ヤマト三度、宇宙へ   作:ryoko22

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第4話 銀河の果てに

「ガルマン帝国にボラー連邦だと、銀河系の中に、そんな大星間国家が存在したのか。」藤堂は唸った。「で、α星の被害は?」

「最初のミサイル攻撃で、オスミウム精錬工場など、建物はかなりの被害を受けておりますが、民間技術者などの被害は殆どありません。しかし、防衛軍は1/3が死傷しました。」司令官が戦況を説明している。「至急、補充をお願いいたします。」

「すぐに海王星基地の予備艦隊をα星に送ろう。人道支援を行ったラジェンドラ号はボラー連邦、そして、ヤマトが撃退した艦隊はガルマン帝国側か。」藤堂は瞑目した。

「ヤマトが応戦したことで、地球の中立が脅かされるのでしょうか?」進は不安になった。

「宣戦布告無しの第三国への組織的攻撃。そして、ラム艦長の最後の通信。これらからも、ヤマトの攻撃には大義名分がある。」藤堂の言葉に進は安堵した。「もし、ガルマン帝国からの宣戦布告があれば、この2点を強く抗議し、彼らに非を悟らせよう。まあ、交渉が通じる相手であると仮定すればの話だが。」

「今後のヤマトの航海は、どうしたらよろしいでしょうか?」進は尋ねた。

「当初の目的通り、3万光年までの居住可能惑星の調査を続けるように。勿論、ガルマン帝国とボラー連邦の実態の解明が主になるが、くれぐれも古代、戦闘に巻き込まれぬように注意せよ。」

進は敬礼した。

 

「藤堂君、ガルマン帝国の大型ミサイルに晒されている以上、ボラー連邦と同盟を結んだほうがいいのではないか」

「大統領閣下。正体のわからない強国と同盟を結ぶのは危険すぎます。地球が属国になりかねません。」藤堂は首を振った。

「しかし、防衛は?」

「流れ弾ミサイルの処理ならば、護衛艦数隻で可能です。ヤマトからのデータで、両陣営の戦艦の軍備はある程度分かりました。アンドロメダ型の戦艦を海王星基地に配備します。戦闘が始まってもしばらくは持ちこたえられるでしょう。」

「いっそ、波動砲を全艦に配備してはどうか?」

「時間がかかり過ぎます。」藤堂は首を横に振った。

 

「真田さん、島。」第一艦橋で進は皆に話し始めた。「俺は、ガルマン兵士のデータは、ガルマン帝国の正体がわかるまで、メインスタッフだけの情報にしておきたいんだ。」

「どうして?」ユキが尋ねる。

「うん、土門を初め、ガミラス戦役で心に傷を負った若い隊員たちも多い。彼らにこれからの探査で、偏見を持ってほしくないんだ。」

「そうだな、ヤマトはもともと戦うための艦じゃない。沖田艦長もそう言ってたじゃないか」島が口を開いた。

「そうだ。仇敵かもしれないという先入観ぐらい怖ろしいものはない。藤堂長官も、大統領府にも口外しないと言ってくれた。」真田も賛成した。

 

ヤマトの向かう針路、まさに3万光年先に、巨大な宇宙要塞があった。その要塞の指令室で、青い肌の壮年の指揮官と思しき人物がモニターを眺めている。

「ガイデル提督。」副官らしき将校がその男に話しかけた。「次元潜航艇より入電。」

「繋いでくれ。」

パネルに人物が映し出された。

「ハッピバースデイ。オヤッさん。」髭面の男が素っ頓狂な声を上げる。

「ハイニか。」オヤッさんと呼ばれ、ガイデル提督は苦笑した。「フラーケン艇長はどうした。」

「ここにおります。ガイデル提督。いや、ガルマン帝国東部方面軍総司令とお呼びしたほうが宜しいですか?」鋭い眼付きの精悍な容貌の男が画面に現れた。

「ガイデル提督でよい。名前を言っている間に戦闘が終わりそうだからな。」ガイデルは破顔一笑した。「成果を報告したまえ。フラーケン艇長。いや、ガルマンウルフと呼んだ方がいいかな?」

