相反のライ   作:星月

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第十五話 『騎士の資格』

「編成、行軍、作戦。みごとに法に倣ったものだ、どれをとっても賞賛に値するよ。さすがは俺の右腕を務めていただけのことはある。だが、一つ俺から教えてやるよライ。

 奇襲のタイミングとは自然にできるものではない。……自らの手で作り出すものだ!!」

『ゼロ、予定通り全機配置についた。いつでもいける』

 

 新しいナイトメア――『蜃気楼(しんきろう)』の中でゼロ・ルルーシュはかつての友にむけてこう語る。敵として、もう共に戦うことはないのだと自分にも言い聞かせるように。悠然とかたるその姿は勇ましく人を惹き付けるカリスマがある。

 そしてそこに副指令である扇からの通信が入る。……条件は全てクリアした。いつでも騎士団は動き出せる。

 

 それを確認し、ゼロは騎士団全軍にむけて回線を開いた。

 

「わかった。……聞け、日本の戦士達よ! 真に日本を憂える勇者達よ!

 我らが国・合衆国日本に再びかつての植民地支配を行おうとする非情なブリタニア軍は我が策にかかった。

 ゲフィオン・ディスターバーが作動している今が絶好の機会である!

 トウキョウに入り込んだ憎きブリタニア軍を壊滅せよ! 日本は、我らの手で守るのだ!」

「「「おおおおおおお!!」」」

 

 日本軍、黒の騎士団の士気は高い。ゼロの奮起を促され、その勢いはもはや止まることをしらない。

 つい最近まで日本が植民地支配を受けていた上に、相手はその植民地支配を行っていたブリタニアだ。嫌でも士気はあがる。たとえ、その相手が誰であったとしても。

 ――ここで負ければ全てを失う。またあの時代に逆戻りになる。だからこそ絶対に負けられない。その思いが日本人達に大きな勇気を与えた。

 

「よし。仙波、影崎。お前達は弐番隊、参番隊を率いてチバから突入してくる部隊にあたれ。

 少しでもトウキョウに来るブリタニア軍の援軍の到着を遅らせろ!」

『承知!』

『了解!』

「他の部隊は全軍、トウキョウに向け進撃せよ! 

 敵は突然の出来事に混乱している。今のうちに戦力を削り取れ!」

「了解!」

 

 仙波、影崎の両隊長はライ、カレン達救援部隊の迎撃に。

 そしてゼロ、スザク、卜部、C.C.達率いる騎士団本隊が混乱のさなかにあるトウキョウヘと攻め込んだ。

 

 守る側であるはずの騎士団がトウキョウを攻め、攻めるはずのブリタニア軍がトウキョウから出撃し、迎撃する。……攻守は完全に入れ替わっていた。

 

 

 

――――

 

 

 

 一方、トウキョウで迎撃体制に入っているブリタニア軍。 

 こちらの部隊の指揮官はマリーカ、レイ、テスラの三人である。

 

 動ける部隊を纏めて、なんとか陣形を保とうとするが、黒の騎士団がそうはさせまいと動き出す。

 

『マリーカ、レイ。聞こえているな? ……ついに黒の騎士団が動き出した』

「……はい」

『イエス』

 

 年長者であるテスラから二人にむけて通信が開かれた。

 突然の出来事とは言っても指揮官が冷静さを失ってはならないと言葉ではなく、その姿で証明している。

 

『我々はあくまで黒の騎士団の足止め――ライ殿下達、救援部隊が来るまでの時間稼ぎが目的だ。

 士気は敵側の方が高い。まともに戦っては勝ち目がないだろう。当たっては退き、相手を牽制しつつ騎士団の進軍速度を遅らせる。……ランスロットには私が当たろう。武運を祈る』

「はい!!」

『了解で~す。それでは、また後で』

 

 確認をしてテスラは通信を切った。もう騎士団の姿がしっかりとその目で確認できる。

 まずは動ける部隊に砲撃を命じて、相手の出方を伺おうとしたそのとき……ゼロが動き出した。

 

『うん? なんだあの機体は? 他の量産機とは違う形状だが……専用機、まさかゼロか?』

『ゼロがいきなり前線に現れたってことですか~? そんなの信じがたいですけど』

 

 機体全体が黒く染められている。……どこか、かつてのガウェインを思わせるような風貌。

 その機体がいきなり、騎士団の中から飛び出してきた。

 

 その機体は何もない空中で止まると、その機体の胸のハッチが開かれて中からは一発のプリズムが放出される。

 

「……なに?」

『わからんが……全員散れ! 固まったら狙われる! おそらくあれは……』

 

 テスラが何か答えるまえに、その答えがゼロの手によって明かされた。

 

 そのプリズムを追うように発射された一筋のレーザー砲。

 レーザーはプリズムにあたり、一筋のレーザーが拡散してブリタニア軍を一挙に襲う。

 

「なっ!?」

 

 これはゼロの機体、蜃気楼の新武装――『拡散構造相転移砲』。

 プリズム状に凝固させた特殊な液体金属、それに高威力のビームを発射することで、広範囲にビームを乱反射させ長距離かつ広範囲の標的を一度に殲滅する兵器。

 

