めっちゃ強いレミリアたんになった転生者が自分を捨てたお父様をぶん殴る話   作:あやさよが万病に効くと思ってる人

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【前回のあらすじ】
 ついに始まった第一回幻想郷妖怪力比べ競争(1992)!開始直後は不意打ちもあり、チーム魑魅魍魎が優勢と思われていたが、チーム吸血変態もカリスマというドーピングアイテムで、負けじと反撃!突如行われたあまりにレベルの高い変態終末バトルに時計と茄子は困惑!一方その頃、レミリアはなんかママっぽい吸血鬼と遭遇!その後決定的証拠の写真を見つけたが、「ママになりたい人をママにするのはちょっと違うよね」という感想を胸に、そっと写真をポッケにしまったのだった!(意訳)




アルバイトと夜の懐中時計

 

 

 

 

 

 

 

 産声が聞こえる。

 

 その身を蝕む痛みに耐えながらも、彼女は朦朧とした意識の中、確かにやり遂げたのだという達成感、そして痛みに意識を割かれながらも、赤子の声が聞こえ、自分の初めての子が産まれたのだの実感する。

 今までずっとお腹越しから可愛がっていた我が子。早く顔を見たい。思わずにへらと、顔を綻ばせてしまう。

 

 しかし、いつまで経っても担当の助産婦は子の顔を見せてくれない。

 

「…どうしたの?早くお顔を見せて」

 

「お、奥様…、しかし…」

 

「いいから早く見せて!私の子供の顔を!」

 

「お、奥様!」

 

 そう言って、痛みを無視して体を動かし、助産婦の手に収まっている我が子の顔を見る。

 可愛らしい寝息を立てながら、寝ている黒髪の赤子。私とアゼラルのどちらの髪色とも違うが、そんなことは気に留まらない。我が子と会えたという幸せが心を満たしていく。

 

「ああ、可愛いわ…。とても可愛らしくて愛しい我が子…」

 

 彼女は優しく自らの子を抱きしめる。優しく、温かい感覚。そこにある確かな命の温もりを堪能する。

 赤子は泣き止み、母であるその女性の顔を、ろくに見えないその目で見上げる。

 

「…ふふ、すぐに泣き止んで。とっても良い子。名前…そうよ名前よ。ずっと前から決めてた名前が…」

 

「お、奥様…」

 

「…どうしたの?」

 

 助産婦が深刻そうな顔でこちらを見つめている。

 

「じ、実は、その、非常に申し上げにくいのですが………な、無いのです」

 

「無い?無いも何もこの子は女の子…」

 

「羽が…無いのです。身体のどこにも」

 

「……え」

 

 そんなはずはない。

 そう思い、包まれている布を取り、その背中を確認する。しかし。

 

「う、嘘…、どうして…?」

 

 その背中には吸血鬼に本来あるはずの羽がどこにも見当たらなかった。しかも羽どころか、羽の付け根に当たる骨格すらない。これでは人間と何ら変わらなかった。

 顔が青ざめていく感覚がする。

 

「……クルムを、呼んできて」

 

「え、しかし、御当主様は…」

 

「いいから!!」

 

「わ、わかりました」

 

 羽が無い。それはつまり、己の羽を力の象徴とする吸血鬼として、不完全な存在であることを意味していた。

 夫であるアゼラルは、今回産まれてくる子供に大層な期待を寄せている。理由は単純、自身の血族であるより優秀な存在が産まれるからだ。その子供に吸血鬼の未来を託し、50年前から衰退しつつある吸血鬼の栄光を再び掴もうとしていた。

 だが、たった今生まれたのは、吸血鬼と言うにはあまりに歪な存在。こんな子が生まれたと知られればアゼラルはどんな行動を起こすかわからない。最悪の予想が頭をよぎる。

 扉が開き、クルムが部屋に入ってくる。

 

「奥様、どうしたのでしょうか。御息女様が生まれたにも関わらず、御当主様にお顔も見せず…」

 

「…どうしよう、クルム。私…」

 

 ルシェルはクルムに一通りの事情を説明する。クルムの顔がみるみる深刻なものへと変わっていく。

 

「それは…」

 

「きっとアゼラルはこの子のことを良く思わないわ。酷い扱いを受けるかもしれない…」

 

 例え吸血鬼として歪であったとしても、彼女にとってはたった1人生まれてきた我が子。そんな子がこれからどんな目に遭うのかと考えると、心が苦しくて堪らなかった。

 ルシェルは思わず抱いている腕に力が入る。

 

 クルムはそんなルシェルを見て、側にあった記録用の白紙を一枚手に取る。

 

「…奥様、こちらを見てください」

 

「え…」

 

「笑顔です、奥様」

 

「!…わかったわ」

 

 

「……できました、こちらを」

 

 数秒が経ち、ルシェルはクルムから先ほどの紙を受け取る。そこには少しぎこちない笑顔をした自分と、静かに寝ている我が子の姿があった。

 

 これは写生魔法によってできた写真だ。

 簡単に言うなら魔力を使う念写だ。本来はこれほど写生度が高い写真を作るには相応の魔力を消費するが、クルムはこれを魔力消費なしで行うことができる。

 

「見てください、貴女様の御息女はこんなにも元気でございます」

 

「…ええ、そうね」

 

「…私は御当主様の命で御息女様を連れていかねばなりません。万が一の時は私が何とか致します。ですのでどうか、お待ちください」

 

「…うん、わかったわ。でも、その前に」

 

 ルシェルは、赤子をくるんでいる布に魔法で文字を書いていく。レミリア と。

 

「レミリア。レミリア・スカーレット。貴女の名前。可愛い私の子供。どうか無事で…」

 

 

 そうしてルシェルは部屋でただ1人待った。我が子の無事を祈りながら、ひたすらに待ち続けた。

 

 ───しかし、ついにルシェルがもう一度我が子の顔を見ることはなかった。

 

 

 

 

「アゼラル!!」

 

「ルシェルか、何の用だ」

 

「レミリアをどこへやったの!」

 

「レミリア?……ああ、あの出来損ないか。あんな不良品外に捨ててやったわ」

 

「な、なんてことを…ッ!私たち吸血鬼が日光に当たったらどうなるかくらい分かっているでしょう!?」

 

「だからこそだ。あのような欠陥品が我が高潔なスカーレット家にいては、我らの格が落ちる。あんなものはこの世にいてはならんのだ」

 

「そんな…!」

 

「そんなことよりもルシェル、お前は体を休めておけ。次の私の子を産む役目がお前にはあるのだからな」

 

「………」

 

 ルシェルは唖然とするしかなかった。

 血に力に執着していたことは知っていたが、ここまで身もふたもないことをするとは想像できなかったからだ。

 

 いつの間にか自室に立っていたルシェル。ここに戻ってくるまでの記憶が全く無い。

 目の前が真っ暗にある感覚が続いていて、とてつもない吐き気に見舞われる。

 

「うっ…ッ、おえぇ…!」

 

「奥様ッ!」

 

 偶々部屋に来たクルムが慌てて駆け寄る。

 ルシェルは出産の疲労と、我が子を失ったショックで肉体的にも精神的にも既に限界だった。

 