「はっ。ウルフでもスピッツでもなんでも結構で。」フラーケンもニヤリと笑った。

「我ガルマンウルフ艦隊は、オリオン域、プレアデス域でボラー連邦の補給艦隊を撃滅。補給路を完全に寸断しました。押収した物資は、友軍の補給艦隊に供給。同盟国に配布いたします。」真顔になったガルマンウルフは戦果を報告した。

「これで、ボラーの腹に穴をあけたな。」ガイデルの言葉にフラーケン艇長は頷いた。

「提督の誕生日には、戦果を手土産に要塞に帰還します。」通信は終わった。

 

亜空間の中に、ガルマンウルフ艦隊は身を潜めている。どのレーダーにもかからず、まさに見えない艦からの攻撃を防ぐ術はない。

「へっへっへ。ガイデルのオヤッさんも大出世ですよね。くひひ。」旗艦ガルマンウルフ号の中でハイニがはしゃいでいる。

「ハイニ、いい加減にしろ。少しは『お上品』になれないのか?」フラーケンは苦笑した。

「へへへ、すんませんね、海賊気分が抜けないで。海賊ガルマンウルフが、今じゃ、艦隊司令官。夢のようでさ。」

「やってることは、海賊の時とあまり変わらんがな」フラーケンが笑った。

「フラーケン大佐。亜空間レーダーに反応あり。どうやら、ボラー連邦の補給部隊のようです。」

「よし、亜空間魚雷発射、自動追尾装置開始は、10分後。」

「了解」「発射しました。」

「よし、ワープでこの亜空間より離脱。」

 

「どうだ、レーダー手、戦果は?」

「全弾命中。護衛艦も空母も消滅しました。」

「あわれ艦載機の連中は日干し。」ハイニはおどけて言った。

ワープ機能の無い戦闘機では、1日も持つまい。しかし、これでいいのだ。フラーケンは頷いた。

「よし、戦果報告」「と誕生祝いを兼ねて」ハイニが口をはさむ。「宇宙要塞に針路を取れ」フラーケンは艦隊に命令した。

 

艦隊の乗組員を下船させて、フラーケンとハイニは、謁見室で提督を待った。

「オヤッさんはまた頭のマッサージっすかね。蒸しタオルのせて。気持ちいいのかなあ」

「コリがほぐれるそうだ。お前もやったらどうだ。頭の回転が速くなるぞ」

「俺ぁ、オヤッさんみたいなつるっぱげになりたくねえっすよ。」

「そう言うお前も、前線が後退し始めてるぞ。いっそ思い切ってやったらどうだ。」

ガイデルが入ってきた。二人は敬礼をする。

「なんだ、二人とも何か飲んでるがいいと言ったのに」

「やっぱ、オヤッさんと一緒に飲みてえっす。」

「男だけで飲んでも華が無かろう。今回も任務完了。ご苦労だった。ガルマンウルフ、乗員たちには十分の休息を取らせてやってくれ、宇宙に浮かぶ孤島だが、娯楽施設もある。」

「わかっております。」3人とも座った。

「お誕生日おめでとうございます。」「ありがとう。」3人は乾杯した。

「どうした?ハイニ。」急に静かになった部下にフラーケンが声をかけた。

「4年前まではこんな風になるなんて、夢にも思わなかったっしょ。ホントは夢じゃんって気がしちまって。」

「夢ではない。そう夢では」ガイデルも遠い目をした。

 

4年前、ガイデルはガルマン独立義勇軍の一部隊を率いていた。フラーケンもハイニもその仲間であった。当時、ガルマン星はボラー連邦の属国であった。ボラーの圧政に対する不満が最高潮に達していた。その頃、フラーケンは、宇宙海賊として、ボラーの貿易船を襲撃していたのだ。

その日も、フラーケンはガルマンウルフ号を駆り、その宙域を偵察していた。

「キャプテン、宇宙艦隊です。あれはボラーのものじゃないな。」レーダーを見ていたハイニが叫んだ。

「よし、捕獲しろ。」

「へへへ、部品交換ができらあ。魚雷発射準備。」

「いいか、お前たち、敵艦はまだこちらに気づいてはいないようだ。小惑星の影に入れ。先頭の旗艦を砲撃し、混乱に乗じて最後尾の戦艦を鹵獲する。間合いを間違えるな。」

「おう。」

 

