自分を大蛇丸と信じて止まない一般男性がゴブリンスレイヤーtrpgのRTA「疾風剣客チャート」で優勝します 作:狂胡椒
幕間:レベルアップ、精神と時の領域にて優勝神との会合、繊維と琴線、語られざる修練(明晰夢)
「あら? 案外来るのが遅かったじゃない……。 時間には正確であれと御父上に厳しく躾けられていたのではなくて?」
目が覚めると妙に聞き覚えのある声の人物が俺の目の前に立っていた。 ネギトロめいたおどろおどろしい見知らぬ場所に見知らぬ人物と共に二人して立っている。
ああ、そうか
「あんたが、俺に託宣を送ってきていたのかい」
「ご名答。 先入観のない直感が鋭くて幸いしたわ。 説明したところで理解してもらえるか不安だったからねェ」
「こんなところに俺を呼び出して一体何の用だ」
「一つご教示してあげたいと思うの、貴方の今日の活躍を見る限り遠からずして私の優勝がご破産してしまいそうだからねェ」
「へぇ、そりゃあありがたいね? 一体、報酬に何を支払えばいいのかな」
「貴方の貴方だけの強く疾き
「それは期待していてほしいな!」
「よろしい! では貴方の
潜影蛇手! 潜影多蛇手!!
左右の袖口から放たれる大蛇と多頭蛇の突撃を辛くも躱し続ける。 蛇たちの突撃を有機的な効率の良い攻撃に昇華させている。
左から放たれる多頭蛇の突撃はバラバラな放射状に広がり移動の自由と回避の余裕を削っていく。
狙いすました右の大蛇の突撃が疾走剣客を的確に追い詰めていく。
「接近しながらでもしっかりと回避できているようね………………いいじゃない」
疾走剣客に喋る余裕はなかった。
わずかに垣間見えた間隙を縫って大蛇丸に駆け寄ると平素の疾走剣客では思いもよらないめちゃくちゃな態勢から意外な威力の一撃を放った。
「あら予想より早く『猿の如く』の技能を体得できたようね………………という事で今回のお稽古は是にてお終い。 お疲れさまでした、ハイエドテン!」
目が覚めると止まっていた宿の寝台の上であった。 壮快な目覚めであった。
幕間:新たな冒険、新たな誼、新たな仲間
疾走剣客は身支度を整え、ギルドに向かった。ギルドに入って早々受付ブースから呼び出しを受ける。
「最近は冒険者としても少し慣れてきたみたいだね?」
声の主は疾走剣客の冒険者加入手続きをしてくれた監督官であった。
「まぁ、おかげさまでね。 日々是精進って感じだな」
「冒険者なりたての白磁だったころと比べると顔つきが変わったように見えるよ?」
「そりゃどうも、
少し世間話を続けた後、咳払いをして監督官は真面目な口調で告げた。
「ギルドから貴方の昇格試験を用意しました」
『アラヤダ! 昇格試験ですって! ヤダー!!』
嗚呼、今日も頭の中がやかましい。
「依頼内容は行方不明者2名の捜索です。 あなたの他にも受験者が3人いるので協力して依頼を達成してください、この依頼を達成できれば黒曜と認めます」
「なるほどね、行方不明者の捜索か」
「どうですか? 受けますか?」
「勿論、受注するよ。 今回の僕の仲間について教えてくれないかな?」
色々取り込んでいて手が離せないとの事で、監督官に簡素な待合室兼応接間へ案内された。メンバーもそこで合流するように取り計らってくれるのだとか。
取り敢えず部屋にあった水さじと木のコップから水を飲んで待っていると、ノックが鳴り「どうぞ」と答えると真っ白な僧衣に身を包んだ圃人の少女がやって来た。
彼女が一緒に冒険する仲間の一人なのだろう。
「ほっ、圃人白魔導士……さっき依頼人に付き添って今回の行方不明者捜索依頼を出した白磁等級冒険者です。 この依頼が私たちの黒曜等級の昇格試験になると聞いてここに来ました。 えっと、ここで合っていますか」
「うん、合っているよ。 僕は疾走剣客。 武闘家の技術で突剣を振るう剣士さ。 同じ圃人の冒険者と知り合えるなんて嬉しいよ。 仲良くしてね」
