自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!   作:荒星

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寄り道編 祭りだよ! 全員集合!
寄り道編 第1話 悪夢再び! ダンジョン内料理勝負!


 俺達は今、中二の冬休みを利用して『名もなき地下墳墓』に居た。

 

「ねぇ悠馬? さっきから何集めてるの?」

 

「うん? 気にしないでくれ。後からわかる」

 

「なんだろうね、すっごく嫌な予感がするんだ……以前にもこんなことがあったような」

 

 俺はきょとんとした顔で俺に聞いてくる冬香と、無駄に勘の鋭い真司を尻目にほくそ笑んでいた。

 

 

 

 そして俺は75階層の安全地帯にて、こう宣言した。

 

「二人ともよく聞け! これより! 第一回チキチキ! ダンジョン内料理勝負を始める! 気力の貯蔵は十分か!」

 

「なに……言ってるの、悠馬? まさか途中でおかしなものでも……」

 

 冬香が心配そうな目で見てくるが気にしない! そう! ダンジョン内で上手い飯を食べれるようになりたいという欲求は、何らおかしいものではないのだから!

 

「え……嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! 僕は嫌だ! おかしいじゃないか悠馬! 僕達は確かにモンスターで料理を作るより、カップラーメンを作ったほうが良いって結論を出したじゃないか!? なのに何故またあの地獄を繰り返そうとする! 答えてくれ悠馬! 返答次第では僕は君を切らなければいけない! 世界のため、後に犠牲になりかねない者のため! ここに居る冬香ちゃんのため! そして僕自身の味覚のために!!」

 

 真司が目をグルグルと回しながら名刀『貞宗』を振り回すので、それを躱しながら俺は真司の説得へと移った。

 

「落ち着け真司! あぁそうさ! 確かに俺達は一度結論を出した! 出してしまった! だけど人間諦めたらそこで終わりなんだ! だから俺はどんな強敵にも何度だって挑戦する! 何よりも! 俺は温かい飯が食べたい!」

 

 そう言うと、真司はいよいよスキルを発動させて切りかかってきた。

 

「遺言はそれで良いかい? 悠馬」

 

 ――アレは居合系最強スキル明鏡止水!? マズい! 昔の張りぼてAランクエンフォーサー時代なら兎も角、今の真司のあれを受けたら確実に死ねる!

 

「お、落ち着け真司! スキルオーブ一個でどうだ!」

 

 その時、真司の動きが止まった。

 

 ――釣れた。やっぱ実力もついて、Sランクエンフォーサー間近か? なんて言われても真司は真司だな。

 

「その上、エリクサーも一個やる!」

 

「……あともう一声」

 

「えぇい! 土蔵で見つけた魔銃『アインツェルゲンガー』もやる! これが限界だ!」

 

 真司は構えを解き、にこやかに言った。

 

「よし、それじゃあやろうか。前回と同じでいいんだよね」

 

「いや、前回と同じものは作るなよ? 失敗作は失敗作なんだから……」

 

 ――クソ! 欲張りやがって! でもまぁ魔銃は使わないし、スキルオーブもエリクサーもまだまだあるし。やはりコイツ、物で釣れるぞ。ちょろいな……

 

「あ、真司。冬香が参加しなかったらこの話は無しな」

 

「え、えぇと……私は遠慮させて貰うわ。その……わ、私はカップラーメンで満足してるし……」

 

 俺の秘策が使えなくなったら、本当に前回の再現をしかねない。

 

 ――ま、この秘策で助かるのは俺一人なんだが。

 

 そう言いながら後ずさった冬香の肩を、いつの間にか冬香の後ろに回っていた真司が掴んだ。

 

「まあまあ冬香ちゃん。一回チャレンジしてみるのもいいんじゃないかな?」

 

 ――アイツ。あれだけの事言ってた癖して、この場から逃がさないつもりだ……

 

 俺が真司の行動に軽く戦慄していると、冬香は真司の手を肩から振り払おうとした。

 

「い、いや結構です。だから……ちょ! 外れない!? 放してくだ……放して!?」

 

「ごめんね。冬香ちゃん」

 

 そう言うと、真司は冬香の首に手刀をして気絶させ。そのまま真司は冬香を連行してきた。

 

「よし、これで全員揃ったね」

 

「……えっ? あ、あぁ。そうだな……」

 

 一瞬にこやかにそうのたまう真司にドン引きしかけたが、咳ばらいをした後気を取り直して宣言した。

 

「それでは改めて! これより第一回ダンジョン内料理対決を始める!」

 

「おー! ……そういえば悠馬。なんで第一回なんだい? 前回もやってるから第二回なんじゃないの?」

 

「ん? 前回は第一回男飯対決だったろ。今回は冬香が居るから男飯対決じゃなくなったからただの料理対決だ」

 

「なるほど」

 

 

 

 

「よしできたぞ! オークの豚バラ炒飯だ! さあ食え真司!」

 

「僕も男だ。覚悟はとうの昔に決めたよ。尾野真司、参る!」

 

 そう言って真司は俺の作った炒飯を口に放り込んだ。

 

「……どうだ?」

 

「うん、まぁあれだよ。予想通りマズい」

 

 真司は口の端から虹色の汁をたらしながら言った。

 