「タラン将軍。前方45°の小惑星の内側に国籍不明の戦艦一隻。どうやら海賊船のようです。」

「我々を襲撃する気か。」デスラーの副官、タラン将軍は、デスラー艦隊の先鋒として、この宙域に偵察に来ていた。ガミラス星の滅亡後、流謫の身となって、もう2年が過ぎようとしていた。

「撃沈しますか?」

「いや、海賊ならば、この宙域の情報を持っていよう。鹵獲できないか。」

 

「キャプテン。射程に入りました。」

「主砲発射、目標敵旗艦」

ビームが敵旗艦に突き刺さったかに見えた。しかし、敵艦はわずかの差でビームをやり過ごした。一糸乱れぬ艦隊行動である。この敵はボラーの警備隊とは格が違う。乗組員たちに動揺が走る。

「キャプテン。はずされました。」「畜生。見抜いてやがったな。」「キャプテン、逃げますか。」「正面突破だ。逃げると襲い掛かってくるぞ。ひるむな、全速前進。」

 

「タラン将軍。突っ込んできます。」

「中央突破を図る気だな。なかなかの強者だ。牽引ビーム用意。」

 

「キャプテン。敵の牽引ビームです。操縦不能。」「ちぃっ。これでお陀仏かよ。」「落ち着け、ハイニ。」「キャプテン、敵艦から通信が入ってます。」「よし、回路開け」

最後に敵の顔を見てやろう、フラーケンは腹をくくった。

「貴艦の館長と話したい、私はガミラス艦隊、副指令タラン。」浮かび上がった男の顔を見た乗組員からどよめきが漏れる。自分たちと同じ肌の色だった。

「私がカルマンウルフ号艦長フラーケン。我々の負けだ。私の命と引き換えに、仲間の命と尊厳は確保してほしい。」

フラーケンの言葉に周りは叫んだ。

「冗談じゃねえぞ。俺たちゃ、死ぬときも一緒じゃねえか、」「そうだ、キャプテン。」

「わかった。君たちの身柄も財産も保障しよう。」なかなか見どころのある男たちだ、タランは感心した。それと同時に、ガミラス人と同じ肌の色を持つ彼らの出自が気になった。「君たちをこの旗艦に招待しよう。我々は、この宙域の情報を欲している。」

フラーケンたちは、武装解除させられ、タランの艦に集められた。

「何する気っすかね?」「消毒でもする気なんだろう」フラーケンは返した。

消毒の後、食堂に通された。

「結構なもの食ってるよな」ハイニが頬張りながら言う。

「毒は入ってませんかね」心配する若い乗組員に

「殺す気ならとうに殺している。安心して食べろ。」フラーケンは答えた。

タランが部下を連れて入ってきた。一部の隙も無い兵士たちだ。これでは、脱走は不可能だな。フラーケンは思う。

「フラーケン艦長、君たちの母星はどこにあるのかね。」タランが尋ねた。

「ここから100光年ほど銀河系中心部に行ったところにあるガルマン星だ。しかし、今はボラー連邦の植民地だが。」

「ガルマン星。そこで君たちは進化したのかね」

「違う。二・三千年前に、どこかの星から植民したらしいが、母星がどこかは俺たちは知らない。なんでそんなことを聞く。」

「貴様、誰に向かって」部下の将校を制して、タランは続けた。

「君たちの遺伝子を調べさせてもらった。驚いたことに、我々と99.999%まで一致している。つまり、我々ガミラス人と君たちガルマン人は同じ民族だということだ。」

「たまたま偶然の一致じゃねえんですかい?」ハイニが思わず叫び、部下の将校の目が吊りあがる。

「我々ガミラスの歴史に、2500年前にガミラスから銀河系に移民団が行ったという記録が残っていた。その後の記録が全くないので、移民団は全滅したと我々は今まで思っていたのだが」

