めっちゃ強いレミリアたんになった転生者が自分を捨てたお父様をぶん殴る話   作:わらしべいべー

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*新鮮な続きが現れた!あなたはどうする。
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【前回のあらすじ】
 自身の夢を世界の法則に無惨にも打ち砕かれたレミリア。罰として吊し上げに遭いながらも、レミリアは夢を叶えるために力戦奮闘!時に茄子に殴られ、時に笑顔の過剰摂取で死にかけながらも、限界の壁を乗り越えていく。しかしついにその夢が現実となることはなく、怒りの余りスーパーレミリアたんに変身!その時の怒りで今回の異変の主犯をぶん殴ることを決意したレミリアは、見事限定アイテムの使用ミスにより、未知のバグワールドに迷い込んでしまうのだった!




妖怪大戦争!〜世界最後の日〜

 

 

 

 

 

 カツカツと、歩く音が小さく響く。

 魔法でかたどられた階段を登り、その頂上に現れた光景を見て、男は…アゼラルは小さくほくそ笑む。

 

 視界を埋め尽くすほどに、果てしなく続く吸血鬼とその配下である人外の大群。彼らは皆アゼラルの招集に集った者たちだ。

 これら全てが己に付き従っている。その事実にアゼラルは思わず口角が上がる。そしてこれから、それがこの世界すべてになる。

 

 これほどの高揚は今までになかった。

 

 吸血鬼たちは壇上に立ったアゼラルに気づき、静かに上を見上げる。

 

「…諸君、陽が沈んだ。そしてたった今、幻想郷の妖怪どもがこちらに進軍を開始した!」

 

 吸血鬼たちの目つきが変わる。

 凶悪で、猟奇的で、獲物を見つけたかのような目。己らが勝つことを確信している目。

 

「最早何も言うことはあるまい。これより我々は幻想郷に対して全面的な制圧行為に出る!!行け、同志たちよ!!今こそこの幻想郷を我々の手に!!」

 

 響く歓声、笑い声、金切声、遠吠え。

 それはまるで、彼らの欲望の具現だった。

 

 自軍を焚き付けたアゼラルは一度その場を後にする。

 

 

「……流石です、アゼラル様」

 

「当然だ。それより周囲に警戒しておけ、最早いつ敵襲が来てもおかしくはないのだからな」

 

「はっ」

 

 

 この戦争の目的は吸血鬼という種族の再興にある。

 

 ある一件がきっかけで数百年前から衰退の一途を辿った吸血鬼一族。そんな状況に吸血鬼たちは焦りを感じたのだ。そんな時に彼らはある書物で、その世界の存在を知った。

 

 幻想郷。

 外界とは完全に隔絶されたその世界は、誰から見てもそこは楽園と言うに相応しい場所であった。

 人外が人外らしく、人が人らしく生きているその世界は、吸血鬼の脅威を減らされてしまった腑抜けた世界を見てきた吸血鬼にとって、正に宝の山に見えたことだろう。

 外の世界ほど、文明も発達しておらず、吸血鬼の弱みも知れ渡っていないこの世界は、吸血鬼という存在を再び世に知らしめるための基盤作りの場としてはまさに絶好の場所だった。

 

 一度絶頂を味わってしまえば、それ以外では最早満足できない。それはアゼラルも同じこと。

 かつての栄光を取り戻すために、彼らは死に物狂いで奔走しているのだ。

 

 

 

「…さて、ノーレッジ。賢者の石の様子はどうだ」

 

「今のところ良好よ。…まったく、これを維持するのも一苦労なんて話じゃないのよ」

 

「黙れ、貴様は他の魔術師と共に我らに魔力を供給し続ければ良い。貴様の望む物は全てくれてやっただろう」

 

「だからといって……はぁ、まぁ良いわ。言っておくけど私はこれを維持してる間はほとんど動けないから。ちゃんと守衛はつけてほしいわ」

 

「ふん、良いだろう。適当な配下を置いてやる。精々勤しむことだ」

 

 そう言うとアゼラルは、そそくさとどこかへ行ってしまう。

 

「はぁ、あのお方の横暴にも困ったものだわ…」

 

 そう魔法使いは夜空を見ながら、ため息を落とした。

 

 

 その瞬間、空から降る二筋の光が目に入った。

 

 それが何かと思う前に、光は吸血鬼の軍勢のど真ん中に落ち、光と共に大爆発を起こした。

 突然の事態にその場はパニックになる。

 

 何度か咳き込むと、魔法使いは光が降ってきた場所を見やる。そこには大きな煙が上がっていた。

 それは敵襲だということは誰の目から見ても明らかだった。

 

「…派手な狼煙ね。あなたたち、状況は?」

 

「もう少しお待ちを!……こ、これは…」

 

 配下である魔術師の顔がみるみる青くなっていく。

 

 

「お、鬼です!!情報にあった、星熊童子と伊吹童子です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 まるで特大のミサイルでもぶつかったのではないかと言わんばかりの爆心地。その場にいる慌てふためく他の生物を差し置いて、悠々と濃煙の中から二つの影が出てくる。

