自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!   作:荒星

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寄り道編 第4話 思い出作り

「今週日曜日に新しくできたレジャー施設に行くわよ!」

 

「いきなり何を言い出すかと思えば……どうした冬香、なにか悪いもんでも食ったか?」

 

「まあ、そこに行くかどうかは兎も角。ホントにどうしたの? 冬香」

 

 中三の冬休み前日の金曜日。俺たちが集まって駄弁っていると、突然冬香がレジャー施設に行こうと言い出した。

 

「だって……だって! 私たち、今まで春休みも夏休みも何一つそれっぽいこと出来なかったじゃない!」

 

「いや、十分やっただろ。茜さんの体術修行とかダンジョンに潜ったりとか、後は茜さんの手伝いさせられて死にかけたりとか、真司がアイドルとしてもデビューするからって言われて、その初ライブ手伝いに行って死にかけたりとか……あれ? ダンジョン以外死にかける出来事多くないか? 普通逆じゃ……」

 

「ごめん、僕それ何一つ覚えないんだけど……兎も角、僕抜きで何か面白い事してることだけはわかったよ。ところで真司ってあのSランクエンフォーサー兼モデルでアイドルの尾野真司さん? いつの間に知り合いに……」

 

 俺たちがそう言っていると、冬香はバンッ! という音を立てて机を叩いた。

 

「シャラップ! そうじゃないの! そんな修行修行苦行デスマーチみたいなモノじゃなくて! もっとこう青春! っていうかこれぞ長期休み! って感じのことがしたいの! 青春の一ページ的な! 思い出作りになるような!」

 

「まぁ気持ちはわからなくないが……ダンジョンに潜んのも楽しいぞ? 少しづつ強くなってく気がして」

 

「あのーところで二人は普段何を……?」

 

「黙りなさい戦闘狂! あんたのやりたいことに付き合ってたら休み中ダンジョン行きになりかねないじゃない!」

 

「僕は無視ですかそうですか……」

 

「えー……折角折れてたのを修理に出してたムラサメが、なんでか呪いが無くなって血濡刀ムラサメになって帰ってきたから、試し斬りしたかったのに」

 

「刀ってなにさ!? 後その名前で呪いが解除されたってどういう!?」

 

「兎に角10時にあの新しく出来たレジャー施設前に集合! いい!?」

 

「はーい……」

 

「僕は無視?……」

 

 

 

 

 日曜日。俺はレジャー施設前で龍斗と二人で冬香を待っていた。

 

「……遅いね、冬香」

 

「……だな」

 

 ――おい悠馬! ここが噂のボウリングや遊べる場所があるレジャー施設か!? 

 

 ――そうだけど……お前は出てくんなよ。

 

 ――何故だ! 我とて偶にははっちゃけたい!

 

 ――黙れ、無理に決まってんだろ。てかお前は365日24時間はっちゃけぱなしだろ! もしおかしなことしたら姉さんに言いつけるからな。

 

 ――悪魔か貴様! 

 

 ――悪魔みたいな恰好したお前にだけは言われたくない。

 

 ――我は悪魔ではない! 魔神だ! 全く近頃の人間ときたら我の事をやれ邪神だ悪魔だと好き放題言いおって……。

 

 ――それはお前の日頃の……というか3000年前の行いのせいだ。諦めろ。

 

「悠馬? 大丈夫?」

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

「そ、そう? ならいいんだけどさ……なんか言い方おかしくなかった?」

 

「気のせいだ」

 

「ごめん! お待たせ!」

 

 俺たちがそんなやり取りをしていると、冬香が遅れてきた。

 

「珍しいな、冬香が遅れるなんて」

 

「アハハ、ごめんごめん。服選ぶのに時間かかっちゃって……どう?」

 

 冬香は俺を見ながら何かを聞いてきた。

 

「どうって? ああ、この施設のことな。調べてみたけど中々良さそうだったぞ」

 

「……そういうことじゃない」

 

 俺がそう答えると、冬香はどこかしょんぼりとして俯いてしまった。

 

「ま、待て龍斗。俺なんか間違ったか?」

 

「え? さ、さあ。僕にもわかんないよ」

 

 ――こいつに聞いた俺がバカだった。

 

 その時、俺の脳内に一筋の電流が走った。

 

 ――すっとぼける龍斗、落ち込む冬香……まさか!?

 

「悪い悪い、服のことだよな。似合ってるぞ、カワイイカワイイ」

 

「……もぅ、バカ」

 

 あっぶねえ!? 棒読みになったけど、何とか乗り切った! なんか既視感あるなと思ったらこういうイベントあったわ! 龍斗が鈍感発動させたせいでポカやらかして、冬香へこませる選択肢の奴! 今の何で龍斗じゃなくて俺に飛んできたんだ!?

