1204/07/26(月) 夏至祭初日
帝都の夏至祭。各地と一ヶ月遅れのそれは獅子戦役が終結したことを尊び、精霊のお祭りと一緒に祝うようになったのがきっかけと言われている。街は垂れ幕に造花にガーランドと飾りが散りばめられ華やかになり、街区ごとにまるで全く別の街の様相のようになるその数日間。
去年は体調が優れなくて立ち寄ることは出来なかったけれど、今年は恋人と一緒に歩けるそんな日で。だから持っている衣服の中でも動きやすさを損なわず、あのストールをメインにしつつ且つ可愛く思ってもらえるような、うん。
「機嫌治ったか?」
「……別に機嫌が悪かったわけではないんですよ、クロウくん。でもごめんなさい」
チャンクなチョコとバナナがごろっと生クリームに入ったクレープを差し出され、街角に制服の出立ちのまま二人で食べ終わろうというところでクロウからそんな声がかかった。
そう。トールズ士官学院からのお達しで、今年の夏至祭へ繰り出す学院生は原則制服着用で帝都へ出るように、という命令が下されていた。先日のノルド高原のこともあり、共和国との緊張は例年よりも高まっている。そこに来てこの皇族の方が参加される夏至祭が開催されるので、もしテロや何かあれば学院生は一般市民の前へ飛び出すことになるだろう。その際に『この人物は信頼していい』というのを口頭説明せずとも示せるのが制服だという話だ。理に適っている。わかる。
でもそんな三日前に言わなくてもいいんじゃないだろうかとも思ってしまうわけで。トワやアンに私服の相談していた矢先のことだったので少しテンションが下がってしまった。……普段あんまり服装に意識を向けないので想像以上にキたのかもしれない。
「お前が服に凝ろうとしたってだけで嬉しいけどな」
「そもそもそれは言ってない筈なんだけどねえ」
あの二人だってクロウに言うのは野暮だと漏らしていない確信がある。だというのにさらりとお見通しなことを言われてしまい、むず痒い気持ちを得ながら食べ終わったクレープの包み紙を畳んでポケットに入れる。
「まぁでもお前もわかってんだろ」
「そりゃあね」
せっかくの外出だというのに特に打ち合わせもなく二人とも得物を腰に帯びているというのはつまりそういうこと。トールズ士官学院は帝都の聖アストライア女学院ほど制服での知名度はないかもしれないけれど、それなりには知られている名門校だ。その身なりであれば多少物騒なものを持っていても都民並びに正規軍に疑われることはまずない。
もしこの夏至祭制服着用義務が毎年のことになれば制服は高く売れるようになるだろう────テロリストに。だからこそより清廉潔白であらなければならない。何かあった際に、彼らがそんなことをするわけがない、と世論を動かすために。
制服を着用し団体に属するというのは想像以上にいろんなことを意味する。
「ったく、こんな日くらい有事のことなんざ考えなきゃいいのによ」
「性分だから仕方ないよ」
適宜自分の置かれている立場を理解し、意識を切り替えていけたらいいのだと思う。今回であれば学院生という立場は一旦置いて、夏至祭の観光客のように。それでも私にそんな器用な真似は出来ないし、そもそも制服着用の厳命はそれをさせる気がない。
衣服によってペルソナを切り替える人は多く、軍服や学生服もそういう効果を狙ってのものである以上、意識の強制は狙っていないという話は通らないだろう。
「まぁサラも後輩どもも好き勝手やってるみたいだからな、補佐がお前くらいお堅くてちょうどいいってもんか」
「あー……実習初日の夜に帝都の公園で切った張ったしたっていう」
まさかリィンくんのいるチームが面倒ごとを引き起こすとは思ってなかったので、報せを聞いた時はひどく驚いてしまった。とはいえサラ教官は深刻にならず笑っていたし、都内で武器を振り回したというのに厳重注意で終わったのは正規軍に卒業生がそれなりに在籍しているトールズだからというのもあったかもしれない。