『アラヤダ! カワイイ! ヤダー!!』
頭の中で黄色い歓声が上がっている。正直もう少し音量を下げてほしいところだ。 あと彼女と圃人街などの世間話している間。 勝手にホッコリしないでほしい。ちょっとイラっとする。
圃人白魔導士ちゃんは太陽神に仕える女神官で、太陽神の奇跡を扱うだけでなく精霊術師としての修行も修めているそうだ。
精霊術としては鎌鼬や酩酊、命水といった幅広い術を扱う事が出来る上に呪文の使用可能回数も4回とかなりの回数使えるので冒険する時にかなり頼りになる万能術師である。
人となりも力量に負けず劣らず素晴らしくとても好感が持てる。 徳のある女神官なのだろう。
話題がお互いがした冒険についてに変わると、実はお互い小鬼退治をしていたことが判明したのだが………………。
「一緒に冒険をした、眼帯を付けた只人の狩人のお兄さんがもうとってもとってもハンサムでイケメンで男前で素敵だったんですよぉ!」
なぜかその時に冒険した男性冒険者への
『どうしてこうなったんだろうね………………』 『あらやだ、ワタシと仲良くなれそうじゃなぁい?』
彼女の話を要約すると眼帯を付けた筋肉ムキムキマッチョマンの只人狩人に優しくお兄ちゃんっぽくエスコートしてもらって「お兄ちゃん……トゥンク…………」と一目惚れしてしまったとの事
『只人狩人系お兄ちゃん型ムキムキマッチョ色男………………乙女ゲー的に有り寄りの有りのアリ・オリ・ハベリ・イマソガリって感じね』
うるせーよ。
「お兄さん、マッチョでがっしりとした体つきなんですけど、只人だからすらっと背が高くてドワーフみたいなガチムチ樽マッチョとかとは大違いなんです! いや、マッチョなのは事実ですけど上背もすらっとしたシルエットで逆三角形だから最強の色男に見えるんです! しかも狩人さんとか戦士さんたちの服って結構肌にぴっちりしてるじゃないですかぁ…………。 もうね肩幅とか、広くて分厚くてしっかりしてて、肩にも肉団子みたいな筋肉がしっかりついてるし、腕も筋肉すごいし、力こぶとか骨付きのお肉みたいだし、弓を引くときに大きな背中がギュイ! ってするんですよ!! ギュイって! わたし、お兄ちゃんの兎さん*1になりたい!」
圃人白魔導士は疾走剣客を置いてきぼりで一人独演会の構えである。 疾走剣客には彼女の話す内容がえげつなかったのだ………………。
「わたしこの前、訓練中のお兄さんを見かけて命水で作ったお水を上げたんですよ。 汗でドロドロだったから今度から手ぬぐいも持って行こうと思うんですよね。 えっ? 『命水で濡らした手拭いで汗かいた場所拭いてあげればいいじゃん』ですって? やだ! そんなはしたなくて恥ずかしい事出来るわけないじゃないですかぁ! 確かに、一石二鳥ですけど………………。」
『誰に話してるんだ、誰に』疾走剣客は思った。
「まぁ、そんなに優しい伊達男ならそこら辺気にしないとは思うけどね………………*2」
「そうですかね?」
圃人白魔導士と話をしていたら、クラシカルな衣装とコルセットを身に纏った妙齢の女森人がやってきた。 その体つきは実に豊満であった。
「あなたが、一緒に昇格依頼を受ける冒険者? 圃人の女神官に、圃人の剣士ね……まぁとりあえずよろしく」
なるほど、故郷の手下が言っていた森人森人している森人とはこの女性のような人物を示すのか。 気位が高くて、内心ではあまりいけ好かないけれどまぁ致し方がない。俺の好みではないがよろしくやっていこう。
森人のお嬢様が使う武器といえば弩弓と相場が決まっているが、彼女は
さっきまで「お兄ちゃん」にお熱だった圃人白魔導士と顔を見合わせる。
その様子が癪に障ったのかぶっきらぼうに自己紹介をする。
「私は、乙女銃士。 武器は投石紐と投矢銃を使う。 今まで誰かと一緒に冒険した事はないけれど小鬼退治の依頼を一人でこなしたわ。 下水道の冒険は不潔で臭いから不本意だけど昇格試験だから仕方ないわね」
