ヤマト三度、宇宙へ   作:ryoko22

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第7話 惑星バースの謎

警備隊の装甲車がやってきた。メインスタッフが隊長レバルスと同行、他の隊員たちもそれぞれ乗り込んだ。半数は、翌日の交代要員として表向きは待機させた。

総督府の大ホールでパーティが開かれた。一見華やかそうな雰囲気だが、進の心に不安が染みのように張り付いている。

「古代サン、」アナライザーが小声でささやいた。「警備隊ノ兵士達ハ、ばーす人トハ違ウ遺伝子ぱたーんガ複数。オソラク衛星国ノ兵士達デス。ればるす隊長ヤ士官達ハ、マタ違ウ遺伝子ぱたーんデス。」

上官達がボラー中央政府の人間なのだろうか?幾つもの星を従えている強大な星間国家ボラー連邦、自分たちはとんでもない星にやってきたのではないのか

「古代。」真田の声に我に返る。「もう、来てしまったのだぞ。」

そうだ。前に進むしかない。それしか無いのだ。

「ようこそ、α星の戦士諸君。宇宙戦艦ヤマトの寄港を心から歓迎する。」中央の一段高い所に座っている男が、進たちに声をかけた。「私が、バース星の総督ボローズだ。」

「ご招待いただき、ありがとうございます。」進は穏やかに話し始めた。「ラム艦長の母国がこちらとは初めて知りました。」

「ここバース星は、長年、外敵の侵入に苦しんでいた。そのため、我がボラー連邦が保護する事となったのである。α星の勇士諸君。ラジェンドラ号の戦士の冥福をここに共に祈りたい。」ボローズは杯を掲げた。

進たちも、それに応える。

「古代艦長。この際、諸君らも我らボラー連邦と同盟を結んではいかがかな。」ボローズが口を切った。

やはり来たか。進は思った。

「私たちは新人乗組員の研修航海が目的です。それに私は外交特権を持っておりません。折角のお申し出ですが、私の一存では決めかねます。航海が終わってから、上層部より、必ず連絡がありましょう。」

「しかし、ラム艦長の最期の通信から、諸君らの星もガルマン帝国の侵略を受けていると聞いておるが」

「それは、事実が違います。」自分の軽率な発言がこんな所で、進は内心冷やりとした。「確かに攻撃を受けましたが、宣戦布告無しの攻撃で、相手がガルマン帝国だったかどうかも不明です。二度めはラジェンドラ号を追ってきた艦隊とやむを得ず戦闘になりました。ガルマン帝国という国家とは正式に敵対関係になってはいません。」

「諸君らの母星の安全のためにも、ボラー連邦と同盟を結ぶことを私は、望んでいる。吉報を待っている、古代艦長。」

ボローズは、片手を上げた。給仕の兵士達が、食膳を運んでくる。空気が和んだ。

「古代。ご苦労さん。」真田が進の肩を叩いた。

「まさか、外交辞令までやらされるとは思いませんでしたよ。」戦闘の方がよほどましだ。進はそんなことまで思った。

「ふん。御大層なこと言っとるが」佐渡が酒を飲みながらつぶやいた。「要するに、この星を侵略したんだろう、ボラー連邦とやらが。」

南部も相原も眉をひそめた。どうやら島の予想の通りだった。今夜の酒はとても酔えるものではない。早々に帰った方がよさそうだ。

 

「もっとゆっくりして下さればよかったのに」帰りの車の中でレバルスが笑った。

「水と食料を頂けるだけでもありがたいのに」真田が返答した。「若い連中が多いので、酔って羽目を外す前に退散しますよ。」

 

