」

 

すると右の手の平が青白く淡く光った。

 

「マジ?」

「嘘!?」

 

白銀さんと不知火さんが驚いている、多分、これが魔力という物なのだろう。

 

「始めてでここまで扱えるのなら十分すぎるよ、色々と過程を飛ばせそう」

 

その後、俺は不知火さんと白銀さんに魔力の使い方の説明を受けた。

呪文を唱えて魔術を使う、とかも出来るそうだが、取りあえず今は身体能力の強化と武器に纏わせるというのに重点を置いて行うことになった。

 

「よし、コタローが魔術操作の基本を覚えたということでサバイバルを再開するよ」

 

この鬼師匠はマジで手加減というものを知らないらしい。

 

「ノエルちゃんとフレアちゃんもよろしくー」

「はーい」

「いつもの、ですね」

 

え、もしかして…

 

「今から三人相手にサバイバルをして貰うよ」

「は?」

 

白銀さんはメイスを取り出す。

不知火さんはライフル銃のようなものを取り出した。

 

「え、銃?」

「何か文句でもある?」

「い、いえ、イメージと違って…」

「はぁ、エルフだからって弓を使うとか思ってたんでしょ。違うよー、だって銃の方が楽じゃん。矢撃つより楽だし、魔法だって弾に込めればそれだけで使える。うん、銃サイコー!!」

 

ということでこの日から刀に加えてメイスと銃弾が俺に襲い掛かってくるようになった。

 

 

 

 

 白銀さんと不知火さんが修行に参加してから更に1ヵ月、トータルで現在の修行期間は2ヶ月。相も変わらず吹き飛ばされ、地面を転がり、銃弾が体を掠めて、メイスを叩きつけられて吹き飛ばされて、偶に吐いてを繰り返している。

 あ、ちなみに白銀さんと不知火さんはずっといるって訳ではなく騎士団の方の仕事が空いた時間に来てくれるという感じだ。

 

修行も3ヶ月目、最後の月だということで修行も最終段階に入り、新しい修行の説明を受けた後、新しいメンバーがこの修行を手伝ってくれるということで俺は百鬼さんに連れられその人たちと挨拶を交わした。

 

「お! オマエさんがロベっさんが言ってたやつか、よろしくな」

「ちょっと、オウガ、挨拶もなしにビックリしてるって」

「はい、という訳でまつりちゃんとその友人の、夕刻ロベルさん? だっけ、からの推薦で追加でさらに二人来てもらいました、はい拍手!!」

 

百鬼さんは嬉しそうに拍手している。

 

「俺は荒咬オウガ、元軍人だ、ロベっさんとまつりさんに言われて来てやったぜ」

 

一人は頭の左から一本角が見え、眼帯をしてる褐色のマッチョのイケメン。

 

「僕は岸堂天真、見ての通り騎士だよ。まあ、僕は白銀さんに書類を持ってきただけなんだけど、なんか巻き込まれちゃって… あ、勿論事情は聞いたし僕も協力するからね」

 

もう一人は乙女ゲーから出てきたのかってぐらい絵に書いたような金髪イケメンだった。

 

「にしても、聞いたぜお前」

 

荒咬さんが近寄って肩を組んできた。

 

「惚れた女を助けるために死ぬ気で修行してるんだってな、良いね、最高だ。そういうの大好きだぜ俺は」

「あはは、ありがとうございます」

 

なんというか皆、俺が白上さんを好きなのは決定事項らしい。

 

「本当ならもう一人連れて来たかったんだがなぁ、全く、何処ほっつき歩いてるんだか、あのジャッカルめ」

「ジャッカル?」

「ああ、いや、すまんな、こっちの話だ」

「さて、修行再開するよー」

 

挨拶もそこそこに百鬼さんは修行を再開させた。

 

 

 

 

最初はロベっさんとまつりさんに言われてただの興味本位で来てみただけだったんだが。

 

俺は拳のラッシュを荒川虎太郎に向けて放つ。

だが、その拳は全て躱されるか、弾かれる。

その上で反撃も打ってきた。

 

その木刀の反撃の斬撃を拳で弾き返し、荒川虎太郎をよく見る。

隙の無い構えで木刀を持ち、俺を睨め付ける。

 

これが本当に武器を握って2ヶ月の人間か?