「私たちの時にも似たようなことが起きたし、歴史は繰り返すのかなぁ」
「……オレらん時は軍の世話にはなってねえだろ」
夏至祭用の飾り付けランタンに照らされながらやったアンとの殴り合いのことを思い出してか、クロウがちょっとだけバツの悪そうな顔をするのが可愛くて笑ってしまう。
「ま、VII組がテロ警戒で駆り出されてるのもあるし、ちょっとぐらいね。もちろん夏至祭を楽しむつもりはあるよ?」
帯剣している目的は自主警戒以外にもきちんとある。帝都のライカ地区にあるヴァンダールの練武場が毎年伝統演舞や体験教室をやっていると聞いたので、ここだけは絶対に外せないとクロウに言い募ったのだ。武芸の門戸は常に開かれているとはいえ、流派として修めるつもりはない部外者が入れる時なんてこういう時ぐらいだろう。────まあ、体験教室を開催するなら練習用武器も貸してくれるだろうから、やっぱり武器を所持するのは自分の判断だ。
トワのお祖父さんが館長をやっていらしたという同地区にある帝國博物館も夏至祭にあわせて特別展示をされているようで興味が尽きないけれど、常設展示すらも見たことがないのでそちらの方はまたの機会にすることにした。焦って混雑の中で見てもあまり満たされないだろうし。
「そんじゃとりあえず競馬場の方へ向かうとすっか」
「レース前の下見みたいなのがあるんだっけ?」
「そうそう。そこで最終判断って寸法よ。ま、オレは葉書出しちまってるから変えようもないわけだが」
つまりいろんな馬が見られるということだ。クロウとはまた別の観点だろうけど、私も目一杯楽しもう。
「ん~、やっぱ二番のホワイトアロー調子良さそうか」
「大きなお祭りだからかみんな元気そうだねえ」
「今日この日に調子を合わせるのも腕の見せ所だかんな」
「やっぱりそこは人間と変わらないんだ」
「おう。ところでお前的にはどれがいいと思う?」
「え? んー、四番と八番と五番の子……かな。なんだか今日の地面と相性良さそう」
「……なるほどな」
朝から始まるレースもあるけれどメインレースである夏至賞はセドリック皇太子が到着される午後から開催ということで、パドックを後にしてトラムへ乗り込みライカ地区へ。あれだけ入念に出場する方も観る方も準備を重ねて、それがたったの数分で結果が出るというのだから不思議な競技だと思う。
ぎゅうぎゅうの車内の中でそんなことを考える私を、クロウは律儀に壁際に押しやって身体が密着しつつも潰さないよう両腕をついてくれた。
「人、すごいね」
「近隣から地方まであらゆる場所から集まるらしいかんな」
人前だとあまり聞かない距離でクロウの声がするものだから、なんだかちょっと心臓が跳ねてしまう。これ以上のことを部屋ではしている筈なのに。不思議なものだ。
視界の中にあるのはクロウの胸板と顎や首筋を伝っていく汗で、何だかちょっと触りたくなってくる。クロウが元々体格がいいのは知ってるけど、こうして筋張ってるところとかが見えると、本当に自分とは全く違う性別なんだなと当たり前のことを考えてしまう。
「っ」
そんな風に眺めていたらカーブに差し掛かったようで人混みが少し傾いた。ら、ぽたりと汗が垂れてきて、びっくりして体を震わせたのにクロウも気が付いたのか、悪ぃ、と目を眇めて謝罪が。この暑さでこの人混みだから仕方ないよ、と返しつつどこかにジェラート屋とかあるかな、なんて行き先に思いを馳せた。
いやしかし本当にあっつい。VII組のみんなは大丈夫だろうか。
無事にライカ地区へ降りると、水路橋と平行する坂道に築かれ二種類の石畳がきれいに道を飾る、賑わっているけれどどこか落ち着いた雰囲気に出迎えられる。