「…うぅ、レミリアぁ…!」

 

「……申し訳ありません、私の力及ばず…」

 

「良いの……クルムは悪くないわ」

 

「いいえ、レミリアお嬢様を捨ててしまったのは紛れもない私め……結局私は、何もすることができませんでした…。あの場にいた私は御当主様の力に怯えるだけの、唯の臆病者なのです」

 

「…仕方ないわ、あの人の力はそう言う力だもの。貴方を責めることはできない。…悪いのは私なの…、私がレミリアを守りきれなかったから…!」

 

 部屋にルシェルの後悔の咽び声が響く。

 

 

「……奥様、私めはレミリアお嬢様を日の当たらない場所に置いて来ました」

 

「えっ!?じゃあ、証拠に持ち帰って来た灰は…」

 

「私が個人的に持っていた吸血鬼の灰を出させていただきました。外はもう夜です。今ならレミリアお嬢様を迎えに行けるかと」

 

「…行くわ」

 

「いけません!まだお体が…」

 

「関係無いわ…!私が、私が迎えに行かないと意味が無いの!お願い、私も連れて行って!」

 

「……分かりました」

 

 そうして2人は夜館を抜け出し、レミリアを置いて行った場所へと訪れた。しかし。

 

 

「誰もいない…?」

 

「ま、まさか!そんな筈は…!」

 

 レミリアを置いて行った場所には誰の姿もなかった。レミリアだけがそこから綺麗さっぱり消えていたのだ。

 

「れ、レミリア…」

 

「……申し訳ありません、奥様。まさかこのようなことになるとは…」

 

「………いえ、良いの。クルムはここにレミリアを置いて行ったのでしょう?仮に日光で焼けたなら灰と、くるんでいた布がある筈だわ。それが無いということは、誰かに拾ってもらったのかもしれない」

 

「それは…」

 

「それに、ここで私が見つけて帰ったとしても、きっとレミリアは幸せになることはできない。だからきっとこれで良かったの。不幸になるとわかってる私の元よりも、幸せがあるかもしれない誰かの方が…レミリアのため…」

 

 そう言うルシェルだが、言葉の端々には隠しきれない悲しみの色があった。目頭にはうっすらと涙が溜まっている。

 

「…だから、だからどうか幸せになって…お願いだから…!うぅ…、あああぁぁ…!」

 

「奥様…!」

 

 

 美しい星空の下、ルシェルは悲しみに暮れながらも、娘の無事と幸せを願った。確かな幸福と、笑顔で過ごせる毎日を夢想しながら。

 

 

 きらり と、暗い夜空に流れ星が一つ流れた。

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「……あら、いけない私ったら…」

 

 自身のベッドの上で目を覚ましたルシェル。

 ふと、目尻に涙を溜めていることに気づく。

 

 懐かしい夢を見ていた気がする。

 

 少しの寂しさを胸にベッドから起き上がるルシェル。すると、自分の部屋がやけに散らかっていることに気づく。

 

「…あら?」

 

「ピェッ」

 

 視線の先にいた子供。

 あの子は自身がこの地下に招き入れた人間だ。何か物色していたのだろうか。それ自体は全然構わないのだが、何か焦っている様子だ。

 

「…ふふ、おはよう、あんこちゃん。ごめんなさいね、寝ちゃってたわ」

 

「い、いえ、そんなことはー…」

 

「ふふっ、そんな萎縮しなくても大丈夫よ。こっちにいらっしゃい」

 

 少女はルシェルの隣にちょこんと座る。ルシェルにはなぜかその姿がどうしようもなく愛らしく見えた。

 そんなおずおずとした様子で、こちらをちらちらと見やっている。

 

「あの…」

 

「どうかしたの?」

 

「あー…、いや何でもないです…」

 

 何だか先程よりも距離を取られている気がする。どうかしたのだろうか。

 

 …しかし、こう見ると益々レミリアによく似ている。

 ルシェルはレミリアを赤子の姿しか見ていない。しかしレミリアが成長すれば、こんなふうになっていたのだろうなと、何となくそう思えてしまうのだ。

 

 彼女を見ているとどうしてか安心してしまうような感覚に襲われる。私は無意識にあんこちゃんとレミリアを重ね合わせていたのかもしれない。

 なんてどうしようもない。この子とレミリアは違うというのに、いつまでも未練たらしく過去のことを引きずっている私が嫌になる。

 

「飴、いるかしら」

 

「いる!」

 

 

 だけど、そんなレミリアの面影があるこの赤の他人を、私はどうしても手放せないでいた。私の足りないものを埋めてくれる。そんな気がしたから。

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 止まった時間が動き出す。

 

 大量のナイフが全方位から一気に押し寄せる。

 

「チィッ」

 

 それを数本体に受けながらも咲夜との距離を一気に詰め、その手から複雑な魔法陣が現れる。咲夜はそれを見て反射的に時間を止め、素早く距離を取る。

 時間が動き出した瞬間、さっきまで咲夜のいた場所が、爆音と共に火の海になった。

 

「フー…、フー…」

 

「…ふん、逃げ足だけは早い奴だ」

 

 吸血鬼という超越者との命の取り合い。

 止めた時間も含めると、既に30分以上動き続けている咲夜には疲労の色が見えていた。一方吸血鬼の方は息切れすらせずにピンピンしている。

 目の前の吸血鬼には、手持ちの銀でそれなりの攻撃を浴びせた…はずなのだが、相手はまったく手負った様子を見せない。

 

「しかし珍妙な魔法を使うな。時には一瞬で攻撃が現れ、時には一瞬で貴様が消え去る…手品としては満点だな」

 

 戦い始めの頃は銀が効いていたし、攻撃も極力避けている様子だった。しかし、ある時からそれを顧みず、体から煙を出しながらもこちらに突撃してくるようになった。おまけに受けた傷もすぐに治っている。弱点である銀で傷つけたにも関わらずだ。

 

 …銀が効かなくなっている。

 何かタネがある。咲夜はそう確信する。

 

「…どうやら不思議に思っているようだな。なぜ私に貴様の短剣が通用しなくなったのかが」

 

 弱点をカバーする。確かそんな魔法をレミリアから聞いたことがある。確か名前は…

 

「耐性魔法」

 

「ほう、正解だ。私は我が身に銀に対する耐性魔法をかけた。クク、吸血鬼が己の弱点をそのままにすると思っていたのか?」

 

「……」

 

 少しまずい状況と言えるだろう。

 咲夜は今のところ物理的な決定打としては銀のナイフしか無い。他にもあるにはあるが、間に合うかは正直微妙だ。

 それに何より咲夜が違和感を感じているのは、相手の魔力の高さだ。既に戦闘は止まった時間を除けば15分以上続いている。しかしその間、あの吸血鬼は咲夜でも知っているような高度な魔法をぼこすかと撃ってきている。おかげで、咲夜の周囲は炎が猛り、空気が凍え、雷鳴が落ちていたりともう滅茶苦茶である。

