[完結]わすれじの 1204年   作:高鹿

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18.5

『トワ、クロウ、みんな……!』

 

ガレリア要塞列車砲奪還の功労者として、《鋼鉄の伯爵》なんていうクソほどにいけすかねえ大仰な名前のついた政府専用────とはどうせ名ばかりだろう鉄血の野郎専用列車にトワと一緒に放り込まれ、トリスタまで送られた時の話だ(正直あんなもんに乗るくらいなら首を掻っ切って死んだ方がマシだとさえ思ったが、まぁ俺はとうに死んでるようなもんだ)。

 

サラから帰る算段を伝えられていたのかオレたちが駅舎を出たところで、セリとジョルジュが出迎えに来てんのが見えた。その瞬間、セリが走り出してトワを抱きしめ、生きててくれてよかった、と震える声で落としたのが今でも耳に残ってる。

 

『クロウも、VII組のみんなも、本当にありがとう』

 

トリスタにいて、ラジオ放送を聞いて、女神に祈るだけしか出来ないことに精神を消耗したんだろう。待つのは辛いことだ。俺もよく知ってる。

そしてそれを引き起こしたのが自分だっていうのも重々承知している話だ。

 

クロスベルでの襲撃がうまくいくとは思っちゃいなかった。

ガレリア要塞での襲撃も、布石のつもりで打ったもんだった。

 

それでも、何かが奇跡的に噛み合えばトワは巻き込まれてそのまま死んでただろう。それを理解した上で俺は最終的な作戦の実行を決めた。大勢の人間の命を奪った。帝国解放戦線の人間だけじゃねえ。クロスベルの警察だの警備隊だのの人間も、ガレリア要塞に詰めていた正規軍も、突き詰めたら俺が命を奪ったことに他ならない。その責任を負うのがリーダーの務めだ。

 

ノルドの監視塔砲撃でも死者は出たと聞いてるが、今回は規模が違う。人間の命に貴賎はないってのが理想論だが、所詮理想でしかないわけで。

ああ、人間一人殺したら殺人者で、一万殺したら英雄だってのは誰の言葉だったか。

 

まぁ、ともかく、英雄だろうがそうじゃなかろうがそんなヤツをあいつらが赦すはずもない。

今日はどいつもこいつも知らねえうちに、決定的に俺たちの道が違えた日だ。

 

分かってる。それがいつか明るみに出るってことを。

でも、今だけは。その時までは。せめてこのぬるま湯に浸かっていたいと思っちまった。想定通りとはいえ、トワが死なずに済んでよかったと、ほっとする自分を肯定してやりたかった。トワを助けてくれてありがとう、と泣きながら嬉しそうにするセリの視線を受け取る立場でいたかった。

 

「……軽蔑でも憎悪でも呪いでもいいから、お前の視界の中に、心ん中に残っていたいと思うなんて、ほんと、なんでこうなっちまったかねえ」

 

お前という世界の先に自分の席はないと分かってて、なおもこの関係を続けるだなんて滑稽にも程がある。それでも、お前を滅茶苦茶にして、お前に滅茶苦茶にされたいって、望んだ俺を、どうか一生赦さないでくれ。

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