ガルマン人たちが蜂起した!鎮圧に向かった3個師団が全滅!!
このニュースはボラー連邦内を駆け巡った。ガルマン人の入植地だけでなく各衛星国で反乱が勃発し、連邦政府は鎮圧に躍起となった。
タランは、クロッペン、ヘルマイヤーと共に、ガルマン星の住民の状況調査に忙しい。
「栄養状態不良。住環境、これは収容所と変わりありません。」ヘルマイヤーが憤る。
「至急食料と医薬品、住居の改善を頼む。」
「はい、私の仲間たちに整えさせましょう。」
「頼みます、クロッペン将軍。ヘルマイヤー少佐、君は都市計画の立案を」
一方ガイデルは、帰還したフラーケンたちを労っていた。
「今回の勝利は、補給を断ったことにある。どんな艦隊でも食料とエネルギーが尽きれば」
「お役に立てて光栄です。」
「でもよう。オヤッさんだけじゃなく、総統閣下にもほめてもらいたかったっすよ。俺たちの活躍で勝ったようなもんっしょ。」
「口を慎め、ハイニ。」フラーケンが叱った。
「いや、総統閣下は、十分お前たちを評価している。ただ、お前たちの艦隊は、ボラーに知られないよう、秘密の艦隊にしておきたいのだ。これは、私と総統閣下との考えでもあるんだが。」
「秘密の艦隊?」
「こちらに来てください。」フラウスキーが3人を誘(いざな)った。ガルマンウルフ号の隣に同型の潜航艇が3隻整列している。
「今回の戦闘で、ガルマンウルフ号を改良しました。そしてこれが、その僚艦。次元潜航艇ガルマンウルフ艦隊です。キャプテン・フラーケンには、この艦隊の司令官になっていただきます。」フラウスキーが説明した。「予定では後7隻作ります。」
「乗組員の人選は、お前に任せる。フラーケン、いや、ガルマンウルフ、やってくれるな。」
「海賊ガルマンウルフ艦隊、海賊艦隊ですか。喜んでやらせていただきます。」
「へへへ、おべんちゃらじゃなく、現物支給か。総統も相当太っ腹だね。」
「お、おいっ!」ハイニの寒い冗談にフラウスキーの顔から血の気が引いた。
「どうかしたのですか?フラウスキー少将」ガイデルが怪訝な顔になる。
デスラー艦では、連日のように会議が開かれた。入植地で蜂起したガルマン義勇軍のリーダーたちも集結した。
「戦況はどうか」
「はい、我が10の入植地は全てボラー警備隊をたたき出しました。」新しく加わったヒステンバーガーがパネルに戦況を映し出す。
「補給はどうなっている?」
「ボラーに吸い上げられていた食料、資源、工場設備がガルマンに戻りましたので、それぞれ自給自足できますが、連邦中央政府直属の艦隊がくれば、持ちこたえられません。」
「ここ、本星のガルマン人たちの栄養状態は悪く、兵役に耐えられるものも少ないです。」ヘルマイヤーが立ち上がった。「健康回復には3カ月は必要かと」
「目下、グスタフ中将に入植地の巡回はさせていますが」タランが説明した。
「ボラー中央政府の動きがわかる者はいるか?」デスラーの問に
「キーリングたちが探査しておりますが、まだ連絡はありません。」クロッペンが答えた。
「総統閣下はいつお休みになられるのか」会議後、ガイデルはタランに話しかけた。「もし万が一のことになったら折角の独立も」
「大丈夫です。」タランは微笑した。「総統は戦場にあってこそ最も輝かれるお方。今一番、充実されておられます。」
「総統閣下は」クロッペン将軍が入ってきた。
「今休憩中だ、どうした、クロッペン。」ガイデルが眉をひそめた。
「キーリングが来たので、総統閣下にご報告と」「では、すぐに」タランが案内した。
「君か」デスラーはその男を見つめた。「思ったより若いな」
「恐縮です。」キーリングは会釈した。「中央政府は、シャルバート星で大規模な反乱がおきたため、主力部隊を集結させています。ボラー連邦にとっては、ガルマンの反乱よりはるかに深刻なものなので、鎮圧するまでは動きが取れないでしょう。」