 吸血鬼だろうが、普通の魔法使いがあんな戦い方をすれば五分ともたない。実際、咲夜があの魔法を一つでも撃てば、即魔力切れで倒れるだろう。

 

「疑問なようだな、私がここまで魔法を行使しても魔力切れを起こさないことが」

 

「…うん」

 

「人間の分際でここまで健闘した礼だ、特別に教えてやろう」

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

「賢者の石?なんだいそれ」

 

「俺たちの軍にゃ優秀な魔法使いがいてな。そいつが作り出す永久魔力機関『賢者の石』。これのおかげで俺たちには常に潤沢な魔力が送られているのだよぉ。おかげで俺たちは息切れ無しで戦えると言うわけだ」

 

「ふーん、そんであんなメチャクチャな戦い方をしてたってわけか」

 

 降ってきた地盤を片手で砕きながら、どうでも良さげに勇儀は答える。

 

「…ケッ、メチャクチャなのはどっちだ。お前も誰かにサポートしてもらってるクチだろ。じゃなきゃそんな力はあり得ねぇ」

 

「は?何で私がそんなことしなきゃいけないんだ。喧嘩にそんな不格好な真似はできないね!それに、ハンデにゃ丁度良い」

 

「そうかよ、じゃあそのハンデを後悔しながら死ね」

 

 吸血鬼は勇儀の顔面に鉄拳を喰らわせる。

 最初に放った拳圧の時とは比にならない威力の拳が勇儀を襲う。鬼だろうが、少なくとも首がへし折れることは必至だ。

 

「…痒いな」

 

「…は?」

 

 しかし、へし折れたのは己の拳だった。

 ぐしゃぐしゃになった己の拳を信じられないといった顔で見る吸血鬼。

 

「な、何故だ!さっきは血を流していたのに…!どんな種がある!」

 

「種も何も、顔を力ませただけだ。どんなとこでも力を入れりゃ硬くなるもんだろ?」

 

「な、何を言って…」

 

「ま、あんたの今の攻撃は私にとっちゃ蚊でも止まった程度ってわけだ。…どうやら、あんたの言ったこと嘘だったようだね」

 

「嘘だと…?」

 

「いるじゃないか、あんたより強い奴。ずっと向こうにさ」

 

 そう彼方を指差す勇儀。

 

「……スカーレット卿。やはり奴なのか…!奴がいるからなのか!奴がいる限り私は先に行けないというのか!!」

 

「何ゴチャゴチャ言ってるのか知らないけど、鬼は嘘が嫌いなんだ。もう遠慮はしないよ。いくぞー、ほらいーっち」

 

「黙れぇ!!俺が最強だ!吸血鬼の誰よりも秀でている!賢者の石よ、俺様にもっと魔力を!!」

 

「にーの…」

 

 吸血鬼は体をさらに巨大化させた。その魔力は先ほどと比にならないくらいに強大だ。

 そのまま岩のように巨大な鉄拳を勇儀へ振り下ろす。

 

「死ねぇ!!」

 

 

 

「──三歩必殺」

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

「ジャア!!」

 

「ん?」

 

 重力を無視して襲いかかる大量の赤い液体の塊。

 血液の類であろうそれは、その身を逃さないようにまるで生き物のようにがっちりと2本角の鬼を捕らえてた。

 

 この魔法は周囲の血を傷口から吸い取り、自在に操るもの。その証拠に両者の周りには干からびた死体が何人もいた。皆この魔法で敵味方関係なく血を奪われた者の末路だ。

 その魔法の性質上、傷口が一つでもあればそこから一気に血を取られ、失血死する……のだが。

 

「おー、なんか気持ち良いな」

 

(ば、化け物かコイツ!体に全く傷がつかない…!)

 

 アリナーゼは焦っていた。

 目の前の鬼に傷ひとつ付けることができないからだ。その身体はまるで鋼…いやそれ以上だ。少なくとも自身の魔法では傷をつけることはできない。

 

(クソッ、こっちには賢者の石があると言うのに、何故押し切れない!?)

 

「…よっと!」

 

「なぁ!?」

 

 萃香は自身を捕らえていた血の塊をまるでゼリーでも崩すかのようにあっさりと、抜け出した。

 

「へー成程、あんた血を集めて戦ってるわけか」

 

「ぐっ…!」

 

「けどあんたのはちと大きさが足りないねぇ。よし、私がお手本を見せてやろう!」

 

 そう言った直後、萃香の周囲に見えない何かが渦巻いているような感覚がする。いや、実際に渦巻いているのだ。大量の妖力が。

 萃香の頭上で球体となったそれは、アリナーゼが集めた血の数倍の大きさはあった。

 

「な…ぁ…」

 

「こんぐらいやんなきゃ、集めたとは言わないよ」

 

 妖力は萃香の中にぐんぐんと取り込まれていき、その全てが身体の中に収まった。

 

「よし、じゃあいくよー。いーち」

 

「化け物がぁ!!」

 

 血で作られた針の雨を萃香に浴びせる。

 しかし、その全ては纏った妖力の嵐の前で、簡単に崩れ去ってしまう。

 

「にーい…」

 

「私は吸血鬼貴族!平伏すべき相手なのよ!スカーレット卿を超えて、いずれ永遠の夜となって頂に立つのはこの私!だからお前は───」

 

 

 

「──三歩壊廃」

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 風が舞っている。そんな表現があるが、今この状況を言葉にするならきっと、風が暴れているだろう。

 周囲の木々や敵味方を天高くまで吹き飛ばしている超大竜巻の中で、両者は超速の応酬を繰り返していた。

 

「そらそら、どうした?」

 

「チッ、避けるなジジィ!」

 

「当たったら死ぬからな、そら避けるわ」

 

「…逃げ足だけは早い奴だぜ…ん?」

 

 唐突に吸血鬼の腰につけていた連絡用の魔法陣が反応する。

 

「なんだ、こっちは取り込み中だ!…あ?グロリアス卿がいない?知るかんなもん!てめーらで探せ!クズどもが!」

 

 そう言うと、感情に任せて連絡を切る。

 

「ふふ、手間のかかる部下がいるようだな」

 

「ケッ、部下じゃない。駒だ、駒。そもそも吸血鬼より下の種族は皆んな傅くべき存在なんだよ」

 

「ははは、ウチの山にも似たようなことをほざく奴らがおるわ。天狗こそが幻想郷を統べるべきだーなどと、阿呆なことを言う奴らがな」

 

 そう言うと、天魔は懐から巨大な扇を取り出す。

 

「そういう輩は偶に独断で謀反を起こす。それを片付けるのも儂の仕事なのだよ。お主と同じようにな」

 

「はっ、ほざけジジイ!テメーはここで詰みだ!」

 

 吸血鬼は再び周囲を高速で飛び回る。しかしその速度は先程応酬した時とは段違いに速い。むしろ段々と加速している。

 

「ヒャハハハハッ!最高速度でお前をミンチにしてやる!」

 

「はぁ…、お主はそれしか能が無いのか?もう良い、飽きたわ」

 

「は?何言って…」

 