「じゃあ、俺たちをそのガミラス星とやらに連れてってもらいたいね」フラーケンは言った。

「それはできない。」タランは顔を曇らせた。「我々には帰るべき星はない」

「けっ!なんでえ。あんたら、ホームレスかよ。」ハイニの言葉に部下の将校が激高した。

「き、貴様、無礼者!」

「すまないな。俺たちは何せ『海賊』なんでね。」フラーケンがうそぶいた。

「なぜ、海賊になった。」「ボラー連邦から独立して自由になるためだ。」

「そうか。」タランが沈黙した。「我々が君たちの独立を手助けするといったら?」

「正気か?あんたら」フラーケンは絶句した。

「タラン将軍、独断でそんな事は」

「わかっている。」タランはフラーケンに向きなおった。「フラーケン艦長、君にも司令官がいるだろう。私にもいる。素晴らしいお方だ。きっと、ガルマン星の独立を勝ち取ってくれる。君たちを開放しよう。君たちの司令官に伝えてくれ、我々の司令官との会談を望むと」

「あんた、海賊の俺がその約束を守ると本気で思っているのか?」

「思っている。」タランはフラーケンの瞳を見つめた。

二人はしばし沈黙した。

「わかった。司令官はいないが、ガイデルのオヤジならいる。独立義勇軍のリーダーだ。他にも何人かいるが、詳しくはオヤジが知っているだろう。必ずオヤジに伝える。タラン将軍、あなたの上官の名前は?」

「ガミラスのデスラー総統だ。」

 

「信用していいんですかい?キャプテン。」

「タランという男は嘘は言ってないと思った。それになかなかの人物だ。そんな男が忠節を誓っているデスラーって男も多分信用が置けるだろう。まあ、オヤジがどう判断するかだがね」開放されたガルマンウルフ号でフラーケンは皆に説明した。

 

「本当なのかね?タラン。ガミラスの同朋が生き残っていたというのは。」

デスラー艦の艦長室でデスラーは尋ねた。タランはフラーケンたちのデータを渡しながら説明した。

「信じられん。2500年前の植民が成功していたとは。」

もっと早く知っていれば、生き延びられた同朋も多かっただろうに、とタランは運命の皮肉を思う。総統も同じことを考えておられるに違いなかった。

「入植したガミラス人、彼らは自分達をガルマン人と呼んでいますが、今は、ボラーの植民地で酷い待遇を受けているようです。」タランはガルマンウルフ号から入手したデータとフラーケンの情報を伝えた。

「ガルマン星系第4惑星は、コスモナイトなど資源に富み、警備隊が常駐しているようです。」

「居住惑星の隣は資源惑星か。2500年前の入植者は、良い場所を選んだと見える。」

「それゆえの、ボラー連邦の侵攻でしょう。これからいかがいたしましょうか。」

「ガイデルというリーダーからの連絡、待とう。」

 

「信じられん。」ガルマン星の秘匿基地に戻ったフラーケンから報告を聞いたガイデルの第一声がこれだった。

「罠っすかね?オヤッさん。」ハイニも呟く

「いや、そんな手の込んだことをボラーがするわけがない。連中の拡大路線も限界に来てるからこそ、お前たちの襲撃だって成功するんだ。ボラー連邦の資源惑星系は、他に20近くあるはずだ。ガルマンを落としたとしてもさほどのことはないはず。」

「しかし、同朋だなんて、うまく出来すぎてませんか?」ガイデルの副官も首を振った。

「とにかく会ってみよう。」

「信じるんですか?そんな、どこの馬の骨かわからない連中の言うことを」

「今は信じるほかない。このままでは、やがて独立運動もつぶされる。そうすればどうなる。ガルマン人の未来は無いんだぞ。」

 

程なく、ガイデルは、デスラー艦隊に通信を送った。場所はガルマンウルフ号の補給地にほど近いアステロイドベルトの中である。

「ここなら敵のビーム砲も使えねえや、俺らには地の利もあるっしょ。」そう言いつつもハイネは額の汗を拭いた。

「デスラー艦より入電。ガルマンウルフ号とガイデル指令に表敬訪問をすると言ってます。」

「マジっすか。」どよめきが起こる。

 