多少ぎこちないけれど、会話をしている。 初めての冒険の内容を聞くとどうも乙女銃士は初めての冒険が小鬼退治だったらしい。 本当にソロで潜ったらしい。
かなりの無茶をしているけれど生きて帰ってきている辺り実力は確かなのだろう。
「あの平服以外着ていらっしゃらない様ですけれど、鎧とかは使わないんですか?」
防具を装備していないことに白魔導士が質問する。
「一人で小鬼の巣を皆殺しにした野伏に鎧なんか別に必要ないでしょ?」
正直乙女銃士が来てから少し気まずい。
そんな中、三人目の冒険者が現れた。
「一緒に黒曜等級の昇格試験を受ける冒険者ってのはあんたらか? 兎人戦士だ。 よろしく頼む」
一般論として、兎人の戦士とは大多数がこのような風体である。
兎人戦士、名をヨシマサと名乗るこの男は違った。
彼は身の丈六尺の偉丈夫で熊人の大男が使うような黒光りする大斧を担いだ筋骨隆々、屈強な丈夫であった。
なるほど一般的な兎人戦士とはかけ離れてはいるものの彼の武威や屈強な体躯と巨大な得物は獣人の戦士として確固たる存在価値を示しているであろう。
信じがたいことに彼が兎人である証拠になる長い兎耳は ――彼の男前な強面に致命的に似合わなかったけれど―― しっかりと生えていた。
目を白黒している疾走剣客達を前に兎人戦士は男前の強面を顰めっ面にして近寄りがたい雰囲気を放っていた。
なるほど確かに毎度毎度、一党を組む度にこのようなリアクションを取られていたら不愉快にもなるだろう。
だが……そのいかがわしいを通り越して淫奔な領域にまで昇華されてしまったその格好については理解が追い付かないぞ! 疾走剣客心の叫び③
『疾走剣客さん! 兎人戦士さんのあの格好は多分、故郷の装束なんですよ! 背負っている大斧と相まってとっても強そうですね』
あわてた口調で圃人白魔導士が耳打ちする。
なるほどそういう事か、気が付かなかった。であるならば本当に難儀な青年と言えよう。
「兎人の戦士? 確かに熊人とか虎人以上の体格してるわね。 随分露出の激しい鎧装束を着ているけれど、貴方の部族の衣装なのかしら?」
乙女銃士の質問に虚を突かれた様子で兎人戦士は答える。
「ああ、よく分かったな。 自力でこの格好の意味に一発で気づいたのはあんたらが初めてだ。 ここの奴らはどいつもこいつも俺を露出狂の変態扱いしやがるからな」
「あらあら、大変だったわね。
話を聞くに恰好以外は至極普通の純朴な青年で冒険者としてはかなり優秀な戦士のようだ。 乙女銃士曰く「前衛として申し分がないわ」との事。
彼も初めての冒険は小鬼退治だったらしいが今回の依頼を受けるまでに何人もの同期の冒険者に同行を拒否されていたらしい。
疾走剣客は慣れない土地で世知辛い苦労をした彼に対して色眼鏡で見ていた事を謝罪し、その上で一緒に冒険をしたい旨を兎人戦士に持ち掛けた。兎人戦士は快活な笑顔を浮かべ2つ返事で了承した。
彼は
彼自身も何れ兎人の神官戦士や
冒険時の陣形から、それぞれの身の上話までたっぷりと語り合っていると、気づけば4人は意気投合しすっかり一党として馴染んでしまった
話が済んだところで監督官が入室してきた。 仕事の詳細な依頼が聞けるのだろう。
「依頼はこれ」
監督官は、掲示板に貼りだしていないクエスト案内を取り出した。
『
・依頼内容:魔術学院の地下下水道で行方不明になった男女2名の捜索
・場所:魔術学院の地下下水道
・報酬:銀貨15枚
・備考:(ギルドより)解毒薬、応急手当キットの形態を推奨
』
「皆もある程度知っているとは思うけれどこの四方世界に広がる大半の街は過去の遺跡の上に立地しているわ。 そしてその遺跡の一部を地下水道として下水道や上水道みたいに別々に分けて利用しているのね。 遺跡といっても規模がまちまちだったりするけれど、多くのまだ経験の浅い冒険者が利用しているお手軽なダンジョンといえるでしょうね」