「よう、土門。」進たちと一緒に戻ってきた竜介に揚羽が声をかけた。「パーティどうだった?美味かったかい、料理?」

呑気そうな声に竜介は苦笑した。

「殆どのどを通らなかったよ。」「何で?」

「薄っ気味の悪い連中でさ。バース星はボラーの植民地らしいぜ。」「ええっ?」

「古代艦長に、ボラー連邦の属国になれってさ」「それで艦長は」

「丁寧にお断りしてたよ」揚羽は黙りこくった。

「なあ、土門。」しばらくして、声を潜めながら揚羽が言った。「収容所を見たんだって?」「うん。」

「どんな感じだった?」「なんか、痩せて酷い扱いされてるみたいだった」

「植民地とか収容所とか、野蛮な星だなあ」「うん。教科書で習ったことがあるけど実際あるなんてなあ」

「バース星って、精神文明は遅れてるのかな、なあ、見に行こうぜ。」「ええっ」竜介の声が高くなる。「しっ。声がでかいよ。」「すまん。でも、どうして?」

「だって、面白そうじゃないか」竜介は呆れてしまった。揚羽はお坊ちゃんのせいか、時々、突拍子もないことを考える、今回もそんな気まぐれの一つなのだろう。「だけど門限」

「大丈夫さ。通気口から入れば、なあ、行こうよ。」二人はヤマトを抜け出した。

2キロほど行ったところに収容所はあった。真夜中まではまだ時間があったが、すっかり暗くなり、冷気が宇宙服のなかに入り込んでくるようだ。サクサクとした雪の上を二人は走った。

「ほら、あそこだよ。」竜介が指さした。囚人たちが外に集まっている。

「何してるんだ?」揚羽が尋ねた。「知るもんか。仕事じゃないみたいだな。もう夜なのに」

「あんな格好で寒くないのかな?」「あの囚人もバース人じゃないんだ。」昼間のデータを見ながら竜介は言った。

「じゃあ、何人なんだい?」「わからない。」

「何処から来たんだろう?」「この星の近くには、人の住める星なんかないぜ。」

「もしかしたら、この星、流刑地かもな」揚羽が声を潜めた。「バース人たちはどこに行ってしまったんだろう?」

竜介も黙り込んだ。

「あ」揚羽が声を上げた。「あれを見ろ、土門。」囚人たちが跪き、虚空に向かって両手を挙げた。「お祈りみたいだぜ」揚羽の声に、竜介も頷いた。

「もう少し側に寄ってみよう。」揚羽に言われて、竜介は立ちあがった。

「お前たち、何をしている。」鋭い低い声と同時に背中に銃口がつきつけられた。

「手を頭の後ろで組め。」竜介と揚羽の銃が取り上げられた。「よし、ゆっくりとこちらを向け。妙な真似はするな。」

こうなっては従うしかない。

 

「お前は?」声を出した若い兵士に、竜介には見覚えがあった。昼間の警備兵の一人だった。

「名前と所属を答えよ。」やや年かさの兵士が尋ねる。

「土門竜介。宇宙戦艦ヤマト生活班炊事係。」「揚羽武史、宇宙戦艦ヤマト戦闘班パイロット」

捕虜になっても、名乗りが炊事係じゃ締まらないや、竜介は名乗りながらそう思った。

「そうか、ラジェンドラ号の」二人の兵士はそのまま黙りこくった。

「あなたたちは」竜介が尋ねた。「バース星の人ですね。どうして、バース星にバース人がいないんですか」

「お前たちに答える義務はない。」昼間の警備兵が冷たく言った。「今頃何をしていた。」

「あの、ええっと、散歩です。退屈だったので」揚羽の答に警備兵が仰天したのが、伝わってきた。竜介は思わず噴き出した。

「き、貴様ら」昼間出会った兵士が激高した。「散歩だと、口から出まかせを」

「よせ。」年かさの兵士がたしなめた。「我々も同じではないか。」

「ああ、よかった。お仲間で」

揚羽の安堵した声に、警備兵たちはすっかり毒気を抜かれてしまったようだった。やっぱりすごいなと竜介は思う。天然というか、揚羽の坊ちゃん気質には誰も太刀打ちできない。訓練学校で最初に俺に声をかけてくれたのも、彼だった。

