[完結]わすれじの 1204年   作:高鹿

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11 - 06/27 ハイキング

1204/06/27(日) 昼過ぎ

 

授業が終わって寮一階の談話スペースで待ち合わせだってことで、とっくに準備を終わらせたオレは壁際のソファに座って寛ぎながら思考を回す。

 

ノルド高原だのブリオニア島だのへ行く後輩どもを昨日見送って、今日が来た。まさかあいつらの実習がノルド方面だとは正直誤算だった。共和国と帝国の領有権主張地である高原でコトを起こす予定がまさに明日に迫っているわけで。

国家間の話に一介の学生に何が出来るとも思えねえというのと同時に、ケルディックで領邦軍が裏で手を引いていると悟った中心人物が高原チームに入ってるって懸念事項があるのも事実だ。計画は既に進んで、止まる箇所はとうに過ぎている。最後の狼煙になるルーレの軍需工場への機械魔獣の混入も済ませたばっかりだ。

 

個人的にはVII組どもが死のうが生きようがどうでもいいっちゃいいが、あいつらが心を痛めるだろうことは想像に容易い。だからまあ、そのためにも面倒なことに首突っ込まず、言われるままに帰ってこいとよとは考えちまった。

そんなん、計画のためにセリを殺す覚悟を何度もした俺が考えるこっちゃないんだろうが。

 

「ごめん、待たせたかな」

 

そんな思考の中へ階段を降りてくる音とともに降ってきた声に振り向きつつ仰ぎ見ると、デニムのジャケットにショーパンで黒タイツにブーツだ。首元は手に持ってるウォーマーで保護するんだろうとはいえ、お前それバイク乗るってわかってんのか?っていうのと同時に、なんというか、すげえ、いや、端的に『ダメだな』って感情が湧いて出てきた。

 

「クロウ?」

 

固まってるオレを訝しみながら階段から回ってセリが顔を覗いてくる。

 

「……二、三ほど言いたいことがあるんだけどよ」

「ああ、タイツならこの間帝都で買ってきた防刃耐風、山肌で転げ落ちても大丈夫っていう実用品だから大丈夫だと思うよ。卒業したら制服着るわけにもいかないし今のうちにね」

 

ああそういう用具品の店で買ってきたんだなそうかそりゃ試してみたいよなとそこは頷いておくことにする。でもなぁ、それ以上にオレの感情がダメだ。

前に立つセリの顔から視線を外して、目の前にあるタイツに包まれた引き締まった脚を見やるとやっぱりなんというか、エロいんだよな。正直これで外を歩くってなるともう誰にも見せたくねえ気持ちになっちまって、思考がぐるぐるし始める。

 

「あー……しぬほどカッコ悪いこと言っていいか?」

「えっ、今更格好つけたいとかあるの? 別にいいけど」

 

わりと脇腹を刺してくる発言はこの際無視するとして、ちょいちょい、と指先で顔よこせとジェスチャーすると素直に腰が折られて耳が近付いてきた。

 

「……タイツエロいから着替えらんねえか?」

「は?」

 

怪訝そうな顔と声を隠さねえそいつが体勢を戻したところで、するりと太腿を撫でればぺちんと手を叩かれる。まぁこいつの気質を考えれば共有スペースで"そういう"触り方は叩かれるってのはわかってた話だ。そんでも意識させることくらいは出来たろう。

 

「……素肌もほとんど出てないし、わりと健康的な格好だと思うのだけれど」

「そりゃお前視点だからだろ」

 

オトコの視点で言えば、決定的に印象が異なる。

活動的な短い裾のジャケットの広がるシルエットから落ちる細い腰、股下数リジュのショーパンから見える細くもしっかりとした体幹を見せつける脚は健康的だからこそエロい。織り方のせいか外側のラインも膝辺りのラインもよく見えるっていうのが目に毒すぎる。

去年からわかってた話だが、オレはどうにも自分の好きなもんを抱え込むタチなようで、本当に誰に見せるわけもなく一人で楽しみたいと思っちまった。部屋で履いてくれんなら歓迎なんだけどな。

 

「んー、……昼食奢ってよね」

「そんくらい任せとけ」

 