そんな見慣れない街並みを楽しみつつヴァンダール練武場へ向かう坂道の途中で、思いがけない名前が視界に飛び込んできたのでゆるやかに足が止まった。
「なんか気になるもんでもあったか?」
「あ、ううん。ちょっと、懐かしい名前だなって」
リーヴェルト社。かつて旧都に本店があり、ティルフィルで作られた楽器や消耗品などを納入していた先だ。品質重視であったから元締めの立ち合いの元で行われていたそれは次第に少なくなっていって、八年ほど前の出来事でリーヴェルト社は一回崩れてしまった。倒産したわけではないけれど、似たようなものだったのかもしれない。
内部で何があったのか。当時今よりもずっと子供だった自分には到底窺い知れなかったけれど、旧都の跡地は今も誰かの帰りを待っているかのようにひっそりと佇んでいる。それがいつもすこしだけ悲しかった。
「……寄ってくか?」
「大丈夫。知ってる人はいないだろうし、今は楽器から遠ざかってるからね」
旧都から帝都へ本店を移したのもいろいろあったからだとは分かっていたので、ここでこうしてお店が続けられているのを見れただけで今の自分には喜ばしいことだ。
願わくは、お嬢様が今も元気に生き続けてくださいますように。
そんな身勝手な願いを置いて、私は想いを振り切るようにクロウの手を引いた。
「……さすがに子供たちを押しのけて体験教室するわけにはいかなかったなぁ」
「まぁ落ち着いてんだろう明日とか明後日に来たらいいだろ。今日は様子見ってことで」
「そうだね。いやでも演舞が見られたのはテンション上がった。格好良かった!」
ヴァンダールといえば豪剣術が有名な流派であり、その通りに自分であれば両手で持つだけで精一杯であろう演舞用の飾り大剣を、舞い手の女性は時に両手で時に片手でうつくしく操っていた。
柄につけられた飾り紐がくるりくるりと宙で線をえがいていく様は生き物のようで、かと思えば室内の灯りを反射する刀身は凛とした無機質さを持ち、その両方を舞として紡いでいく演者さんの体捌きも見事なもので。許されるならばジョルジュから導力映像複写機を借りてきて撮影の許可を得たいぐらいだった。
実際はもうテスト機は返されているのでトリスタにはないのだけれど。それに生で見るのと映像で見るのはまた異なる。
「あれ、先輩?」
演舞を脳内で反芻して浮かれながら歩いていたところで聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはVII組B班の面々が揃っていた。アリサさんを先頭にみんな駆け寄ってきてくれる。
「おうおう、VII組じゃねえか。ごくろーさん」
「こんにちは、実習は順調?」
「はい。慣れない帝都ですこし覚束ないところもありますが」
アリサさんの言葉に、そうか帝都組は両方ともA班に所属しているのだったな、と思い至る。アリサさんの言う通りB班は見事に帝都から遠い場所を故郷としている人ばかりだから、今回の班分けにもっと口を出すべきだったか。夏至祭という混雑する場所なら土地勘のある人は分けて入れるべきだもの。
「まぁそれくらいのハンデはあってもいいだろう」
するとどことなく笑いながら柔らかさも含まれた声音でユーシスくんが言うので、マキアスくんがいる班に対してのものだとすぐに判る。彼も変わったなぁと心の中で笑みが落ちた。
「先輩たちは帝國博物館とかに行かれたんですか?」
「あ、ううん。坂道の脇にあるヴァンダールの練武場で演舞をやってるって聞いて」
「すげー良かったぜ。お前らもちょっくら時間あったらお邪魔してこいよ」
「演舞ですか」
エマさんの質問に二人で答えると、興味深そうにガイウスくんが目を輝かせた。そういえばノルド槍術にも型の応酬として二人舞のようなものがあるのだったか。いつかそっちも見てみたいな。