 その瞬間、吸血鬼は正面に現れた壁のようなものにぶち当たる。

 ブチブチ、ボキボキと、肉と骨が砕ける音が響く。

 

 それは風だった。果ての無い巨大な見えない風の壁。

 それが恐ろしい質量と勢いで眼前にぶつかり、対象を押しつぶしながら音速を超える速度で前進する。

 たった一枚の扇から放たれたそれは、前の敵の軍勢ごと戦場の彼方まで吹き飛ばす。

 

 

「──不倶戴天」

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 3つの超爆発が起きた戦場の真っ只中。

 既にその爆発によってその場にいた吸血鬼の軍勢は殆ど壊滅していた。

 

 

「ん?」

「おー?」

「む」

 

 

 そんな爆心地の中心、勇儀、萃香、天魔はばったりと出会う。

 

「勇儀、それと天魔じゃないか!久しぶりだねぇ!そっちも終わったのかー?」

 

「ああ、あんま骨はなかったけどね」

 

「儂は少々きついですわ。年寄りに大技は腰に来るわい…」

 

「そんなピンピンしてて何言ってんのさ!まだまだ現役行けるって!」

 

「そうだぞー、横目でチラッと見てたけど久々にワクワクしちまったよ。なー今から私と戦ろうぜー」

 

「勘弁してくだされ。それに戦争はまだ終わっていませんぞ、ほれ」

 

 天魔が指差した先には、何も無い地面からワラワラと復活する吸血鬼の姿があった。しかしその顔からは生気が抜けており、自我があるようには見えない。まるでゾンビである。

 その軍勢の中には先程3人が倒した吸血鬼貴族もいる。しかし理性は無く、ただの生きる屍となっている有様だ。

 

「あー?吸血鬼ってあんなことできたのか?」

 

「多分あれだろ、賢者の石ってやつ。無限に魔力ってのを貰えるらしいし、誰かが外法でも使って蘇らせたんだろ」

 

「ふむ、これではキリがありませんな」

 

「ま、他の奴らが何とかするだろ。向こうの強そうな気配は別の奴が相手してるみたいだし、こっちはあいつらどんだけ倒せるか勝負でもしようぜ!」

 

「お、いーね!あ、天魔も参加しろよ!久々に勝負したいね!」

 

「はぁー、どの道おふた方の頼みは断れまいて。…ごめんよあややん、もうちょっとだけ頼むわい…」

 

 

 三つの凶弾はそのまま吸血鬼の軍勢に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

「賢者の石…!」

 

 無限に魔力を供給できるなどインチキにも程がある。

 吸血鬼側は魔法も能力もコスト無制限で使い放題というわけだ。これでは戦いが長引けば長引くほど必然的に吸血鬼側が有利になってしまう。

 

 冗談も程々にして欲しいものである。態々こいつが情報をゲロったのも自分が勝てるからと確信しているからだろう。腹が立つ。

 内心でそうぼやきつつも、咲夜はナイフを構える。

 

「無駄だ、最早貴様に勝機は無い。その手品がどのような種があるかは分からんが、相当魔力を消費すると見た。大人しく首を刈られろ、健闘の礼に今なら痛みは無しにしてやる」

 

「…絶対嫌」

 

 その言葉を皮切りに再び激しい戦闘が再開される。

 

 

「す、凄い…凄いけど…、このままじゃ咲夜が…」

 

 今までの戦闘を木陰から見守っていた小傘。

 確かに咲夜はあの吸血鬼と戦えてはいるが、徐々に押されてきているということは小傘から見ても理解できた。

 助けに入りたい。しかし、小傘の実力では軽くあしらわれて終わりだ。寧ろ足手まといになるだろう。動くに動けない。

 

(…わちきは、また何もできないの?)

 

「小傘ッ!」

 

「うぇ、何!?」

 

 突然目の前に現れた咲夜。

 時間を止めて現れた咲夜は切羽詰まった様子で、小傘の肩を掴んで言う。

 

「小傘、さっきの話聞いてた?」

 

「う、うん、賢者の石がなんたらって…」

 

「じゃあお願い。小傘、賢者の石を壊してきて」

 

「ええ!?わちきが!?む、無理だよ…!」

 

「今動けるのは小傘しかいないの。お願い…!」

 

 賢者の石を壊せば、形勢は一気に咲夜に傾く。咲夜だけではない、戦場全体が幻想郷側に有利になる。主犯を殴る以前に、幻想郷が負ければ意味がない。

 だが壊せるのか?恐らくこの戦場にいる誰よりも弱い自分が。そんな凄い魔法を。

 

「…レミリアだったらきっと行く。たとえ弱いままでも」

 

「…!」

 

 背後から轟音が響く。

 

「ッ…ごめん、もう限界。あとはお願い!」

 

 そう言って咲夜はどこかへ消えてしまった。

 

 弱くてもできることがある。

 こんな自分にも出来ることがあるなら。そう考え、小傘は決意を固める。

 

 その賢者の石がどこにあるのかは全くわからない。だが、そんなに大事なものなら戦場から離れた場所に置くはずだ。そこを重点に探す。

 

 考えて動く!それが肝要!

 小傘は自分にそう言い聞かせて、森の中へと走っていった。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…」

 

「どうした、動きが鈍くなっているぞ」

 

 既に幾度とない時間停止と、疲労により咲夜の体力は限界だった。衣服はボロボロで、体は傷だらけだ。

 

(あと少し…)

 

 しかし諦めず、咲夜は時を止める。

 再び背後へ回り、最後の手持ちナイフを投擲する。

 

「ヌグッ…効かんわぁ!」

 

「ガッ!?」

 

 吸血鬼はついにその手で咲夜を捕らえる。

 木に首を押し付けられた咲夜は苦悶の表情を浮かべながらもがく。

 

「人間の力で吸血鬼の力を解けると思うな」

 

 その腕はびくとも動かない。

 意識が朦朧とする。

 

「…さて、このまま貴様を締め上げて、食らうのもアリだが…、貴様の健闘を見て私は気が変わった」

 

 吸血鬼は咲夜の瞳を見つめ、首を絞める腕を少しだけ緩める。

 

「私の配下となれ、人間」

 

 

「その手品と言い、身体能力と言い、人間離れしたその能力。私はとても評価している。選ぶと良い……ここで死ぬか、私の配下になるか」

 

 吸血鬼の配下となるということは、同じ吸血鬼となって永遠を生きる。つまりは人間ではなくなり、吸血鬼もどきとして一生この男に従って生き続けるということだ。それは人によっては魅力的なものにも見えるだろう。

 

 

「……私は、誰の下にもつかない!…仮に、仮につくとしても、私の相手は、たった1人!もう決まってる…!」

 

 

「…そうか、残念だ。ならば死ね!」

 

 吸血鬼は咲夜の首を折らんと、万力を込める。

 

「ギァ…!?」

 

 咲夜の首が潰れるその寸前、極光と共に恐ろしいほどの爆音が辺りに響いた。

 その数秒後、木々を吹き飛ばすほどの荒れ狂った分厚い突風が襲いかかる。

 

「な、なんだ!?」

 