納得のいっていない顔をしつつもここで争う気はないようでセリは踵を返して上階へ。再度ソファに背中を預けてまたぞろ作戦について考える。

 

今回も《G》が現地に行って雇った猟兵崩れを指揮してる筈だが、VII組の実習があまりにも不確定要素すぎる。国家間の問題に発展させたい身としては、それが帝国内勢力によるものだっていうのに気付かれちゃならねえ。

普通の学生なら首を突っ込むなと言われりゃそうするしかねえわけだが、いかんせんオレたちの直接の後輩に当たる特科クラスだ。己の頭で考え行動する。そうやって去年を過ごしてきた身としては、VII組の存在を楽観するわけにもいかない。

そう考えると、来月のことだって計画の練り直しが必要になりそうな気もしてくる。別ルートから入ってきた情報だが、帝都夏至祭の警備に遊撃隊としてVII組全員が参加させられるらしい。HMPだのTMPだのの相手はするつもりだったが、軍組織としてじゃない観点と行動力を持つ団体に対しての対応も必要になってくるか。……魔笛を持ってるとはいえ一人だけに任せるにはちっと荷が重いかね。

 

七月に名乗りを上げ、八月は通商会議を襲撃し、そこで鉄血の野郎を殺せたら万々歳だがそう上手く行く気もしてねえ。そうなったら九月のどっかで組織が壊滅したと見せかけて舞台から俺たちの存在を一回消しておく必要も出てくる。シチュエーションを整えるって意味じゃあ、九月のルーレ実習は"こっち"に通じてるわけでかなり楽になるだろう。

おあつらえ向きに正規軍と領邦軍が仲違いしてる土地でもあるしな。どこにアピールするにしても面倒がなさそうだ。そういう意味で授業の欠席その他を計算してVII組編入の布石を打っておいたのは正解だったか。

まぁ期間限定のつもりとはいえ一年に編入するとなったら詰られんだろうが。しゃあなし。

 

「着替えたよ」

「おう、あんがとな」

 

階段から降りてきたセリは上半身はそのままに、下半身は革パンでバランス的にもいい感じだ。つーかやっぱ戦闘スタイル的に体型がいいから細身のファッションが似合うんだよなこいつ。あとは貴族どもが着るようなドレスも似合いそうなもんだが。ま、着たがるわけもねえか。

武器は片手剣を置いてダガーと投げナイフだけっぽいが、大森林の一角とはいえ公園として管理されてる場所だからその程度の装備でいいだろ。載せるにしても危ねえしな。

 

「バイクで一時間半ぐらいだから、昼はキルシェで食べていくんだよね」

「その方がいいだろ。腹減ったまま運転とか危なすぎるしよ」

 

だねえ、と二人で寮を出て学院から帰る時に持ってきたバイクを転がしながら店へと向かう。

 

「あ、セリさん! 今日はお出かけですか?」

 

道中で日曜教室のガキンチョどもが集まってるところを通りかかったせいで、セリに懐いてるブランドン商店の一人娘が駆け寄ってくる。

 

「うん。ティゼルはこれから勉強かな、がんばってね」

「セリさんみたいに賢くなりたいです」

 

頭を撫でられてご満悦な顔を見て嬉しそうにしちまってまあ。俺も人のことは言えねえけど。

 

「おーい、さっさと行かねえと回る時間なくなんぞ」

「そうだね。じゃあまた今度」

「はい、いってらっしゃい」

 

そう笑い合う姿は姉妹のようで、ああそういうぬるま湯みてえな平和の中にいるのが似合ってるんだろうな、なんて考えちまった。やっぱテロリストの傍にいる人間じゃねえんだ。

 

 

 

 

昼も食い終わって東の街道へ出たところでバイクに跨ると、セリが後ろに乗ってくる。ぎゅっと身体に隙間が出来ねえように密着されるのは、なんつーかいいなって思っちまう。衣服越しだから生々しくはねえけど、胸も腹も回される腕もオレとなんもかんも違う。

本人は不服かもしんねえが、そういう小ささが可愛さの一つだと感じるわけで。それを発言したら185もある男に比べたら誰だって小さいと脇腹どつかれるだろうけどよ。

 

「じゃ、行くぞ」

 