「なぜ深刻なのかね」
「シャルバート教団の聖地だからです。シャルバート教団は別名、暗殺教団とも言われ、信者以外を平然と暗殺する狂信者たちです。」キーリングは淡々と説明した。
「何?」デスラーの眉が吊りあがった。
「ボラー連邦の首相ベムラーゼは、シャルバートを衛星国に組み入れることで、信者の鎮静化を図ってきたのですが、この反乱で、方針を変えました。シャルバート人の殲滅とシャルバート信者狩りを徹底的に行うつもりです。先日、施政方針演説が行われました。」
「では、ボラー連邦にとっては、今はガルマンどころではないのだな。ボラーに対して我々は時を稼げる。しかし」
「しかし?」
「ガルマンに、信者が逃げ込んでくる可能性、いや、ガルマン人の中にもシャルバート信者がいるのではないかな。」
「ご推察の通りです。」
「ボラーとシャルバート、我々は二つの敵と戦わねばならぬわけだ。キーリング君。君の腕を借りたい。君を内務大臣に任命する。君の組織を駆使し、ボラー連邦に対する内偵と調略、および国内のシャルバート信者の動向を監視せよ。」
「ええ?」若者は目を白黒させた。
「聞こえなかったのかね。キーリング内務大臣。」
「は。身に余る光栄です。総統閣下」若者は敬礼し退出した。
「今の話は本当なのですか。クロッペン将軍?」「残念ながらキーリング、いえ、内務大臣の言う通りなのです。タラン将軍。」
「すぐれた人物を紹介してくれて、感謝の言葉もないクロッペン将軍。」デスラーはクロッペンを労った。「ボラーと対抗するには、我々はまだまだ弱小だ。」
「総統。」艦長室で寛いでいるデスラーにタランは声をかけた。
「タランか。」
「お疲れのご様子でしたので、お飲み物を持ってまいりました。」タランはグラスにワインを注いだ。
「さすがに疲れたよ。」デスラーは半分ほどグラスを干した。「君も飲みたまえ。」
タランも着席した。
「今、ヘルマイヤー少佐が、都市計画を進めています。住民の居住区ができ次第、総統府の建設にかかります。ガミラスのような総統の浴場も」
「私の浴場より、まず、市民の浴場を作ってやってくれ。」デスラーは笑った。「皆、よく私についてきてくれたな。しかし、流浪の旅も終わった。この星が我々の新しい故郷になる。」
「総統。」
「案ずるな。私にはまだ仕事が残っている。しかし、今度の敵は厄介だな」
「ボラー連邦ですか?」
「いや、シャルバート信者共だ。理性の通じぬ相手。交渉の余地はない。」
「では殲滅ですか。」「でき得るものなら。しかし今は動けん。」
「総統、どうぞお休みください。」「君もだ。ゆっくり休めよ。」
タランは敬礼すると退室した。
ガルマン星の大地に降り立ち、空を見上げる。大きな青い月が中天に懸かっていた。まるでイスカンダルのようなのに、今、気がついたのか、タランはここ数日のあわただしい日々を思い起こした。そして、2500年前のガミラス人たちの故郷への思いの深さに感じ入ったのだった。
そのガルマン星から、直線距離で7万光年離れた銀河系の北側に、ボラー連邦の中央政府のある惑星ノヴゴルドがある。内閣府では今後の方針についての議論が戦わされていた。
「シャルバート宙域には、バース星艦隊を配置しました。」壮年の男が説明している。
「ゴルサコフ指令、衛星国ではなく、ボラー直属の中央艦隊の方が装備も上だ。なぜ?」
「いや、大丈夫だ。セルゲイエフ将軍。バース人は、5年前、和平交渉に向かったクレマン大統領を、狂信者どもに暗殺されている。その恨みを忘れてはいない。徹底的に戦うだろう。万が一敵前逃亡する艦があったとしても、後方にハーキンス中将率いる直属部隊が控えている。ベムラーゼ首相。この機会に、新兵器のテストを行いたいのですが」