 驚きながらも吸血鬼は、余波を防ぐためにバリアを張る。すると、そちらに意識が割かれたのか、首を掴む力が少し緩む。

 その隙を逃さず、咲夜は拘束から抜け出し、地面に落ちていた銀のナイフを拾う。そしてそのままそれを吸血鬼の懐に突き刺した。

 

「グッ…ふん、効かんというのがわからんか。馬鹿め」

 

「…バカは貴方」

 

 その瞬間、吸血鬼の背中から光に包まれた巨大な十字架が飛び出してきた。

 

「ヌガァ!?」

 

 突然のことに吸血鬼は思わずよろめき、数歩後ろへ下がる。

 そして2本3本と、次々にその体から十字架が突き出てくる。吸血鬼の表情が一気に焦りに変わる。

 

「ぎ、貴様ァ、何をしたァ!」

 

「…別に、私の使える魔法を使っただけ。投げた全部のナイフの中に魔法陣を仕込んでた。貴方の耐性が強かったから使うまでに沢山ナイフが必要だっただけ」

 

「何…!?や、やはりこの魔法は…!貴様、やはりあいつらの末裔だったのかァ!!!」

 

「あいつら…?」

 

「とぼけるな!500年前、我ら吸血鬼一族を壊滅一歩手前まで追い込んだあの忌々しいヴァンパイアハンターのことだ!!!」

 

「そんなの知らない。この魔法はレミリアから教えてもらったもの。そんな誰かもわからない人たちと一緒にしないで」

 

「クソクソォ!私はガイザール・セイメル卿ぞ!こんなところで私が滅ぶかぁ!人間がぁ!グオォォォォ!!」

 

 断末魔と共にその身を崩していく吸血鬼。

 咲夜はその場にへたり込む。なんとか倒した、かろうじてだが。魔力ももう少ないし、ナイフもほとんど使い切った。今新手が現れたらどうしようも無い。一先ず戦場から離れることが先決か。

 

 小傘はどうしただろうか。賢者の石を見つけられてるだろうか。レミリアは無事だろうか。いや、多分大丈夫だろう。アレが負けることは万が一でもあり得ない。

 ともかく、体力が回復したら一旦、小傘を追わなければいけない。

 

 すると、光の中から、身体が崩れ、骨になりながらもこちらへと這いずってくる吸血鬼の姿が目に入った。

 

「ヌオォォォォ」

 

「まだ生きてる…しぶとい」

 

 とどめを刺したいが、そうしようにも今手持ちの武器が無い。自然消滅してくれるのを待つしかないが、最悪殴ってでもトドメを刺そうかと考えたその時、吸血鬼の上に大きな光が当たる。

 

 落ちてきた余波で、周りの炎や氷が吹き飛ぶ。

 吸血鬼は余波で、乾いた音と共に絶命。

 

 

「ゴホッゴホッ…何?」

 

 思わず上を見上げる咲夜。どうやら、誰かの戦いの余波が飛んできたようだ。疲れた体を動かしながら、夜空に光る二つの影に目を凝らす。

 

 

 

「…レミリア?」

 

 

 その顔は見知った人物に酷く似ていた。

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 必死に森の中を駆け、探す。

 しかし、どれだけ走っても、それらしきものは見つからない。

 

「はぁ、はぁ、此処にもない…」

 

 賢者の石。魔法を無限に供給するというそれを壊すために、戦禍の無いところを探しているが、てんて見つからない。心当たりなどもちろん無いので、とにかくそれらしいところを探しているだけだ。

 

 すると、ガサリと近くの草むらが不自然に動いた。

 

「だ、誰!?」

 

「ふにぁっ!や、やっと抜けれた…」

 

「ち、橙?なんで此処に…」

 

「えっ、小傘さん!?それはこっちの台詞だよ!今此処はすっごい危ないんだから!」

 

「ご、ごめん、どうしてもレミリアたちが心配になって…」

 

「レミリアも来てるの!?というかなんでここに来て…」

 

「あ、そうだ橙ちゃん!賢者の石って知ってる?」

 

「賢者の石!?なんで小傘ちゃんがそれ知ってるの!?」

 

 どうやら橙は賢者の石のことを認知しているらしい。話を聞くと、橙もその賢者の石を壊すために動いているようだった。

 

「動ける妖怪が今私しかいなくて、場所は分かってるんだけど…」

 

「じゃあわちきも手伝うよ!一緒に石を壊そう!」

 

「こ、小傘さん…」

 

「よし、じゃあ早速行こう!」

 

「うん、でも気をつけよう。何でも敵の幹部の吸血鬼が1人見当たらないらしいし、どこにいてもおかしくないんだから」

 

 吸血鬼、と聞いて咲夜と戦っている吸血鬼を思い出す。

 

「う、うん。気をつける」

 

「それに、藍様とも連絡がつかないの…」

 

「らんさま…って、確か橙ちゃんのご主人様だっけ」

 

「うん、いつもなら私の声に反応してくれるはずなのに、今は何にも返ってこないんだ」

 

「…もしかしたら誰かと戦ってるのかも。その藍様は強いの?」

 

「それはもう、すっごく強いよ!幻想郷で紫様の次に強いんだから!」

 

「じゃあきっと大丈夫だよ!わきちたちは出来ることをしにいこう!」

 

「…うん、そうだね。きっと藍様は大丈夫だ」

 

 

 そう自身に言い聞かせるように呟きながら、橙は小傘と共に森をかけていった。

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 夜空を埋めるほどの術の応酬の数々。

 時には大地が抉れ、時には空気が弾け、時には山が崩れる。それ程の大天災に匹敵する戦い。その戦禍にいる2人の人外。

 

「ほらほらほら、どうしたの?弾がたりないわ」

 

「ほざけっ」

 

 藍は、自身の妖力で構成された術式を展開させる。

 するとそこから異形の妖が湯水の如く湧き出てきた。妖の一匹はフランドールに襲い掛かり、その巨大な顎でその身を砕こうとする。

 が、フランドールは閉じる顎を両腕で無理矢理止め、そのまま縦に引き裂いてしまう。妖の断末魔が木霊する。

 

「…またそれ?本当に意味のないことが好きね」

 

「…ッ」

 

 八雲藍は八雲紫の式神である。

 式神とは本来、その妖獣に自身の式神を憑かせることで、主人のどんな命令も遂行する人外が生まれる術式だが、その中でも藍は少し特殊だった。

 藍は元の妖獣は九尾の狐。その妖力の強大さゆえに、人格をそのままに式神としての力を得た稀有な存在なのだ。

 故に式神にも関わらず、自分で式神を扱うことができる。これが今呼び出している妖の正体だ。

 

 藍が呼び出している妖も決して弱い部類ではない。一体一体が鬼に匹敵する力を持っている。だがそれでも目の前の存在は押し切れない。

 

「あはは、それっ」

 

「チッ…大百足!!」

 

 藍がそう叫ぶと、尾に隠されていた術式から山のように巨大な百足が現れた。それは猛スピードでフランドールに向かって行き、周囲の物体を吹き飛ばしながら、対象に直撃、天に押し上げる。