 

「とりあえず中、行こっか」

 

 そうして冬香は顔を赤くしたまま後ろ手で手を組み笑顔でそう言うと、スキップしそうなテンションで入っていったので、俺たちは困惑しながら後に続きながらひそひそと話した。

 

「悠馬、なにかした? 冬香のテンションが長い付き合いの僕でさえ、見たことないレベルで上がってるんだけど」

 

「い、いや。俺にもわからん」

 

 

 

 

「さぁ遊ぶわよ!」

 

「「おー!」」

 

 現在俺達はローラースケート場に居た。

 

「じゃ、私から行くわね……ってうわぁ!?」

 

「……大丈夫か?」

 

「悠馬。手を貸してくれるとありがたいんだけど……」

 

 5分後。

 

「フッ! セイッ! ハッ!」

 

「なんだあれ……ローラースケートとフィギュアスケート間違えてんじゃないか? アイツ」

 

 俺は冬香に手を貸して滑りながら。空中で四回転半したりブリッジしたまま滑って、周りの人達から拍手喝采を浴びている龍斗を白目で見ていた。

 

「あれ? おーい聞いてるか? 冬香」

 

「大丈夫、問題ないから」

 

「そうか」

 

 俺の手を握ったまま赤くなって無言を貫き通す冬香を心配して声を掛けたが、どうやら大丈夫なようだ。

 

 ――ていうか手を握ったままってのも恥ずかしいんだが……。

 

「あー、冬香? もうそろそろ手を離しても大丈夫そうか?」

 

「大丈夫、問題ないから」

 

「了解。じゃ、離すぞ」

 

「え? あ、ちょちょちょわっ!?」

 

 俺が手を離した瞬間、冬香がバランスを崩して倒れそうになったので、俺は冬香を支えようとしたが間に合わず、俺もバランスを崩して二人そろって転倒した。

 

「ったく。全然大丈夫じゃ……」

 

 気が付くと、俺は冬香に覆いかぶさるようにして倒れていた。

 

 ――近い近い近い! あともう少しでキスするところだったぞ!?

 

「その……近い」

 

「お、おう悪い」

 

 俺は慌てて冬香の上からどいた。

 

 更に5分後。

 

「どうしたのさ二人共、顔が真っ赤だけど……」

 

「うるさい……」

 

「色々あったんだよ、色々と……」

 

 結局その後、冬香は立てなかったのでそのまま手を貸す羽目になり、その間たがいに目を合わせられなかった。

 

「……次行こ? 次」

 

 

 

 次に俺たちが向かったのは、バスケットコートだった。

 

「ハァハァ……噓だろ?」

 

「昔から……運動神経……良いのは知ってたけど……ここまでなんて……」

 

「あれ? 二人共もう終わり?」

 

 最初こそ普通に三人でボールを奪い合っていたが、龍斗が強すぎて気が付くと俺と冬香対龍斗の二対一勝負になっていた。

 

「お前、ホントに一般人? 実は密かに未発見ダンジョンに潜ってたりしてない?」

 

「そんな遠回りな自殺なんてするわけないじゃないか」

 

 ――ごもっともで。この逸般人が!

 

「仕掛けるぞ冬香!」

 

「けど……」

 

「俺が注意を逸らす。その隙にお前がボールを奪ってシュートするんだ」

 

「わかった」

 

 その瞬間、俺は龍斗に向かって突撃した。

 

「オォォォォ!」

 

「捨て身かい? 残念ながら僕には効かないッ!?」

 

「取ったッ!?」

 

 俺からボールを守ろうと龍斗が掲げ、そのままシュートしようとした瞬間、自慢のスピードを最大限に活かして近づいた冬香がボールをかすめ取った。

 

「今だ! いっけぇ!」

 

「ハァァ!」

 

 そしてその日初めて俺達は龍斗から得点を奪い取った。

 

「イエーイ!」

 

「ナイス!」

 

 そして、ボールをゴールに入れた冬香がハイタッチを求めてきたので、俺はそれに応じた。

 

「いやーやられたよ」

 

「にしてもお前強すぎだろ、チートだチート」

 

「全くね」

 

 その後、冬香は笑いながら腰に手を当てて言った。

 

「じゃ、次行こ!」

 

 

 

 

 卓球、テニスにバトミントン、アーチェリーにカラオケとその日、俺達は一日中遊びつくした。

 

「いやー遊んだ遊んだ」

 

「私もうヘトヘト」

 

「僕もだよ……」

 

「また、三人で一緒に来ようね。いつか」

 

「だな」

 

「うん、僕もまた来たいな」

 

 そうして俺達は笑いあうと、談笑しながら歩いて帰った。

 




 えー、ここで皆さんにお知らせがあります。実はあと一話、円華とデート編を作ろうと思ってたんですけど辞めました。
 え? 理由? なんかこの作品話のテンポ悪いなって切られそうなのと、ついでに今の状態の悠馬と円華がデートなんてした日には円華ルート一直線。某ゲームの幻。虎で姉な教師ルートと似たような展開になりかねないからです。
 そこまでではありませんが、多分告白された場合300文字持たずにくっつきます。
 なのでイザナギ学院入学してしばらく経つまでは多分書きません。

 以上の事から次回よりイザナギ学院1年生編、スタートします!

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