ヤマト三度、宇宙へ   作:ryoko22

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第16話 三国会談・前編

藤堂からの報告に、地球連邦政府に激震が走った。

「なに?三国首脳会談だと、藤堂君。」大統領は慌てた。「会談を装っての謀殺ではないのか。」

「地球から通信するのか、それでは、地球の位置がばれてしまう。」「ミサイル攻撃を受けるのでは?」

そう言った人々は顔を見あわせた。相手の一人はガミラスのデスラーではないか。位置も何も、きっとボラー連邦にも情報は筒抜けなのではないか。

「憶測で不安がっても、何の解決にもなりはしません。」藤堂が一喝した。「α星の司令部が受けたのですから、α星の司令部で答えればいいのです。」

「しかし、α星の司令部には、何の外交特権も無いではないか。」大統領は反対した。

「大統領閣下に、α星の司令部まで出向いていただきます。」藤堂は言った。「今から出発すれば、十分間に合います。」

「他に誰が同行するのか。」「私が参ります。」藤堂は言った。

「何を言ってくるのだろう」閣僚の一人が言った。

「おそらく同盟の要請だろう。地球はどちらにつくわけにもいかん。鎖国するというしかない。」大統領も覚悟を決め、正装を用意させた。

 

「しかし、顔を合わせた途端に、撃ち殺されるのではないか。」α星に向かう、護衛艦夕月の中で大統領は藤堂に尋ねた。

「実体映像で会談するそうですので命の危険はありません。大統領。」藤堂は言った。

「しかし、よりによって、交渉相手国の一つがガミラスのデスラーの帝国とは、」かつて、一方的に遊星爆弾で地球を廃墟にされた苦い思い出が甦る。

「かと言って、ボラー連邦も、ガミラスよりましとは到底思いません。バースと言う国家にしたことを思えば」

「会談をα星にした訳は?藤堂君。」

「万が一、通信場所を特定され、遠隔ミサイルで攻撃されたとしても、地球の被害を最小限に食い止められます。」

「君と私とは囮という訳だ。」「やむを得ません。」

藤堂は押し黙った。大統領は不安げに視線を泳がせている。戦慣れしてい無い人間とは、こうも意気地の無いものなのか、藤堂は一喝したい気持ちを抑えた。とにかく、大統領と自分の口舌に地球の命運がかかっているのだ。

 

交渉当日、ヤマトの第一艦橋で、進は時計を見ていた。

「古代、イライラしても、どうしようもないぜ。」島が声をかけた。

「そうだ。交渉は連邦政府に任せるほかない。賽は投げられたんだ。」真田も言った。

「相手は、デスラーだけじゃなく、ボラー連邦のベムラーゼも来るんでしょう。どんな無理難題を言ってくるか。」

「古代。地球がボラーの属国になったら、困るのはデスラーなんだぜ。彼が何とかしてくれるさ。」島にしては珍しく楽観的だった。

「俺たちにゃ、なんにもできないし。」太田が慰めるように言った。

「藤堂長官を今は信じるほかないだろうな。」真田の言葉に、進は頷いた。

「なあ、土門。」戦闘班砲術科の隊員たちが竜介に尋ねている。「波動砲、どうだった?」

「どうもこうも、無我夢中で殆ど覚えてないよ。」竜介は食糧倉庫をチェックしながら言った。「だいたい、お前たちがいなかったから、俺がやらせられる羽目になったんだぜ。」

「だってよう。」一人が口を尖らせた。「半舷上陸って誰も言わなかったし」みんな頷いた。

「地球はどうなるんだろうな」「大統領と会談だろ。」「どっちにつくんだろ。」「どっちにもつかないだろ」

「あなたたち、持ち場に戻りなさい。」ユキの声がした。

みんな渋々戻っていく。

「班長、地球は大丈夫なんでしょうか。」

「土門隊員。そのために、連邦政府が頑張ってるのよ。これは、藤堂長官たちの戦いなの。」不意に竜介の脳裏に平田の言葉が甦った。

「土門隊員?」「はい、今日も上手い飯を作ります。」大真面目な竜介に、ユキは吹きだした。

二人の笑い声が食糧倉庫にこだました。

 