「いいだろう。」ベムラーゼ首相は、ゆっくりと頷いた。ゴルサコフよりはかなり年上だが、極めて老獪で冷酷な風貌の人物である。「惑星破壊ミサイルの試射を許可する。あの狂信者どもは、クレマンとともに我がボラーの外務大臣ボロゾフをも爆殺した。その罪を許してやった儂の恩を仇で返しおって。あのような醜い星は二度と見たくない。シャルバート人は全て宇宙の塵にしてくれる。ボラー全域の狂信者どもも一掃するのだ。」
「はい。」ゴルサコフが着席した。
一発の惑星破壊ミサイルにより、シャルバート星は四散した。バース星艦隊は逃げようとする敵を囲んで包囲殲滅戦を開始した。殆どの船は撃沈され、逃げ延びようとした船も全て後方に控えていた直属部隊の餌食となった。間髪を入れず、各衛星国で信者狩りが行われた。密告、逮捕、粛清の嵐が連邦内に吹き荒れた。
「信者狩りも終わりのようです。」その日、キーリングは説明した。
「思ったより早いな。ボラーの統治はしっかりしていると見える。」デスラーが頷く。
「キーリング内務大臣の情報をもとに、我々も惑星破壊ミサイルの開発を急いでいます。」フラウスキー少将が付け加えた。
「キーリング、」
「はい。」
「ガルマン星域に狂信者どもの亡命が起きているか」
「殆どありません。ベムラーゼは、衛星国に信者の財産没収を許可しましたので、逃亡が難しくなっております。ただ、ガルマン内の信者が何らかの動きをする可能性は大となります。」
「略奪の許可ですか。」タランが目を丸くした。「野蛮な」動揺するガミラス人たちに
「いや、それほどに、あの狂信者どもが兇悪なのです。」ガイデルが説明した。「甘く見ると我々も内部から食い荒らされかねません。」
「ボラーは明日にでも大艦隊を送りこんでこよう。諸君、決戦の日は近い。軍の士気はどうか。」
「皆、最後の一人まで戦う覚悟でございます。」クロッペン将軍が答えた。
義勇兵の募集に関し、ガルマン星域では、想定外の事が起こっていた。住民たちの健康回復が予想外に速かっただけでなく、衛星国から来た元警備隊兵士たちの志願も後を絶たなかったのである。
「お前たちはガルマン人ではない。帰還命令が出たはずだ。」クロッペンとタランは当惑した。
「我々には、戻っても家族も友人もいません。一生ボラーの奴隷になるくらいなら、ここで戦わせてください。」「お願いします。」青年たちは口々に言った。
「わかった。補給部隊として採用しよう。」クロッペンの答に
「それでは私たちの気がすみません。最前線で戦わせて下さい。」
ガルマン人も警備兵たち異星人も、同じ処遇にし、一切の差別を行わなかった効果が表れたのだ。タラン将軍の政策の勝利だとクロッペンは感心している。
「しかし」タランが静かに言った。「ボラー艦隊の最前線も、お前たちと同じ衛星国の兵士ではないのか。あるいは同朋かも知れぬ。それでも良いのか」
その言葉に、青年たちは沈黙した。
「キーリングに相談してみよう。何か策があるかもしれない」クロッペンの言葉に青年たちは同意した。
「君たちは、私の下で働いてもらう。衛星国に戻り、内偵、調略を行いボラーの支配を内部から取り崩すのだ。」キーリングの言葉に、青年たちは顔を見あわせた。「辛い任務だ。あくまでも影に徹し、表彰も名誉もない。秘密は厳守。死を覚悟しての任務だ。それに耐えられるか。」沈黙した青年たちにキーリングはさらに続けた。「一週間、考える期間を与えよう。耐えがたいと思う者は、クロッペン将軍の元で補給部隊要員として働いてほしい。」
1/3が補給要員となり、残り2/3が、諜報要員としてキーリングの元に集まった。
ボラー連邦は、信者狩りが終了するや、艦隊をガルマン星に差し向けてきた。戦艦3000・空母500・駆逐艦1万の大艦隊である。
対するガミラス艦隊はデスラーの旗艦を中央に、ガルマン星域外縁で待ち受けた。