「下水道に住み着いたモンスターの討伐依頼が冒険ギルドに届くのもよくあることなんだけど、今回は未熟な学生とはいえこの町の魔術学院に所属している魔術師が2名行方不明になっているの。もしかすると何かが潜んでいるのかもしれないわ」
『ですってよ、奥さん聞きました? や―ねぇ。』
『うるせーよ』
「詳しい話は学院の先生から聞いてね」
「既に冒険を経験した貴方達ならきっと達成できると信じているからどうか気をつけてね。 この依頼を放棄するとギルドの信頼を失ってしまうので注意するんだよ」
下水道によくいるモンスターの情報は監督官が教えてくれた。
・ジャイアントラット p.582 *8
・ジャイアントローチ p.585 *9
・粘菌 p.583 *10
乙女銃士が怪物についての情報を把握していた。
「これから不潔で汚らわしい場所に行かなきゃいけないと思うと気乗りがしないわね」
監督官が、手当道具や化膿止め軟膏や解毒薬が必要だと言っていたけれどみなお金がすっからかんのみであることは変わらない。疾走剣客と圃人白魔導士が神官で解毒の奇跡と治癒の奇跡、解毒薬を持っている事で監督官には納得してもらいは何も買わずに出発する事にした。
事件が起きた魔術学院はこの街の外周部にある。この辺境の街のようにありふれた地方都市といった見た目の町にもこのような教育機関が存在することが、疾走剣客には新鮮であった。
故郷は現在進行形で経済発展と町の規模が拡大していっている状態なのでまだ魔術学院は存在しない。きっと臨海にある故郷の庄にもいずれこのような教育機関が設立されるのであろう。その頃には自分は高名な冒険者として吟遊詩人に歌われるような冒険譚を多数引っ提げ故郷に凱旋するのだろう。疾走剣客は自身の将来が楽しみであった。
「こういう魔術学院を色んな町に建てているのは一体どんな人間なんだろうな?
町に住んでいる人の教育に力を入れるために王国が頑張っているのか? それとも魔術師のギルドみたいな組合が金を出して経営して沢山の学校を開いているのかな?」
移動中の雑談として疾走剣客が気になった事を話す。
その疑問は圃人白魔導士が教えてくれた。
「王都にある『賢者の学院』以外の魔術学院は魔術師ギルドが経営している私塾予備校みたいな感じなんですよ。 一般的な魔術師や精霊使いはここに通うか、実家で親とかから学ぶかのどちらかなんです。ちなみに私は実家で親から基本的なところは教わりました。 とはいえ私もたまに親の伝手でここに通う事もあったので今回の依頼人とは知り合いで手続きの手伝いをしたんです。 今回の依頼人、私の術師先輩である圃人魔導士*4さんはここの学校を卒業後、魔術師ギルド直営の学校に進学したらしいですよ。 今はこちらで教鞭をとっているんです。 冒険者になりたいんですって」
今回の依頼は白魔導士さんの先輩、圃人魔導士先生の担当クラスから何人かの生徒が行方不明になってしまったということで白魔導士ちゃんの手を借りて先生がギルドに依頼したそうだ。生徒さんを何とかして見つけ出しておきたい。
圃人魔導士先生と街中で落ち合った疾走剣客達はそのまま先生の案内で魔術学院に移動する。
街の外周部に存在する、高い塀で囲まれた一画が魔術学院だ。魔術学院はいくつかの校舎と学生寮で構成されていた。
行方不明になった学生をはじめとした、学生達の居室は学生寮にあるようだった。
一党は圃人先生の説明を聞いた。
「二人がいなくなったのは昨日の夕方なんだよ」
「行方不明になった生徒が食事の時間に現れなかったので蜂の巣をつついたような騒ぎになった、当該生徒が下水道を探索するんだと言って昨日の昼頃に下水道へ入っていった事を当該生徒の友人の一人が教えてくれたんだけどね」
「勿論僕たち先生方はすぐにでも探しに行きたかったのだけど、下水道にはモンスターが住み着いていることが多く、魔術師だけで乗り込んでもまた犠牲が増えるかもしれないという圃人白魔導士さんの意見から判断して、ギルドに依頼したんだ」