ぽん、と腹にまわってる手を軽く叩いてからハンドルとレバーに指をかけ、アクセルを回した。

 

 

 

 

流れていく景色、通り過ぎる導力車、帝都へ行く道すがらよりはよっぽど暢気な状況でのんびりとバイクを走らせていく。並走も悪かねえだろうが、やっぱ男としてはこうやって後ろに乗っけて走んのがテンション上がんじゃねえかと。その点で言えばゼリカとは気が合いそうだ。

あいつもトワを後ろに乗せたがりだからな。生徒会の仕事の合間に息抜きと称して連れ出してるのを何回か見たことあるし。

 

風を切る感触を楽しみながら暫く走らせてると、徐々に麦畑と製粉用の風車がちらほらと見える地域に入ってきた。ってなるとケルディックはもう直ぐなはずで、町に入る手前のところで北に抜ければルナリア自然公園だ。

 

分かれ道を選択しつつ何回か分岐したところでアーチ状の門が見えてきた。先々月辺りにセリと会った見覚えのある場所だが、今日は門が開いているのが見える。

 

「────っし、ここだな」

 

バイクを降りてウォーマーだのなんだの、バイク乗るための防寒具を外してバイクのストレージに畳み込んで仕舞い鍵をかける。

 

「今更だけどバイク置いて行って大丈夫かな」

「あー、まあ平気だろ。フツーにゃ価値がわかんねえよ」

 

とは言っても心配そうにするから、一応門から離して魔獣避けの香りを吹きかけつつ置き直す。森へ入る前に互いに装備を確認して、ARCUSのリンク接続も。いやここまでしねえと危ない公園は怖すぎるけどよ、前は管理人を放逐したせいで荒れ果ててたかんな。

 

「じゃあ行こうか」

「はいよ」

 

踏み入った場所は前より陽光の降り注ぎ方だなんだのいろいろ変わってて、ああやっぱ植物が伸びる時期に人の手が入ってるとこんなに違うもんなんだなと実感した。

ハイキングコースとはいえ大木の根だのなんだのが露出してて足元に注意しねえと危ないが、まぁオレよりセリの方が当たり前のように慣れているから足元に淀みはまるでない。人の気配も殆どねえから、これならタイツでもよかったかと背中から尻辺りを眺めながら思案しちまった。いやいや、この後ケルディックに行くかもしれねえしな。

 

「結構至るところに精霊信仰の碑があるね」

 

ちらほらと高い位置にある石碑を指差してセリが一瞬立ち止まる。

 

「そうだな。お前の実家の方の森じゃあんま見かけなかったか」

「かなり精霊信仰が強い土地ではあるんだけど、北の大森林は魔女の方々の聖域……みたいなものだからかな」

「へぇ、そいやンなこと言ってたか」

 

魔女。エリンの里に住まう隠者が擁する、戦術オーブメントの補助もなしに"魔術"を扱える人間の総称だ。それを受け継げるのは女だけで、大層人間の少ない隠れ里らしい。

 

「私たちは森から生まれ森に還るとされていて、他と一番違うと言えば遺体を焼くことかな」

「……遺体を焼く?」

 

森の中を歩くそいつは息がしやすいのか、普段より饒舌だ。

 

「焼かれた遺体は灰となり、それをすり鉢に入れて更に粉々にして、森に撒く。そういう弔い方が主流なんだけど……ふふ、聞いたことないって顔してるよ」

「だって大体は棺ん中入れてそのまま埋葬だろ」

 

歴史から鑑みれば併合がつい最近のジュライだって土葬文化だ。祖父さんの遺体を海が見える霊園に埋めたのは俺だから間違いない。

 

「そう、帝国に飲み込まれた後もその風習は廃れなかった。灰は森を豊かにするからね」

 

だからいつか私も森に還るんだ、とセリは笑う。自分の故郷を、亡くなった後の自分が栄えさせることの誉れを胸に抱いて生きている。嗚呼、"俺"のいっとう好きな表情だ。そしてそういう終わりもいい気がしちまった。俺が死んで、灰になって、海に撒いてくれたら、なんて。

そんな穏やかな結末があるわけもねえのに。

 

「いつかはティルフィルに戻るのか」

「うん。叔母さん叔父さんにたくさんお世話になったから、きっと」

 