「キーリングの優男の話じゃ、ボラーの親衛隊は後ろで高みの見物だって言ってたっすが、相変わらずきたねえ奴らだぜ」レーダーを見ながら、ハイニがぼやいた。
「そのきたねえ奴らを叩くのが、俺たちの役目だ。」フラーケンは続けた。「僚艦に告ぐ。これから亜空間に潜航し、ボラー直属艦隊の真下に移動する。亜空間魚雷の自動追尾作動時間は、10:00ジャスト。一瞬で艦隊を艦隊を壊滅できなければ意味がない。妨害物質の放出は、9:59:50.敵ソナーに探知されることを考え、以後通信は作戦終了まで遮断する。成功を祈る。ガルマンウルフ艦隊、潜航。」
ボラー艦隊が頭上に居る。僅かの物音で探知される危険を考え、ガルマンウルフ号の中は乗員の呼吸音さえ聞こえないほどだ。饒舌なハイニでさえ息を潜めている。亜空間魚雷放出完了。手信号で水雷手がフラーケンに伝えた。9:59:50、妨害物質が、やや離れた3号艦から放出された。ボラーの通信から何も気がついていないようだ。あと5秒・・・
ボラー直属艦隊に、無数の魚雷が突き刺さっていく。真下からの攻撃に艦隊は瞬時に爆発四散した。衝撃が亜空間に伝わってくる。フラーケンは発光信号で僚艦にワープを命じた。
「総統。直属艦隊消滅。衛星国の艦隊は大混乱に陥っています。」
「よし、通信回路を開け。」デスラーは命令した。
「衛星国の兵士諸君。私はガミラスのデスラーだ。君たちを監視していた連邦の直属艦隊は我々が殲滅した。ガルマン人は自由と独立のために立ち上がったのだ。君たちと戦う理由は無い。それは君たちも同じはずだ。速やかにこの宙域から離れ故郷に帰り給え。しかし、あくまでもボラー艦隊として戦う意思ならば、我々も容赦はしない。正々堂々と戦おう。」
戦列が乱れた。離脱する艦、それを阻止しようとする艦、ボラー艦隊は同士打ちに陥った。しかし、やがて1/3ほどになった艦隊が隊列を整え始めた。
「やむを得ん。デスラー砲、発射準備」
「発射準備完了」
強力な閃光がボラー艦隊を包んだ。
「何だこのエネルギー?」ハイニが叫んだ。
フラーケンはレーダーを呆然と見つめている。こんな強力なビーム砲は見たこともない。これがガミラスの科学力なのか。
ボラー艦隊全滅の報に、連邦政府も動いた。デスラーとベムラーゼの会談により、ガルマン星域の独立と休戦協定が結ばれた。
「あああ、風呂はいいなあ。でも、俺たちの先祖は、こんないい文化、どこに置いてっちったんすかね。オヤッさん。」要塞の大浴場に浸かりながらハイニが呟く。
「ボラーの植民地になって100年。ボラーは祖先の文化を徹底的に破壊したからだろう。」ガイデルが答えた。「しかし、裸の付き合いとは良いものだな」
「ええ、次元潜航艇では水は貴重なのです。我々が一番楽しみにしているのが、この風呂ですよ。しかし、体を温めるのがこれほど快適だとは」フラーケンもすっかりくつろいだ表情になっている。
「へへへ、どうせなら、女の子と混浴といきたかったっすよ。」
「お前のような不届きものがいるから、男湯、女湯と作らねばならないんだ。」ガイデルに窘められて、ハイニは舌を出している。
「しかし、あんなに独立がうまくいくとは、思いませんでした。」
「ああ、お前たちが、タラン将軍に捕まってくれたおかげだな。」そう言いつつもガイデルの顔に影が差したのを、フラーケンは見逃さなかった。
「ガイデル提督。」「うん?」
「何かご懸念でも」「風呂で話す話でもないのだが、ダゴンのことだ。」
「ダゴン?あの第7機甲師団のダゴン将軍ですか?」
「俺はあいつ、でえきれえだね。ムカつくっす。」「ハイニ!よせ。」
「だってそうじゃねえすかキャプテン。」
「ムカつく話は、一杯やりながらにしたらどうだ」
ガイデルに言われ、ようやくハイニは機嫌を直した。