「先生も大変ねぇ。 まっ心配かもしれないけれど、すぐ見つけ出して戻るから待っていることね」
乙女銃士が一党を代表して感想を述べた。
圃人魔導士先生から乙女銃士が地下下水道の地図をもらった。 早く依頼を済ませてしまおう。
■下水道
学生寮の近くに物々しい扉のついた地下へと続く階段があった。扉の鍵は錆び付いて壊れてしまっているから誰でも簡単に外すことができるだろう。
扉を開けると臭気と共に湿った薄暗い階段を下りていくことになるわ。燭台はあるが何もかかっていないため、暗視技能等があれば別だけど、灯りが無ければほぼ何も見えない。
肥溜めのような臭気の中を進んでいくわ。気を抜くと吐いてしまいそうだ。
酸っぱいものをこらえて……疾走剣客ゲイ君と圃人白魔導士は何とか探索を進めているが乙女銃士と兎人戦士はかなり辛そうだ。種族的に五感の感覚が鋭い分とても苦しいのだろう。
「だから嫌だったのよ下水道は!」乙女銃士がぶー垂れる。
「鼻が………………もげそうだ……グプッ」
階段は学生寮の下へ向かう形で進んでいく、途中で一度、誰かの頭に階段の裏から水滴が落ちてきた。
ただ、その水は少なくとも黒ずんではいないが、透明であったか茶色に濁っていたかは圃人白魔導士ちゃんが持つ松明の灯りだけでは判断できなかった。皆が今日は風呂に入ってしっかり衣服を選択する事を心に決めた瞬間であった。
階段を降りきると、切り口が2m四方の通路が奥まで続いている。松明の明かりでは奥まで見通すことができなかった。
二人か三人までなら横に並ぶことができるだろう、また天井は低いから通常の身長であればぶつからないけど余裕はほとんどない。 幸いなことに兎人戦士は長い兎耳を折りたたむ事で問題がなかった。
地面には黒ずんだ泥のようなものがこびりついていて、水がその隙間に溜まっていた。
皆が注意深く探索する事で地面の泥の中によく見ると、二人分の足跡が奥まで続いていることが分かった。足跡を追って先へ進んでいく。
「天井にところどころ穴ぼこが空いているけどあれは何かしら?」
乙女銃士が穴を調べるらしい、やめとけと言うのはもう遅かった。
乙女銃士の目の前に小便が降ってきた。乙女銃士はひどい表情をしていたけれど、汚物まみれにならなかっただけ不幸中の幸いだった。
そしてトイレ掃除の時間に合わせてゴキブリがやってくるらしい。
エルフ語の典雅な罵声が聞こえる………………そっとしておこう。
時折、天井に開いた穴からぼとぼとと汚物が落ちてくる。疾走剣客達は地面や壁についた黒い泥が何からできているのか、嫌でも分かってしまった。疾走剣客は今回、汚れてもいい靴を履いてきた自分を自画自賛したのであった。
また、足跡は上から落ちてきた汚物に埋もれて分からなくなってしまった。落ちてくる汚物を避けながら、松明の灯りを頼りに奥へと進んでいく。皆落ちてくるうんこに気を取られて探索に集中できなかった。
程なくして天井から汚物の落下と汚物の舗装は止み、そして眼前の通路が崩落により塞がっているのが見えた。どうやら天井が落ちて崩れてしまっているようだ。ただし完全に塞がっている訳ではないから、岩の隙間から奥を覗くことができた。
覗くと、数匹のゴブリンが赤髪の女の子を相手におぞましい行為をしている様子が観察できた。ただ向こうも、瓦礫の隙間から漏れ出た松明の灯りに気づいたのかギィギィと騒ぎ始めている。
「どうにかこの瓦礫の山を何とかできないか」険しい表情で兎人戦士が言った
「ストーンブラストの呪文で出来た物のようね。 同じストーンブラストの呪文を使えば岩を吹き飛ばし道を開くことができるでしょうけれど、女の子を巻き込む可能性があるわ。 別の手立てを考えなくちゃ」
「よし、なら僕の口寄せの術で土の自由精霊を呼んで隧道の術を使わせよう。 みんな少し離れて」
土遁・口寄せの術!!