 

 しかしそんなものでダメージになるほどフランドールは脆くはない。雲を越えた頃、自身を挟んでいる牙を力任せにへし折り、そのまま百足の顔面をぶん殴った。百足の顔が吹き飛ぶ。

 

「あら?」

 

 しかし、フランドールは拘束された。百足の足だ。足が伸びて体をこれでもかとガチガチに縛った。

 フランドールの前に黄金の影が昇る。

 

 いつの間にかフランドールの周りには大量の妖がいた。それぞれの頭部にはよく見るとお札のようなものが貼られている。

 ふと、フランドールは足元に術式の陣があることに気づく。

 

「封魔陣!!」

 

 札から放たれた雷がフランドールの結界陣目掛けて、一斉に襲いかかる。

 そのまま大爆発を起こし、周囲にいた式神は軒並み吹き飛んだ。地上に大百足の死骸が落ちる。

 

 封魔陣は妖魔に対して絶大なダメージを与える技。大妖怪でもこれをまともに受ければ、無事では済まない。

 だが、今相対している吸血鬼は普通ではなかった。

 

 濃煙の中から七色の流星が飛ぶ。

 

「チッ、化け物がっ。前鬼!後鬼!」

 

 赤と青の術式から、二匹の巨大な鬼が現れる。5メートル以上あるそれは、魔力の嵐を纏ったフランドールの突撃を真正面から受け止め、抑えた。

 

「へぇ、結構強いわね」

 

 が、フランドールはそれを強引に突破してくる。藍は半身が吹き飛んだ前鬼と後鬼を苦しそうな目で見ながらも、巨大な炎の刀身を振りかぶろうとしている悪魔に対して、尾から取り出した中華剣で迎え撃つ。

 互いの力がぶつかり合い、弾ける。

 

「はぁ、はぁ…」

 

「貴女のびっくり手品は面白いのだけれど、そればかりじゃ物足りないわ。もっと新しいものを見せて頂戴」

 

 藍は歯を噛み締める。

 仮にも大妖怪以上の力を持つ己がまるで赤子のようにあしらわれている。恐らくだが、あの吸血鬼の首領よりも強いのではなかろうか。そう感じるほどの圧倒的な実力差。だが、主の愛する楽園に脅威を与える存在に対して、尻尾を巻いて逃げる真似などできない。なにより、フランドールは藍を倒せば必ず紫の下へ向かうだろう。それだけは阻止しなければならなかった。

 

 藍は己が使えうる最後の術を使う。

 

「…わぁ、不思議。貴女が増えたわ」

 

 フランドールの目の前には九人に増えた藍の姿があった。

 

「貴様を紫様の下へ行かせるわけにはいかない!我が身に代えても貴様を此処で滅ぼす!」

 

 この術は、己自身を式神の媒体として、口寄せするものだ。単純に言えば分身なのだが、この分身は本体の力を一切減らさずに扱うことができる。つまり、単純計算でいままでの九倍の物量で攻められるということだ。

 

 接近戦、遠距離戦、戦い方を分けて一斉に襲いかかる藍たち。

 

「とっても面白いわ!…でも、そろそろ行かなきゃ。お父様、私より弱いから助力してあげないと」

 

 向かう攻撃をフランドールは最小限の動きで避ける。時に弾き、時に相殺し、時に避ける。

 最早光の台風とも言わんばかりのそれを、どこから来るか分かっているかのように容易に捌いて見せた。

 

「何故当たらん!?」

 

「だから、狐さんは此処でゲームオーバー」

 

 フランドールは腕を正面に突き出し、その掌を藍の1人に向ける。掌に光の球体が現れる。

 

「キュッとして…」

 

 そしてそれを溢れる光と共に握りつぶした。

 

 

「どかん」

 

 

 瞬間、藍の体は弾けた。

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 速報!ルシェルさん、私のお母さんだった!?

 

 

 いやね、初対面の時も、やたら私と顔似てるなーって思ったけども、マジの家族とは思わないじゃん。思わずポッケに写真隠しちゃった。

 しかしルシェルさんは本当に優しい吸血鬼のようだ。私が部屋を荒らしても特にお咎めなかったし、寧ろお菓子をくれる天使っぷり。べっ、別に餌付けされてるわけじゃないんだからねっ!

 

 というか、お母様がルシェルさんってことは、つまりお父様はこの事件の主犯!?嘘、この事件私と関わりありすぎ!?まじかー、私お父様ぶん殴らないといけないのかー。ま、捨てられた私怨も込めて殴るのもアリか。

 というか、話を聞けば聞くほどなんでこんなハイパー天使なルシェルさんが、あんなど畜生と結ばれたんだ?まるで理解できないぞ!

 

 そんなこんなでまともにルシェルさんのお顔を見れなくなった私め。現在に至るまで気まずい空気が続いております。誰か助けてください。クルムさーん、どこいったのー?

 

 

「…クルム、遅いわね」

 

「そういえばどこ行ってるんですかね」

 

「予備のお茶菓子を取りにね。お菓子好きでしょう?」

 

「好き!!」

 

「ふふふ、あんこちゃんは本当可愛いわね〜」

 

「むぎゅっ」

 

 抱きしめられる私。これが温もり…!これが母性パゥワー!な、なんという破壊力だ…!想定をはるかに超えている!

 

「もういっそここに住まない?」

 

「わ、わたしには麗しのまいほーむがあるので!」

 

「残念、ふふ」

 

 ふと、ルシェルが扉の方を見つめる。

 

「どうかしたの?」

 

「…誰かしら」

 

 

 その時、地下の扉が轟音と共に吹き飛んだ。

 

 

 

 

 吹き飛び、その原形を残していない地下の扉。

 その壊れ方は、明らかに異常で、人為的なものだと考えるのは自然なことだった。

 立ちこもる埃の中、誰かが横たわっている姿が見えた。

 

「く、クルムっ!」

 

「お、奥様……」

 

「どうしてこんな…、今手当てするわ!」

 

「奥様ッ…お逃げください!敵です、敵にここがバレました…」

 

「え?」

 

 

「…この館の地下にこんな空間があったとはな」

 

 響く第三者の声。

 扉があった場所から不気味に現れた存在。それは、紛うことなき吸血鬼であった。その側には真っ黒な獣が取り囲むように数匹控えている。

 

「…貴方は確か、アリア・グロリアス卿。どうしてここに。…何の真似なの、私を誰と分かっての暴挙かしら」

 

「…ルシェル・スカーレット。アゼラル・スカーレット卿の妻にして、最弱の吸血鬼。ああ、知っているとも。知った上で、私はお前を殺しに来た」

 

「…ッ、どういうこと、私に手を出せばアゼラルが黙っていないことくらい貴方が一番良く分かっているはずよ。いえ、それ以前にどうしてここが分かったの?地下の存在は私たちを除いて、アゼラルしか知らないはずよ」

 

「……無知とは気の毒だな。私はそのスカーレット卿に貴様を殺すように頼まれたのだ」

 

「………え?」

 

 一瞬、目の前の吸血鬼が何を言っているのかを理解できなかった。アゼラルが自分を殺しに来た?あの人が、私を?