 一方は額のあたりに赤い一本角をもった背丈の高い女。もう一方は背丈は低いが、その身の丈の半分以上はあるであろう2本の角が生えた少女。

 

 

「おぉ〜、こいつらが吸血鬼かぁ〜。何か思ってたのと違うな。なんか弱そうだ」

 

「まぁ、良いじゃないか。折角あの賢者に頼んで、祭りの先陣切らせてもらったんだからさ。楽しもうじゃないか萃香」

 

「うーん、ま、そうだな!勇儀が特例で久々に地上に出れたんだ!久しぶりに暴れ散らかしてやるか!!」

 

「ああ、そうだなぁ!!」

 

 瞬間、その場が爆発する。

 未だ状況を把握し切れていない吸血鬼が、まるで布切れのように空を舞う。

 

 これが鬼。

 幻想郷に存在する人外の中でもほぼトップと言って良い力を持つ存在。その腕っ節だけで、時には岩を彼方まで投げ、時には湖を蒸発させ、時には山を割った。これは誇張ではなく紛れもない事実である。現に歴史に名を残すような鬼はそれらを可能としてきた。

 あの2人はそんな鬼の中で、正に別格と言っても良い存在だ。

 

 星熊勇儀。伊吹萃香。

 彼らの腕力は文字通り天を割る。その力は紙のように飛んでいる吸血鬼たちを見れば理解しやすいだろう。

 吸血鬼も何もしていないわけではない。防御の魔法や異能を使い、攻撃を軽減させようと努める。しかし、そんなものは紙屑同然と言わんばかりにあっさりと突破される。こちらが攻めても、攻撃ごと自身が吹っ飛ばされる。

 

 地面が砕け、地割れが起きる。風圧で岩に叩きつけられる。身に纏う妖力で、身体が削られる。

 悪夢でももう少しマシな光景が出てくるだろう。

 

「あっはははは!ちと手応えはないが、楽しいじゃないか!こんなに沢山いるんだからなぁ!!」

 

「それは同意だねぇ!!」

 

 

 

 混沌となっている戦場をアゼラルは冷静に見つめていた。

 

「鬼か。奇襲は予想していたが、いきなり大物を寄越すとはな。相手もこの戦いを長引かせるつもりはないと言うことか」

 

「ご、御当主様!ご報告が!」

 

「なんだ」

 

「周囲の上空から突如、天狗の群れが!」

 

「…成程、そう来たか」

 

 内と外。そこから攻め入れば、この場にいる者たちを混乱させることは容易である。要するに、こちらの動く場を無くして、混乱に乗じて一網打尽という作戦だろう。

 アゼラルは拡音の魔法を口元に置いて、壇上へ上がる。

 

 

「同志たちよ!狼狽えるな!!既に戦争は始まっている!!今こそ我ら吸血鬼の力を知らしめす時だ!!行けぇ!!!」

 

 

 アゼラルの言葉で殆どの吸血鬼たちの混乱が解け、それぞれの動きにキレが戻る。これもまた、アゼラルのカリスマ性が為せる技と言えるだろう。

 

「…さて、まずはあの鬼どもからだな」

 

 

 

 

 

 

「はははっ、どうしたどうしたぁ?最強の種族ってのはこんなもんかぁ!?」

 

「ラァッ!!」

 

「!」

 

 刺し尽くすような気配に勇儀は思わず振り向く。

 すると勇儀の側頭部に何かが直撃し、爆発する。思わず一歩後ずさる。

 

「クリティカルヒットォ〜。直撃したなぁ、頭トンだか?」

 

 勇儀がいた場所から数メートル離れた場所に、赤髪短髪の巨大な吸血鬼がいた。4メートル以上あるその身体の背中には、赤い翼が雄々しく広がっている。

 

「だーれの頭が飛んだって?」

 

「おっ」

 

 勇儀は何事もなかったかのように煙の中から現れた。が、その口からは僅かに血が流れている。

 

「今のは…拳圧か。私に血を流させるとは大したもんじゃないか」

 

「当然だ、オレは吸血鬼貴族の中でも偉く優秀だ。そこらにいる雑魚と同じにするなよ」

 

「ふぅん、貴族ってことは、つまりあんたは強くて偉いってことか。丁度よかった。…おいあんた!敵の中で一番強い奴は誰か知ってるかい?私はそいつと戦いたくて来たんだよ!」

 

「ほぅ、それは幸運だな。今オマエの目の前にいるオレがそうだぜェ」

 

「…へぇ、そうか。そいつは楽しみだなぁ!!」

 

 

 

 

 

「お、なんだなんだこりゃ。血かー?」

 

 萃香の周りに突然現れた赤い液体。突如現れたそれは萃香を中心に旋回し始める。そして液体は形を変え、針のような物質として一気に射出された。

 全ての針が萃香に命中する。

 

「…効かーーーん!!」

 

「あら、無傷なの。ちょっとショックね」

 

「んー?誰だアンタ。吸血鬼みたいだけど…何か違うみたいだね」

 

