ヤマト三度、宇宙へ   作:ryoko22

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第10話 姿なき暗殺者

「α星の戦艦の位置は」

次元潜航艇ガルマンウルフ号の艦内でフラーケンはレーダー手に尋ねる。

「位置x15y21z30、距離2万宇宙km」

「よし、1500宇宙kmまで全艦ワープ。その後、次元空間に潜航、射程距離まで接近。」

フラーケンの緊張が、ハイニにはピリピリと伝わった。

 

「ねえ、先輩。今日の夕飯は何ですか?」

「何だ、土門。珍しいな、お前がそんなことを聞くなんて」

「いや、俺じゃなくて。揚羽がたまにはビーフシチューが食いたいなって、うるさいんですよ。」

「そうか。じゃ、明日の飯はビーフシチューにしてやろう」二人は食糧庫の備蓄を確認しながら笑った。

バース星での戦闘の後、宇宙は静かだった。決まり切った日常が続いていく。漆黒の闇の中、星々のきらめきが眩しいほどだ。しかし、生活班の二人にとって、外を眺められるのは、自由時間のみであった。

 

「キャプテン。ヤマト射程距離内に入りました。」とレーダー手

「よし、全艦亜空間魚雷、準備。」

「2号艦、発射準備完了、3号艦・・・」ハイニは、僚艦の状況を告げる。なぜ、亜空間魚雷の爆薬を半分にしなければならないのか。ハイニは心の中で舌打ちをした。いつも俺たちは、一発で敵を仕留めてきたのに「全艦、準備完了。」

「よし、1号艦から3号艦はヤマトの艦首、デスラー砲発射孔に、8号艦から10号艦はヤマトエンジン部分に魚雷集中攻撃。他艦はヤマト両舷と艦底部の突出部(第3艦橋)を狙え。亜空間魚雷、発射。」

次元空間に、無数の魚雷が航跡を引いた。ヤマトに向かって。

 

展望室に向かっていた、竜介と平田は激しい衝撃に床に叩きつけられた。他の隊員たちも転がっている。

「な、何が起きたんだ。土門。大丈夫か。」「大丈夫です。先輩」

コスモタイガーの隊員たちも機体から放り出された。

「隊長、ハッチが開きません。」「何だって、艦長室に報告しろ」

第一艦橋も、パニックに陥っていた。

「被害状況を報告せよ」進は放り出された座席に戻ると艦内に呼びかけた。

「第三艦橋半壊!」「波動エンジン噴射口、被弾。ワープ不可能。」「波動砲被弾。魚雷です。」

「太田。レーダーはどうなってるんだ。」相原が叫ぶ。

「レーダーに何も映ってないんだ」太田も叫び返した。

「故障か?」南部の問に「いや、どこも異常が無い。」真田が答えた。

「このままじゃ、嬲り殺しだ。古代。」

「くそぅ。敵はどこに居るんだ。」

 

「大丈夫ですか、平田先輩。」

「ちょっとねん挫しただけだ。急いで戻ろう、ここは危ない。」平田が答えたのと同時だった。

轟音とともに、その場の全員が吹き飛ばされた。

「ううっ。」竜介はようやく立ち上がり、辺りを見回した。コスモタイガーのパイロットが倒れている。「大丈夫か」抱き起すと、夥しい血があふれてきた。すでにこと切れている。

「平田さん」瓦礫の中に腕が出ている。「先輩。」引っ張ると腕だけがずるりと抜けた。「平田さん!!」

思わず瓦礫に取りつく。その時、警報が鳴っているのに初めて気がついた。「隔壁閉鎖」「隔壁閉鎖」

気圧が下がっている。シャッターが閉まる前に戻らねばならない。

「何をやっている、死にたいのか。」衛生兵が竜介の腕をつかんだ。

「先輩が」「もう、手遅れだ。」

衛生兵は竜介の襟首をつかんで引きずり出した。2人が隔壁のなかに入るのとシャッターが閉まるのがほぼ同時だった。呆然としている竜介の耳に艦内放送が聞こえてきた。

「土門隊員。至急第一艦橋へ」

 

「全弾命中。ヤマト噴射口損傷。」報告を聞き、フラーケンの片頬に薄い笑いが浮かんだ。

「なんだ。あの戦艦。見掛け倒しじゃねえか。」ハイニは拍子抜けしたような顔をした。「次元ソナーも持ってねえみてえっすよ」

「油断するな馬鹿者。全艦魚雷発射準備」

 

