ヤマト三度、宇宙へ   作:ryoko22

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第20話 謎めいた惑星(ほし)・後編

その日、セイレーン、ヤマト乗組員はこの異星人をそうよんでいた、は、食堂でプレゼントされた花を飾っていた。

「セイレーンさん、花なら僕が飾りますよ。」「いや、俺が。」新人たちが、セイレーンを取り巻いている。

「いえ」彼女がはにかんだ。

初々しい表情、新人たちの目が釘付けになる。

「みんなどいてくれ。掃除の邪魔だ。」竜介がぶっきらぼうに言った。

「ちぇっ。なんだよ。」「お堅いなお前は。」みんな口々に帰っていく。

どうも、凄い美人ってのは苦手だ。竜介はそう思う。折角のチャンスなのになあ。

「セイレーンさん。」武史の声がした。

セイレーンが武史には打ち解けているのが、竜介には感じ取れた。全く、揚羽は、訓練学校の時代から、女の子にもててたからなあ、二人が花を生けるのを、竜介は横目で見やった。イケメンと美女かあ、悔しいけどお似合いの二人だ。俺は・・・引き立て役だな、いや、おじゃま虫か、竜介は手早く片付けると、食堂を後にした。

 

「z35星系、第一惑星に告ぐ。」

同じ頃、惑星セイレーンから離れること100宇宙キロの宙域に、ガルマン・ボラー両艦隊の指揮官がそれぞれ、惑星セイレーンに呼びかけた。

「第一惑星に告ぐ。シャルバート信者を直ちに我々に引き渡せ。15分後待つ。引き渡さない場合は、惑星破壊ミサイルで攻撃する。」ガルマン第5艦隊司令官、グスタフ中将が呼びかけた。

「よし、一端通信を切れ。」グスタフ中将は副官に命令した。

「引き渡しますかね?」

「引き渡さなければ、攻撃するだけのことだ。シャルバートの抹殺は、デスラー総統も認めたことだからな。」

「ボラー艦隊から通信が入っています。」「繋げ。」

画面にボラー連邦の軍人の姿が現れた。

「私はバース星総督ヴィシンスキー。z35星、第一惑星から何か通信はありましたか?」

「いえ、ありません。」

「我々の方が先に警告を発した。すでに時間は過ぎている。今から第一惑星を破壊する。よろしいな。」

「わかりました。」グスタフは了承した。

「グスタフ中将」不審そうな副官に、グスタフは答えた。

「ここはボラーの領域だ。彼らに優先権がある。シャルバートの抹殺で無ければ、共同戦線すらありえん。惑星の破壊を見届けるだけで良い。」

こんな星に何故信者が。グスタフの頭に疑念が浮かぶ。しかし、狂信者どもに呼びかけている以上、抹殺せざるを得まい。自分の手を汚さないだけでもありがたいというものだ。ガミラス人であるグスタフには、ガルマン人やボラー連邦のシャルバートへの恐怖心は理解できなかった。しかし、厄介な反政府主義者共なのだ。始末するに越したことは無いだろう。

「ボラーの惑星破壊ミサイル、第一惑星の上空、30宇宙キロ、あと3分で到達します。」

不意に薄紫の閃光が、惑星破壊ミサイルを包んだ。

「あれは?」

「ふん。惑星の幻覚電波だろう。あれを使って、多くの船を撃墜したんだろうが、惑星破壊ミサイルには通じるかな。」

「ボラー惑星破壊ミサイル進路変化せず。」

「慣性航行だからな、電波でも変わるまい。」

「着弾しました。爆発します。」

その時、グスタフの耳に、女の悲鳴のような耳障りな音が聞こえた。

「い、今のは、司令?」「うろたえるな。時間は。」

「15分経ちました。」「よし、惑星破壊ミサイル発射。」

第5艦隊から、惑星破壊ミサイルが発射される。

「着弾を確認しました。第一惑星が消滅します。」その報告に、グスタフ中将は頷いた。

「任務完了だ。帰還する。」

「ボラー艦隊、ヴィシンスキー総督から、通信が入っています。」

「お互い任務完了ですな。」ヴィシンスキーが労った。

「ありがとうございます。」

「ところで、グスタフ中将、あなた方には聞こえましたか、あの悲鳴が。」

「はい、我々にも聞こえました。何なのでしょう。」

「我々にもわかりません。上層部に報告します。」

「我々も、報告いたします。」通信を切ってから「やはり空耳ではなかったのだな」

グスタフは部下を見回した。みな、血の気の失せた顔色をしている。

「一体何だったんでしょう、気味が悪い。」

「とにかく、データを本星に送るしかない。フラウスキー技術少将たちが解析してくれるだろう。全艦、我に続け。帰投する。」

こんな薄気味悪い宙域からは、早く脱出するに限る。グスタフはそう考えた。

 

竜介は激しい頭痛に床に転げまわった。頭の中に何かが入り込んでくる。

「大丈夫か?土門!土門!」仲間の声が遠のいていく。

 

「何?探索隊員が全員気絶した?セイレーンもか」進は報告を聞き、呆然となった。「で、今の状態は。」

「気を失っているだけで、脳波の異常はありません。」衛生兵が答えた。

「やっぱり、惑星セイレーンから離れたせいだろうか」真田が呟いた。

「艦長。どうも、惑星セイレーンの方向で、大規模な爆発があったようです。」レーダーを見ていた太田が報告した。

「惑星セイレーンが戦場になったのかな」島が言った。

「いや、グスタフ中将には、惑星セイレーンが危険なことは伝えてある。わざわざ戦場にするとは思えない。」

「どうする?古代。」

「島、隊員たちの容態が安定したら、惑星セイレーンまで戻る。ただし幻覚波の届かない、100光年先にワープだ。」

 