土の自由精霊を召喚した! 土の自由精霊に隧道の呪文を使わせ一党は中に突入しようとする。
その時、冒険者の背後から黒く平たい物の大群がが静かな羽音を立てて飛来してきた。
PTの最後列にいる乙女銃士と圃人白魔導士に巨大なゴキブリが襲い掛かってくる。ショッキングな光景だ。
松明の灯りを受けて鈍く黒光りする甲殻、平たいが体長は50cmほどもある巨大な虫の怪物、ジャイアントローチの襲撃である。
「唸れ烈風、大気の刃よ! 切り刻め
あわてずに圃人白魔導士が風の精霊術、妖物を媒介にして行う攻撃魔法を唱えた!
鎌鼬はジャイアントローチの群れを粉微塵に切り裂いた。噴き出した赤黒い液体が飛散し、辺りに飛び散る。向こう側へ吹き飛ばす感じに発動させたから
目にもとまらぬ早業であった。
戦闘後、土の自由精霊がトンネルの術を使ってがれきの壁に通路を作って見せた。
■左の部屋
トンネルでできた通路を歩いていくと、天井が今までの通路より高い開けた部屋に出た。
先ほど岩の隙間から見えていた部屋である。
裸の女の子が床に転がっている姿も確認できるがゴブリンの姿は見えない。
冒険者が部屋の中に入ると、部屋の右奥隅に集められた白い骨、奥側中央に裸の少女、左側には服や武器、防具などが乱雑に置かれていた。
乙女銃士を中心に調査を、白魔導士には救護をお願いした。
・白い骨
長さも太さもバラバラのたくさんの骨が集められていた。調べてみるも多種多様な骨が有るが、特に手掛かりはなかった。いったい何の骨だろうか?
次に左側のアイテム類を調べた。誰が持ち込んだのか、冒険者が身に着けていたであろう装備やアイテムが放り出されていた。
その中には金属の錠前のついた丈夫そうな旅行鞄が一つある。また、魔術学院の学生服が男用と女用で2着ずつあった。
丈夫そうな旅行鞄は施錠されているわ。残念ながら一党の中に斥候がいないし、鍵開け道具もないから中身を確認することはできなかった。とりあえず女の子と一緒に一通りの調査を終えたら持ち帰ることにする。
白魔導士が裸の少女の救護を行った。
詳細な描写はしないが、何かの液体でべっとりしており、話しかけても返事はなかった。
細いけれど息はしているのでまず治癒の為に命水を唱え手当をする。
完成した、消耗点と生命力が回復する精霊の力が宿る水を少女にかけると目を覚ました。
彼女は、小さな声で「殺して」と呟いたきり、黙り込んでしまうわ。まずは治癒の為に命水の水を飲ませた。
そのあと質問をすればぐったりとしたまま力ない声で彼女は答えてくれる。
「ちょっとした冒険のつもりだったの。下水道に潜むモンスターを退治しよう、なんて考えて」
「でも途中でゴブリンに襲われて、必死に逃げていたらこの部屋まで来てしまって」
「彼が……粘菌に溶かされて……私も、ゴブリンに捕まって……ひどいことをされて……」
このあたりまでしゃべったら言葉が途切れ、すすり泣き始める。かける言葉もなかった。
ちょうど一党からは死角になっていた通路からゴブリンの集団が現れた。
短剣を持つ者、弓を持つ者、そして一番奥には、先が二股になったところに石を投げるための紐を通した杖*22を持つ小鬼がいた。
隧道の効果は切れてしまっており退路は無い。戦わざる負えない。
ゴブリンシャーマンが、その二股の杖を掲げて「ギギッ」と短く声を挙げる。
その声に応えるように、部屋の天井から冒険者を目掛けて何かが落下してくる。それは粘性の高い液体で、青い色をしていた。
死角から降ってきた人間大の粘液を乙女銃士、女神官、疾走剣客はよけきって見せる。が、察知に失敗した兎人戦士は頭の上から上半身ぐらいまでを裸の少女と共にその青い粘液粘菌に覆われてしまった。
一党の前衛が要救助者と共に無力化されたことで浮足立つ白磁冒険者達。しかし戦況はもっと混沌とする。
追いつめられた冒険者達を笑うようにゴブリンシャーマンが「ゲヒッゲヒッ」と声を挙げるが、
不意に入り口左手の壁の岩が弾け飛び、モブのゴブリン達数匹を巻き込んで崩落した通路の方へと飛んでいく。
