自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!   作:荒星

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第9話 一か八か

「やりゃあできるじゃん」

 

 青年はその気になってくれたらしい。彼は立ち上がって俺たちの方を真っ直ぐに見据えてきたので、精一杯強がって彼に笑いかける。

 

「フッ!」

 

 ナム・タルとの鍔迫り合いを解き、俺は後ろに飛んで間合いを取りナム・タルと睨み合いながら、青年にこう問いかけた。

 

「んじゃあ、やる気になってくれたみたいだし。早速聞くけど、何が出来る?」

 

 俺がそう聞くと、青年は少し考えて言う。

 

「ガード系と回復系を少し、後はミラージュデコイと通常デコイ、身代わりを使える!」

 

 ミラージュデコイ。分身を生み出して相手をかく乱するスキル。

 

 デコイ。自分にターゲットを向けさせるスキル。

 

 身代わり。HPが0になる攻撃を、一度だけ身代わりが代わりに受けるスキル。

 

 どうやら青年はタンク向けビルドらしい。

 

「じゃあ俺が少し時間を稼ぐ!! その間にお前は自分の持てるスキル全部総動員して、俺が自分にバフ掛ける間、ホントに少しだけで良い! 持ちこたえてくれ!」

 

「わかった! 気を付けて!」

 

 俺は青年の声を聞きながら、ナム・タルに突撃した。

 

 ナム・タルの鎌の攻撃を剣で上手いこと逸らし、その力をうまく使って飛び上がり、バク宙しながら剣を繰り出すも当然はじかれる。

 だがそのはじかれた時に起きる衝撃を利用して後ろに下がり、また突撃するヒット&ウェイ戦法を取っていると、突然ナム・タルが鎌を構えだした。

 

「クソッ! ここで強攻撃を切ってくるか!?」

 

 その瞬間、ナム・タルを中心に黒い渦が発生する。

 

 俺は咄嗟に後ろに飛ぶことで攻撃自体は回避できたが、風圧で壁に叩きつけられた。

 

「ガッ! クソ、もう長くはもたねえぞ……」

 

「済まない! 待たせた! 交代だ!」

 

 どうやら、準備が完了したらしい。俺は青年と入れ替わるようにして後ろに下がり、まずは回復薬を飲み干しながらアイテムバッグから取っておくつもりだった、とっておきのアイテム達を取り出した。

 

 迅雷の秘薬、30秒だけ速さが大幅にアップするポーション。鬼神の秘薬、30秒だけ物理攻撃力が大幅にアップするポーション。そして一番のとっておき、幸運の女神の涙。運のステータスが1分だけ300%の補正が付き、確率発動系のスキルの確率が30%アップするポーションだ。

 

 先ずは自分の持てるバフ系のスキルを全て発動させてから、ポーションを飲み干し、最後に回復薬を口に含むと、丁度吹き飛ばされてきた青年と入れ替わるようにして、また戦闘へと参加した。

 

「これで決めるッッ!!」

 

 覚えたてだが俺の持ちうる限りでも最強スキル、イグニススラッシュを放った。このスキルの威力は絶大だが、クールタイムが重い。

 

「ハアッ!」

 

 俺はナム・タルにイグニススラッシュを確かに当て、ナム・タルはダメージを受けた様子こそ見せたがまだまだ致命傷ではない。

 

 俺は歯嚙みしながらクールタイムを無視して、強引にもう一回イグニススラッシュを発動させた。

 

「ゴフッ!」

 

 クールタイムを無視した代償でダメージを喰らうが、あらかじめ口に含んであった回復薬を飲み込むことで相殺する。

 だがその一瞬の隙が命取りになり、俺の攻撃が当たる前にもともとあった得物のリーチの差もあり、ナム・タルの鎌が俺に迫ってきていた。

 

 ――あっ、コレ死んだわ。

 

 死を目前にしてスローモーションになった視界の中、振り下ろされる鎌を見ていると俺の頭をかち割る直前、横から青年が飛び出してきて鎌をパリィした。

 

「今だッッ!」

 

 その瞬間俺は青年の横をすり抜け、ナム・タルの顔面にイグニススラッシュを叩き込んだ。

 

「グヌ!?」

 

 ナム・タルが顔面を抑えて少し後ずさった。

 

「コレで決める!!」

 

 俺は、四度目のイグニススラッシュを発動させた。血反吐を吐きそうになり、身体中に激痛が走るが無視する。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

 後ろから、青年の声が聞こえてきた。俺は思いっきり体を捻り、剣にすべての力を載せる!!

 

「アアァァァ!」

 

 その時、ヘルメスの加護が発動して俺の剣が金色に光り、ナム・タルを両断した。

 

 ――感謝するぜ、幸運の神様とやら。

 

「ミゴト……」

 

 ナム・タルはそれだけ言い残し、消滅する。

 

 それを見届けて俺は、そのまま意識を失った。

 

 

 

「あ、目が覚めたかい?」

 

 俺が目を覚ますと、青年が俺の顔をのぞき込んでいた。

 

「俺は……」

 

「良かったよ、君が倒れたから慌てて回復薬を飲ませたんだけど。全く目を覚まさないから、もう手遅れだったかと」

 

 どうやらこの青年は、クールタイムを無視した代償で倒れた俺を介抱してくれたらしい。

 

「悪い、助かった」

 

「いや、僕こそ助けてもらって本当にありがとう。そういえばまだ自己紹介をしてなかったね。僕の名前は尾野真司、気軽に真司って呼んでほしい。イザナギ学院の二年生だよ。どうしてここに……って君にも事情がありそうだね」

 

「まあな。俺の名前は鈴木悠馬、イザナギ学院ってことはエンフォーサーか。ランクは? っていうかエンフォーサーなら正式なダンジョンに潜ればいいだろ? お前こそどうしてここに?」

 

 そう聞くと、青年は苦笑いしながら言った。

 

「ランクは……Aなんだけど、このランクは他人に寄生して上げたものなんだ。それでここに来たのは、正式なダンジョンだと事務所の監視の目があって、戦わせて貰えないんだ。だから抜け出してきて、今ここにいる。君は、その。軽蔑するかい? 他人に寄生してランクを上げてきた僕を」

 

「ああ軽蔑するね」

 

 俺がそう言うと、青年は下を向いた。

 

「ああ軽蔑するとも、他人に寄生して満足する奴だったらな。けど、お前は違うんだろ?」

 

 青年は顔を上げてこちらを見くる。

 

「他人に寄生して実力の無い自分が嫌なんだろう? そんな自分を変えるため、こんな危険なダンジョンにまで来た。ならそれで充分じゃねえか、俺は好きだぜ? そういう自分を変えるために努力できるやつ。それにお前の覚悟は俺にも聞こえてたんだ、軽蔑なんてするかよ。お前はもっと自分に自信を持て」

 

 俺がそう言うと、青年はまた少し俯き服の袖で目元を拭ってから、今度は純粋に笑みを浮かべて言った。

 

「ありがとう。さっきの事も含めて、君には色々と救われた気がするよ。なにかお礼がしたいんだけど、僕にできることは何かあるかな?」

 

 青年改め、真司がそう聞いてくる。俺は少し考え後、口を開いた。

 

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