 拡散してもその威力は衰えというものを知らない。避けきれなかった機体はあっという間に爆散してしまう。

 

『申し上げます。ラズロー隊、全滅!』

『軽アヴァロン1艦に被弾。フロートに損傷発生!』

『そんな……バカな!』

 

 ……今の一撃だけで、マリーカ・レイ・ボーアの混成部隊は5分の1の戦力を失った。

 それだけではない。今の攻撃をよけるために散会したために、生き残った部隊の陣形にも若干のずれが生じる。

 

 そしてそのチャンスをゼロは逃すわけがない。

 

『ブリタニア軍は崩れた! 全軍、突撃せよ! ブリタニアを粉砕するのだ! 今こそ我々の力を示せ!』

 

 レーザー砲を発した機体から発せられる声。

 これで蜃気楼のパイロットがゼロであることは判明した。

 

 ゼロの命を受けて、騎士団のナイトメアはどんどん突撃してくる。

 

「まずい! みんな迎撃体制に! 騎士団を……『どけどけどけどけー!!』 ッ!」

 

 マリーカは部隊に命令を下そうとするが、それをさえぎるように騎士団のナイトメアが突撃してくる。

 

 マリーカはヴィンセントのMVSで刀を受け止める。

 ……大丈夫。何も問題はない。訓練どおりにやれば!

 

『お前達は、黒の騎士団の新エース、このたま「邪魔!」 きん!?』

 

 このような雑魚(たまき)と遊んでいる暇はない。

 マリーカは暁の刀をはじき返すと、ランスの勢いそのままに暁を貫いた。例のごとく、玉城は一刀の元に切り捨てられた。

 

『……嘘だろ、オイ!? 畜生! なんで俺はいっつもこうなんだよーー!!』

 

 脱出ポッドが作動し、マリーカを攻撃した本人――玉城のコクピットブロックが宙を飛んでいるが、マリーカは特に追おうともしない。

 あの程度の実力ならば仮にまた出てきたとしても何も問題はない。

 それよりも、今はここにいる黒の騎士団を少しでも撃破することが最優先事項。

 

 マリーカはヴィンセントを別の暁へと向ける。

 成長した少女は、その実力を発揮するべく戦場を駆け抜けていく。

 

 

 

――――

 

 

 

 一方、ブリタニア軍中央。

 テスラが指揮を執っているが、その陣形を次々と崩していくたった一機のナイトメアがいた。

 

 機体全域が真っ白に染まっている機体。それはかつてブリタニアの最新兵器であったもの――『ランスロット・コンクエスター』である。

 黒の騎士団と合流してからはラクシャータの手に渡って、さらにその機体性能が増している。その突破力はもはや最強と呼んでも過言ではない。

 

 たった一機のために、テスラの部隊はどんどん追い詰められていた。

 

『レイ隊長! 中央が押されています!』

「あの機体、例の裏切り者か。……皆さ~ん。しばらく持ちこたえていてください。ミーが中央の援護に向かいます。

 各機、騎士団に囲まれないように、背を預ける形で。……絶対黒の騎士団に背中を取られないように」

『Yes,My road』

 

 その様子は右翼を指揮しているレイからも見えていた。 

 ……明らかにランスロット一機のために戦線が押されている。あの突破力は邪魔だ。今すぐ排除しなければならない。

 

 レイは部隊の指揮権を一時的に預けてテスラの救援に向かった。

 

 

 

――――

 

 

 

「ゼロの進む道は……僕が切り開く! 邪魔は、させない!!」

 

 強化された機体のコクピット内でスザクは叫ぶ。

 両手にMVSを所持し、次々とブリタニア陣営に切り込んでいく。

 

 量産機ではとてもではないが、時間稼ぎにさえならなかった。ランスロットと出会ったら最後、まともに打ち合うことさえままならずに、気が付いたときにはすでに機体は真っ二つにされている。

 

 その姿は……まさに、『白き死神』。ブリタニア軍の兵士達は次第に恐怖に駆られ、少しずつ後退していた。

 

『枢木スザクぅぅぅぅぅ!!』

「ッ!?」

 

 そのランスロットに上空からMVSで肉簿する一つの機体――テスラのヴィンセントだった。

 反応が遅れたが、彼にかかっている「生きろ」というギアスの効果もあり、なんとかMVSで防ぐことができた。

 

 テスラは防がれた事にはとくに驚く様子を見せることなく、ひたすらオープンチャンネルで叫ぶ。

 彼がスザクに感じている矛盾を。彼がスザクを嫌っている原因を。騎士としてスザクを許せぬ問題を。

 

『枢木! ……信じる仲間を裏切り、仕える国を捨てて、そしてブリタニアに属した男が! 