普通にあり得ない成長速度だ。

 

「全く、末恐ろしいね」

 

何が彼をここまで駆り立てるのか、恐らく白上のお嬢様を助けるってのが理由なのだろうが、でもそれだけで短期間でここまで至るか?

 

「一つ聞いても良いか?」

「あ、はいどうぞ」

「何で白上フブキを助けようとする、惚れているからか?」

 

さて、どうでる。

 

「いや、あの惚れている云々はまつりさんが勝手に言ってるだけですからね…」

「そうなのか?」

「そうですよ、ったくあのメンヘラ女め…」

「なら猶更気になるな、なんでここまで頑張る?」

 

うーん、と少し荒川虎太郎は口を開いた。

 

「「助けを求める顔をしてたから」ですかね」

「…え、それだけか?」

「はい」

 

それが何かと彼は至極、当たり前のようにそう言った。

 

助けを求められたから助ける、その為にここまで来たのか?

おいおい、マジかよコイツは…

まだ好きだからとかの理由の方が納得できた、だがこれは違うだろ。

 

「ははっ、良いね、最高だ、最高に狂ってるよ。虎太郎」

 

これは最高に楽しめそうだ。

 

 

 

 

 

荒咬さんと岸堂さんが修行に参加してさらに一ヶ月、つまり修行が始まってから3ヶ月が経った。

そして今日は修行最終日、森の結界から出て神社の前で俺はこの三か月使っていた木刀を持って息を切らし、百鬼さんは刀を持って向かい合っていた。そしてそれを見守るように、白銀さん、不知火さん、荒噛さん、岸堂さん、そしてまつりさんが見ていた。

 

「うん、こんな所かな」

「はぁ…はぁ… って、ことは」

 

百鬼さんが構えていた刀を下ろした。

 

「うん、修行終わりー、よく頑張ったね」

「お、終わったぁああああ!!!」

 

百鬼さんの言葉を聞いて俺はその場に座り込んだ。

見守ってくれていた皆も来てくれた。

 

「お疲れ様」

 

まつりさんが笑顔でそう言い、手を差し出した。俺はその手を取って立ち上がろうとするが、疲労からか足元がふらついた。

 

「おっと」

 

思わずまつりさんに寄りかかってしまった。

 

「ごめん」

「良いよ、いっぱい頑張ったんだしね、最初よりもめっちゃ筋肉増えたよ」

 

なんだよ、まつりさんやっぱり優しい人じゃないか。

 

「お、そうなんだ、自分ではあんまり分かんないや」

「あ、でもちょっと匂うのでやっぱり離れてもらっても良いかな」

「ちょっとでも優しいと思った俺の純情を返せ」

 

いつまでも支えてもらう訳にはいかないのでまつりさんから離れた。

何はともあれこれで修行が終了した。

 

「まつりさん、昇華祭まであと何日?」

「あと1日、明日だね」

「成程、時間はあるね」

「何かするの?」

「腹ごしらえ」

 

 

 

 街に戻ってきた俺たちとプラス百鬼さん、全員でそのままBAR ROBELに直行した。

 

「マスター、おかわり!!!」

「いや、ほんとどんだけ食べんねん、ちょっと待ってな!!」

「あ、フレア、このピザ美味しいよ」

「ちょっと、オウガ、僕のミートボール食べないでよ!!」

「あ、このエビフライおいひー」

「ちょっとアルさーん!! ピザ焼けた!?」

 

 通常なら営業している時間帯のBAR ROBEL、1ヵ月ぶりに戻った俺をマスターは快く迎えてくれて、かつ、今日は貸し切りにしてくれて、明日は決戦だからとピザ屋のアルランディスさんも呼んで大量の料理をふるまってくれることになった。

 

「うめうめ」

 

一心不乱にひたすら飯を食べる俺。

その横にまつりさんが座った。

 