竜介たちの意識はすぐ戻った。さらに、失われていた惑星セイレーンでの記憶も戻っていた。

「脳波に異常無し。鈴木隊員の銃創。吉田隊員の死因とも一致した記憶です。洗脳されたとは思えないわ。」ユキがデータを真田に渡しながら言った。

「セイレーンは?」進の問に

「彼女は昏睡状態です。2・3日は目を覚まさないと思います。」ユキは答えた。

「何で今頃記憶が戻ったんだ?」南部が尋ねた。

「その答は多分、惑星セイレーンにある。島、ワープしてくれ。」進は答えた。

 

「なあ、土門。」休憩時間の展望室で、武史は竜介に話しかけた。「うん?」

「記憶が戻ったのはいいけど、大森大丈夫かな。」

「そら、ショックは受けてるだろうけど、鈴木も助かったんだし。それに鈴木も、怪物に襲われたって思っていたそうだから、何とか大丈夫なんじゃないか?でも、吉田は。」竜介は唇をかんだ。

「どんな幻覚を見たんだろう。可哀想に。」武史も呟いた。

「でも、俺たちは、惑星セイレーンに居た時の記憶だけ消えてるのに、なんで、セイレーンだけ、言葉も話せないほどの記憶喪失になったんだ?」

「もしかしたら、」武史が言った。「惑星セイレーンにいる時間に比例するんじゃないか、記憶を失うのは。俺たちは1日もいなかったけど、セイレーンは」

「じゃあ、俺たちも赤ん坊みたいになるところだったのかもな。」

「怖い星だな、土門。」

「全くだ。」

「でも、セイレーンを連れてきたの、やっぱりお前だったんだな。」竜介はニヤリと笑った。

「やっぱりって何だよ。」

「訓練学校の時から、カワイコちゃんに弱かったんじゃないか。」武史は赤面した。

「ばかいえ、俺はフェミニストなんだ。」

「ああ、そうですか。どうせ俺は、野暮天だよ。」2人は笑い声を立てた。

「ワープ5分前」艦内放送が入る。

「いけね。ベルト着用だ。部署に戻らなきゃ」二人は立ちあがった。

「土門、上手い晩飯頼むぞ。」「おう、まかしとけ。」

 

パネルに広がった光景に、進たちは言葉を失った。惑星セイレーンは、その影も形もない。

「ガルマンもボラーも、惑星セイレーンの破壊が目的だったんだ。」真田が呟いた。

「畜生、酷い事を」進は声を絞り出した。

「しかし、惑星セイレーンの破壊と、土門達の記憶が戻ったことと、何の関係があるんですか?」島が尋ねた。

「これは俺の推測だが、」真田が説明した。「惑星セイレーンは遭難者の記憶を手に入れることで、より効果的な幻覚を、作るように進化したんじゃないか。同じ星からの侵入者には、同じような幻覚で対応していたのかもしれない。惑星が死んでしまったので、記憶だけが残り、元の持ち主の所に帰ってきた。」

「じゃあ、他人の記憶が混ざっているかもしれない。」相原が言った。

「それは無いみたい。探索隊員たちの記憶は、混乱してはいなかったわ。」

「じゃあ、セイレーンの記憶も戻ったかも」相原はさらに言った。

「そうすれば、彼女も故郷の星に帰れるかも、そうでしょ、古代君。」しかし、進はむっつりと黙ったままだった。「古代君?」

「相原、デスラーに繋いでくれ」

「ええっ?」

 

「どうしたね?古代。」パネル越しにデスラーがいぶかしげな顔をしている。

「どうして、惑星セイレーンを破壊したんだ。」

「惑星セイレーン?」

「グスタフ中将に伝えた幻覚の星だ。ボラーの同盟国でもなんでもない星をなぜ」

「古代。あの星は、シャルバートだったのだ。シャルバートの抹殺は三国会談で君たちも確認済みだと思ったがね。」デスラーは冷たく言った。

「でも、あの星には、人間型の生命体は発見できなかった。あの星は」

「古代。人間がいようといまいと、あの星は、シャルバートだと呼びかけていたのだ。それだけで十分ではないかね。」

「デスラー。」進はうめいた。本質的にデスラーは何も変わっていないのだ。

「失礼するよ、古代。」通信が切れた。

 

「おい、古代。」島が慰めた。「デスラーの言い分も、もっともだぞ。あの通信は確かにシャルバートと言っていた。信者だと公言していると、ガルマンやボラーに勘ぐられても、やむを得ないんじゃないか。」

「ああ、でも」

「これからどうする?古代。」真田が話題を変えた。

「セイレーンを故郷に帰す。このことで、セイレーンも記憶を取り戻したろう。この航海の最後の任務になる。」進はきっぱりと言った。

「じゃあ、ヤマトも寂しくなるな。」太田が冗談を言った。

「でも、セイレーンの故郷はどこなんでしょう。惑星セイレーンの領域から考えると、ボラー連邦ということになるから、ベムラーゼ首相かゴルサコフ総司令の許可をもらうんですか?」相原が尋ねた。

「いや、そこまで大げさに考えなくてもいいんじゃないか。バース星の新総督に頼むのでいいと思うんだけど、真田さん。」

「俺もそう思う。」

「それは、彼女が目を覚ましてからでしょう。セイレーンの気持ちを聞かないと」ユキがそう言った。

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