 自らを重用してくださったユーフェミア殿下のご期待にまで背いて! 再び裏切りの道を歩むか!!』

「……」

『幾度も自身の立場を変え、戦うべき相手を変えてきた。お前の望みはどこにある!?』

 

 何度も他人の期待を、信頼を、希望を裏切り続けた男。

 それがテスラは許せなかった。自身が信じる者には最大の敬意を示すテスラ。相容れるわけがない。

 

「……俺は、ゼロの進む道を切り開く! ただそれだけだ!!」

『ふざけるなっ! ……忠誠なき騎士に、なんの存在意義がある!? 守るべきものを見失った貴様如きに……!』

「見解の相違ですね。守るべきものなら俺にもある! そして、そのために俺は今ここにいる!」

 

 だが、ヴィンセントでも機体性能はランスロットには届かない。

 出力に差がでた。ヴィンセントはランスロットに軽く押し返され、そのまま後方に吹き飛ばされた。

 スザクはまさに、自分の方が上なのだとテスラに誇示するように。それがさらにテスラの心を煮えたぎらせる。

 

『そうか。あくまで己が意思を曲げず、自身の欲に屈するか。……どうやら貴様はもはや騎士と呼ぶに値しない! ここで消えろ!!』

 

 テスラが信じる騎士道精神を汚す枢木スザクという存在が許せない。

 テスラは再び上空から一直線に、ランスロットに向けて突撃していった。

 

 ヴィンセント本来のスピードと、落下のスピードも重なって今度こそあの白い機体を貫く。――テスラはそう決意した。

 

 対するスザクはMVSを構えると、その場から動かずにそのまま制止する。

 そして、テスラのヴィンセントとスザクのランスロットが交錯した。

 

『なっ……!?』

「……あなたに認めてもらおうなんて最初から思っていない。僕は僕の道を突き進むだけだ。誰にも邪魔は、させない!」

『……なぜだ。それだけの力があるのならばなぜ貴様は……』

 

 ……ヴィンセントが真っ二つに両断された。

 勝ったのはスザクだった。降下してくる動きに合わせて、スザクはMVSを振るった。……その切れ味は、ヴィンセントでさえもあっけなく両断した。

 

『申し訳、ありません。……殿下……どうかッ…………』

 

 ただ一言。己が信じた主にむけて、期待に応えることができなかったことへの謝罪を呟くと、両断されたテスラのヴィンセントは脱出する事すら叶わず、ゆっくりと音をたてて崩壊していく。

 

 だがスザクは振り返らない。

 後方で聞こえた激しい爆発音。それだけで全て確認できた。

 

 ――今の僕は黒の騎士団零番隊隊長であり、ゼロの刀なんだ。

 目を閉じて自分に言い聞かせると、再び戦場へと目をむける。

 

『すみませ~ん。まだ相手してもらいま~す』

「……ちぃっ、またか!!」

 

 だが、そこに正確な射撃が打ち込まれてきた。

 ランスロットを急上昇させると、先ほどまでいた場所に無数の弾丸が通っていく。

 

 射撃元は……またしてもヴィンセントの指揮官機。救援に来たレイの機体だった。

 

『テスラさん、どうやらギリギリ間に合わなかったみたいですね~』

「……」

『せっかく二対一で迎撃しようと思ったのに。……どうしてくれんだよ、この天然パーマ』

「言い残すことはそれだけかい?」

『…………いい加減ぶっ殺すぞ、偽善者』

 

 今度はスザクから攻めかかった。

 2本のMVSの同時攻撃。これをレイは防ぎきれないと判断したのか、上空へと逃げていく。

 

 スザクはそれを確認し、追撃。

 空中でのぶつかり合いが繰り広げられている。

 

『……ッ! 力だけは無駄にありやがって!!』

「悪いけど、僕は負けるわけにはいかないんだ!」

 

 つばぜり合いが続く中、スザクはランスロットに仕掛けられている4つのスラッシュハーケンを全て解放する。

 ブースターの効果もあって威力が増大しているハーケンはヴィンセントの装甲をどんどん削っていく。

 

「……終わりだ!」

 

 そしてとどめの一閃。

 MVSによって、ヴィンセントの下半分は切り落とされて地面に落下していく。

 

『誰が、終わりだ!? ……ミーだって、そんな簡単にやられるわけにはいかないんですよ!!』

 

 だが、それでもレイは持ちこたえた。

 後方へと通過していったランスロットにむけて正確に射撃を行う。

 

 弾はランスロットのフロートへと吸い込まれていった。

 

「なっ……この!!」

 

 これで終わったものだと油断したのだ命取りだった。

 スザクは振り返りざまにヴァリスを放つ。これにはさすがに耐え切れずに、ヴィンセントの脱出ポッドが作動する。

 

『すみませんマリーカ、後は頼みます。…………ざまあみろ、この裏切り者。ウザク死ね』

 

 仲間への短い応援と、敵への軽蔑する言葉を吐きながらレイは戦場から離脱していく。

 撃破されたが、たしかにいい仕事をした。あのランスロットに損傷を与えたのだから。

 

 フロート片翼を失ったランスロットは飛行能力がまともに働かずに、戦いに参加することも難しい。

 ランスロットは整備のため、一度戦場から引き上げていった。

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