自分を大蛇丸と信じて止まない一般男性がゴブリンスレイヤーtrpgのRTA「疾風剣客チャート」で優勝します 作:狂胡椒
そう先輩から言われたのは、果たしていつ頃であったかと受付業務中の監督官は長いため息を吐いた。
草木が萌え、動物たちの活動が始まる季節・・・春。
長い冬の間の鬱憤を晴らすかのように人類も活発に動き始める。
そしてそれは所謂
どうしても重なりあってしまう活動範囲。それは城砦が襲われる様な大きなものではないにしろ人びとを苛む。
畑を荒らされたり、家畜が食い殺されたり、ゴブリンに村娘が拐かされたり。
それを見込んでか、それとも雪篭る村の長老の家で聞いた吟遊詩人の英雄譚に憧れたか、はたまた単純に食い詰めたか、この三寒四温の時期に多くの若人が冒険者になる事を決意する。
故に、春とは多くの新人冒険者がギルドへ来るゲームが始まる季節である。
この辺境の街でも例外ではない。乗合馬車か、徒歩か、そこまでは分からない。しかし故郷を後にした多くの若人がギルドへの登録を行いに並ぶ。
時刻は昼前、辺境の街の冒険者ギルドではその日だけで実に10人もの血気盛んな白磁を送り出している。
その中の幾人が志を遂げることなく果てるか、それはこの四方世界の神々さえも知り得ぬ事。
そこで受付する
一息付けようとパニーニの軽食と冷めきった紅茶に手を伸ばしていた所に影が掛かる。
また新しい冒険者か……。
真新しい洒落た綿鎧に身を包み、同じく真新しい突剣と短剣を持っていて、羽根つき帽子を被った圃人の伊達男、-最近はやりの三銃士のよう-緊張と期待からちょっと硬いが興奮した面持ちをしている。恰好以外はよくいる新人で、よくある反応だ。
恐らく、いや間違いなくこの後も大勢押し寄せてくる新人冒険者追加業務を想像し内心気合いを入れ直す。
「ようこそ冒険者ギルドへ! 本日はどのようなご用件ですか?」
「冒険者になりたいんだ」
「あ、はい。文字は書けますか?」
「もちろんさ、
バンビーナ……………ね。 奇妙な言い回しに最初は私も警戒していたけれど、それもすぐに杞憂である事が分かった。
礼儀正しく話をしてくれる彼は冒険者としてだけではなく、人として、とても好印象だった。
「職業は疾走剣客……剣を使う武闘家ですか」
「僕は生まれも育ちもヤクザのボンボンなんだけどね。 家業よりも冒険者として、親父みたいに一旗揚げたくなったのさ。 できれば世のため人のため、皆にちやほやされる職業でさ」
そう言いながら苦笑いしている様子の彼。
……成る程、彼も訳ありの一人ということなのでだろう。動く姿には何やら武芸の経験を積んでいるような気がするのもたしかだ。
「はい、ではこれが冒険者ギルドでの身分証となります。冒険の最中に何かあった時に身元を照合するのにも使いますから、無くさないでくださいね」
「了解だよ」
手渡すなり素早く首に身分証をかける彼は動作がとても素早い。癖なのかな? いや、そんなことはどうでもいいか。
「依頼はあちらの掲示板に貼り出されています。等級に見合った物を選ぶのが基本です。決まりましたら受付にいらしてください」
「ありがとうございました。それじゃあまた後で伺うよ」
手続きを全て終えた後、彼はそう言って頭を下げて、掲示板へと向かっていった。
ああいう素直な冒険者はこちらとしてもやりやすい。
ああ、この季節ですからね。冒険譚にでも触発されたんでしょう
あの突飛な恰好と女衒めいた言い回しのせいで人相がとても怪しいのは玉に瑕ですけど……。出来れば彼にも生き残って欲しいなあ。
気を抜いたらすぐに次の冒険者志望が来た。この調子で頑張らないと。
「冒険者ギルドへようこそ!どういったご用件でしょうか!」
そう思いながら私は再び職務へと戻った。
【女神官side】
「君も新人かい? シスターの
「えっ、あ、はい」
一瞬何を言われたのか分からず混乱しかけたが、文脈からおおよその意味を推測し女神官は言葉を返す。
珍しい武器――――――多分剣の一種だと思うが――――――と短剣を腰から下げ、洒落ているが風変わりな服装をしている圃人の彼もまた自分と同じく真っ白な認識票を首から下げている。
「その錫杖を見るに、
「はい!」
思わず大きな声を上げて、恥ずかしくなった女神官は慌てて自分の口を押さえる。自分と共通点のある人がいるというだけで少し舞い上がってしまった。
