青葉が入社し1週間、週末明けの月曜日の出社と同時に青葉は名倉の元を訪れる。
青葉「名倉さん、おはようござい……」
名倉「ああ、おはよう、元気そうだな、お前……」
青葉「名倉……さん?」
どう見てもいつもの雰囲気ではなく、かなり冷めた印象に変わった名倉。
名倉「青葉、1から12で好きな数字言え」
青葉「え、急にどうして数字?」
名倉「良いから」
青葉「それじゃあ8で」
名倉は2つのダイスを手にするとそれをコーヒーの紙コップに入れ、地面に閉じ込めるとカップを開いた。
名倉「見事に8だな、少なくとも退屈な日にはならなそうだ」
名倉が始めたゲームに理解の追い付かない青葉。
青葉「名倉さん、それって……壺振りですよね……」
八神「やっぱ、壺振り始めたか」
青葉「え、やっぱりって……」
八神はゲーミングチェアに座ると話を始めた。
八神「よくある話さ、一ヶ月の内、ゲームソフトの新作が出ない日は決まって名倉は壺振りをはじめ、仕事に手を付けなくなるんだ。通称ゲーム枯れ。こうなると私でも手が付けられないぐらいめんどくさいんだよね~」
青葉「名倉さんって病的なゲーマーですね」(汗)
すると名倉は財布とジャケットのポケットにしまうと青葉に告げる。
名倉「青葉、買い出しの仕事行くからついて来い」
青葉「か、買い出し……」
名倉「八神、後は頼むぜ」
八神「わかった、今の名倉には仕事は任せられないしな、その代わり金だこでたこ焼き買ってきて」
名倉「
青葉「ま、待ってくださ~い!!」
そうして名倉と青葉はイーグルジャンプを出るのだった。
揺れる電車の中、座席でゲームに興じる名倉にその横で青葉が聞く。
青葉「どこに向かうんですか?」
名倉「もうすぐ着くさ」
アナウンス「間もなく、池袋、池袋になります」
名倉「降りるぞ」
2人は駅を出ると交差点に出る。
青葉「凄い!!私、池袋初めてなんですけどこんな場所だったんですね!!」
名倉「それじゃあ、仕事場に行くぞ」
名倉に案内され、辿り着いたのは……
青葉「ここって……
S○GA池袋!!」
名倉「ここなら退屈しないで良いだろ?」
青葉「大丈夫なんですか!?仕事中にゲーセン行って!!」
名倉「良いから入れ」
名倉に押され、青葉はゲーセンへと入店した。
名倉がクレーンゲームをやる横でぎこちない表情を浮かべる青葉、名倉はそんな彼女に聞く。
名倉「仕事中のゲーセンは非常識と思うか?」
青葉「はい、何かサボってる気が……」
名倉「青葉、ゲーマーってのは他人のルールに従うのを異常なまでに嫌う、従うのは自分と公式とゲームマスターのルールだけだ。俺は自分のルールでそれが正しいかを決める。お前はただ従えばいいのさ」
青葉はその名倉の言葉にある種の正しさを知る。
青葉「それなら私も名倉さんのルールに従います」
名倉「そうか、じゃあ、これ全部くれてやる」
青葉「え?えええええええ!!」
青葉の足元には大量のミルクコーヒーがクレーンゲームの台から転がっていた。
名倉「200円で15本、まずまずの成果だな」
青葉「名倉さん、これどうやって取って……とても200円じゃあこんなに……」
名倉「驚いただろ、やったら100%店員に嫌われる裏技その1、土台ごとひっくり返すの術さ、その証拠にほら」
青葉「状況的にこれどう見ても違法でしょ!!」
名倉「大丈夫だ、これでも景品はちゃんと取った扱いになるから」
青葉「この人無茶苦茶だよ!!」
名倉は青葉をからかいつつ、コーヒーを開ける。
名倉「青葉、お前が欲しい物、なんかあればとってやるぞ。何が欲しい?」
青葉「良いんですか?」
名倉「折角連れてきたんだ、何かくれてやる」
青葉は長考の末、ある物を希望する。
青葉「ソニックのぬいぐるみ、取れますか?」
名倉「それなら」
そう言うと名倉はアームを動かし、ソニックのぬいぐるみを押し付けた。
ガコッ!!