二人の人物が、ガルマンウルフ号に降り立った。一人はタラン、そしてもう一人がデスラーという男か、ガイデルを始め艦内全員の視線が、その人物に吸い寄せられた。いかにも貴族的な風貌だが、あの眼の輝きはどうだ。そして全身から発せられる威圧的とも違う、このオーラは何だろう。フラーケンは息を呑んだ。ガイデルのオヤジに視線を走らせた。オヤジもすっかり呑まれているな。なんて男だ。

「ガイデル指令」穏やかな声だが、凄まじい存在感だ。「義勇軍をまとめ、強大な宗主国に反旗を翻す君の勇気を讃えたい。我々ガミラス人と君たちガルマン人は同朋、ガルマン独立の戦いに我々の艦隊も参加させて頂きたい。」

「デスラー総統閣下」ガイデルは思わず敬礼した。「身に余るお言葉、ガイデル恐縮いたします。ぜひ、我々独立義勇軍のリーダーとして我らをまとめていただけないでしょうか。独立派をまとめられる人物を私も探していたところだったのです。閣下こそ、それに相応しい方。ガイデル、伏してお願いいたします。」

デスラーは頷いた。

 

「義勇軍は10グループ、ガルマン本星付近は、ガイデルとクロッペン将軍のグループか。」

デスラー達にガイデルは自分たちの知りうる情報を全て提供した。守備隊は、本星に10艦、資源惑星に10艦、装備の点から、デスラー艦隊の敵ではないようだった。資源惑星には精製プラントがあり、ガルマン人たちが働かされていること、ボラーの軍は艦隊に止まり、ガルマン人たちの監視は、動員された衛星国の兵士たちが使われてること。

「クロッペン将軍」デスラーは話しかけた。「各ボラー陣営で蜂起している、同朋たちに連絡まで何日かかる。」

「早くても二日もあれば」

「では、すぐに攻撃をしよう。目標は、ボラー艦隊。艦隊殲滅後、地上部隊に降伏勧告。その時、降伏を受け入れれば、捕虜ではなく本国に帰還させると伝えよ。」

余りの展開に、ガイデルとクロッペンは固まっている。

「何を驚いている。速攻で方をつける。タラン、ボラー守備隊に宣戦布告。」「はっ!」

 

戦いは一瞬で終わった。デスラーは艦隊を2手に分け、本星と資源惑星のボラー艦隊を奇襲した。宣戦布告されたとはいえ、艦の装備に劣るボラー艦隊は、歴戦の勇士の集まりであるガミラス艦隊の敵ではなかった。地上の抵抗も殆ど無かった。警備兵たちもガルマンの奴隷たちと同じような境遇である。彼らは直ちに武装解除し、降下してくるデスラー艦隊を歓呼の声で迎えた。

 

「諸君。」群衆の前でデスラーは話しかけた。「諸君らは開放された。しかし、戦いはこれからだ。ガルマンの諸君。私は君たちの故郷ガミラスのデスラーだ。残念ながらガミラスは滅んだが、ガミラス人は滅びず、君たちの中に生きている。ここに我々は、同朋として君たちの解放戦線に加わろう。」

ガルマン人たちの歓呼の叫びがこだまする。

「警備兵の諸君。長きにわたる辛い任務。ご苦労であった。君たちも自由だ。君たちの財産を持って故郷に帰りたまえ。」

警備兵から安堵のため息が漏れる。

 

デスラー艦のなかで、作戦会議が開かれた。ボラー連邦は、おそらく大艦隊を差し向けてくるに違いない。

「ガイデル指令。軍需工場はどこかにあるかね」

「はい。資源惑星の裏側にありますが」

「ではすぐに、次元潜航艇の製造にかかってくれ。技術将校のフラウスキーとヘルマイヤーを派遣する。」

「次元潜航艇ですか?」クロッペンは怪訝そうだ。

「そうだ、敵の補給を断つ。」

「なるほど、わかりました。」ガイデルが頷いた。

「クロッペン、ボラーの艦隊規模と装備はわかるか。」

「多分、3個師団で迎撃してくると思われます。前に反乱を起こした衛星国はそれで鎮圧されたと聞いています。」

「その情報を集めたのは誰か。」

「私の部下で、キーリングという男です。」

「では、彼に連絡を取り、ボラーの針路を調査させよ。」

「はっ!」クロッペンもいつの間にか敬礼をするようになった。

 