「めっちゃ食べるじゃん」

「あむあむ、そりゃね… 修行中はまともなの食べれてなかったから…」

「え、そうなの?」

「うん、カエルって意外と美味しいんだよ?」

「嫌だ聞きたくない」

 

嫌がっているまつりさんを傍目に俺は目の前にあるハンバーグを食べ始めた。

 

「あ、そのハンバーグまつりも手伝ったんだよ」

「え、そうなの」

「美味しい?」

「うん、美味しい」

「むふふ、でしょー」

 

まつりさんは自慢げに胸を張る。

ふと思い出した。

 

「あ、聞きたいんだけどさ」

「ん、何?」

「白銀さんとか荒咬さんに俺の事情なんて説明したんだよ」

「あ、えーと、それは」

 

すーっと目を逸らすまつりさん。

 

「おう、こっち向けよメンヘラ女、ん? なんで俺が白上さんのことが好きってことになってるんだ?」

「いや、えーっと、色々と誇張してたらつい口が勝手に…」

「お前、ホンマ」

「…ふーんだ、1ヶ月近くまつりをほったらかした虎太郎が悪いんだー」

 

何だ、つまり構ってもらえなくなって意地悪をしたと。

 

「小学生かお前は」

「うるさいわい!! まつりはほっとかれると死んじゃう生き物なんです!! ほら、もっと構って!!」

 

まあ、そんなこともありつつも、俺たちは賑やかな食事を堪能した。

 

 

 

その後、お腹一杯になった俺たちは飲み物を片手に一服していた。

アルランディスさんがまず口を開いた。

 

「それで、本題に入るんだけどさ」

「明日のことですか?」

「うん、そうそう」

「祭の本番は明日の夜中0時やね」

「そして白上神社の本堂である天守閣にてその昇華の儀式が行われると、一応騎士団の方でも警備の申請が来ていたので間違いないですね」

 

 そう答えるのはいつもはほんわかしている白銀さん、珍しく真面目だ。

 

「その巫女さんがどこにいるか分かれば良かったんだけど、そこまでは騎士団の方には知らされなかったんだ」

「それは大丈夫だろ、天真さん、結局儀式自体は0時に天守閣でやることが分かってるんだ」

「つまり巫女であるフブちゃんは0時に絶対天守閣に現れるってことですね」

「そゆこと、不知火さん、後付け加えるなら早すぎても駄目だ。0時前に着いた場合、下手したら白上のお嬢様が隠される可能性がある。早すぎず、遅すぎず、ジャスト0時にたどり着くのが一番良い」

 

つまり、後は俺が明日、0時に白上神社の天守閣にたどり着けばいい。

俺は改めて、皆の前に立った。

 

「えっと、改めてなんですど、この三ヶ月、いやこっちだと一ヶ月か、修行付けてくれてありがとうございます」

「急にどうしたんだコタロー」

 

頭を下げる俺に百鬼さんが聞いてきた。

 

「いや、今言っとかないと今後言う機会を無くしそうで」

「んだよ、まだ終わってないだろ」

「そうそう、お礼を言うのは明日、フブちゃんを助けて皆でここに戻ってきてから行ってほしいな」

「フレアなんか今のフラグっぽい気がするんだけど」

「あ、まつりも思った」

「ちょっとー!!」

 

不知火さんは白銀さんをぽかぽかと叩きじゃれ始めた。

 

「まあ、そういう訳だ。例を言うなら明日、皆笑顔の大団円の時に言ってくれや」

「荒咬さん…」

「あれれ、もしかしてまた泣きそう?」

 

まつりさんがそう煽ってくる。

 

「あはは、うん、実は割と泣きそう」

 

でも本当のことなので否定はしない、少し涙ぐみそうな瞳をこすり、改めて俺は頭を皆に下げた。

 

「ありがとうございます、皆の力、貸してください!!」

「はいよ」

「うん」

「もちろん」

「おっけー」

「いいよ」

「任せて」

「はい」

「任せろ」

 

皆の返事がとても頼もしくて、嬉しかった。

 

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