自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!   作:荒星

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第13話 約束

 先ほどの倉庫から剣を二本くすねて装備し、俺達は廊下を進んでいた。

 

「ここ、どうやら船みたい……」

 

「そうらしいな」

 

 取り敢えず出口を探して彷徨っていると、廊下の少し先に先ほどの黒づくめの男達の一味だと思われる男が、アサルトライフルを持ってこちらに歩いてくるのが見えた。

 

「ソフィア、魔法でアイツを昏倒気絶させられないか? 出来るだけ物音を立てずにやり過ごしたいんだ」

 

「わかった」

 

 そして10秒ほど経ったが、ソフィアは魔法を撃たない。

 

「おい、何やってるんだ!?」

 

「わ、わからない! けど、手が震えて……」

 

 そうして角で息をひそめてひそひそ話ていると、男がこちらに近づいて来た。

 

「あれ……? おかしいな、アイツちょっとだけ捕虜の様子見てくるって行って帰ってこないし。まさか王女様とお楽しみ中か? 流石にそんな馬鹿な事したら、あいつに殺されることくらいわかるはず……」

 

 男はこちらに独り言が聞こえてくるまで近づいて来ている。

 

「クソ、やるしかねえ!」

 

 俺は意を決して飛び出す。

 

「なんだ!?」

 

「フッ!」

 

 俺は剣の柄頭で男の後頭部を強打した。相手の意表を突いたこともあってか、俺は一撃で男を無力化する事が出来た。

 

「何とかなったな……それで、どうして撃てなかったんだ?」

 

「わからない……けど、怖いの。さっきみたいに自分の撃った魔法が跳ね返ってきたらと思うと、手の震えが止まらない……」

 

 やはりか。原作でもソフィアは敵に自分の放った魔法が跳ね返されて、攻撃魔法を使うことが怖くなったと言っていた。

 しかし、そのトラウマになったイベントが起こったのは孤児院の視察中で、遊園地では無い。

 この違いは一体……。

 

「わかった。じゃあ俺が先行するからついてきてくれ、防御魔法は問題なく使えるな?」

 

「う、うん」

 

 そして俺たちは船の中を彷徨い続けた。

 途中危ない場面が何とかあったものの、何とか切り抜けた。

 

「あれ、もしかして出口じゃないか!?」

 

「ほ、ホントだ! やった! 無事に帰れる! 皆を心配させちゃってるだろうな……」

 

 俺たちはエントランスのような場所に出て、出口を見つけて喜んだその時。

 

「おやおや。お喜びの所申し訳ありませんが、貴方達がお帰りになる事などできませんよ?」

 

 俺たちの前に、先ほどのフードの男が立ちふさがった。

 

「クソ、最悪だ」

 

 俺は剣を抜いて臨戦態勢になる。

 

 ――こんなことならバフ盛っとくんだった。

 

「ソフィア! 基本俺が戦闘するから、ソフィアはバフ系のスキルがあるんだったらかけてくれ! 後はダメージ受けたら治癒よろしく!」

 

 それだけ言い残して俺はフードの男と戦闘に入った。

 

「ハッ!」

 

 俺はフードの男を切りつけた、しかし。

 

「なん、だと!?」

 

 男は俺の剣を腕で受け止めると、そのままはじいた。

 

「お前……何者だッ!?」

 

 そして、男はフードを脱ぎ捨て言った。

 

「フフ、これは失敬。自己紹介が遅れました、私の名前は邪眼のエリク。邪神教団が幹部の一人です、以降お見知り置きを。と言ってもあなた方の人生はもう長くないですが」

 

 邪神教団。魔神アスタロトの復活を目指す教団、幹部たちは総じて強いのだが……

 

「思い出したぞ! 最弱のエリクじゃないか!」

 

 そう、あだ名は最弱のエリク。物語開始前にあっさりと退場した唯一の幹部。名前と能力しか出なかったからすっかり忘れていた。

 確か能力は、一定以下の威力の魔法を反射する左目の邪眼。

 

 俺がつい思ったことを口にすると、エリクは引きつった笑みを浮かべた。

 

「ほ、ほう? 言ってくれますねぇ、私が最弱……このオレが最弱だとォ!? ふざけるなァ!!」

 

 激怒したエリクが飛び掛かってくる。

 

「わ、悪かったって。ただつい思ったことがポロっと」

 

「貴様ァァ!」

 

 エリクは手に着けているガントレットから暗器を取り出し、投げつけてくるが双剣ではじく。

 

「オラッ!」

 

 俺はレイスラッシュを放つがするりと躱されてしまう。

 

「クソ、すばしっこいな」

 

 少し暗器が掠って、頬から血が出たがソフィアが後方から治癒してくれた。

 

「フフフ、貴方はゆっくりと八つ裂きにしてあげますよ。ですが一々回復されるのは面倒ですねぇ……」

 

 エリクはそう言うと、何かのスキルを使った。

 

「なんだ!?」

 

 エリクが手を横に振ると、エリクが何人も現れる。

 

「何!? ミラージュデコイだと!」

 

 ――クソ、本体はどれだ!