冒険者には運よく当たらなかったが、巻き込まれたゴブリン達の多くは物言わぬ肉片となって通路に転がっていった。
生き残ったゴブリンも手足が欠けて通路周辺の床をのたうち回っている。
岩の飛んできた方向に視線を戻すと、先ほど天井から落ちてきた青い粘液と同じような粘液の塊がいたわ。
ただしその色は青色ではなく血のように鮮やかな朱色をしているわ。
粘菌 p.583 4匹 二列目
赤粘菌 p.587 1匹 //行方不明の片割れ 最後列
ゴブリンシャーマン p.576 1匹 最後列
ゴブリン(短剣)*8、 一列目
ゴブリン(弓)*8 後列
・ゴブリンシャーマンは粘菌を4匹まで統率でき、既に支援をうけている。赤粘菌は統率されず独自に動くようだ。
幸いなことに、戦闘前に召喚された自由精霊はまだこの場に存在していた。
前列、疾走剣客と兎人戦士、土の自由精霊
後列、乙女銃士と圃人白魔導士
圃人白魔導士の指揮のもと迎撃準備を整える冒険者たち。
冒険者一党と怪物たちの距離やそれぞれの仲間との距離の間隔は4m開いていた。
戦闘がはじまった。
「ゴブリン、粘菌、ゴブリンアーチャー! 赤粘菌、ゴブリンシャーマンです! 乙女銃士さん、赤粘菌に攻撃をお願いします!」怪物判定にすべて成功した圃人白魔導士ちゃんが叫ぶ。
「オッケー! まっかせなさい!」
初手、乙女銃士の後込滑腔式投矢銃による射撃、乙女銃士の正確無比な鋭い射撃が赤粘菌の核を傷つけた。赤粘菌は半ば形状崩壊しているようだ。
「続けていきます! 唸れ烈風、大気の刃よ! 切り刻め
次、圃人白魔導士が触媒に上質な鎌鼬の触媒、イタチの尾を使って精霊術:鎌鼬をゴブリン弓に向けての詠唱した。 鎌鼬の触媒、上質なイタチの尾が虚空に解けて消える。
するとたちまち猛烈な旋風が刃となってゴブリン弓のいる場所を中心に炸裂し、妖物の権能で生み出された鋭利で強力な風刃がゴブリン弓、粘菌、ゴブリンシャーマン、赤粘菌に襲い掛かる。
粉砕剣カシナードが如き旋風はゴブリン弓を一掃し半ば形状崩壊しかけていた赤粘菌を仕留めたのであった。それ以外のゴブリンシャーマンも深手を負い、粘菌も半ば形状崩壊を起こしていた。
強烈な攻撃にさらされながら、ゴブリンシャーマンも必死の反撃を行う。
鎌鼬で切り刻まれたゴブリンシャーマンは恨みのこもったまなざしで圃人白魔導士を見つめ火矢を放つ。
勢いよく自分の元へ飛んでくる火矢を圃人白魔導士は何とか解呪し威力を減衰させる。しかしかなりの火傷を負ってしまった。
兎人戦士は少女と共に粘菌から脱出する。
「悪い! しくじっちまった!」
「大丈夫、問題ないわ」
「いけ、自由精霊! 土遁・石弾の術!」
土の自由精霊が精霊術:石弾で粘菌とゴブリンを一掃する。
ゴブリンは石弾の弾幕で全滅、粘菌も全滅した。
最後は疾走剣客がゴブリンシャーマンにとどめを刺す。
疾走剣客が鉄砲玉のように勢いよく飛び出したかと思うと
「でやぁぁぁ!」
猿叫を上げレイピアでゴブリンシャーマンを突き出した。レイピアは顎から頭を貫き抜く致命傷を与えた。
戦闘は終了した。
圃人白魔導士は命水の水を飲み傷を癒し、小鬼たちが出てきた部屋を調べる事にする。
■右の部屋
通路の先は少し開けた空間になっている。左の部屋と同じ感じのレイアウトになっていた。
ただし唯一異なっているのが部屋の奥に祭壇らしきものだ。
「さて、こっちも調べるわよ」
野伏である乙女銃士は探索でも本当に優秀だ。 ある程度の距離さえあれば戦闘すらも一人で十二分にこなせるのであろう。
祭壇を調べると祭壇の下に穴が掘られていて、子供のゴブリンが3匹いた。 ゴブリンは怯えた様子で震えており命乞いをしている。
問答無用で手早く始末したあと少女を連れて脱出する事になった。が、土の自由精霊がいなくなってしまった為兎人戦士が手作業で瓦礫をどかさざる負えなくなった。
「今回、いいとこ無しだったからこのくらい気にするな」と本人は言っていた。
■エンディング
冒険者一党は兎人戦士が裸の少女を背負い、通路を引き返していく。
時折落下する汚物にこの哀れな少女が当たってしまい、彼女は小さくうめき声をあげた。