「土門、お前は訓練学校で異次元戦闘を選択していたな」第一艦橋に入ってきた竜介に真田が話しかけた。

「はい、そうですが?」

「今、ヤマトを襲っている敵は、次元潜航艇らしい。土門、お前の意見が聞きたい。」進がつけ足した。

「わ、わかりました。」呆然としている竜介にさらに言葉がかけられた。

「俺たちも初めての相手なんだ。しっかり頼むぞ。」

これで先輩の仇が取れる竜介はそう思った。

「と、とにかく、見えない敵をあぶりだすには、波動爆雷を使うのが一番だと思います。角度は30°、これで大抵の相手の位置がわかるはずです。真田副長、次元ソナーの政策をお願いします。」

「分かった」真田は第一艦橋を飛び出していく。

「よし、南部、波動爆雷発射。」「波動爆雷、発射せよ。角度30」

 

「波動爆雷、きます。」

「全艦、最深度まで潜航」

「2号艦、3号艦被弾」

さすがに手ごわい、長引けはこちらが不利だ。フラーケンは舌を捲いた。

「やむを得ん。ヤマトの艦長室(第1艦橋)に向け、亜空間魚雷発射。」これで、指揮官の何人かは死ぬだろう。だが、機関部が無事ならば、磁力メッキとデスラー砲の秘密はわかるに違いない。

 

「艦長、だいたいの位置が分かりました。爆雷の連続発射を」

「よし、連続発射。」

その言葉と同時に、亜空間魚雷が第一艦橋に襲い掛かった。皆、なぎ倒される。

「大丈夫か、南部、島。」しかし、誘爆が進を襲った。

「艦長。」「古代君」ユキが駆け寄った。「佐渡先生。」島が佐渡を呼んだ。

 

「艦長室付近に被弾。かなりのダメージがあった模様です。」レーダー手がいった。

「攻撃続けますか?キャプテン?」ハイニの問に

「しばらく待て」フラーケンは腕を組んでいる。

「何でキャプテン、チャンスじゃないすか?」

「生きたまま捕えろと言う命令を忘れたのか」フラーケンの眼が光る。

 

佐渡とユキは進を担架に乗せて、第一艦橋から運び出した。

「艦長は、艦長は」

「落ち着け土門。佐渡先生がついている。古代は死にはせん。」島がたしなめた。「今は俺たちで、敵を倒さねばならないんだ。頼むぞ、土門、お前の知識を借りたい。」

竜介が頷いた。

「次元ソナーの設置が終わったぞ。今から第一艦橋に戻る。」真田の声が飛び込んできた。

「次元ソナーさえあれば、連中の動きは筒抜けです。」竜介の顔が輝いた。

「俺が作動させる。みんな静かにしてくれ。」

 

「ヤマト艦底部に反応。次元ソナーのようです。」

「よし、2号艦、ヤマト前方へ向けて発進。3号艦、ヤマト後方に移動」レーダー手の報告を受けたフラーケンの命令は信じられないものだった。

「キャプテン!それじゃ敵に筒抜け」ハイニの問にフラーケンの答は無い。

 

「反応があった。1つはヤマトの前方、6時の方向。もう1つは、ヤマトの後方12時の方向。距離15宇宙km」

「爆雷の発射お願いします。」「波動爆雷発射」南部が伝達した。

 

傷ついた2号艦も3号艦も防ぐ術はない。異次元から飛び出した潜航艇に、第一艦橋のスタッフたちは一瞬息を呑んだ。

「第1砲塔、第3砲塔、主砲発射。」南部の命令が聞こえる。

ビームが走り、閃光と共に潜航艇が砕け散る。

「やったぞ。」竜介は思わず叫んだ。

 

「いまだ。全艦。至近距離より亜空間魚雷発射。」フラーケンの命令が響く。

 

歓喜の叫びも一瞬だった。無数の亜空間魚雷が再びヤマトに突き刺さる。

「あの艦は囮だ。次元ソナーの弱点をついてきた。なんて奴らだ。」真田が叫び、竜介は呆然とした。

 

「よし、4号艦から8号艦まで潜航したまま、ポイントK2まで移動。ヤマトを東部方面軍機動要塞まで引きずり込め。」フラーケンは僚艦に命令した。

「通信回線開け」パネルにガイデルの姿が映し出される。「ヤマトを吊りだしました。ポイントk2に移動中です。」

「よくやった。ガルマンウルフ。とどめはこちらで刺す。」

 

