自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!   作:荒星

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第15話 原作主人公

「酷いなぁ、悠馬。僕は悠馬が表情をコロコロ変えながら、ずーっと病室の扉を見つめてるから笑っただけじゃないか」

 

 そうのたまう真司を睨み付け、俺はあの場に居なかった真司に何をしていたのか聞くことにした。

 

「で、俺たちが捕まってる間何をしてたんだ?」

 

「全く大変だったよ。気がつけば遊園地の医務室でさ。しどろもどろになりながら君たちが誘拐されたって、警察に事情を説明してからはもう大騒ぎ。ニュースも速報でソフィア王女誘拐か? って全局で流れて、捜索隊も組織されて。で6時辺りに僕のスマホに突然君から電話が掛かってきて驚いたよ」

 

「それで?」

 

「電話に出てみると泣きじゃくるソフィア王女殿下がひたすら何を聞いても、君が刺されたから救急車を早く寄こしてくれ! の一点張りでね」

 

 真司は一旦話を区切ると、鞄から取り出したペットボトルのお茶を飲みだした。

 

「オイ。で? その先はどうなったんだ?」

 

 俺はその先を話すように真司に促した。

 

「あぁゴメンゴメン、少し喉が渇いてね」

 

「だからって話の途中じゃなくてもいいだろ」

 

「ゴメンってば。泣きじゃくる王女殿下を宥めて、なんとか場所をGPSで確認してもらった。そして救急隊員と警察官やら国所属のエンフォーサー達が向かうと、そこには倒れてる悠馬と、自分自身魔力切れに陥ってる上、もう傷はふさがってるのにも関わらず悠馬にヒールをかけ続けてる王女殿下が居たわけ」

 

「で?」

 

「で、ご家族……? だよね。兎に角悠馬が病院に運ばれてから、ご家族に連絡が行った。で悠馬が目が覚めたって聞いて急いで駆けつけて、今に至る訳」

 

「そういえば俺ってどんくらい寝てたんだ?」

 

「3日」

 

「3日!?」

 

「そうそう3日」

 

「マジでか……」

 

 俺は驚いていたが、真司に問いたださないといけない事を思い出した。

 

「そういえばお前! 姉さんになんて言ったんだ! お陰でひどい目に遭ったぞ!?」

 

 俺がそう言うと、真司は首をすくめてやれやれといった感じで俺にこう返す。

 

「全く、怒鳴らないでくれよ。寧ろ感謝してほしいね。君が未発見ダンジョンに潜ってたからまともに戦闘できるのを隠すために、ソフィア王女殿下と口裏合わせたのは僕だよ? 感謝されこそすれ、怒られる覚えはないからね?」

 

「うっ、悪かった。だけどもう少し他の言い方があっても……」

 

 尚もグチグチと不満を言う俺を、真司は苦笑しながら見ていた。

 

「それじゃあもうそろそろお暇させてもらうよ」

 

「おう」

 

 真司は病室から出ようとしたが、その前に病室の扉の前で振り向いて言う。

 

「あ、そういえばさ」

 

「ん?」

 

「僕の弟子になる件、こっちで勝手に色々と手続しとくけど良い?」

 

「あぁ、頼む」

 

「了解。それじゃあまたね」

 

 そう言い残し、真司は帰って行った。

 

 

 様々な検査をして、一週間後俺は晴れて退院する事が出来た。

 

 最後に、前回に引き続き担当医になっていた先生に挨拶していた。

 

「ホント新記録だよ。3日でまた再入院なんて君くらいのものだ」

 

「す、すいません……」

 

「今度また、病院の新記録を塗り替えるような事はしないように」

 

「はい」

 

「それじゃあお大事に」

 

 そして姉さんの手配してくれた車に乗り込み家の前まで来ると、またもや買い物袋を片手に玄関で体育座りをしている姉さんを見つける。

 

「……今度はなにやってるのさ、姉さん」

 

「退院祝いにご馳走を作ってやろうと思って待ってた」

 

「いつから?」

 

「二時間前から」

 

 全くこの人は……

 

 俺はため息をつきながら玄関ドアを開け、姉さんを中に入れた。

 

「ちょっとそこのソファで待ってて」

 

 俺は姉さんにそう言い残し、あるものを探し始める。

 

「ったく! ここでもねぇ。確かどっかに……あった!」

 

 俺は目的のものを見つけて、姉さんに手渡した。

 

「ゆ、悠馬……これは?」

 

「合鍵」

 

「良いのか? 悠馬。こんな……」

 

 俺がそう言うと姉さんは嬉しそうな、それでいて戸惑ったような表情で聞いてくる。

 俺は照れくさそうに頬をかきながら横を見て言った。

 

「その、さ。嬉しかったんだ。一人ぼっちじゃなくて誰かが家にいて、一緒に話しながら飯食えたのが。何よりも病院で俺のこと本気で心配して、本当に家族だと思ってくれてるんだなって思ってさ」

 

 ずっと一人暮らしで寂しく暮らしてからこそ、傍にいてくれる人の大切さは死ぬほど分かっているつもりだ。

 

「だ、だが……」

 

 尚も食い下がってくる姉さんに苦笑しながら聞いた。

 

「姉さんは俺のこと家族だと思ってるんだろ?」

 

「あ、ああ」

 

「俺も姉さんのこと家族だと思ってる、だから良いんだ。これからもこの家に来てくれない? 姉さん」

 

「ああ……勿論だ!」

 

 そう言うと、姉さんは泣き出してしまう。

 

 その日、俺たちは本当の家族になった。

 

 

 

 とりあえず泣きじゃくる姉さんを宥め終わり、夕食。

 

「そういえば悠馬、けがの調子はどうなんだ?」

 

「全然平気。今度ソフィアにお礼言わないと」

 

「そうか、本当に良かった。全く、肝が冷えたぞ」

 

「ごめん」

 

「無事……とは言っていいのか困るが、生きて帰ってきてくれて本当に良かった」

 

「その、心配してくれてありがとう」

 

 そんな調子で穏やかな時を過ごしていると、姉さんが思い出したように言った。

 

「そういえば明日から学校だけど、大丈夫なのか?」

 

 ーーあ……

 

 

 一回目の入院中に先生から教えてもらっていたにも関わらず、色々とありすぎて明日から学校である事実を忘れていた事に気が付いた俺は夜慌てて準備をして、翌日家を出て学校へ向かっていた。

 

 昨日姉さんから車を用意させようか? と言われたがそこまで迷惑をかけたくないので断り、案の定道に迷っていた。

 

「あぁ……ここどこだよ! なんでGPS見ながらで道に迷うんだ!」

 

 俺が自分に絶望しかけていると、唐突に声がかけられる。

 

「あれ、悠馬? 悠馬も遅刻? というより、悠馬の家ってこっちじゃないよね?」

 

 声のした方向を見ると、強い意思を感じさせる目に整った凛々しい顔立ち、神の血と龍の力をその身に宿すイケメン・鈍感・最強の男、我らの誇るラスティア主人公様が怪訝そうな顔でこちらを見ていた。

 

 

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