「フフ、当然。私は吸血鬼の中でも特別も特別。血に選ばれた吸血鬼貴族だもの」

 

「ふーん、良くわからんが、何か面白そうだな。お前さん名前は?」

 

「フフッ、本来なら貴女のような下賎な存在に名乗ることはないのだけれど、今回は気分が良いから特別よ。…アリナーゼ。アリナーゼ・コルシュ卿。いずれ偉大なる吸血鬼の頂に立つ者の名を知って散りなさい」

 

 

「卿…って確か八雲のやつが言ってたな、偉くて強いって。まぁ、酒のつまみにゃちょうど良いな!」

 

 

 

 

 

 吸血鬼の集団を囲うように攻め入った天狗。

 

 天狗という種族は妖怪の中では珍しく、完全な社会を形成している種族だ。上司がいて部下がいる。生き残るために、きちんとした統一関係を成している種族。故に集団戦に長けており、今回のような作戦は天狗の独壇場と言っても過言ではなかった。

 

 不意打ちが決まったということもあって、全体として優勢は取れている。しかし、相手も徐々に対応して来ている。単体の性能としては吸血鬼のほうが上だ。徐々に軍が押され始めていることを天狗の頭領、天魔は理解する。

 

 

「ふむ、そろそろか。あ奴らを…」

 

「天魔様!包囲されていた吸血鬼が一匹こちらに向かって来ているようで…」

 

 下っ端の天狗はそれを言い終わる前に、肉塊となって絶命した。

 何かが飛んできた。否、何かに轢かれた。天魔は高速で通ったそれを目で追い、再び攻め入ってくるそれに躱して対応する。

 

「…ほう、私の速度についてこれるとはな」

 

「こんなもの蠅が飛んどるのと何ら変わらん。で、お主はこんな年寄りに何用かな?」

 

「貴様がこの鴉どもの頭だということは知っている。まず貴様を仕留めれば軍の士気も下がるだろうよ」

 

「…やれやれ、あまり物騒なことは遠慮したいのだがの…」

 

「ハハハッ、こんな容赦無く攻める指示を出す奴のセリフじゃ無いな!」

 

「ふふ、違いないわ。…射命丸!!」

 

「え、はい、何ですか!こっちは凄い忙しいんですが!!」

 

「暫く軍の指揮はお主に一任する。儂が帰ってくるまで頼んだぞ」

 

「…え、ちょ、ちょっと天魔様!?それはめんど、じゃなくて、荷が重いですよって…いない!?もう、逃げ足だけは速いんだからあのジジイ!」

 

 

「おいおい、あんなガキに軍を任せて良いのかなあ?」

 

「問題ないわ、あ奴は優秀じゃからの」

 

「あっそ、まぁそれも貴様の首を見れば終わるだろう」

 

「獲れたらの話だろう。さて、お主が願い出たのだ。この天魔の力、腹いっぱい食っていくがよい」

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

「…これは」

 

「な、何なのこれ!?夢じゃ、夢じゃないよね!?」

 

「うるさい、少し静かにして」

 

「う、うん、ごめん…」

 

 レミリアを探しながら1時間ほどかけて森を抜け、開けた場所にきた小傘と咲夜。

 そんな2人の目の前に広がる光景は最早この世のものとは思えなかった。

 血が飛び、腕が飛び、首が飛び、だけならまだ良かった。そこには吸血鬼が飛び、地盤が飛び、嵐が飛び交って、まさに状況はハルマゲドン。

 それに加え、戦況が目まぐるしく変化していっている。これが人外の戦い。

 

 ーー今回は今まで見てきたものとは訳が違う

 

 咲夜はレミリアの言った言葉がようやく理解できた。

 少なくともあの戦禍に自分が入り込むのは不可能だ。入った瞬間に己の体は瞬く間に塵となって消え失せるだろう。

 

「…レミリア、見当たらない」

 

「えっ?こんなところにいる訳ないじゃん。レミリアはすっごい弱いんだよ?こんなとこにいたら死んじゃうよ」

 

「…何も知らないのに口出ししないで!」

 

「えっ!?ご、ごめん!」

 

 思わず萎縮してしまう小傘。

 

 小傘から見た十六夜咲夜という人間は一言で言うなら「変わっている」だ。あまり周囲の人と関わることはなく、寧ろレミリアや洋菓子屋の店主と言った妖怪と話していることの方が多い。

 小傘自身も何度か話したことはあったが、それだけだ。良くレミリアの近くにいるという印象でしか咲夜を知らなかった。

 

「…取り敢えず、ここから離れよう。ここにいたら巻き込まれる」

 

「う、うん」

 

 

「おや、何処へ行くというのかな、人間」

 

 どこからか響く声。

 咲夜は小傘を抱え、その場から飛び退くように離れる。

 数瞬後に、その場は数本の光の針のようなものが刺さった。

 

 針は針でも、人体を貫通できるくらいには巨大だが。

 

「え、なな、何!?」

 