 

「そ、そんな訳が…」

 

「受け入れられぬなら、それで良い。お前を殺すことは変わらないのだからな」

 

 ルシェルの顔から血の気が抜けていく。

 

「…元来貴様は弱かった。吸血鬼とは思えないほど致命的に。…それでもスカーレット卿がお前を妻にした理由、それは貴様の能力に違いない。そこに愛などなく、ただ力を与えるだけの道具としてしか見てなかったのだろうな」

 

 言葉を聞くたびにルシェルの目の前は真っ黒になっていく。

 要するにルシェルは捨てられたのだ。元々、ルシェルはある目的のためだけに妻としての役目を果たしていた。そしてルシェルはその役目をごく最近終えた。

 アゼラルにとって、ルシェルにそれ以上の価値などなく、もう用済みの存在だったのだ、だからこの争いに乗じて殺しに来たのだろう。

 

「運命を操る力…私も欲しかったものだがな。親も親なら倅も倅ということか。…まぁ、貴様のことはどう扱っても良いとスカーレット卿から聞いているのでな。貴様の血を飲めば力の搾りカスくらいならば頂けるだろう」

 

「嘘…嘘…なんで…」

 

 たとえどれだけぞんざいに扱われようとも、地下に閉じ込められようとも、ルシェルはアゼラルを愛していた。彼女はかつての優しい彼を知っていたから。いつか必ず元に戻れると、そう信じていた。

 しかし信じ続けた結果がこれだ。愛していた者の拒絶。それは彼女の精神を崩すには十分だった。

 

「ショックで己を失ったか。まぁ、その方が殺りやすい」

 

「奥様!!」

 

 アリアは黒に塗りつぶされたサーベルをその首を切り落とさんと、振り下ろす。

 

 

 が、その直前、ナイフがアリアの腕に突き刺さった。

 傷口から溶けるような音と煙が出る。

 

「グッ…!誰だ!」

 

「迷子の美人ちゃんでーす」

 

「あんこ様…?」

 

「いやー、クルムさん良いもの持ってるじゃーん。吸血鬼の館で弱点を持ち歩くって中々チャレンジャーだね!」

 

 そう言って、動けないクルムの懐から数本のナイフを取り出した。

 

「何本か借りるね」

 

「お、おやめください!人間では吸血鬼に勝つことはできません!」

 

 人外である自身が赤子のようにあしらわれたのだ。人間がそんな強大な存在に真正面から挑めば、どうなるかなど容易に想像できた。

 

「貴様…!確か何処からか入ってきた侵入者か!何処へ行ったのかと思えばそんなところにいたとはな」

 

「あっ、やっぱりあの獣貴方の魔法だったのね。丁度良いわ、飼い主に服弁償させようと思ってたところだし」

 

「はっ、たかが人間に何ができる!私の身体に銀などを突き刺したのだ!唯で死ねると思うなよ!」

 

「死ぬのに唯もクソもないでしょ。頭悪いなー」

 

 先程の不意打ちにアリアは激昂している。

 怒号と共に、側にいた獣が一斉にレミリアに襲いかかる。あんな大きさの顎に噛みつかれれば、一瞬でその身は噛みちぎられることだろう。

 

 しかしそんな死の直前でも、レミリアは悠々とした態度を崩さず、ただ静かに目の前の敵を見やる。

 

「あんこ様っ!」

 

 

 

「───だから私がタダで死なせてあげる」

 

 

 

 レミリアはナイフで腕のミサンガを切った。

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

「なんだ…?」

 

 ルーミアの闇に結界を蝕まれつつあった人里。結界符も残り少なくなり、いよいよ後がなくなった極限の状況。そんな時、人里に異変が現れた。

 

「これは…壁?」

 

「いや、空?でもなんで地面に空が?」

 

 突然。星空のような模様のドーム状の壁が人里全域に現れたのだ。まるで透明なプラネタリウムのようなそれはルーミアの黒の海を完全にシャットアウトし、防いでいた。

 

「凄い、あの闇を完全に防いでる!」

 

「守護者様、これは…」

 

「…わからん、だが里を守っていると言うことは確かなようだ」

 

「もしかすれば管理者様が手を加えてくださったのかも!」

 

「違いないべ!こんなことができるのは管理者様だけだ!」

 

 喜ぶ里の術師たち。

 慧音はどこか腑に落ちない感覚になりながらも、ひとまずの危機を凌ぐことができたので、緊張が抜けたように嘆息した。

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 飛びかかっていた黒の獣はあたりを満たす魔力の嵐によって吹き飛び、やがてそれは部屋を、地下を、館を、そして湖を一瞬で包み、支配していく。

 

 その容姿もまるで塗り替えられるように変化する。

 髪は真っ黒な黒髪から、青みがかかった銀髪に。その瞳も紅く染まり、妖しく輝いた。背には一枚の巨大な翼が生え、翼の中には星のような無数の光の粒子が見える。それはまるで翼に夜空が映されているかのようだ。

 

 そして、様変わりしたそれは、静かに瞳を開く。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 カランと、ナイフが落ちる音が響く。

 

「なんだ…それは…」

 

「…ふぅ、これでヨシ」

 

「なんなんだそれはッ!!」

 

 アリアは感情のまま叫び散らす。レミリアを中心に空間が歪み、形を変えている。そしてそれに己も巻き込まれていることを自覚する。空間ごと身体をシェイクされている感覚がして、凄まじく気持ちが悪い。

 

「…咲夜と小傘は無事みたいね。周りが凄いことにはなってるけど」

 

「話を聞けぇ!」

 

「ああ、ごめんなさい。気分が悪かったかしら」

 

 そう言うと歪んだ空気はフッと元に戻る。

 

「…ッ、ハァ…ハァ…」

 

「大丈夫?お薬いるかしら」

 

「な、何だお前は…!さっきまで唯の人間だったはずだ!」

 

「何って、見ればわかるでしょ?吸血鬼よ、貴方と同じ」

 

 冷や汗が止まらない。

 こんな異質な魔力を持つ吸血鬼は見たことがない。いや、力云々以前に、こいつは吸血鬼とは決定的に何かが違う。見かけは同じなのに、中身がまるっきり違うような。

 本能的に感じる恐怖がアリアの体に纏わりつく。息が荒くなり、手足が震える。…ふざけるな、これではまるで私が奴を恐れているようではないか!!

 

「…グッ、シャアッ!!」

 

 それを振り払うように、黒の魔力を纏った魔力弾をレミリアに浴びせる。普通の吸血鬼ならば、後ろの2人も巻き込んで吹き飛ばすほどの勢い。

 攻撃はレミリアに直撃し、光の奔流が迸る。家具が吹き飛び、部屋中に余波が散らかる。

 

「…悪いわね、私上品な受け止め方は好きじゃないの」

 

「…なん、だと?」

 

「あら、今の反応良いわね。もう一回お願い」

 

 しかし相手はダメージどころか、仰け反りすらしない。まるでそよ風でも受け止めたかのような素振りだ。

 

「小傘の投げた小石の方がまだ痛かったわね…」

 

「グッ、ギイィ…!」

 

 歯を食いしばりつつもアリアはこの化け物をどう倒すか考える。

 いや、考える必要などない。自分は誇り高き吸血鬼貴族。今は賢者の石もある。その上での己の最高威力なら、確実に仕留められる。仕留められなければならない!