「あなたたちも散歩ですか?」揚羽が尋ねている。

「ああ、君たちの歓迎パーティの警備をさせられたんで、くたびれたんだ。いいよな客人は。」

「とんでもない。」竜介も割り込んだ。「えらい人の祝辞とか聞かされて、肩が凝ってしまって」

「それで脱走かい?」

「酷いなあ、ただの門限破りですよ」揚羽の答にみんな笑った。

切り株に腰をおろし、4人は木立の隙間から空を見上げた。

「うう、寒」揚羽が身をすくめた。竜介も寒かった。冷気がつき通ってくるようだ。

「何だ寒いのか。バースの冬はもっと寒いぞ。」年かさの兵士が笑った。

「お前たちの星は暖かいのか?」昼間の警備兵が尋ねた。

「暖かい所もあるけど、バース星ぐらい寒い所もある。」竜介が答えた。

「そうか、だが、バースの春は素晴らしいぞ。」二人のバース兵は空を見上げた。春を待ちわびる顔だった。北国の人々が春を待ちわびるように、地球人もバース人も春を待ちわびる心は同じなのかもしれない。竜介はふとそう思った。

「あそこの建物の人間は何か悪いことをしたんですか?」揚羽の問に、バース兵が硬直する。

「おい、よせよ。」せっかくいい雰囲気だったのに、

「あいつらは、狂信者どもだ」昼間の兵士が吐き捨てるように言った。「あいつらのせいで」

「よせ!」年かさの兵士が3人を睨み付けた。もう、何も話してはくれないだろう。

狂信者?大人しそうな囚人なのに、何をしたというのだろう、竜介は混乱した。

急に森の外が騒がしくなった。

「収容所の方角だ。」4人とも飛び出した。

囚人たちが警備兵を襲っている。装甲車で電気柵の基盤に体当たりし、破壊していた。

「脱走だ。」「おい、土門。あっちはヤマトの方角だぞ。」

「お前たち、すぐに戻れ」銃を投げ渡しながら昼間の警備兵が叫んだ。

「ありがとう。」二人は礼を言うと駆け出した。

兵士達が警備隊に連絡する声が切れ切れに聞こえてくる。

 

「お前たちは何者だ。」ヤマトの機関室で、銃を突き付けられながら太助は叫んだ。

「我々は、シャルバートの信者だ。」

シャルバートの信者?なんだそれは?どよめきと不安が機関士たちを覆っていく。

「すぐに発信させろ。」

「待ってくれ。」太助が言った。「我々では決められない。艦長の指示を仰ぐ。行先と目的を教えてくれ。」

「行先は決まっていない。」リーダーらしき男が顔を曇らせた。「シャルバートの信仰を守れる土地に行く。この船なら、どこにでも行けるはずだ。」

なんて勝手な連中だ。撃たれて倒れている仲間を横目で見ながら、太助の腸は煮えくり返っている。しかし、努めて穏やかに話しかけた。

「わ、わかった。とにかく艦長に説明しよう。その前に、仲間のケガの手当てをさせてくれ。機関士が少ないと船は動かない」

「ダメだ」にべもない答えだ。

 

機関室の状況は、通信回線を通じて、第一艦橋に響き渡っている。

「古代。どうする?」真田が考え込んだ。「へたに刺激すると、徳川達、機関士の命が危ない。」

「いっそ連中の望みを聞いてやるふりをしたらどうだ。宇宙に出れば方法はいくらでもある。」島がきっぱりと言った。

「いや、危険すぎる。」真田が首を振った。

「艦長。いらっしゃいますか?古代艦長。」太助の声と共にメインパネルに映像が映し出された。

「彼らは、シャルバートの信仰を守れるどこかの星に連れて行けと言っています。」

「シャルバートの信仰は宇宙に平和をもたらす聖なる信仰だ。」リーダーの男がメインパネル越しに話しだした。「シャルバート星は滅んだが、シャルバートの信仰を守れる約束の地に行く。」

「宇宙地図はあるか、場合によっては連れて行かないこともない。」進は呆れながらもそう言った。

「持っていない。だが、時間は10分、要求が聞き入れられない場合は、機関室を破壊する。」通信は切れた。

「頭がどうかしてるんじゃないか?」相原が呟いた。

「連中の武装はわかったか、アナライザー。」

「衝撃銃ダケノヨウデス。」

「よし、じゃあ、通気口を使って敵の背後をつく。」進が決断した時

「艦長。連中は収容所の囚人です。」「侵入は艦尾の脱出口から、人数は7・80人と思われます。」揚羽と竜介が飛び込んできた。

「よし、戦闘班集合、全員衝撃銃で応戦。加藤、コスモタイガー隊出動。」

その時、メインパネルにスイッチが入った。

「こちらの不手際で、諸君には大変なご迷惑を」レバルスが写っている。「囚人たちは我々が排除する。」

「いえ、大丈夫です。」進は丁重に断った。ヤマトの情報がボラー側に漏れることは、防がねばならない。

 