α星の司令部で、藤堂と大統領とは通信が入るのを待った。一方的な降伏勧告ではない、地球にとって初めての国家元首による外交交渉である。

「ヤマトの母星の諸君。私がガルマン帝国総統デスラーだ。」実体映像が浮かび上がった。

これが、ガミラスのデスラーか、大統領と藤堂は、因縁の深さに息を呑んだ。

「α星の大領領閣下。」別の声がした。低い、聞く人間の魂を凍えさせるような声だった。「初めてお目にかかり光栄です。私が、ボラー連邦中央政府首相ベムラーゼです。」

浮かび上がった人物は、中肉中背のかなり年配の男だった。背の高いデスラーと比べると、小柄に見えるが、大統領よりは背が高い。しかし地球人の二人は、ベムラーゼの眼光に震えあがった。銀灰色の瞳に小さく黒い瞳孔は、全てを凍りつかせるような異様な冷気に満ちていた。

「お二人のご様子だと、デスラー君のガルマン帝国とは何かご関係があるご様子、今までお隠しになっていたとは水臭い。」ベムラーゼは酷薄な笑みを浮かべた。

「いえ、そのような、」大統領は慌てた。このままではなし崩しにボラー連邦と敵対関係になってしまう。

「部下の紹介がまだでしたね。」デスラーが助け船を出した。「こちらが、タラン将軍。その隣に控えるのがクロッペン将軍。外交担当です。」

「こちらが、ゴルサコフ総司令、そして、彼が外務大臣セルゲイエフです。」ベムラーゼも紹介した。

「私はノーマンと申します。大統領を務めております。こちらは藤堂司令長官。」大統領も紹介した。

デスラー・ベムラーゼ・ノーマン大統領が着席し、藤堂たちは脇に控えた。

「まず、貴国の意思を確認したい。ノーマン大統領、貴国は、我がボラー連邦にも、デスラー君のガルマン帝国とも同盟せず中立を保ちたいと、お考えか?」

「そうです。我が国は、バーナード星までの現領土を保持し、それ以上の領土は望んでおりません。まして、シャルバートなる胡乱な信仰が蔓延していると伺い、我々は、中立と言うより鎖国を望んでおります。異星人との関係を一切断ち、領土内に引きこもって暮らしたいと望んでいます。」

「しかと左様か。」

「はい。」

「だが、宇宙戦艦ヤマトの行動をみると、とてもそうは思えぬ。」ベムラーゼが尋ねた。

「と、言われますと?」ノーマンは尋ねた。

「まず、ヤマトはここα星で、ラジェンドラ号に加勢し、ガルマン帝国の機甲師団を殲滅した。さらに、ラジェンドラ号の母星、バース星に立ち寄った。ボラー連邦の一員に加わったと考えるのが当然であろう。」ベムラーゼはさらに続けた。「ところが、このゴルサコフの同盟要請を断った後、事もあろうに、敵国であったガルマン帝国の母星に国賓待遇で滞在した上に、ガルマン軍と共同でボラーの新型ミサイルを攻撃している。すでに貴国はガルマン帝国の同盟国ではないのか?」

「いいえ違います。まずこれをご覧ください。」藤堂はパネルのスイッチを押した。α星の戦いや交渉のすべてが写っている。「お二方とも、これでお分りになられたかと思います。我々がラム艦長に行ったのは人道支援のみで、後は、領空侵犯のガルマン軍を名乗る艦隊を撃退しただけであることを。」藤堂は説明した。

「なるほど、しかし、デスラー君、君の部下には、随分質(たち)の悪い者が混じっておるのだな。」ベムラーゼは薄い笑いを浮かべた。部下の二人も軽蔑の笑いを浮かべている。「部下の不始末をどうお付けになるおつもりかな。」

「ベムラーゼ首相。この者は我が栄光あるガルマン帝国軍とは何の関係もない。」デスラーは平然と言った。「貴下もご存知だと思うが、東部方面軍総司令はガイデルと言う。ガイデルはここ2年の間。東部方面軍総司令の任を解かれたことは一度も無い。それは、ボラー連邦中央政府も周知のことのはず。」