「ほう、躱したか。人間、しかも子供にも関わらず、やるじゃないか」

 

「……誰、さっさと出てきたら?」

 

 森の暗がりから現れたのは3メートルはあるであろう背丈の大男。その背には、薄紫色に淡く光る巨大な翼が生えている。

 小傘はその特徴にひどく見覚えがあった。

 

「き、吸血鬼!?」

 

「いかにも。しかし運が良いな、斯様な所に人間とは。丁度腹が減っていた所だ。そこの妖怪もろとも私が頂いてくれよう」

 

「吸血鬼、こいつが…。じゃあ、やっぱりレミリアは…」

 

「ひいぃ!来るよぉ!」

 

 吸血鬼の懐が光ったかと思うと、そこから無数の翡翠色の閃光が飛んだ。

 音速に近いそれは、瞬く間に距離を詰め、2人を串刺しにせんと眼前にまで迫る。

 

 

 カチリッ

 

 

 

 しかし、それが2人に届くことはなかった。

 

 なぜなら止まったからだ。攻撃が2人の前で。

 

 攻撃だけではない。

 草も木も、小傘も、吸血鬼も、そして眼前の攻撃も。全てが灰色に染まり、その動きを停止した。

 

 その中で1人だけ色のある存在がいた。

 灰色と化した世界をただ1人何事もなかったかの様に歩いているのは、この中の唯一の人間。先程と違い、赤く変化した瞳の少女は、ゆっくりと目の前の動かぬ攻撃を避ける。

 

 これが十六夜咲夜の持つ力、『時間を操る程度の能力』

 正確には咲夜の持つ懐中時計がそれを可能としている。ひょんなことから時間の神様が宿っているという胡散臭い懐中時計を手にしてしまった咲夜は、以来時間を操ることができる様になったのだ。

 つまり、現在咲夜以外の時間は完全に停止しており、咲夜だけがその場に動ける状態となっているわけだ。

 

 咲夜は小傘を移動させた後、吸血鬼の背後に回り、その羽のついた背に懐から取り出したナイフを数本投擲する。

 灰色の世界から色彩が戻る。

 

 

「ッヌガァ!?」

 

「うわっ!?……え、え?」

 

 攻撃は空振り、ナイフが吸血鬼の翼の関節部に命中する。

 痛みを感じた吸血鬼は、すぐに再生しようと試みるが、できない。何かが溶ける様な音と共に、つんざくような匂いが鼻腔を刺激する。

 

「ッぐ…こ、これは…銀か!」

 

「正解」

 

「…貴様、いつの間に。…どうやら唯の人間ではない様だな」

 

 額に青筋を立てながら、吸血鬼は立ち上がる。

 

「忌々しい…。銀の短剣など、あの顔を思い出す…!絶対に許さぬぞ!」

 

「誰と比べるのか知らないけど、八つ当たりはやめてほしい」

 

 時間をとめるのには咲夜自身の魔力を消費する。咲夜の魔力では小傘を連れて逃げてもあっさり見つかって殺されるだけだろう。ここで仕留めるしかないのだ。

 こうして来た以上、戦う覚悟はしていたのだ。決意を秘めた目で目の前の吸血鬼を見やった。

 

 

 

「な、何がどうなってるの〜!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー時は少し遡る。

 

 

 

 

 オッス、オラ レミリア!

 

 なんか板を壊したら何か目に悪いところに飛ばされてしまったぞ!やっべぇぞ!こりゃ迷子だぞ!

 咲夜もいないし、こりゃはぐれてしまったということか!まずいね、もし戦場に放り出されてたら咲夜でもヤバいね。今どのくらいヤバいのかと言うと、遅刻5分前に布団で飛び起きたあの朝の日くらいにはヤバいです。

 というかあの時待ったかけて触ってきたの小傘だよね?ということは、小傘も戦場入りしてるかもしれないってことだ。たった今5分前が2分前になっちまった。

 

 そんなこんなで、ひとまず出口をさがすことにしたのだが、まぁこのお城が広い!窓は外かと思ったら庭だし、明らか出口とアピっているような大きな扉はもう30個は開けた。何だここは!赤統一だけでなく、迷路属性もあるとか属性過多すぎるぜ!こんな奴ギャルゲでも攻略したく無いぜ!一緒に人生にも迷いそうだしな!

 

「グルアァァ!!」

 

「ぬぉおおぁ!?」

 

 まぁ、そんな私は今あの世に迷い込みそうになってるわけだけどね!

 

 いや、なんてことはない。おーぷんざどあーしたら、目の前にこの真っ黒くろすけみたいな畜生がいて、現在進行形で追いかけられているといった感じだ。

 やっべぇぞ!(2回目)

 しかも、さっき慌ててナイフ落としちゃったし、ミサンガ切れないじゃん!