「10分たった。」機関室でシャルバートのリーダーが叫んだ。「我々の要求は拒否された。この上は、この船を破壊するまで、まず機関室から徹底的に破壊せよ。」

「やめろ!」太助は思わず飛び出した。衝撃銃が太助を貫く。

「徳川!!」機関士たちの悲鳴が聞こえる。「大丈夫だ。」太助はうめいた。「これは衝撃銃」そう言うのが精いっぱいだ。

「衝撃銃だと、野郎騙しやがって。」機関士の一人が椅子を囚人に投げつけ、叩きのめして銃を取り上げた。彼はすかさず、その銃で何人かの囚人の銃を叩き落した。機関士たちが飛びかかる。機関室は乱闘の場と化した。

「よせ、機関士たち、離れろ。」進が叫ぶ。同時に、衝撃銃で二人の囚人を打ち抜いた。

 

侵入者たちは、簡単に取り押さえられた。

「なぜこんな無謀なことをしたんだ」進の問に、囚人たちは泣き崩れた。

「せめて、若者たちだけでもこの船に乗せていってほしい」

「それはできない。」リーダーは泣き崩れた。「レバルス隊長に寛大な処置をお願いしておく。」

進の言葉に、囚人たちはむせび泣くだけだった。

レバルスを先頭に警備隊の兵士達が、囚人を連行していく。兵士たちの中には、竜介と揚羽が出会った二人も交じっていた。二人は一瞬竜介たちを見つめ、すぐに囚人たちを護送していった。しかし、竜介も揚羽も見逃さなかった、彼らの目の中にある言い知れぬ囚人たちへの憎悪の炎を。

「本当に申し訳ない。お詫びもかねて、ボラー連邦中央政府より明日、代表者が総督府を訪れる。艦長もご出席いただきたい。」レバルスが頭を下げた。

 

「気の毒な囚人たちだな。」第一艦橋では、警備隊が去った後、誰からともなくそんな言葉が出た。

進は島と真田と一緒に、竜介と揚羽を呼び出した。緊張した二人が艦長室に入ってきた。

「君たちが昨夜見たことを全て言いたまえ。」

「退屈だから、外に出ようと誘ったのは私です。土門隊員は関係ありません。」「いえ、自分も自分の意思で外に出たのです。」

「罰は後で与えるとしても」島が苦笑した。「何を見たんだ。」

二人は、バース人の警備兵のことをすべて話した。

「狂信者か。穏やかじゃないな。」真田が眉をひそめた。

「バース兵は、心底、あの囚人たちを憎んでいるようでした」竜介が首をかしげながら言う。

「大人しそうな連中だったが」進も首をかしげた。

「両方の言い分を聞かなきゃ、本当のことはわからないさ」島は言った。

「島の言う通りだ。いずれにせよ、今解っていることは、バース星がボラー連邦の属国になっていること、ボラー連邦は衛星国が多数あるらしいこと、衛星国の人間は、下級兵士になっているらしいこと。」真田はそこまで言った。

「ボラー連邦にはシャルバートという信仰があり、その信者を収容所に送っているらしいこと、バース人の中にはシャルバート信者を憎んでいるものがいること」島がゆっくりと言った。「どうも「らしい」が多いな。」

「はっきりしていることもある。ボローズ提督やボラー連邦は地球を属国にしたいと望んでいること」そういうと進は唇をかみしめた。

重苦しい空気が艦長室を包んだ。

 

「明日、表敬訪問に行かねばならん。それで、ボラー連邦の正体が少しでもわかればいいんだが。」竜介と揚羽を退室させた後、真田がぽつんといった。

「俺と真田さんで行く。加藤と土門に護衛をさせる。万が一、俺たちが帰ってこなかった場合は」進は島を見つめた。「ヤマトを頼む。」

 

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