「では、この男の艦隊は?」思わずノーマン大統領が尋ねた。

「脱走兵の海賊でしょうな。」デスラーは続けた。「そうでなければ、後から狙うなどという卑怯な真似ができるはずがない。ラム艦長には、本当に気の毒なことをした。」

「脱走兵だという証拠はあるのですか?」ゴルサコフが尋ねた。

「私は、要衝地バース星の攻略は命じたが、オリオン腕の最辺境まで戦線を拡大せよとは一言も言っていない。それは、ガイデルも重々承知である。」

「なぜ、拡大されなかったのですか?」ゴルサコフはさらに尋ねた。

「兵站を考えれば、すぐにわかることではないかね。ゴルサコフ君。」

「それでは、バース星におけるヤマトの行動について、説明してよろしいでしょうか。」藤堂は尋ねた。ヤマトとの通信記録が映し出された。

「では、ボラーとの同盟はバース星で正式に断ったというのだね。」デスラーは尋ねた。

「いえ、我々は、演習艦には外交特権は認めておりません。この会談を持って正式に、中立を宣言いたします。」ノーマン大統領はそう言った。

「しかし、同盟を断ったからと言って、攻撃とは、ボラー連邦らしくありませんな。ボローズ総督をどうなさるおつもりかな。ベムラーゼ首相。」

「ご心配には及ばんよ、デスラー君。とうに始末はつけてある。」

「と、言われますと?」藤堂は思わず尋ねた。

「大ボラー連邦の名誉を穢したボローズとその配下の者は、全員銃殺に処した。狂信者どもと一緒に。」

淡々と話すベムラーゼに、藤堂は背筋が寒くなった。冷たい汗が脇の下を伝っていく。大統領もおそらく同じだろう。

「ヤマトが、ガルマン星でガルマン帝国軍と共同作戦を取った事は?」ベムラーゼが薄い笑いを浮かべながら聞いた。

「それは、すでに、古代艦長が、下船している乗組員を守るための正当防衛だったと、ベムラーゼ閣下に説明したはずですが」藤堂は答えた。

 

「では、我々の星は、どちらとも同盟を結ばず、中立を保つことを、また、領土拡張をしないことで、和平協定を認めていただけますか。」ややあって、大統領は尋ねた。

「いいだろう。だが一つ教えてほしい。ヤマトとこの、デスラー君とのことだ。あの若者が、国賓待遇とは考えられない。余程の利害関係があると、考えるのが当然ではないか?君たちも私に隠し事をするつもりかね。」

「いいえ、滅相も無い。」ノーマンは青くなった。「私より藤堂君の方が詳しいだろう。」ノーマンは藤堂に説明を求めた。

また、丸投げするつもりか。藤堂は内心腹立たしかった。

「4年半前、我々の星は白色彗星帝国の侵略を受けました。その戦いの中、ヤマトの艦長である古代とこちらのデスラー総統とは親しくなったと聞いています。全く個人的な友情で、特にそれで、我々が利益をこうむったわけではありません。」

「国家元首とあの若者との友情かね。」

「そうとしか言いようがありません。具体的なことは、個人的なことになりますので、古代本人に聞いてもらうしかないでしょう。」

「友情か、そのような青臭いものを、帝国の皇帝が持っているとは、デスラー君、君もまだまだ若いな。」ベムラーゼの片頬に軽侮の笑いが浮かんでいる。

あのデスラーを若僧扱いするとは、藤堂はつばを飲み込んだ。ズォーダーも傲慢な支配者だったが、この男は全く違う。この酷薄さは何なのだろう。

「和平協定の条約を結ぶには、シャルバートの問題がまだ残っている。」デスラーが口を開いた。

「我々も鎖国を考えたのは、シャルバート信者のことを聞いたからです。」ノーマンが説明した。

「鎖国するのは良いことだが」デスラーが尋ねた。「信者がもし入り込んだら、どうなさるおつもりか。」

「勿論、ガルマン帝国の人間ならガルマン帝国に、ボラー連邦の人間であればボラー連邦に引き渡します。」

「それは当然として、問題は諸君らの同朋に信者が出た場合だ。どう見分けるのかね。」デスラーはさらに聞いた。

ノーマンは言葉に詰まった。

「では、私の提案を言わせてもらおう。」ベムラーゼが口を開いた。「君たちはシャルバートの実態を知らない。我々は知っている。どうだろう。我々の摘発部隊を君たちのα星へ常駐させて貰いたい。そうすれば、一網打尽にすることができる。ボラーだけで心配ならば、ガルマンの部隊も常駐させればよい。」

ベムラーゼの提案に、ノーマン大統領は蒼白になった。

お決まりの内乱で、地球をヤマトを支配下に置くつもりか、藤堂は歯がみをした。大統領はどう言い逃れるつもりなのか。かと言って、藤堂自身にも名案がある訳では勿論なかった。

「ご提案はありがたいのですが、我々はシャルバートを見抜くことができます。」ノーマンは苦し紛れの言い訳をした。

「どうやって?」デスラーは思わず尋ねた。

「そ、それは、」

言わぬことではない、墓穴を掘りおって、藤堂は舌打ちをこらえた。

「ぜひとも教えて頂きたい、ノーマン君。」ベムラーゼが薄い笑いを浮かべた。

 

進退窮まったノーマン大統領は、思わず十字を切り神に祈った。

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