二日後、工場のドックにフラーケンたちが集められた。

「これが、次元潜航艇ガルマンウルフ号だ。」どよめく乗組員たちにフラウスキーは説明した。「この潜航艇は、異次元を航行できるだけではなく、艦の周囲に亜空間を作ることができる。亜空間にはどのレーダーも無力だ。そして、ここが亜空間魚雷の発射孔。亜空間から魚雷は不規則パターンで出現するから、敵をかく乱できる。自動追尾装置付きだから、次元潜航艇がそこからワープしても、魚雷は自動的に目標を捕捉する。そしてこれが主砲だ。」

「すげーー。どんな大物でも一発で轟沈だ。キャプテン、ボラー艦隊と一騎打ちといきましょうや。」

「残念だがな、ハイニ。俺たちの目標は、補給艦隊だ。」

「さすがは、フラーケン艦長。呑み込みがお早い。」フラウスキーが言った。

「ハイニ。俺たちは海賊だ。海賊は海賊らしく、お宝の略奪といこう。」

「そのお宝が、補給物資というのは少し地味なのですが。」

「食いもんと燃料の略奪か。よーーし、ボラーを天日干しにしてやるぜ。なあ、みんな」

ハイニの言葉に、乗員が鬨の声を上げる。

「試験航海を兼ねて、頼んだぞ、ガルマンウルフ。」ガイデルが話しかけた。「キーリングから情報が入った。ボラー艦隊は3個師団。ガルマン惑星系の外で我々は迎え撃つ。補給艦隊はその後ろ20宇宙km。補給直前に叩け。」

「了解。」

 

次元潜航艇が潜む空間の外で、ボラー艦隊が集結している。

「レーダー手。レーダーの調子はどうか?」

「感度極めて良好。ボラー艦隊3個師団は減速し、間もなく停止する模様です。15宇宙キロ後方に補給艦隊、数50」

「ソナー手、通信妨害物質の状況は?敵は気づいているか?」

「後方20宇宙キロにまきましたが、全く気付いていないようです。」

「亜空間魚雷放出。目標補給艦隊。自動追尾装置、後方10宇宙キロにセットせよ。」

「了解、キャプテン」ハイニが答える。「亜空間魚雷放出完了。」

「ガルマンウルフ号ワープにて離脱。」

「ようそろ。」

 

別の次元空間から、フラーケンは時を待った。一秒一秒が、永遠のように長い。さすがの彼の額にもうっすらと汗が浮かぶ。レーダー手もソナー手も汗をぬぐった。

「全弾命中。補給艦隊消滅しました。やった」「敵艦は補給要請を送っています。通信妨害が分かりパニック状態です。」

 

「後方にて爆発確認」デスラー艦のレーダー手の報告が入る。

「全速前進。全砲門開け。攻撃開始。」デスラーの指揮に、ガミラス艦隊は一丸となってボラー艦隊の中央部に突撃した。

 

「高みの見物でいいんすか?キャプテン。」

「我々の仕事は、補給部隊の壊滅だ。レーダー手、新たな補給艦隊は現れたか。」

「まだ表れていません。」

「レーダーから眼を離すな。」

「正面に突撃していきますよ、ガミラス艦隊だいじょぶっすかね?」

「中央突破戦法だ。中央の敵を叩き、背後に回って、各個撃破する。敵が混乱しているときは、特に効果的な戦法だ。」デスラーという男、凄い男だ、我々とはスケールが違い過ぎる。ハイニに説明しながら、フラーケンは内心舌を捲いた。

「ボラーの機影、消滅しました。」

「ガミラス艦隊の被害は?」「極めて軽微です。」

「この宙域に敵は?」「おりません。」

「では、ガルマンウルフ号も帰還しよう。」

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