階段を上り、ようやく外にたどり着いたころには、もう夜になっていた。
冒険者は少女を学生寮に送り届けた。依頼人は冒険者たちの発するひどい臭いに顔をしかめながらも、
丁寧にお礼を言って少女を引き取った。
偶然通りかかった学生は、ひどい臭いと少女の悲惨な様子を見て耐えきれず嘔吐した。
もう遅いし、体を洗った方がいいだろうから、いくつかある空き部屋に泊まっていってはどうかと教員に提案される。
一党は宿泊しお風呂で身を清めギルドへの報告を明日にすることにした。
帰還後、疾走剣客は兎人戦士と大浴場で一緒になった。やはり彼は本当に屈強な長身で只人の大男や虎人、熊人、狼人にも負けず劣らない見事な体躯をしていた。
正直、同性からみてもとても雄々しい彼の頭に大きな
それよりも、
『ウホッ! イイ男!! 食べてしまいたいわね!』
『アラヤダおいしそうやだー! 圃人白魔導士ちゃん的に兎人戦士君はどうなのかしらん? 気になって眠れないわね』
『兎人戦士はそのマッチョなボディと同じく頸狩り兎のように滅茶苦茶、凶悪な代物を持っているのね………………お嫁さんは大変だわ』
等とオロティマが煩悩全開の戯言をワーワーと叫んでくるのが本当に苦痛だった。
百面相していたせいか兎人戦士にも気を遣われ、誤解を解くために事情を話して顔を青くさせたことは正直、本当にすまなかったと思っている。
「疾走剣客」と兎人戦士に呼ばれたので振り向くと、
「お前も胡散臭い男好きの神様に目をつけられて難儀だなぁ。 俺のことは別に気にしなくていいから今後ともよろしく頼むな」
オロティマに感謝するのは癪だがこの素朴で気風のいい兎人の男と友達になれてよかったと疾走剣客は思った。
ギルドに報告した結果。
・少女の生存
・ゴブリンシャーマンの撃破
の2つの条件を満たしていたから、満場一致で白磁から黒曜へと昇格できたわ。
「お疲れ様でした。まさかゴブリンシャーマンまでいるとは思いませんでした」
「救出された少女によると、一緒に入った男の子は、天井から落ちてきた粘菌に捕まってそのまま取り込まれ、赤粘菌になってしまったようです」
「粘菌は知性をもたないモンスターですが、魔術師を取り込んで赤粘菌となった個体は、魔術を使うようになるそうですね」
「ともあれ、ギルドは人命救助とゴブリンシャーマンを討伐した功績を認め、皆さんの黒曜等級昇格を承認しました。おめでとうございます」
報告を終え、報酬の精算に移る。
・基本報酬/一人当たり銀貨15枚、旅行鞄に入っていた肖像画をギルドに提出すると、行方不明になっていた人物の遺品として引き取られ、報酬として銀貨20枚がPTに支払われた。
まぁ解除できなかったため鞄ごと渡したところ、ギルドの鍵屋が開錠しその結果として支払ってもらえた。
銀貨20枚の収入を得られた。
という事で報酬の分配を適切に行った後一党は解散した。
その後もちょくちょく圃人白魔導士や兎人戦士とは交流を深めている。
乙女銃士は何回か交流するもすぐに旅立ってしまった。また会えることもあるだろう。
疾走剣客も仲間に負けずに精進を続けていく。
小鬼殺し一党関連のクエストにどこから参加する?
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森人の古砦(未参加で貴族令嬢一党生存)
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森人の土地のオーガ将軍退治
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水の都の地下水道攻略
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牧場防衛戦(ここは必ず参加)
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牧場防衛戦以外参加しない
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全て参加