 

 

 補足だが、レミリアが普段魔力を封じているミサンガは封印魔術を幾多にも編み込んで作られたもので、基本的に力でこれを切ることはできない。これを取るには銀を含んだ物質で切る必要があり、そのためレミリアは常に銀のナイフを携帯しているのだ。

 

 

「どっかに銀の食事ナイフとか落ちてないかなー…」

 

「グォン!」

 

「うっひゃあ!?何すんだ危ないでしょうが!って、あーっ!!服千切られた!?またてんちょーに怒られるじゃん、このバカ!!」

 

 というかこのままだとマジでヤバい!

 先にこっちがゲームオーバーしちゃう!やだー!人生にコンテニューはないんだぞ!

 

 

 

 

 

「あ、あっぶなーい…、死ぬ所だったわ」

 

 上手く、物陰に隠れて難を逃れたレミリア。だが、まだ近くにはあの黒い獣がいた。というか、曲がり角のすぐそばにいる。

 レミリアの背後は鍵の閉まった部屋だけで、実質的に逃げ場はない。非常にピンチである。レミリアは冷静に獣を観察する。

 

「…よく見たら、あいつ魔法で作られてるわね…。実体化の魔法陣が背中にあるし、何よりデザインが手抜きすぎる。何だあれ、デ○○ニーでも、もっと凝ったデザイン考えるわよ。やーい手抜きモンスター」

 

 あ、やべ、こっち向いた。

 あーー、やめてください!お客さん!困ります!そういうのは困ります!!

 まずいよまずいよ!このままでは見つかってしまう!

 

 

「むがっ!?」

 

「…静かに、落ち着いてください」

 

 え、誰!?もしかしてこの館の人!?

 アッ、ごめんなさいー!不法侵入は故意ではないんです!信じてくださーい!

 私知ってるもん!こういう渋い声をした人は大体悪い人なんだもん!人気のない場所に連れてかれてアンアンされるんだもん!そうに決まってるもん!

 

「こちらです、逃げ道があるので着いてきてください」

 

「ん、むがむが…」

 

 まぁ、着いていくしかないんですけどね。

 

 はぁ、果たして私はここから生きて出られるのだろうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 初老の男性が、何もない壁を手で押し込む。

 すると、壁から人1人が通れる程度の穴が出現した。

 

「さぁ、こちらです」

 

 レミリアはそれに着いていく。

 穴の中は、不気味な下り階段だった。点々と付いている蝋燭の火が、淡く辺りを照らしていて、それが下に延々と続いている。

 

「お足元、お気をつけください」

 

「は、はい…」

 

 階段を下へ下へ、さらに下へと降りていく。

 

 そしてようやく終着点が見える。

 それは扉だった。固く、堅牢そうな大きな扉。何年も使い古されている様な雰囲気がする。

 男性は扉を軽くノックする。

 

「…奥様、私です」

 

『入って』

 

 扉越しから聞こえた返事を確認すると、そのままゆっくりと扉を開ける。

 

 部屋の中を一言で言うなら、お偉い貴族の婦人部屋だ。

 壁や床は相変わらずの赤だが、先ほどの通路よりも高級そうな色合いだった。部屋中に豪華な装飾が辺りに飾られており、部屋の隅にはこれまた高そうなサイズのベッドがあった。

 そんなベットに座る1人の人物が目に入る。

 

 艶のある金髪に、紅色の瞳、そして最も目につくのは背にある大きな翼。それは紛れもなく吸血鬼のそれであった。

 

「アイェ!?吸血鬼!?」

 

「ふふ、そんな慌てないで。私は貴女を襲おうなんて考えてないわ」

 

「……え、そうなの?」

 

「奥様はあの魔獣に追いかけられていた貴女様を見かねて助け舟として私を寄越してくださったのです」

 

「あ、そうなんですか。あ、ありがとうございます…」

 

「ふふ、そう固くならなくて結構よ。それよりもお話ししましょう?私人間と会うのはとっても久しぶりなの」

 

「え、いや、私は…」

 

「まぁ!よく見たら貴女服が破れてるじゃない。このままだといけないわ。クルム、この子に合ったお洋服を」

 

「畏まりました」

 

「あの、ちょっと、待っ…あひゃぁー!?」

 

 

 

 

 

 

「自己紹介が遅れましたわ。私はルシェル・スカーレット。こっちは、私の専属執事のクルムよ」

 

「どうも、クルムです。以後お見知りおきを」

 

「ど、どうも…」

 

 可愛らしい洋服に着替えさせられたレミリアは、少し慣れない着心地を感じながら、用意された椅子に座る。

 

 ……どうしよ。

 変な人に捕まってしもうた…。いやまぁ、お洋服は可愛いけどさ、ここバッチリ敵の本拠地だよね。前慧音先生に見せてもらった奴と特徴一致するし。本来、呑気に茶なんて啜りながら話してる場合では無いよね。

 

 …下手したら死ぬのでは、私。

 いやーっ!どうせ死ぬなら甘い物でも食べて終わりたい!!具体的にはてんちょー特製の餡子たっぷりのたい焼きとか食べたいー!!あの餡子がさいこーなんだよー!!あんこあんこあんこー!