彼自身、見た目が洒落ている所以外は取り立てておかしなところもなく、所作は温和な物だ。少なくとも悪い人ではなさそうだな、と思わせる程度には。
「気持ちはわかるよ。僕も他の神様とはいえ神職がいるのは安心するからね」
ニコッ、と笑いながら彼に言われ、ますます恥ずかしくなってしまう。
だが同じ白磁の新人で、神は違えど同じく神を信じる―――――彼は神官ではなく、単に信者だそうだが。兎にも角にもその共通点は大いに気持ちを楽にしてくれた。
見知らぬ相手には変わりないが、何か一つでも通じる点があるというだけで何となく親しみが湧いてくるから不思議なものだ。
その後は幾分気安く雑談を―――――時々よく分からない言い回しも出てきたけれど―――――交わし、互いに今日登録したばかりの新人であると知った。
「ごめんよ、
「いえいえ気にしないでください」
ならばこれも何かの縁、一緒に新人向けの依頼でも受けようかという話になった時――――――
「失礼ですが、あなたがたも新人ですか?」
「あ、はい。今日登録したばかりで……」
「そうだよ」
「そうですか。この後のご予定は?」
「僕は、仲間を集めて一党を作ってから、決めるつもりだよ。」
「いいえ、私は特にまだ……そちらのご予定は?」
「こちらもまだです。文無しになる寸前ですので、多少なりとも稼ぎのいい依頼を受けなければいけないのですが」
「なるほどね、僕も武器に装備に鎧と薬を買ったらお財布の中身が空っぽさ。 文無し仲間だ」
「託宣ですか?」
「ええ。格別信仰している神がいるわけでもないのですが、ある日突然啓示を受けまして。聞いた事もない名前の神だったので、邪神の類かと思ったのですがそうでもないようですので。それに従い先週冒険者になったのですが……」
「あっ、僕もそれあった! 託宣ってやつ! さっき言った買い物をしてる時に頭の中で『カウンターにいるおいちゃんに向かって口寄せの術!』とか『私くらいの忍者になったら人を使ったアイテムの口寄せなんて、造作もない事よ』とか事ある毎に『潜影蛇手』とかばっかり言っててほんとやかましいんだよね。 何買うか迷ってた時に買う物を決められたのはいい事だけど」
「そちらも大変ですね。 自分は魔法剣士です。 魔術の心得と剣術も付け焼刃ですが心得があります」
「すごいねぇ! 僕は疾走剣客、剣を使う武闘家さ! 一応精霊の口寄せ術と知識神様から解毒の奇跡も賜っているよ」
見知らぬ相手には変わりないけれど、何か一つでも通じる点を見つけ出して意気投合する。これこそが冒険者なのかもしれない。と女神官は思った。
魔法剣士さん曰く、冒険者になってから受けた託宣は、なんとドブさらいをしろという物だったと言う。それに従い一週間ドブさらいに精を出したそうだが、生活費の方が収入より高くもうすぐ素寒貧になるところだそうだ。
これには私も、疾走剣客さんも困惑した。疾走剣客さんにも確認してみたがそんなお告げはなかったらしい。
ひょっとしたら邪神の類に騙されているのではないか?忠告してあげた方がいいのだろうか。そう思って話しかけた矢先
「なあ、君達新人だろ?俺達の一党に加わってくれないか?」
「ふぇっ?」
「うん?」
「おや?」
不意に声をかけられた。三人揃って声のした方を見れば、鉢巻きを巻いて腰に剣を吊るした若者が近くに立っている。自分や今話していた疾走剣客さんと同じく、首から白磁の小板を提げている。つまり自分達同様新人だろう。
急ぎの依頼でゴブリン退治に行くのに、聖職者が欲しい。だから神官服に身を包んだ女神官に声をかけたんだ。―青年剣士と名乗った若者はそう言った。―彼の背後には2人の少女がいた。恐らくは武道家らしき少女と、見るからに魔術師と思わしき少女の2人だ。
思わず三人して顔を見合わせる。というのもこの一党で新人向けの依頼を受けようか、という話にはなっていたが、ゴブリン退治ではなく下水道に行こうと言っていた所なのだ。
というのも、受付嬢がゴブリン退治について触れた時に何とも言えない雰囲気を発していた。それを女神官はハッキリ覚えていたからだ。魔法剣士さんも似たような話を聞いたらしい。だからドブさらいしていたのか。