 

「もう良い!こうなれば、この屋敷ごと貴様を吹き飛ばしてくれるわぁ!!」

 

 すると、周囲の影から大量の黒い獣が現れ、それがアリアに集まっていく。やがてそれは一つの極大の魔力球に変化する。渦巻く魔力だけで空気が震えている。あんなものが放たれれば、館どころか、湖まで木っ端微塵である。

 

 極限まで高められた魔力をアリアは目の前の忌々しい存在に向けて解き放つ。

 

「くたばr」

 

 

「どん」

 

 

 

 

 空間(そら)が弾けた。

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

「戦争が始まっても門番なんて、御当主様も殺生なことをするなぁ…」

 

 紅魔館の門前に立つ紅髪の少女。彼女はこの館の門番を務めている妖怪だ。戦力にならないと言うわけではないが、この館を守ると言う役目もあり、今回の戦力からは外されてしまった存在である。

 

「私も戦場でどんぱちしたいんだけどな…。フラン様も心配だし。あー、なんか良い感じに敵襲とかないかなー?こう、一発どかんって感じに…」

 

 その瞬間、背後からとんでもない轟音が響いた。そして直後に突風が襲いかかる。

 驚いた門番だが、咄嗟に地面に拳を突き刺すことでなんとか余波で飛ばされることを回避する。

 

「な、なんですかぁ!?」

 

 思わず館の方を見る。不思議とあれほどの音が響いたのに、立ち込める煙はまったく無かった。

 が、代わりに、館の真ん中はまるでくり抜かれたように縦に開いた巨大な穴があった。

 

「え、えぇ〜…」

 

 敵襲が来てほしいとは思ったが、館を壊されるのは勘弁である。門番は肩を落とし、爆心地へ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

「吸血鬼ってみんなあんな感じよね。傲慢で偉ぶって、自分より凄い奴が出てくれば子供みたいに癇癪起こして、最後は満たされず死ぬ…。南無南無、またおかしな人を無くしてしまったわ」

 

 クルムは何が起こったのか理解できなかった。

 アリアがあの魔法を放とうとした時は、はっきり言って死を覚悟した。自分達は原型も残らず粉微塵になって消えるのだと。

 しかし、現実はどうか。実際に粉微塵になったのはアリアのほうだ。しかもその前方には、外の景色が見えるほどの大穴が空いている。

 

「ルシェル、クルム、大丈夫?」

 

「え、は、はい…」

 

「……」

 

 返事のないルシェルの下へレミリアは歩いていく。

 

「…ルシェル、しっかり。もう嫌なことを言う奴はいないわ」

 

「え、あ…あんこちゃん…?」

 

 ルシェルは先程とはまるで雰囲気が違うレミリアに気づく。どうやら自失で今まで何が起こっていたかわからない様子だった。

 

「…その翼は、それに髪も…」

 

「…ごめんなさい、見ての通り私は吸血鬼。ずっと前からこの世界に住んでて、この戦争を止めるためにここに来たの」

 

「………」

 

「私はこれから貴女の夫さんをぶん殴って止めにいくわ。私の住処を守るために」

 

「…あんこちゃん」

 

「…さっきの話が本当かどうかは分からないわ。もしかしたら唯あの吸血鬼が出鱈目を言っただけかもしれない。…だからその夫さんをここに連れてきて土下座させる。…だから安心して待っていて。お話、楽しかったわ。お洋服もありがとう」

 

「え、ま、まってっ!」

 

「もう直ぐ門番さんがここに来るから、手当してもらって。大丈夫、悪い妖怪じゃないから」

 

「あんこ様…」

 

「ありがとう、クルム。お菓子、とても美味しかったわ」

 

 そう言ってレミリアは翼を広げ、宙へ浮く。

 目的地はあのいけ好かない面をしている吸血鬼のところだ。一度2人を見ると、レミリアは音速に近い速度で彼方へ飛んでいく。

 ひらり、と自身の服から何かが落ちることに彼女は気づくことはない。

 

 

 

 レミリアと、そう呼ぶ声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 血と共に落ちる黄金を見る。

 

 恐らくもう助からないだろう。あの妖怪の肉体の半分は弾け飛んだ。力を消費した状態での復帰は難しい。何より妖怪にとって大事な部分を潰したのだ。逆に生きている方が驚きだ。

 

「…あの妖怪強いってお父様から聞いたのだけれど、全然歯応えなかったわ」

 

 ふと、空を見上げる。

 気のせいか何だかいつもよりも夜の闇が暗くなっている気がした。そのせいか、星もやけに光っている。綺麗だが、月が見えにくい。フランドールは顔を顰める。

 

「あ、そうだわ、ちゃんと首持って行かないと。お父様に怒られちゃう」

 

 戦果はちゃんと示さなければならない。その首を引きちぎろうと、藍が落ちた場所に向かおうとする。

 

 が、フランドールは突然動きを止める。

 その緋色を見開くと、弾かれたように顔を上げ、周りを見渡す。

 

「なにこれ…、誰?おかしいわ、何も見えない…知らないわこんなの」

 

 困惑していると、猛スピードでどこかに向かっている光が見えた。その光は黒く、しかし明るい奇妙な光。直感的に理解する。あれだ、あれが原因だ。

 フランドールは反射的にその場から飛び去り、正に光のような速度のそれを追う。

 

 空気を裂きながら、それに迫り、その光の前進を遮る。光は自身の前で止まると、その輝きは消え失せ、姿が露わになる。

 

 光の正体を見て、その目を見開く。

 青みがかった銀髪に月のように紅い瞳、そして星のように輝いている背から一枚だけ生えた翼。

 

 そして、その顔は自分と瓜二つだった。

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 戦争止めるために三千里。

 

 っていうか、うわーめっちゃ血みどろ。見渡す限りの地獄絵図。戦火がないところを探すのが難しいくらいめっちゃくちゃなことになってる。取り敢えず人里ヤバそうだったから、バリアー張ったけど、正解だねこれ。こんなのが当たったら人里がバトルドーム!になってしまう。

 

 こんな阿呆な戦争止めるためにもさっさと主犯であるお父様をぶん殴らねば!

 

 …多分あれかな?うわー、顔いかつ!おめめ吊り上がってるじゃん!見た目から短絡さが滲み出てる。さぞかし頭蓮根なんだろつなー。なんか変なねーちゃんとドンパチやってるけど、出会い頭に錐揉みお借りしますドロップキックをお見舞いしてやれば問題なしだな、ヨシ!

 臓物ぶちまけろー!捨てられた完璧美少女の恨みは重いぜー!!

 

 …ん?誰かこっちに来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あら」

 

「…誰、貴女」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





新学期のクソッタレが始まったので、これから更新結構遅れます。



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