詐欺師トレーナーはトレセン学園で信頼を集めて大勢から大金を奪うつもりのようです   作:kinmoru

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詐欺師トレーナー、独白する

 私が最初に嘘をついたのは、私が覚えている限りでは5歳の時だ。

 

 当時の我が家はまだ中流家庭を名乗れるだけの見栄えがあり、それなりの人付き合いがあった。その中の1つに家族ぐるみで仲の良い付き合いをしていた家があり。よくそこの家の子供と遊んでいたのを覚えている。

 5歳というのは世の中が年齢や性別、社会的地位によって分けられる寸前の年齢である。だからこそ当時の私は何不自由なくその家の子どもと遊ぶ事が出来た。その子供はウマ娘だった。

 かけっこや鬼ごっこなどの体力勝負では既に絶対の優劣が存在し、また彼女の親もそうした遊びを禁じていたので私達はもっぱら彼女の家の中にある彼女の部屋で遊ぶ事が多かった。当時はこの自分の部屋というものが大変羨ましく思っていた。5歳児に与えられるスペースというのはリビングの片隅に玩具を広げる事で表現されるものであり、玩具を片付けていても認識される部屋というのに憧れていたのを覚えている。

 遊ぶ内容はままごとや絵本やお絵かきなどが主流で、同年代の男児が行っていたダンゴムシを草の葉で作った船に乗せて川に流す遊びや、蟻の巣に水を流したり掘り起こしたりする遊びとは違う女の子の遊びが気に入っていた。その中でも得に私はおままごとが好きで、毎回気合の入った演技をしていた気がする。自分ではない何かになる喜びをその時から知っていたのだろう。

 

 ある日、今でも覚えているがその日は朝から強い雨が降っており雷鳴が轟いていた。私は雨の中雷の中を傘で歩いてその子の家まで行った。突然の訪問にその子の母親は困ったような顔をしていたが、雨の中を帰すわけにもいかないのでひとまず中には入れてくれた。だが、その母親が私を家に招き入れる事を躊躇っていた理由は別に存在していた。その子の部屋で遊んでいる最中、階下のリビングから激しい声と物音がした。私はそれを世間的な知識で夫婦喧嘩と認識し、彼女は毎日こうだがすぐに仲直りするんだ。と、言った。

 その日はままごとで遊んでいて、内容はプロポーズを模したものだった。ませた事にその子はテレビドラマを覗いて覚えたらしい。当然として私が男役で向こうが彼女役だ。ちょっと待っててね、と言われたので待っていると数分後なんと指輪を持って現れた。当時はそれがなんの石から知らなかったが、後にダイヤモンドと判明する。それを使ってプロポーズを真似て遊んでいた。

 家に戻り靴を脱いで玄関に上がる時、ふと右のポッケに重みを感じた。手を入れて確かめてみるとそれはあの指輪だった。そこで自分の母親にでも、或いは向こうの母親にでも行っていたら違った未来があったのかもしれない。しかし私がしたのは電話を向こうの家にかけ、彼女を呼び出した事だった。私は彼女に言った、指輪を持って帰ってしまったがどうすればいいも。すると彼女は急に声を潜めて青ざめた声で黙ってて、と言った。意味が分からなかったが、続けて『怒られる』という言葉が聞こえて合点がいった。いつも夫婦喧嘩をしている両親の様子を見ていた彼女は勝手に指輪で遊んだ事を られたくなかったのだ。だから私はその言葉通りに黙っておく事にした。向こうがそうしてと言うなら、私は悪くないというのが当時抱いた論理だ。 

 それから昼食を食べて、リビングにおもちゃを広げているとまた電話が鳴った。それは向こうの家の母親からであり、私の母親が受け答えしていた。内容は指輪が無くなった事について。私の母親はやや強い語気で数分程通話をしていた。それから電話を切るとこちらへやって来て、指輪が無くなったそうだけれど知らない? と私に問いた。私は知っていたが、あの子のことを考えて知らないと返事をした。それが、私の記憶にある最古の嘘だ。とても、可愛らしい嘘だと思う。

 

 その後向こうの家は指輪が無くなった事で始まった喧嘩が治らず離婚し、ほどなく引っ越して行った。私は“貰った”指輪の扱いに困ったが、いつか役に立つだろうと引き出しの奥にしまいこんだ。そして、ずっと忘れずに覚えていた。

 高校生のとある夏、私は欲しかった音楽プレーヤーを買うためにその指輪を売った。わざわざ遠くの街の質屋に行ったのを覚えている。そして家でそれを使っていると、母親がそれはどうしたのかと訪ねてきたが、既に噓に慣れていた私は平然とアルバイトと答えた。

 それが、私にとって何度目の噓なのかは覚えていない。が、4桁では収まらないだろう。

 

 なので、私がいつから詐欺師なのかと言えば5歳の頃からであり。本当の意味での詐欺師というのはその高校生の頃からだった。

 

 人は、誰しもが詐欺師の素質を持っている。




これまで毎日投稿させて頂きました本作『詐欺師トレーナー』ですが、これ以上の更新は周囲の危険に繋がるという内容を示唆した大変ありがたいお言葉をダイレクトメッセージで頂きました。私のエゴか、私の周りの安全かを選ぶなら私は後者を取りたいと思います。よって誠に申し訳なく、そして真に名残惜しいですが本作はここで未完とします。またいずれ、危険が去ったならば物語の続きを描くでしょう。

この作品は終わりかもしれませんが、またすぐに新作を書きます。
告知しますと次作の更新は4月16日の午前6時を予定しております。

ここまでご拝読頂きました皆様に感謝を示すと共に、不甲斐ない終わりにお詫び申し上げます。
それでは、また。
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