自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!   作:荒星

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第19話 奇襲

 ベヒーモスは尻尾を振り上げると、横なぎに振るい俺たちを吹き飛ばそうとしてきた。

 

「ッ散開!」

 

 俺は咄嗟に叫ぶと、冬香と共に後ろに避けたが冬香は風圧で少しよろける。

 

 ――風圧だけでもコレかよ! クソ、当たったらヤベぇ!

 

「取り敢えず当たらないようにだけ動け! お前の師匠が来るまでの少しだけ時間を稼げばいい!」

 

「わ、わかった」

 

 ――と言っても、そこまで持つかどうかわかんねえけどな……。

 

「ハハハ! 無駄っスよ無駄! お前らの頼みの綱には俺っちのリスペクトする先輩方が向かってんだから! お前らはココでザコ虫らしく死ぬんだよ! アハハハッ!」

 

 ――殴りてぇ、アイツ。

 

 ベヒーモスに守られながら高笑いを上げる男に殺意が湧いたが、俺はベヒーモスに突撃を掛けた。

 

「ハァァ!」

 

「ちょ! 鈴木!?」

 

「フヒッ! 自棄になって自殺っスか? 良いっスよ? お望み通りやっちまえ、ベヒーモス!」

 

 男の声に答えるようにベヒーモスが突進してくるが、紙一重で避けながらレイスラッシュを繰り出すがはじかれる。

 

 はじかれた勢いを受け流すようにしてくるりと体勢を立て直し、ベヒーモスの方に向きなおしながら、ベヒーモスが前足を振り上げたので横に転がり回避。

 

 そのまま切りつけるが、やはり攻撃は通らない。舌打ちをしながら尻尾による薙ぎ払いを回避、すかさずまた切りかかる。

 

「す、凄い……」

 

「なんなんスかお前! なんでさっさと潰れないんだ!」

 

 ――ま、コイツとは散々戦ったからな……。

 

 ゲーム時代に効率よくレベルを上げる方法として、ベヒーモスをひたすら狩るというのがあった。

 ベヒーモスは推奨レベル未満、要するにレベルは個体によってまちまちだが大体50。それ未満のプレイヤーにとってはまさしくばったり出会ったらほぼ問答無用で殺される凶兆だが、それを超えたプレイヤーにとっては多少硬いけど経験値が美味しい動く的として有名だった。

 一番人気のやり方はベヒーモスの強行動であるボルケーノブレス中に、耐性ガン積みした防具で突撃してその間抜けな開いた口に、爆弾やら魔法やらをぶち込む効率重視のタイムアタック戦法である。

 俺? 俺は……極限まで攻撃力上げて、ブレス中に背中に回ってバカスカ殴りまくってたよ。

 

 だから原作知識の無い推奨レベル未満の皆はマネしないように。

 

「セイッ!」

 

 俺がイグニススラッシュを胴体に叩き込むと、ベヒーモスの目が赤くなった。

 

「グォォォォォ!」

 

「チッ」

 

 俺が舌打ちをして一度後退した瞬間、俺のさっきまで居た場所に光球が降り注いだ。

 

  ベヒーモスは時折興奮状態になる。HP50%以下になると常に発動するがまともに攻撃が通っていないので、恐らくランダムで発動したのだろう。

 この状態になったコイツは少々厄介だ。攻撃力が上がり、範囲攻撃をバンバン使ってくる。

 

「うおっ!?」

 

 ――この野郎! 俺の頭に当たったらどうするつもりだ!? ハゲちまうじゃねえか! あ、その前に俺の今のレベルじゃ粉々だわ。

 

 直撃した想像をしてしまって背中に冷たいものが走るが、振り払ってまた俺はベヒーモスに突撃した。

 

「ちょこまかとォ……何やってるんスかベヒーモス! さっさと潰せ!」

 

 ベヒーモスにも飼い主の苛立ちが伝わってきたのか、先ほどよりも攻撃速度が速くなってきた。

 だが避けるだけなら楽勝である。ベヒーモス討伐数500体越えをなめてもらっては困る。

 

 回避だけなら割と余裕だったので、こっちの世界に来てまでベヒーモス狩りなんてな。

 なんて感傷に浸っていたその時、自分だけ戦わずに居るのは我慢ならなかったのだろう、冬香がこちらに剣を抜いて駆け寄ってくるのが見えた。

 

「来るな!」

 

 俺が冬香に叫んだその時、何かに後ろから左手に食いつかれる。

 

 俺は咄嗟に右手で食いついている何かを切りつける。どさりと音を立てて倒れたのはまたもやライカンスロープだった。

 

「クソ、もう一体いたのか」

 

 そして俺は意識を逸らした隙に、ベヒーモスの尻尾によって岩に叩きつけられた。

 

「ガハッ!?」

 

「アハハ! 周りにはちゃんと気を付けないといけないっスよ!」

 

 一瞬視界が暗くなりかけたが、根性で無理やり立ち上がる。

 

「鈴木、無事!?」

 

「あー、なんとか」

 

 俺は少しふらついた所を冬香に支えてもらいながら、体の具合を確かめていた。

 

 ――左手は……ダメか。嚙みつかれた時に脱臼してる上に、岩にぶつかった衝撃で折れてやがる。あばらも何本か逝ってるな、これは。

 

 口に溜まった血反吐を吐きながら、俺はどうしたものかと考えていた。

 

 ――もう持久戦は不可能だ。この体で回避は続けられない、ならば一か八か……。

 

「ごめん、私がアンタの注意を逸らしたせいで」

 

「いや、ありゃ関係ねぇよ。どっちみちライカンスロープの奇襲を喰らってた」

 

「ねぇ……私にも出来ること、ある?」

 

「悪い、ここから先は俺一人でやる」

 

 そう言うと、冬香は俯く。

 

「うん、ごめん。邪魔になっちゃうもんね、わかった……」

 

「勘違いすんじゃねぇよ、お前が力不足なんじゃなくて俺が偶々適任だっただけだ。心配すんな」

 

 ――賭けに出るか。

 

 俺は冬香を後ろに下がらせ、意を決して前に出た。

 

「ヒャハハハ! そのボロ雑巾みたいななりで出てくるつもりっスか! なんだよお前、面白いっスね。じゃあ無様に死んで俺を笑わせてくれっス!」

 

 ベヒーモスが突撃してきて尻尾を振り上げたので横に回避する。

 

 ――まだだ。

 

 ベヒーモスは横に転がった俺を踏みつけようと前足を振り上げるが、なんとか後ろに回避する。

 

 ――まだだ。

 

 そして苛立ったベヒーモスはブレスを放とうと膨らんだ喉のブレスを溜めるための器官に狙いをすまし、俺はスキル致命の一撃を発動させて突っ込んだ。

 

 致命の一撃。弱点に叩き込む事でクリティカルダメージが1.5倍になるアクティブスキル。

 

 そして叩き込もうとした瞬間、剣が金色に光った。

 

 ヘルメスの神意。ナム・タル戦を経て進化したヘルメスの加護の発展形パッシブスキルで、HP10%以下でクリティカルかつ弱点に攻撃がヒットした時、一度だけヘルメスの加護が確定で発動するスキル。

 

 ――俺HP10%切ってたのか、あぶねぇ……。

 

 そして俺の剣が当たり開いた傷に、俺は貰ったドレイク・バーストのスキルを叩き込んだ。

 

 爆風で自分も吹き飛ばされたがベヒーモスの方は見ずに、体を立て直した瞬間俺は、サモナーの男に突っ込み剣を振った。

 

 

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