超低空、ツリートップレベルを亜音速で駆け抜ける二機がいる。
《囮機がやられた。位置座標を送る、ロケット砲システム、各車、
住民がその様子を見て、スマートフォンを使って撮影をしていた。屋根を吹き飛ばすのではないかという速度で駆け抜けていき、一機が上空で待機、周辺監視を担い、一機はレーダーを掻い潜る低空で侵入していく。
背後から放たれるロケット砲を尻目に、上空を音速で飛翔するゴースト2のMig-29が対レーダーミサイルを放った。
今回の任務は
《ゴースト1、マグナム》
独特な符丁を使い、対レーダーミサイルを次々にゴースト隊が撃ち放っていく。レーダー輻射に吸い寄せられた弾頭は狙いたがわずレーダーを破壊していく。
《こちらファントム1、TB-2が食われた。遠距離空対空ミサイルだ。方位1400》
怪鳥の名前で知られる
低空に潜んでいた各機、ゴースト隊が一斉に高度を上げ始める。
《チャフ放出》
チャフを展開。遠距離からのレーダー照射を撹乱しつつ、低空へと逃げる。
Su系、Mig系のセンサーはルックダウン能力が低い。敵も同じ機体を使うならば、低空の格闘戦に持ち込んだ方が有利である。
まんまと引っかかった敵機が低空へと急降下。しかしそれは罠であった。進軍していた味方による、
《ゴースト1、
言葉少ない彼は、たった一言告げると短距離空対空ミサイルを二発撃ち、瞬く間に二機を叩き落した。低空による格闘戦になれば、そのコンセプトである大型の機体はむしろ邪魔となる。
ガン・レンジ。30mm機関砲が吠え、翼を、コックピットを粉々に粉砕する。爆風を縫い、灰色のデジタル迷彩を帯びた青と黄色の十字架という特徴的な国旗をまとった機体が跳ねるように機動する。
《Over G...Over G...》
瞬間的にかかったGは、8Gを優に超えている。常人であれば失神しかねないそれにこらえ、背後を取らんと旋回する敵機を追い越させる。
30mm機関砲は気休めに過ぎない弾数しか入っていないが、30mm機関砲弾の威力は折り紙付きである。かすめただけで致命傷に追いやることができる。
《敵機撃墜! ……ハーッ……ハーッ……》
耐G呼吸。死に際の呼吸を思わせるそれは、パイロットにとって必須の呼吸法である。腹に空気をため込み、強制的に血液に空気を送り込むイメージだろうか。これをしない場合、人体の限界を超えた動きすら可能にする現代戦闘機は容易にその意識を刈り取っていく。
《クソ、こいつ》
無線が混線を起こしたか、敵パイロットの声が聞こえてくる。あるいは通信をオープンチャンネルのままにしているのか。
《一人で何機を食うつもりだ、こいつ!》
《だめだ、うわぁぁぁぁぁっ!》
《幽霊のエンブレム………首都防衛の部隊がなぜここに!?》
ゴースト1が敵機とシザーズ機動に入った。次の瞬間、背後から狙いすましたように、木々の間をすり抜けて、ゴースト2が敵機の背後から30mmを浴びせかける。片翼を失った敵機は、炎上しながら木に突っ込んだ。
《敵レーダー照射源の消滅を確認。敵航空戦力の撤退を確認。よくやった、ゴースト隊。基地に帰還し、次の出撃に備えろ》
《了解。各機、帰還するぞ》
通信。ミサイルをほとんど撃ち尽くしたゴースト隊は、一糸乱れぬ機動で、木の上を擦るような低空で帰還して行った。
この頃から、ルーシ連邦においては『首都防空隊は壊滅した』という情報が盛んに流されることとなり、存在しないはずの彼らは、ゴーストと呼ばれるようになっていった。