「潜航艇が逃げていくぞ」真田がソナー音を聞きながら叫んだ。

「追いかけましょう。副長。」と言った竜介に

「まて、なぜ逃げるんだ。」島が尋ねた。

「弾が切れたのでは」竜介は思わず言った。

「そうだな、今仕留めておかなければ、後後、厄介になりかねない。」真田も応え、島は頷いた。

「損害状況を報告してくれ。」島が呼びかけた。

「こちら、艦底部、第3装甲板まで破壊されました。死傷者目下のところ不明。おそらく多数。」「第3艦橋の乗員全員死亡」「第2主砲被弾。乗員3名死亡、負傷者いずれも重体。」「波動砲発射口に亀裂」次々と被害を伝える報告が入ってくる。

「なんて奴らだ。やはり、ガルマン帝国なのでしょうか?」竜介の問に

「魚雷の破片から見ても間違いないだろう。太田、ソナーをレーダーと連動させるぞ。」

レーダーに機影が浮かび上がった。

「この速度なら、30分で追いつけます、真田さん。」島が言った。

平田先輩、仇は必ずこの僕が、竜介は心の中で誓った。

 

「ヤマトは、俺たちには全く気付いてないみたいっすよ。」ハイニが呟いた。

「まだ戦いは終わっていない。気を緩めるな。」

ヤマトが、罠に気づいて転進するのを叩く任務がまだ残っている。

 

「よし、15宇宙kmまで近づいたぞ。」

「波動爆雷発射お願いします。」「波動爆雷発射、準備。」南部が答えたその時だった。

「前方に大型要塞出現。」レーダーを切り替えた太田が叫んだ。「すごい加速です。」

「しまった。」真田が唇をかんだ。「あの潜航艇艦隊そのものが囮だ。この要塞でヤマトを仕留めるつもりだ。」

「真田副長、波動砲は使えません。」南部が声を絞り出す。

「波動砲とワープを封じるのが第一波の目的だったんだ。」島がうめく。

「島、反転上昇しろ。」「ようそろ。」

「第一砲塔、主砲発射」南部の命令で発射されたビームも要塞の壁に跳ね返されている。

要塞の側面が大きく横に張り出した。そして上部も

「上昇も転回も間に合わない。激突する。」「島、下降しろ。」

ヤマトは要塞の底部に潜り込んだ。しかし、要塞本体も下降した。

「このままでは押しつぶされるぞ。」真田が叫んだ。

真上に巨大な鉄の塊が迫ってくる。音も無く塊に亀裂が走り空洞ができた。ヤマトはその空洞に飲み込まれていく。

「なんだ。真っ暗だぞ。どうしたんだ。」竜介は叫んだ。

「慌てるな。どうやら捕虜にされてしまったらしい。完敗だ。」

「古代、すまない。」島が肩を落とした。

「そんな、波動砲を使いましょう。」竜介の問に

「見ろ、反射版が埋め込まれている。空間磁力メッキだ。波動砲を撃ったとしても自滅するだけだ。」真田は静かに答えた。

「メインパネルに通信が入っています。」相原の叫びと同時に、映像が映し出された。

 

「ほう、これは」ガイデルは、真田達メインスタッフの姿に息を呑んだ。「君たちが宇宙戦艦ヤマトの指揮官たちか、思ったよりも若いな。君たちの勇気と知恵に、私は心からのエールを送りたい。私は、ガルマン帝国東部方面軍司令官ガイデルである。」

「では、あのダゴン将軍の後任か。」島の言葉に、ガイデルは仰天した。

「君たちはラジェンドラ号に加勢し、わが軍の第7機甲師団を全滅させた。君たちがボラー連邦の一員と分かった今、君たちの母星α星も残念ながら、我々の交戦国になる。しかし、我々はボラーとは違う。我々は、捕虜を虐待はしない。君たちは速やかに武装解除をし、下船したまえ、君たちの身の安全と尊厳は保証し、負傷兵には十分な治療を行うことをここに約束する。」

「もし、断ると言ったら」竜介は思わず叫んだ。

「気の強いことだ。」なかなか骨のある小僧だ、ガイデルは笑った。「当然ヤマトごと破壊する。君たち二人が、司令官のようだな」ガイデルは真田と島を見つめた。「負傷兵のことを考え、速やかに決断されよ。」

「解りました。艦長に報告したのち、下船します。」真田は答えた。

「まだ戦えます。」ガイデルの映像が消えるや否や、竜介は叫んだ。「ヤマトが負けるはずがありません。」

「よせ、我々の完敗だ。敵潜航艇の魚雷は、爆薬を半分にしてあったのだぞ。」真田が説明した。

「何ですって?」

「潜航艇の艦長はヤマトを一発で撃沈することができたのだ。それを、生きたまま捕えさせた。被害が軽微なので油断させ、次元ソナーに慣れてないことも承知で、僚艦さえも犠牲にして、恐ろしい奴だ。」真田はうなった。「そんな部下を使っている司令官が、あの男なんだ。並みの男であるはずが無い。今は耐えるしかない。地球のために。α星の戦いは、ダゴンが勝手に始めたことを、ボラーの同盟国ではないことを、あの司令官に説明し、地球を守るしかない。」