名倉「ほらよ」
青葉「凄い、一回で簡単に、名倉さんクレーンゲームも上手すぎます」
名倉「やったら100%店員に嫌われる技その2、アームで押し付けて下に落とすの術さ」
青葉「上手い以前に違法な取り方だった……」
そんな様子を楽しみつつ名倉はゲーセンのある台を見つける尋ねる。
名倉「青葉、バーチャファイターの経験はあるか?」
青葉「え?バーチャファイター?少し触ったぐらいには……」
名倉は100円を投下すると名倉名義のAIMEカードを読み込む。
名倉「やってみろよ、初心者でも勝てるコンボを教えてやる」
ガタガタガタ
高速でボタンを押す青葉、横で名倉が的確に指示を出す。
名倉「パンチとキックを主体に回避を多用、相手の鋭い強攻撃はガード、相手が攻撃を受け続けて怯んだ隙にカウンターだ」
青葉「これでどうだ!!」
KO
青葉「ゼーハーゼーハー何とか勝てた……」
名倉「素人にしては中々だった、ていうかテンパり過ぎだろお前」
青葉「久々にやった格闘ゲームだから」
名倉「息抜きに音ゲーでもやるか?向こうにチュウニズムあるぞ」
青葉「チュウニズム!!私、高校時代よくやってましたよ」
名倉「それなら二人で対戦と行こうか?」
青葉「負けませんよ!!」
タンタンタン!!
名倉「この譜面についてこれるか」
青葉「嘘でしょ、名倉さんと差が開きすぎてる」
名倉「お前、JUSTICEで慢心しすぎだ。俺なんかJUSTICE CRITICALしか出してないぞ」
青葉「何、その神業!!おおよそ上手いと自負してた私が恥ずかしいよ!!」
名倉「俺に勝てると思ったか?10年早いんだよ」
最後の譜面を終えるとスコアが表示され、青葉はSS評価、名倉SSS+と実力の高さを見せつけられ、青葉は崩れ落ちる結果となった。
PM6:00
イーグルジャンプに戻った名倉と青葉はコーヒーを片手に休んでいた。
青葉「今日はありがとうございました」
名倉「ありがとうって一応は仕事だからな?」
青葉「それでも楽しかったです、ソニックのぬいぐるみまで頂いて……」
名倉は青葉の嬉しそうな表情に満更でもない顔をする。
名倉「お前みたいな年下ほど可愛いもんはねぇな、別に遊びのつもりじゃなかったがその言葉、受け取っといてやる。だが、明日は容赦しねぇからな」
青葉「どーんと来いです!!」
名倉は以前うみこから奪ったソイジェイを開けると席を立つ。
名倉モグモグ「俺はまだやることがあるから、先には帰れない。青葉も暗くならない内に帰れよ」
青葉「はい、お先に失礼します」
帰って行く青葉を見送ると名倉は八神の元を訪れる。
八神「案外気に入ってるんだな、青葉の事」
名倉「何の事かな?あいつに肩入れする覚えは無いが?」
八神「ホント、嘘つきだよねぇ。あんたも」
ソイジェイを食べ終わると名倉はタブレットを取り出す。
名倉「フェアリーズストーリーのデバックプレイのバイト、そろそろ募集かけとくべきだと思うが、青葉がそれなりにキャラデザを理解し始めた辺りから本腰を入れると思う。もう少し、あいつに手をかけるべきだな」
八神はペンを止めると仰け反るように名倉と目を合わせる。
八神「寧ろ内心面白がってるんじゃないのか?デザイン案全部見たけど案外使えそうな気がするんだけど?」
名倉は不敵な笑みを浮かべ、八神に告げる。
名倉「ゲーマーは手段を選ばず、慈悲も情けもかけることは無い。あいつと本気でやってるこの悪趣味なゲーム……
じっくりと楽しみたいじゃないか、その為にはあいつにもう少し理不尽なルールを与えても良いかもな♪」