 

「ところで、貴女のお名前は何て言うのかしら」

 

「へぁっ!?あんこでぇす!」

 

「あんこちゃんね。よろしく」

 

 唐突に質問が飛んできて、焦ったレミリアはよく分からない偽名を口走ってしまう。その内心では「やっちまったー」が連呼されている。

 

「あら、どうしたの、震えているわ。もしかして私が怖いかしら…」

 

「いっ、いえ、そんなことはないですよ!いつも通りですよいつも通り!ほら、私暑くてもシバリングがよく起きるんですよねー!参っちゃうなー!あははーっ」

 

「それは身体的に大丈夫なのですかな…?」

 

「本人が問題ないならきっと大丈夫よ。それよりも早くお話ししましょう!今なら私、何でも答えちゃうわよ!」

 

 ぶっちゃけそんなことをしている暇は無いのだが、クソ雑魚状態の今の自分ではどうせ何もできないと一旦流れに身を任せることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーそれでね聞いてよあんこちゃん、この時あの子ったら慌ててこけちゃってー」

 

 

 いや、話が長い!!

 

 何この人!?延々と話が終わらないんだけど!もう1時間は経ちましたぞ!家族の話になったと思ったら、なぜか辞書みたいにデカいアルバム取り出してきて、写真一枚一枚を懇切丁寧に解説し始めたんだけど!こ、この人マイペースすぎるぜ…!

 

 イマジナリー慧音(お前が言うな)

 

 

 

「……私ね、実は今回の戦争をすることに反対したの」

 

「え?」

 

 唐突にそう言うとルシェルはアルバムに収められている写真に手を置く。

 

「誰だって死ぬかもしれない戦いに自分の夫と娘を連れて行かせることを良しとはできないわ」

 

 その写真には3人の人物が映っている。

 1人はルシェル。後の2人は夫と娘だろうか。その表情は堅く、まるで一昔前の貴族の写真である。

 

「…だから私はここにいるの。この館の、吸血鬼の命運を決める争いを邪魔しようとしたから、あの人の手でこの地下に閉じ込められた。今や私はあの人から見向きもされない。その時に一緒に止めようとしたクルムも仲良く地下行き…ごめんねクルム」

 

「私めは、御当主様と奥様、どちらが正しいのかを自分で決めた故の結果。奥様が謝られる必要はありません」

 

 どうやら中々カオスな家庭環境の様だ。

 普通に考えて自分の思い通りにならないだけで、妻を地下に監禁とか、どんだけ我儘やねん。その夫とやらとは仲良くなれそうにないわ。

 

「…ごめんなさいね、こんな話を聞かせてしまって」

 

「全然良いわよ、誰にだって悩みの一つはあるものだし。…やっぱりルシェルさんは、まだ戦争に反対なの?」

 

「当たり前よ!以前幻想郷の勢力図を見たことがあったけど、誰も彼も化け物だらけだったわ…。たった1人でも、その気になればこの世界そのものが壊れてしまうくらいに出鱈目な力の持ち主たち。今頃あんな奴らが暴れていると考えると…もう、心配で堪らないの…」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

「すまない!結界符の予備を持ってきてくれ!!」

 

「わかりました!」

 

「まずい、こっちに入ってきたぞ!」

 

「あっちもです、守護者殿!」

 

「くっ…!ここは私が何とかする!お前たちは向こうの結界を維持してくれ!」

 

「分かりました!」

 

 

 現在、人里を守る為の警備隊は混沌とした状況に陥っていた。

 里を出たすぐそばに広がっている、蠢く黒い海。それは、木々を野原を、挙句に里に張られた結界を飲み込まんと迫っている。未だ最悪の事態にはなってはいないが、このままではやがてこの黒が里を飲み込んでしまうだろう。

 そんな事態に対応すべく里を護る結界の担当者たちはその黒を堰き止めんと必死に動いていた。

 

 

「くそっ、まさか私の能力まで貫通してくるとはな、ルーミア…!」

 

 

 

 

 

 

 

「…不味いわね、やっぱり人間じゃないと」

 

 里から数キロ離れた場所。まるで渦が巻いているように、あらゆるものが黒に染められたその空間には、生物がいる気配は全く無い。たった1人を除いて。

 真っ黒なロングスカートに、金髪を足元まで伸ばした少女は、期待はずれと言わんばかりにそう呟いた。

 

「こ、この…ばけ、物がぁ…!」

 

「あら、貴方も十分化け物でしょ?そんなになってもまだ生きてるんだから。話に聞いてた通り、吸血鬼はしぶといわね」

 

 この黒の海の原水である存在と相対していた吸血鬼。彼は吸血鬼の中でも実力、位は共に高水準だ。故に自らが敗れることなど想像すらしていなかっただろう。むしろ目の前に現れた敵を、品が悪いと思いながらも、味見でもしてやろうかと呑気に考えていたほどだった。

 だが、それがどうしたことか。食われているのは己自身ではないか。

 決着は一瞬だった。目の前の女の首を取ろうとした時に、女の足下から出てきた溢れんばかりの黒の海に呑まれた。それだけだ。

 