「うん、飾りのついた大剣を見事に操り切ってて格好良かったんだ。毎年やってるみたいだから今年逃しても来年とかやってくれるんじゃないかな」
「なるほど、心得ておきます」
「ノルドの槍術にもそういうのがあるんだよね」
「はい。先輩たちが来てくださるのなら父と自分か、或いは弟でお見せ出来ますよ」
「それ凄く嬉しい。卒業したら絶対に集落へお邪魔するね」
拳を軽く合わせて約束してくれたガイウスくんと笑っていると、どん、と後ろから軽い衝撃がきて腕が腰に回って頭に顎が乗せられた。
「後輩の面倒見るのもいいけどよ、腹減ったからちょっくら大通りとかに戻ろうぜ」
「そうだね。昼だとお店混みそうだし、早めの方がいいかな。あとくっつかないで」
人前でいちゃいちゃするの好きじゃないってもうわかってくれているだろうに、それでもたまーにこういうことをしてくるのだから気が抜けない。困ったものだ。
……だけど困った困ったと言いながら、実のところあんまり困ってないところが、一番困る。惚れた弱みっていうのはつまりこういうことなのかもしれない。
「それじゃ、みんな。体調に気を配りながら頑張ってね」
「せいぜいテキトーに気ィ抜きながら回れよ~」
「はい、先輩たちもお気を付けて」
二人で手を振りながらB班と別れ、また混雑するトラムへ乗り込んだ。むぎゅり。
「……おそらく、先輩方って付き合っていらっしゃる、んでしょうね?」
「あの距離感で付き合ってなかったら驚くわよ!」
「仲睦まじいのは良いことだ」
「まぁ、意外に噛み合っているのではないか?」
ヴァンクール大通りへ向かい、いろいろ見て回っているとやっぱり路面店はこの時間でもいっぱいなのが見てとれる。そこであまり期待せず向かった百貨店ビフロスト二階の喫茶店は、しかし穴場なのかほどよく席が空いておりここぞとばかりに二人で滑り込んで席を確保した。
座る前に腰の装備を一旦解除して席の下の籠へ。まぁ万が一置引きするような輩がいたら腕の一本ぐらいは貰っていこう。人の武器に手を出すというのはそういうことだ。
二人揃って夏至祭ランチセットを頼み、外の喧騒に耳を傾ける。
「平和だねえ」
「ま、HMPもTMPも気合入れてんだろうからな。むしろ一年で一番安全まであるだろ」
普段よりもずっと厳重警戒体制のため、それはそうだと思う。だからこそテロを起こせたなら一年の中で最上の効果を得られるとも言えるのだけれど。だってそんなの、どこのマスメディアだって黙っていない。自国以外の報道機関も入っているこの行事では言論統制することも叶わない。
そうは考えても、一個人に出来ることなんてたかが知れている。自分の能力を過信するのもよろしくない証拠なのでそこはきちんと見極めて使っていかなければ。
それからは他愛のないことを話しながら昼食を食べ、夏至祭中特別提供の星飾りのついた涼しげな淡い色のゼリーを食べてほっと一息。
すると、近くのソファ席にいる三人組から話し声が聞こえてきた。
「今年の二番はやっぱ調子良さそうだな。直線に強い馬は好きだし俺は三万突っ込む」
「夏至賞だからって景気がいいなぁお前」
そんな風にここでも夏至賞の話題で盛り上がっているらしく、誰がどこにどの順番でどう賭けるのか楽しそうに会話が弾んでいく。ギャンブルのことはわからないな、と隣に視線をやると、随分とにっこりとしたクロウがそこにいた。
「やっぱ近頃のオレは冴えてるぜ。こりゃ特賞はいただきだな」
「そうなるといいねえ」
懸賞の仕組みは知らないけれど、たとえ当てたからといって当てた人から抽選なのではないかと思ったりもする。まぁでもまず当てないと話が進まないと言うのはそうだろうのであまり深く追求はしないでおいた。
「あれ、先輩?」
その声に振り返ると今度はVII組A班の面々が揃っており、彼らもこの暑い中でも帝都の見回りをしっかりとやっているみたいで嬉しくなる。例の報告を聞いた時はどうしたのかと思ったけれど、たぶん必要なことだったんだろう。