疾走剣客さんは特に話を聞いてはいなかったらしいが、それならば今は避けるのが賢明だろうという流れになっていたのだが……。
「僕は構わないが、二人はどうする?二人が受けないのなら僕も断るけど」
と疾走剣客さんが私と魔法剣士さんに確認する。
魔法剣士さんの方は何やら渋る様子を見せた。その理由を補足するかのように、受付嬢が声をかけてくる。もう少しすれば他の冒険者も来ると。
経験者が1人ぐらいはいた方がいい、と魔法剣士も言う。確かに自分達――――魔法剣士だけは一応ドブさらいをこなしているが――――は冒険の経験が全くなく、先達がいた方がいいのではないだろうかという気持ちになる。
私たちがどうしようか決めかねていると、途中で別の方角から新たな人物が鉢巻をした青年に話しかけてきた。
「もしよければ貴公らの一党に加えてはもらえぬか? 女神官がいるのだろう?」
「丁度いいですね。私も参加できますか?」
「おやおや、面白い話をしているようだね。これが噂に聞く只人のナンパかい? 僕も話に混ぜてくれよ」
「ゴブリン殺スベシ。慈悲ハナイ」
「ほう、一刻を争う小鬼退治とな? 義を見てせざるは勇無きなり、某も一枚噛ませて頂けますかな?」
5人の新人冒険者が青年剣士さんに話しかけていました。 みんな神官がいる一党ならば安心して冒険できるし下水道の中を冒険するよりずっとましと思っているみたいです。
人がたくさん集まってきて収拾がつかなくなってきました。そんな時
「ゴブリン退治に参加したい白磁等級のみんな! 注目!」
と疾走剣客さんが鶴の一声を放ちました。
【青年剣士side】
ゴブリン退治に行く所の騒ぎじゃなくなった俺たちを落ち着かせ、場を取り仕切ったのは疾走剣客だった。
不意に疾走剣客が口を開いた。
「一つ確認だけど。この一党の頭目は君だよね?」
「ああ? そうだけど、それがどうかしたか?」
「いや、それならいいんだ。頭目がはっきりしてれば大丈夫」
そういって疾走剣客は俺から目線を外し、全体を見渡し。語り掛ける。
「よしよし。それじゃあ、自分は何者でどんな装備をしていて、どんな事が出来るのか、今までどんな事をして何が得意なのかを一人ずつ順番に落ち着いて青年剣士君に自己紹介をするんだ。 青年剣士君は自己紹介をしたみんなの中から3人を選んで一緒に冒険をする。 これでこの冒険に参加する奴を青年剣士君に決めて貰おうじゃないか?」
「えっ、ちょっと何勝手に」とんでもないことを言い出した疾走剣客に俺は食って掛かる。
「いやいや、そっちこそ今更何言ってるんだい。
こうでもしなきゃこの集まりは収拾がつかないよ。それにこうすれば君は8人の冒険者の得意や不得意な事を知る事が出来るし、当然それに合わせて今回一緒に冒険する奴をそっちで考えて都合よく決められるんだから、別に悪いことじゃないだろう? 一応、公平に一人ひとり自分の事をしっかり自己紹介できるようにしているんだからさ。
それにさっき君は一党の頭目なんだろう? 一緒に冒険する仲間くらいしっかり決めて貰わなくちゃ。」
「二人と相談するのはいいよな?」
「もちろん。 みんなの意見を聞くのは頭目として大事だと僕は思うよ」
恐らく、四方世界で初めて行われたであろう自己PRによるオーディションが始まった。
斥候の心得がある戦士や両手に盾を持ち、防御力に特化した騎士。
精霊術と魔術を扱う森人の詩人と祖龍術と呼ばれる神官の奇跡のような術を扱う蜥蜴人の司祭
日に4度地母神の奇跡を使う事が出来る女神官と魔術の心得と剣術を修めた魔法剣士。
斥候と武闘家の格闘術が使える狼獣人の忍者。
そして口八丁でこの場を取り仕切り皆をまとめ上げた人物。 剣を使う武闘家にして精霊の口寄せ術と解毒の奇跡、暗視と斥候の才能がある圃人、疾走剣客。
この8人の内、今回ともに冒険をする3人を―女武闘家と女魔術師の意見を聞いて―青年剣士は女神官、魔法剣士、疾走剣客を選んだのだった。
出発の間際、疾走剣客が怪物図鑑を確認したいと言い出した。
「せっかくだからゴブリンがどんな生き物か見ていきたいんだ。図鑑をね、ちょっとだけ」
「ゴブリンなんて、わざわざ調べていくほどのものじゃないでしょ?」
「いいだろ? 本物を見る前に、図鑑にはどう書いてあるのか、って知りたいんだ」