「八雲とクソ巫女がどうしてもって言うから参加してやったけど…、想像以上につまらないわ」

 

 バクリと、断末魔を上げながら黒に食われる吸血鬼を気にも留めず、少女、常闇妖怪ルーミアは退屈そうに空に浮かぶ赤い月を見上げた。

 

 

「不思議ね。今日は月よりも、星がよく見えるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グギ…ギャ…」

 

「…まったく、こんなにいるとはな」

 

 そうため息混じりに言う少女。

 赤と黒の独特なデザインの巫女服を着ている黒髪の少女は、まるで山と言わんばかりの吸血鬼の死骸の上に1人座り込んでいた。

 

「…おい、藍。これで全部か?」

 

『いや、まだ東の方向に吸血鬼の集団がいる。恐らくだがそれが最後だろう』

 

「そうか、分かった。すぐ行こう」

 

 少女はそう言って死体の山から飛び降りる。

 

 

 その身に燃える使命感を心に、少女はただ真っ直ぐに森を駆ける。

 彼女こそが、幻想郷を守護する調停者、博麗霊奈。博麗の巫女と呼ばれるバランサーの役目を負っている存在だ。人の身でありながら、その拳一つで並み居る妖怪たちをぶちのめす最強のルーラー。幻想郷にいる妖怪で彼女を恐れぬものはいない。

 幻想郷に存在する吸血鬼は、アゼラルの招集に集った者だけが全てではない。幻想郷のさまざまな場所に、それぞれの考えや企みを持っている吸血鬼が存在している。現在彼女は、そんな包囲外の吸血鬼たちを狩るために奔走していた。

 

 

 ふと、彼女は空に浮かぶ不気味な赤い月を見る。

 

 

「…しかし、今日はやけに胸騒ぎがするな。吸血鬼と妖怪の戦争…それだけでは終わらない気がしてならない…」

 

 

 ーー博麗の巫女の勘はよく当たる。

 

 

 

 霊奈は自身の育ての親である妖怪の言ったその言葉を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

「…ひとまず向こうは大丈夫か」

 

 霊奈と連絡を終えた藍は真下で行われている命の削り合いを見やる。幻想郷の妖怪が吸血鬼に殺されていく様子が目に入る。

 

 

「…やはり、そこらの妖怪では刃が立たないか」

 

「そうねぇ。吸血鬼は最強の種族と自称するだけあって、その性能は幻想郷でも上位ね」

 

「…ッ 紫様!申し訳ありません、お気づきすることができず…」

 

「良いわよ、ちゃんとやるべきことはしているみたいだし」

 

 知らぬ間に藍の隣にいた存在。

 空間から生じた不自然なひずみ、そこから窓から体を出すように、上半身を覗き出している。見た目は少女のものであるが、その身に纏う超然的な雰囲気は言葉にし尽くし難い。もしこの場に他の誰かがいれば、この存在が少女であるか、妖怪であるか、神であるか、はたまた別の何かであるか、その実像がはっきりとしない何とも気味の悪い感覚に襲われるだろう。

 

「今回の戦争、向こう側もかなり準備をしてきたみたいね。特定の弱点に対する耐性魔法を使ってるわね。これじゃあ弱点を突いて一掃するという手が使えないわぁ、残念残念」

 

「敵の数自体はこちらより少ないですが、凡骨妖怪では時間を稼ぐのがやっとです。大妖怪は問題なさそうですが、それ以外がどうにも…。それに敵には特異な力を持つ者もいます、戦いが長引けば逃亡させられる可能性も十分あるかと」

 

「ああ、それに関しては問題無いわ。もういじってあるもの。…それにしても、なんで人間がいるのかしら」

 

「恐らく運悪く迷い込んだものと…。いかが致しますか?」

 

「ま、放っておきなさい。戦える力も持ってるみたいだし、静かに鑑賞した方が面白そうだわ」

 

「はっ」

 

「ふふ、さて、蝙蝠さんたちはこれからどう出るのかしら?」

 

 

 八雲 紫。

 この幻想郷を創り出した創造主にして、楽園の管理者。

 全てを見透かしているようなその黄金色の眼が、赤く染まった楽園を見下ろした。

 

 

「精々踊ってくださいまし、この幻想郷の為に」

 

 

 戦争はまだ、始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた」

 

 

 

 

 

「ッ紫様!」

 

 突如、2人のいる全方位から紅の凶弾が放たれた。

 それは2人に直撃し、空気が震えるほどの大爆発が起きる。

 

 煙の中が晴れたそこにあったのは、黄金色の球体だ。それがはらりと分解すると、中から紫と藍が姿を現す。

 そして藍は視界の先にいるその存在に対して怒りを露わにする。

 

「貴様…!」

 

「随分な挨拶ですわね。不意打ちなど、誇り高き吸血鬼の美学とやらに反するのでは?」

 

「生憎私、誇りとかそういうのはどうでも良いって思ってるの。態々格好つけて負けたら最高に格好悪いじゃない」

 