孝行したい時に親はなし、なんてよく言ったもので、したいもんなら早めにするのがいい。後悔しないためにも。俺だってもっと祖父さんと一緒にいたかった。祖父さんの下で勉強して、外を見て、それで、最終的にジュライのために走り回るのもいいなって、そう。

 

んなことを頭に上らせたところで、ぎゅっと裾が控えめに掴まれた。振り向けばセリは俯いて、表情がうまく見えねえ状態で首を傾げる。数瞬の沈黙を経て、あの、と小さな声。

 

「その時に、もしクロウが隣にいてくれたらって思うけど、難しかったらちゃんと言ってね」

 

あの平和な街で、セリと一緒になって、子供なんかこさえて、そうして、ゆっくりと歳を取っていく。そんな未来がもしかしたら、今持っているもんを全部投げ捨てたら、一縷の未来としてあるのかもしれねえ。だとするなら、置いていくしかない選択肢だ。

 

────動乱に巻き込まれる運命の保持者。

 

ヴィータの言葉が脳裏によぎる。

そう、騎神の起動者は必ず、その身を戦場に預けることになるらしい。その時にこいつを連れていくつもりは微塵もない。それでも、追いかけてきてくれるなら対峙しようとはとっくの昔に決めた。

 

「ああ、そだな。そん時は、話し合うとしようや」

「うん、ありがとう」

 

辺りに魔獣どころか人の気配もないからか、ぎゅっとセリが真正面から抱きついてくる。本当に俺にこいつを抱きしめる権利があるのか、なんて自問しながら、それでも許されるだろう今この時だけはこの温度を手放したくないと思っちまって、細い肩を抱き締めた。

 

 

 

 

「この後どうする? 大市行ったりしたいなって思うんだけど」

「ああ、いいんじゃねえか。土産とか買いたいだろ」

「うんっ」

 

公園の最奥でいい感じに座れそうな大木の根の上で暫くまったり森林浴をした後、そのままバイクのところに戻ってきて後のスケジュールについて詰めていく。わりとバイク乗れたらよかったかんな、今日は。それだけでオレの娯楽としては達成というか。

 

「……クロウは何かしたいことないの? 今日は付き合ってもらってばっかりだけど」

「んー?」

 

だもんで不安そうなセリの表情にすこしばかり悪戯心が湧いちまう。そりゃもうふつふつと。

ぐい、と腰を抱き寄せて耳元に口を寄せ、囁くように。

 

「帰ったら部屋でイチャつきたいってのもアリかよ」

 

つまりそういうお誘いなわけだが、相手にも過不足なく伝わったようでセリが真っ赤になる。何かしたいことがあるのか体を動かされるけど離してやらねえと抱き寄せる力を強くしたら、観念したように胸に頭が預けられた。

 

「……い、いよ」

 

髪の合間から覗く赤い耳を見ながらこぼれた言葉に頷いてオレは離れたわけだけど、暫くそこから動けなかったのは悪くなかったな。

 

 

 

 

「で、何で私は抱えられてベッドに座らせられているんでしょうか」

 

大市で土産も買ってバイクで帰ってブランドン商店で夕飯の材料買い込んで、そうして部屋に連れ込み、ソファはねえから靴を脱がせてベッドに抱え込んだところで現在だ。19時前。飯にしてもいいけどヤるなら直後より前がいいだろたぶん。

 

「だってよく考えてみろよ、オレたちここ一……いや二ヶ月全っ然イチャついてねえぞ」

 

五月は後輩どものことが気がかりだったようで気もそぞろだったし、六月は中間試験で勉強することはあれどそういう雰囲気になるのを絶対に阻止されてたからこうやって思う存分、人目も考えずに抱きしめられたのは本当に今日が久しぶりの久しぶりだ。

すると足の間に座っているセリは妙に居心地が悪そうに身じろぎする。

 

「あの、だから」

「ん?」

「……勃ってるの?」

 

身じろぎの原因だろうもんを指摘されたが、ジャケットも脱いでやらかい衣服の下にあるやらかい体を抱きしめてりゃ、そりゃ勃つだろ男なら。それが好いた女なら尚更そうなるわ。

 