「やっぱりかぁ……」

 

 

 

「次は僕の番だね。僕特製ゴブリンおにぎりだ。どうぞ召し上がれ」

 

 真司はゴブリンの指の先が米から露出した、形容しがたいナニカを持っていた。

 

「お、おい真司、もはやそれ料理なのか!? というか冬香、気絶したまんまだぞ?」

 

 俺がそう言うと真司は微笑んだまま、気絶した冬香の口におにぎりを放り込んだ。

 

「なcjなはqもあdjp!?」

 

 冬香が声にならない悲鳴を上げる中、微笑んだままの真司に対して俺はドン引きした。

 

「……真……司……?」

 

「僕はね、気づいたんだ。人間。皆不幸ならば、それは不幸ではなくなるんだよ」

 

 そう言う真司の目をよく見ると、先ほどと同じく目がグルグル回っていた。

 

 ――食い合わせが悪かったか……南無三。そしてすまない、冬香。俺にはもう、コイツは止められない。

 

 その後、冬香の声にならない悲鳴は暫く続いた。

 

 

 

「……ブルータルアリゲーターのハンバーグよ」

 

 そう言って、冬香が差し出してきたのは見た目はごく普通のハンバーグだった。

 

「いただきます」

 

 ――旅費をケチったホテルで出てくる、パッサパサのハンバーグだな……。

 

「美味しくは……ないな」

 

「でしょうね」

 

 ――だが、吐くほどマズくはない。

 

 そう、これが先ほど俺が言っていた秘策。

 

 姉さんはラスティアでの料理描写が無く未知数だったが、冬香は違う。

 

 冬香はラスティア中、龍斗が店が開けると太鼓判を押すほど料理上手だということを俺は知っていたのだ! 

 

 ソフィア? ソフィアは……まぁ、あれだ。黒焦げになった卵焼きを龍斗が食べるシーンがあったな……

 

 メシマズヒロインはまた別に居るからソフィアはセーフだよ、セーフ。

 

 ――なにか文句あるか? あぁん!?

 

 おっと。ついソフィアをメシマズ枠に入れようとする勢力に対する殺意が……。

 

 料理したことない王女様が、人生で初めて主人公の為に作ってきた弁当ってのが尊いんだろうが! 料理は旨さだけじゃねえ! だがにこやかに料理で科学した末に、さあ食べてみて! なんていうヒロインの事は知らない。

 

 話が脱線した。まぁ要するに俺はこの勝負で極端な外れを引く可能性が、限りなくゼロになるよう立ち回ったのだ!

 

 

 

 その後、俺たちの……俺以外の美食を求める戦いは熾烈を極めた。

 

「へい、お待ち! クラーケンの寿司一丁!」

 

「ゴム……だね」

 

 ――真司のターン

 

「ワーウルフの内蔵で作ったレバニラ」

 

「なるほどこれは……コフッ」

 

「冬香!?」

 

 ――冬香のターン

 

「ブラッドベアの肉球ラーメン」

 

「うん。臭い」

 

 ――俺のターン

 

「キメラアントのカシラ焼き」

 

「君は本当にコレを料理だと思ってるのかい?」

 

 ――真司のターン

 

「デスワームの蒸し焼きだよ、たんとお食べ」

 

「あの、私に八つ当たりしないで頂けますか……ちょ、やめ! 口に放り込もうとするなぁ!」

 

「冬香ぁ!」

 

 ――冬香のターン

 

「ミノタウロスの牛丼……」

 

「あぁ、なんつーか。ちょっとえぐみが……」

 

 ――俺のターン

 

「コカトリスのから揚げ」

 

「君ってやつは! 君ってやつは!? どうしてこう、食べたら石化するような食材……アグッ!? ゲホッゲホッ! 悠馬ァ!?……」

 

 ――真司のターン……

 

 

 

 結局、前回と同じように俺達の周りには幾多の失敗作が転がっていた。

 

 ――今回も失敗か。

 

 石化した真司を見ながら、二人とは違い比較的軽傷な俺はあぐらをかきながらため息をついていると、冬香が倒れたまま一つの皿を差し出してきた。

 

「……これは?」

 

「ウムドレビの果実汁を絡めながら焼いたオーク肉のソテーよ。そのウムドレビの実を使ったソースをかけて食べるの」

 

「……ウムドレビって確か60層に出てくる、毒をまき散らしてくる動く木の植物型モンスターだよな? 大丈夫なのか?」

 

「実は薬にもなんのよ」

 

 ――そういえばそんなアイテム設定あったな。

 

「いただきます……うそ、だろ? 滅茶苦茶うまい!」

 

「そう、良かった……」

 

 俺はまだフライパンに数枚肉が残っているのを確認すると、全部皿に盛ってソースをかけて一気に食った。

 

 その時、うつ伏せで倒れたままの冬香が俺に言った。

 

「……言い忘れてたけど。ウムドレビは薬でもあるけど食べすぎは毒になるから、ほどほどに……私は寝る」

 

 ――なるほど……それを先に言ってくれ!?

 

「アァァァァァァァ!?」

 

 俺は急に襲ってきた腹痛に耐えながら、解毒ポーションを探してバックを漁った。

 

 結果はまあ……聞かないでくれ。

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