真田の言葉に島も頷いた。

 

医務室に3人は急いだ。

「どうしたんだ、3人とも」真田・島・竜介の姿を見て、佐渡は訝しんだ。

「古代の様子は?」

「手術は終わった。命に別状はない。麻酔が切れるまで目は覚めんが、何があったんじゃ島?」

「ヤマトが捕虜になってしまいました。」島はうなだれた。

「ええっ。」ユキの声に竜介は膝をついた。

「僕のせいです。僕が未熟だったから」

「何を言う。お前は立派にやってくれた。」真田と島が慰めた。

「とにかく退艦命令が出ました。ガルマン帝国東部方面軍の総司令官から」

乗組員は武装解除させられ、部署ごとに集められた。ユキは衛生兵として佐渡と共に古代の病室に付き添った。進の意識はまだ戻らない。

「捕虜になるとは、情けない。」佐渡がぼやいている。

「土門隊員。大丈夫?」ユキが尋ねた。幸いにも生活班と衛生兵は、一緒にいることができる。

「班長。申し訳ありません。」竜介の眼に涙があふれ出した。

「勝敗は時の運よ。どんな時でもあきらめず、生きていさえすれば、明日の希望は見いだせるわ。少なくとも負傷兵にはきちんとした手当てが行われたのよ。もうすぐ長い一日が終わるわ。とにかくよく眠ること、そして食べること。いいわね。」

大事なことは食べることと、眠ることだ。平田の言葉が甦る。だが、先輩はもうどこにもいないのだ。遺体すらなく、お別れをすることすらできない。先輩、先輩の仇は必ずこの俺が。竜介は涙を拭いた。

 

「ご苦労だったな。フラーケン、ハイニ、そして、ガルマンウルフ艦隊の諸君。」

ガイデルは、帰還した一同を集めて労った。

「本来ならば、デスラー総統から直々のお言葉と勲章授与があってしかるべきの働き。しかし、君たちは、あくまでも影。名誉も私からのものとなる。許してもらいたい。」

「とんでもありません。我ら一同、ガルマンの独立と自由を守るため、これからもボラーとの戦いに、命を捧げます。」フラーケンは敬礼した。「今回は僚艦2艦を失う損失がありましたが、無事、敵艦を鹵獲することができ、戦死した仲間も喜んでいることでしょう。」

フラーケンの言葉に、ハイニは涙ぐんだ。ヤマトのせいで死ななくても良い仲間が死んだんだ。

「諸君ら十分に休養を取ってくれ。休暇が明ければ、またボラーとの戦いが始まる。」

 

「なんですと?ダゴン将軍がそんなことを?」夜、ガイデルの私室に呼ばれた2人は驚いた。

「ヤマトの指揮官の言うことを信ずればだが、敵相手にそんな大ぼらを吹くとは。」ガイデルは呆れかえっていた。

「α星の首脳部に確認するほかないでしょうな。」

「やっぱりね。目立とう精神っすよ。総統には話すんすか」

「言わざるを得んだろうな、きっとお怒りになるだろう。儂も責任は免れ得ないだろうな。」

「でも、ガイデル提督の手腕を買っていたからこそ、バース星の攻略に。」

「ヤマトと言うα星の戦艦を手土産にするほかないだろうが」ガイデルは頭を抱えた。

「ガイデル提督」ブザーが鳴りパネルに技術将校の姿が映し出された。「あの戦艦の母星は、ケンタウルス・リギルではないようです。」

「何?ではどこの星なんだ。」

「はっ。航路データから、彼らの母星は、ケンタウルス・リギルより、さらに辺境。4.3光年先にあるこの星のようです。」

パネルに地球の姿が映し出された。青く美しい姿に3人とも言葉を失った。

「いや~~。きれいだな~~。」

「レ・リスカも青いが、この星は海の」

「何と言う美しさだ、デスラー総統の別荘地に相応しい。」

「この星をプレゼントすれば総統のお怒りも、相当和らぐんじゃ」ハイニがまた寒い冗談を言った。

「この星をプレゼントするおつもりなら」フラーケンがニヤリと笑った。

「いや、今はプレゼントはヤマトだけでいい。まずは、ダゴンの失態を報告せねばならん。ヤマト一隻でこれほど手こずらせた星だ。辺境とは言え恐るべき科学力なのかも知れん。」

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