「たまに自分でヌいたりもしたけどよ、妄想のお前より実物の方がいいだろが」

「えっ」

 

汗のにおいがする首元に鼻先を擦り寄せながら呟いたところで、腕の中が驚愕に跳ねる。

 

「えっ、ってなんだよ驚くところか?」

「いや、ええと」

 

言い難そうに口籠るのを、肩に顎を乗せながら待つ。そんなに驚くこっちゃねえと思うけど。それとも健全な男子であるオレがオナニーしてねえと思ってたか?いやそもそもそういう行為を知らねえとかあったりすんのか。それなら仕方ねえ気も。

 

「……私ってクロウのそういう対象なの?」

「はあ?」

 

そう自分に自分で納得出来んこともない理屈を捏ねたところで爆弾発言が落とされた。いや、オンナ相手ならのべつ幕なしでそうなるわけじゃねえが!?

 

「だ、だってクロウって前は大きな胸の女性の水着ポスターとか部屋に貼ってたしクラスの人とそういう本で盛り上がってたりを見かけたことあるから、ひ、ひとりでする時もそういうの使って、る、んだ、と」

 

言い募るセリの尻に股間のモンを押し付けると、だんだん言葉が尻すぼみになっていくのが正直面白いと思っちまった。あー、かわいい。かわいいけど今日は許してやらねえ。

 

「ヌけもしねえ女にこんなことになる男だって思ってたんかよ」

「それとこれは別じゃん! セックスはできるけど自慰には向かないとかもあるでしょう! 知らないけど!」

「じゃあ新しいオカズ提供してくれよな、っと」

 

抱えたセリの右腕を、左手で掴んでぐるりとベッドへ寝転がし、驚いた顔が事態を把握して整っちまう前にその唇へ噛み付くようにキスをする。べたりと体重をそれなりにかけて押さえ込んだ身体が舌を絡めるたびに小気味良く跳ねた。あまい。

 

 

 

 

「……なんか納得がいかない」

「納得いかねえことあるか?」

 

存分に堪能させてもらって、一応お互いパンツだけ履いた状態で布団に潜り込んだままセリが呟いた。背中から抱きしめてるもんだから表情は見えねえけど、まぁちっと渋面作ってんだろうってのは分かる。

 

「いや、なんか、ずっと喘がされているし手慣れているような気配が」

「って言ってもお前ずっと声抑えてるじゃねえか」

「だって寮だから……聞かれたら嫌だし」

 

聴きながら、ちゅ、とうなじだの肩だの追加で吸い付くと新しく赤い痕がついた。今日は後ろからヤったせいでだいぶ見た目としては痛々しい背中になってるわけだが、……まあいいか。

 

「つーか、お前が分かりやすいっていうか反応いいからオレのせいじゃねーんだわ」

 

短い嬌声だの跳ねる体だの掴んでくる手だので、もう大体イイところが分かっちまうというか。だから決してオレが慣れてるわけじゃなく、オレのセックスがお前ナイズされてるっていう方が正しいんだろう。

 

「そう、なのかな……」

「そうそう」

 

かぷりとうなじを甘噛みしたところで、あっ、とセリが起き上がって体を捻りながら自分の背中を見ようとする。もしかしてバレたか。

 

「す、水練の授業始まるのに痕つけた!?」

「………………すげえつけました」

 

めちゃくちゃ睨まれたから思わず丁寧に肯定する。そう、水練が七月から始まることはわかりつつもどうしても痕をつけたくて無視をしたんだが、どうやらそのことに思い至っちまったらしい。

正直言わしてもらうなら学院指定の水着の背中は別に開いてねえんだからいいと思う。何なら全身覆うタイプの水着だっていいくらいで。まぁそんなデザインつまんねえから今のでいいんだけどよ。いや別クラスだしそっちの方がいいか?

 

「う~~~、水練終わるまで痕つけるの禁止!」

 

ぽこぽこ軽い拳で叩かれながらそんな言葉が飛び出してきて、水練なかったらつけ放題なんかとか、ヤるのはいいんだなとか、オレは揺れる胸を見ながらそんなことを考えていた。




(実際のところキスマークは軽い痣なので回復魔法でたぶん簡単に消せる。)
(※消すとは言っていない。)
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