「よう、お前らか。実習の方は捗ってるかよ?」
「え、ええ……。というか、先輩たちはどうしてこんなところに? それも制服で」
おや。リィンくんたちは実習ということもあってか、今年の帝都夏至祭で学院生の制服着用が原則義務付けられていることは知らなかったらしい。まぁサラ教官らしい省略の仕方だとは思う。伝えても伝えてなくても結果が変わらないのだし。
B班は気にしていなかったので誰かが別ルートで知っていたのかもしれないけれど。
「休みでも制服なのは学院からの指示だね。君たちは実習だから伝達が端折られたのかな」
「そんでオレは今後の学院生活を華やかに生きる為に一勝負しに来たってわけだ」
「……勝負?」
「うむ、あの夏至賞でな」
フィーさんの疑問に対して神妙な顔で言うクロウに、マキアスくんが驚愕の表情を浮かべながら、モロに競馬じゃないですか!?、と叫ぶので真面目だなぁとしみじみする。いや当たり前の反応か。
「未成年が馬券を購入しちゃまずいでしょう!?」
「おいおい慌てんなっつうの。馬券なんか買ってねーよ。とある雑誌が夏至賞に便乗した懸賞企画をやっててな。応募した予想がズバリ当たってれば、豪華景品ゲットって寸法なのよ」
「それでわざわざ帝都まで確認しに……?」
「呆れるほどの行動力だな……。セリ先輩もそれに付き合って?」
呆れたエリオットくんの呟きに渇いた笑いを返していると、ラウラさんから水を向けられて、まぁそんな感じだね、とフランクに頷く。前に第三寮へ行った際、出来れば自分の方が若輩者ゆえ言葉は気にしないで欲しい、と請われて了承したのだ。
しかしこうして久々に正面から向き合った彼女の気配は以前よりもずっと澄んでいて、この実習中に何か吹っ切れることでもあったのかとレポートが楽しみになる。いや、個人的なことだったら書いてもらえないかもしれないけれど。
「……前から気になっていたんですが」
「うん? どうしたの、マキアスくん」
「もしやお二方は、そういう……?」
マキアスくんの問いに一瞬止まり、どうしてそんなことを聞かれるのかと首を傾げかけたところで、ぐい、と横から肩を抱き寄せられる。
「おう、そういうこったな」
「……意外、かも」
「こ、こらっ」
フィーさんの言葉にマキアスくんが慌てるけれど表情には同意の色があるような気がするのは気のせいだろうか。でもエリオットくんとかじゃなくて、わりと何があっても動じないタイプだろうフィーさんから真っ先に言われるほど意外な組み合わせ……なのかな。お似合いだと言ってくれたのはトワとかジョルジュぐらいなのでちょっと思うところがないわけではない。
とはいえ、と最近のクロウにまつわる噂を思い出しながらそっと抱き寄せを解除する。
「まぁクロウって学院内で尊敬しちゃいけない先輩No.1って言われてるみたいだもんね」
「照れるな~」
「照れないで?」
一ヶ月前の中間試験の赤点といい、ここに来てサボりも加速しているらしいし、本当にどうして自分が同じクラスじゃないのかとちょっと思ってしまうほどで。もう少ししっかりして欲しい。……みんなで一緒に卒業したいって言ってくれたのにな。
「さ~て、あとはしっかり神頼みしとかなくちゃな! おあいそ、ここに置いておくぜ」
クロウが立ち上がるので私も素早く会計して、解除していた武装を再度腰につけ動きを確認する。うん、大丈夫。
「そんじゃ、オレらはサンクト地区の大聖堂に行くからよ。お前らもせいぜい頑張りな」
「暑いから水分補給とかはしっかりね」
「え、ええ」
何だか妙に納得のいっていない雰囲気のA班を置いて、私たちは百貨店を後にした。
「そういえば豪華景品って何なの?」
「RF社の最新モデルの導力車」
「換金前提だ……」
「寮生の身で持ってても仕方ねえかんなあ」