 

「来ないで!!」

 

 俺が目の前のデコイを手当たり次第に切っていると、後ろから悲鳴が聞こえてきた。

 咄嗟に後ろを振り向くと、エリクがソフィアに向かっている。

 しかしソフィアは回避もせず、防御魔法を使うそぶりもない。どうやら癖で攻撃魔法を使おうとしてしまったようだ。

 そんなソフィアに向かってエリクが忍ばせていた短刀を振りかぶる。

 

 ――間に合えッ!

 

「あ……」

 

 どうやら間に合ったようだ、ソフィアを庇った俺の左わき腹には短刀が突き刺さっているが、このくらい大丈夫。

 

「ハハハ! このままその腹を引き裂いて差し上げますよ!」

 

「ダメェ!!」

 

 ソフィアの悲鳴が聞こえてきたが、俺は安心させるために笑いかけた。

 

「大丈夫。俺はそんなにヤワじゃねぇ!」

 

 俺は先ほど拾ってあった暗器を、エリクの怪しく光る左目に突き刺す。

 

「ギャアァァ!?」

 

 エリクはたまらずに俺の腹に突き刺さった短刀から手を離した。

 

「な、言ったろ? 大丈夫だって」

 

 俺がたまらずに少し離れた壁に寄りかかるように、よろよろと座り込むとソフィアが駆け寄ってくる。

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! 血がこんなに!? 私のせいで……」

 

「気に病むなって。それよりもアイツの左目は潰したんだけど、攻撃魔法使えそうか?」

 

 俺がそう聞くと、ソフィアは首を振った。

 

「ダメなの……力になりたいのに! 今も考えただけで手が震えちゃうの!!」

 

「そっか、分かった」

 

 俺はまだのたうち回っている奴を見据えると、腹に突き刺さった短刀を抜いて再び立ち上がった。

 

「待ってよ!? そんな傷で動いたら君が死んじゃう!!」

 

「なあ、ソフィア。また魔法を跳ね返されるのが怖いか?」

 

「うん……」

 

「もうアイツの邪眼が使えなくてもか?」

 

「うん。さっきから私、君の足を引っ張ってばっかり……だから私は君の役に立ちたい! けど」

 

 そう言うソフィアに、俺は精一杯強がりながら言った。

 

「大丈夫、役に立つとか立たないとか考えなくてもいい。そんなの関係なしに俺がお前の盾になってやる。アイツからも、お前自身の魔法からも。そしてこの先どんな敵が相手でもどんな不幸な出来事からも、魔神からだってお前を守ってやる。だから大丈夫、約束だ」

 

「どうして君はそこまで……今日会ったばかりなのに!」

 

 ソフィアのその質問を聞いて、俺は心の底から浮かべた笑顔でこう返す。

 

「それはお前たちに救われたからだよ。お前は知らなくても、悲しい時や何もかも上手くいかなくてやけくそになった時も、お前らから沢山の元気を貰った。だから、今度は俺の番だ」

 

「待って!」

 

 そう言って俺の手を掴んで止めようとするソフィアを振りほどき、途中で剣を拾い上げ俺は立ち上がりかけているエリクに向けて、イグニススラッシュを発動させながら突撃した。

 

「この死にぞこないがァァァ!」

 

 エリクが俺に向かって暗器を投げようと右手を振り上げる。その時、轟音がしてエリクの右腕が吹っ飛んだ。

 チラリと後ろを見ると、ソフィアが魔法を放ったのだと分かった。

 

「お前もやりゃあできるじゃん」

 

 俺はそう言ってエリクにイグニススラッシュを放つ!

 

「ハァァァ!」

 

 そしてエリクは俺の剣で肩から腰まで切り裂かれて倒れる。

 

「ガキ風情にこのオレ……が……」

 

 そのままエリクが息絶えたのを見届けると、俺は前のめりに倒れた。

 

「悠馬! 悠馬! しっかりして!」

 

 ソフィアは俺を仰向けにすると、泣きそうな顔で呼びかけてくる。

 

「全く、勝ったんだから泣きそうな顔するなよ。結局守るつったのに、最後はお前に守られちまったな」

 

 俺はソフィアの泣き顔を見ながら少し笑うと、そのまま意識を失った。

 

 

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