近隣とは言っても四方世界の近隣の意味は広い。道はそこそこの距離となり、冒険者稼業の代名詞「歩き」を要求された。
そしてそんな時間を無言で過ごすのは少年少女には辛いものであり、道すがら初めての依頼で浮足立った一党は暫くは雑談めいた自己紹介の続きと空想話に花を咲かせていた。
いつかは竜を、そして財宝を!と言った和気あいあいとした様々な話をすることとなった。
そんな中でも疾走剣客の話は皆を驚かせた。圃人である彼は小柄な体躯に温和で若々しい優男めいた風貌の割に、年齢は30で実は一党の誰よりも年長だというのだ。
なんでも只人は15歳で成人するのに対し、圃人は30で成人するのだという。
青年剣士はこの話を聞いて疾走剣客が行った、出発前の一党の編成の采配や怪物図鑑の確認といった、そつなくテキパキと問題を解決する立ち振る舞いが出来た訳にやっと腑に落ちたのだった。
「君達からすれば圃人はどいつもこいつも、のんべんたらりとしているように見えるかもだけど、実は僕も伊達に年を食っていないってだけさ。 僕の方が君達よりは人生経験があるんだよ」
尊敬してくれてもいいんだぜ?と冗談めかして嘯く疾走剣客。
やたらめったらに自分を主張しない。しかしそれでいて彼は周囲への注意を欠かさず、要所要所で軽んじられない程度に自己主張を忘れないのは彼の年の功の一端なのかもしれないと女魔術師は思った。
やがて雑談と空想の話は飽きたのか、青年剣士の昔話が始まったのを皮切りに一党全員が冒険者になったきっかけや過去が聞かれるように流れが変わっていく。
人を助けるために、冒険譚を聞いて、ほっとけない幼馴染の為に、知を追い求めていつか竜ですら倒して見せる、と言った十人十色な動機が話されていき、最後に実はこの中で最も年長者(なんと30歳)である疾走剣客に順番が回ってきた。
「僕は金持ちのやくざの家に生まれたお坊ちゃんなんだけどね。 青年剣士君と同じように英雄譚とか冒険譚が大好きでさ、ずっと夢中になってたんだ。 大人になったある日、親父に呼び出されて将来の事を聞かれて気づいたんだ。 今の僕は、自らが風のように疾走して自分だけの
「なるほど、わかんね」
「なんか、すっごいね」
「結構、詩的なのね」
「つまり偉大な冒険者になりたいってことですか」
「それも物語になるような大冒険をした英雄になって生き抜いてみたいってことでしょうね」
「ああ! そういうことかぁ。 なんか言い回しが小難しく気取ってたからよくわかんなかったわ」
「みんな、ありがとうね。ちょっと照れ臭いな……。 頭目は後で〆る」
「なんでだよ!」
期待に胸を膨らませ、笑いの絶えない道中であった。
「今は色々興味の幅が広がってさ、昔は誰かの冒険譚や英雄譚を聞くことが楽しみだった。
でも今は自分が冒険者になって、大冒険がしたいという楽しみが出来たんだ。 みんなだってそうだろう?」
ゴブリン退治に向かった彼ら一党は、皆これが初の冒険であった。
夢を果たせるか、はたまたここであえなく倒れるのか。それは運命と宿命のみが知っている。
裏話も2~3部構成になりそうね…………。センセンシャル!
というか、ゴブスレルルブサプリを確認したらゴブリンチャンピョンが怪物level9で強スギィ! ってなったわね。 今度このRTAの根幹に関わるアンケートを取るわね!
小鬼殺し一党関連のクエストにどこから参加する?
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森人の古砦(未参加で貴族令嬢一党生存)
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森人の土地のオーガ将軍退治
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水の都の地下水道攻略
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牧場防衛戦(ここは必ず参加)
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牧場防衛戦以外参加しない
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全て参加