自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!   作:荒星

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第18話 凶兆降臨

「あ、姉さん? ゴメンゴメン今俺の家? あーやっぱり。そのさ、言いづらいんだけど今日家に帰れなさそうで……ちょ耳痛ッ! 叫ばないでよ! その悪かったって。え? ケーキ買ってきたのにって? それは、その……冷蔵庫に入れといて。まあ明日くらいなら大丈夫だろうし。うん、うん。それじゃあ明日また」

 

 今俺は姉さんに今日は家に帰れない旨の連絡を入れていた、明日どう言い訳したものか……。

 

「終わったか?」

 

「終わった。刑務労働でも夜のお仕事でも墓場の警備でも、なんでも良いからさっさと連れてってくれ」

 

 そう俺が言うと、茜は苦笑した。

 

「まぁそう不貞腐れるな、どうせ何も起きんよ。それよりも自己紹介がまだだったな、望月茜だ。普段はここ『望月珈琲店』の店主をやってる。よろしく頼む」

 

 ――いえ、十中八九何か起きます。

 

「知ってますよ。なんなら貴女がSランクエンフォーサーってのもね。鈴木悠馬です。短い間ですがよろしく」

 

「土井史郎。Aランクエンフォーサーでいつもこの二人に振り回されて……すいませんなんでも無いです。とりあえずよろしく」

 

「私は自己紹介する必要ないわよね、昼間クラスの皆が自己紹介した時に一回したし。それにしても驚いた、鈴木があの邪神教団の幹部を倒したなんて。強かったんだ、鈴木」

 

 まぁ実際休み時間ごとに、クラスの皆が自己紹介に来てたからもう今日はお腹いっぱいだな……と思いつつ、目をキラキラさせながら俺を見る冬香にそれは違う、と話した。

 

「いや、それは違う。たまたまだったんだ。もしアイツが本当に全力でかかってきていれば、多分死んでたのは俺だ」

 

「ふーん、俺が倒した! って言わないんだ。それでも充分凄いと思うけど」

 

 俺と冬香が和気あいあいと話していると、茜が呼びかけてくる。

 

「よしお前ら、行くぞ? 準備は良いな?」

 

 そして俺たちは、史郎さんの運転する車に乗り込んだ。

 

 

 

「それでは全員車で史郎が話した持ち場に就け、朝の4時になったらココにまた集合すること!」

 

 茜はそう言って、ものすごいスピードで持ち場まで走って行った。

 

「それじゃあ鈴木、また後で」

 

「おう」

 

「悠馬君。もし何かあったらコレを使ってくれ」

 

 そうして史郎さんから手渡されたのは、白い札のようなものだった。

 

「これは?」

 

「それは使い捨てのスキルカード、スキル名を叫べば使えるから。それには師匠のスキル、今回の場合は攻撃魔法が入ってる。入ってるのはドレイク・バースト。無属性のスキルで、威力がものすごい分射程が短いから注意して。じゃあ俺も行くから」

 

「わかりました」

 

 ドレイク・バースト。使用すると当たれば馬鹿みたいな威力の魔力の塊が現れるが、動きは遅いし射程が短くて使いづらい事この上ないスキルだ。

 精々超大型ボス戦で使うか、前のワイバーンみたいに動けなくなった相手にしか使えない。

 使えるのはゲーム時代から知っていたが、どうしてよりにもよってこれなんだ……

 

 その後、俺はため息をつきながら自分の持ち場へ戻った。

 

 

 

「暇だ」

 

 俺の予想に反して一切敵も来ず、俺は暇をしていた。

 

「ああー……まだ6時間もあるよ」

 

 『名もなき地下墳墓』の東入り口前、俺は石段に座り込んで地面に木の棒で絵を描いていた。

 

「完成ー照り焼きにされたテュポ君ー! ……暇だ」

 

 そんな馬鹿な事をして暇をつぶしていると、周りの空気が変わった気がした。

 

 ――なんだ?

 

 俺が身構えていると、遠くからモンスターの鳴き声と悲鳴が聞こえくる。

 

「クソッ! 冬香の方からか!」

 

 急いで駆けつけると、所々傷付いた冬香がライカンスロープ3体と戦闘していた。

 

 俺はライカンスロープと冬香の間に割込み、飛び掛かってくるライカンスロープの腹部を撫で斬りにする。

 

 腹部を切り裂かれたライカンスロープは暫く藻搔いていたが、ドロップアイテムを残して魔力に戻って行った。

 

「大丈夫か?」

 

 俺は残りのライカンスロープ2体をけん制しながら、少し後ろを見て言う。

 

「う、うん。大丈夫……」

 

 恐らく攻撃を避けきれないと身構えていたのだろう、攻撃が来なかったことに少しポカンとした表情で冬香は答えた。

 

「そんじゃ、悪いけど一体頼めるか? 無理そうだったら言ってくれ」

 

「わ、わかった」

 

 片方のライカンスロープは冬香に任せて、俺はもう一体のライカンスロープに突撃する。

 

 ライカンスロープは飛び上がり、左の爪で俺を切り裂こうと攻撃を繰り出してきたが、その前に俺はレイスラッシュを繰り出してライカンスロープを一刀両断にした。

 

「ふう」

 

 とりあえず一体片付けて、一息付くと冬香の方を見た。どうやら冬香も片付け終わったようだ、冬香は血の付いた刀を二つとも鞘にしまうとこちらに駆け寄ってきた。

 

「ごめん、助かった。ありがとう」

 

「良いって。それよりもどうしてこんな所にライカンスロープが……」

 

 その瞬間凄まじい音が鳴り、何か巨大なモノが現れる。

 

「なッ!?」

 

「え? ちょ!?」

 

 俺は殺気を感じて、咄嗟の事で抵抗する冬香を無理やり抱えると全力で後ろに跳んだ。

 

「ガハッ!」

 

 どうやら敵の攻撃の様だ。巨大な光球が飛んできてそれ自体は回避することに成功したが、風圧で後ろの木に叩きつけられる。

 

「鈴木!?」

 

「だ、大丈夫だ……」

 

 俺が立ち上がると、俺たちの目の前にピアスをジャラジャラと付けた軽薄そうな男が現れた。

 

「へぇ、やるじゃん。ザコ虫の癖して、俺っち自慢のベヒーモスの攻撃を避けるなんて」

 

 その時男の隣に佇む10メートルはあろうかという巨体が、月明かりに照らされて露わになる。

 

「テメエ、召喚士(サモナー)か!」

 

「だいせいかーい。正解のご褒美はベヒーモスの巨体によるミートソース体験でーすっ!」

 

 ベヒーモス。Aランクエンフォーサー相当になって初めて倒せるかもしれない相手。

 その強さと硬さからダンジョンで忌避され、偶にイレギュラーとして現れBランク以下のエンフォーサーで構成されたパーティーが、バッタリ遭遇して全滅する事が多発したことから死を呼ぶ凶兆と一部では呼ばれている。

 それが俺たちの前に、月明かりに照らされるその巨大な体で威圧してきながら立ちはだかっていた。

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