 紫と藍は目の前にいる吸血鬼を見て確信する。

 この吸血鬼こそが、楽園の結界を破壊した張本人だと。

 

「…紫様、ここは私が」

 

「あら、2人一緒に来ても全然大丈夫なのよ。どうせどっちも死ぬんだから」

 

「ふん、死ぬのは貴様の方だ。私を簡単に落とせると思うな」

 

「あら、簡単なことよ。墓標を2つ作るだけだもの。十字に組んだ木を刺して完成よ」

 

「これから貴様は私に串刺しにされるがな…!」

 

「それは私のご先祖様の専売特許。いけないわ狐さん、泥棒は」

 

 

 今まで探していた吸血鬼が今目の前に。

 紫は自身の力を使って、排除に動こうとする。が、己の背後から感じる何者かの大きな気配に、それを中断する。

 

「…どうやら敵の頭さんからお誘いが来てるみたいね。まったく、流石にこのやり方は読めなかったわ」

 

 そう言う紫の目の先には、一際大きい翼を持った吸血鬼、アゼラル・スカーレットが佇んでいた。

 

「当然だ、我ら吸血鬼が貴様らのような凡俗の妖怪に遅れをとるはずがない」

 

「あら、勘違いさせたわね。直接私のところまで出向いて戦うなんて、妖精でも思いつかない愚かなことをするなんて私でも読めなかったってことよ」

 

「既に屍になることが決まった者が言うことは聞くに堪えんな。貴様はこの私が直接手を下すと決めていた」

 

「あらら、光に怯えるしかない蝙蝠風情が何を言うのかと…ふふ」

 

「それ以上口を開かない方が良い、死期が早まるからな」

 

「この幻想郷に謀叛を起こした時点で貴方の死期は今日と決まっているの。だから動かないでね、楽に殺せなくなるわ」

 

「貴様は楽に死ねんがな!」

 

 

 

 

 両者衝突。

 

 予期せぬ形で幕を開けた大将戦。それをフランドールはゆったりと眺めている。だが、それを遮るように藍の攻撃が降り注ぐ。

 

「あらあら、不意打ちなんて品がないわ、狐さん」

 

「貴様には言われたくないな、蝙蝠」

 

「私のこの羽が蝙蝠に見える?だとすれば貴女の眼はとんだ不良品ね」

 

 少女は妖しく笑う。

 

 

「…一つ聞く、幻想郷の結界を破壊したのは貴様か?」

 

「結界?ああ、もしかしてこの世界に入る時に見たガラスみたいなやつかしら。あれならお父様に言われて壊したわ。私も邪魔だと思ったし」

 

「……やはりそうか、たった今貴様を生かす理由が全て消えた」

 

「よく言うわ、最初から生かすつもりなんて無いくせに。あんなものまた直せば良いじゃない」

 

 その発言に藍の額に青筋が浮き出る。

 

「貴様はあの結界がどれほど重要なものか理解していないようだな…!この楽園の命そのものなのだぞ!!下手をすればこの世界が崩壊していた!!それがどれほど恐ろしいことか貴様には理解できまい!!」

 

「ふふふ、別に良いじゃない、壊れても。ものは壊れてもまた直せば良いだけ。だけど…」

 

 

 目の前の吸血鬼は、羽というにはあまりに歪なその翼を広げる。翼から生える宝石のような物が少女の危険性を示すように、怪しく灯っている。

 

 

 

 

 

「知ってるかしら狐さん、人生にコンテニュー(やり直し)は無いのよ」

 

 

「抜かせ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁー、やっとお話終わった…。

 ルシェルさんは話疲れてベッドで寝ちゃってるし、どんだけ自由なんだ。子供みたいな人だな。

 いやしかし、意外な家庭の重さを知ってしもうたわ。けど生憎私には何にもできないのよね。精々その夫さんとやらをぶん殴るくらいだけど、今やそれも怪しいからね…。

 

 っと、そんなことしてる場合ではない!早く咲夜達のところへいかなければ!

 クルムさんも今はいないし、ちょっと失礼ながらお部屋をガサらせてもらいますよっと…。さながら気分はドラクエ主人公!他人の部屋で金品を盗む勇者!さぁどけやい!私は魔王を倒す勇者なるぞ!貴様らの金品をよこせぃ!

 ま、私が探してるのは銀のナイフだけどね。吸血鬼の部屋に弱点になるものが置いてるとは思えないけど、何もしないよりかはマシだよね。

 

 えーっと、銀のナイフ、銀のナイフっと……ん、何これ、写真?大分ボロいけど、なんでこれだけアルバムに入ってないんだろ。

 

 ルシェルさんと、あと誰この赤ん坊。なんかいけ好かない顔してるわね。でも綺麗な黒髪。この子は成長したら私みたいな超絶美人になること間違いなしね!…はて、でもルシェルさんの話にこの子はいなかったわね。親戚かしら。

 

 

 

 レミリアはふと、写真の裏を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 ーー1502年誕 レミリア・スカーレットーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………え?

 

 

 

 

 

 

 





 作者はインテリ系フランちゃん推しです。

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