詐欺師トレーナーはトレセン学園で信頼を集めて大勢から大金を奪うつもりのようです   作:kinmoru

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収まりが悪かったので2話に分けました


詐欺師トレーナー、秋川やよいとデートする

 理事長を休ませる良いアイデアは無いか、そう駿川たづなに言われたのが金曜日の夕方。

 様々な可能性を考慮して立案した作戦をメールで駿川たづなに送信したのが金曜の夜。

 デビュー戦からそれほど時間が経過していない事を理由に土曜日のトレーニングを休む事にし、休養に務めるようサクラバクシンオーに伝えたのがメール送信直後の事。

 駿川たづなから作戦に同意した旨を伝えるメールが届いたのがそれから5分後の事。

 昔仕事の協力をした結婚詐欺師の男にいくつか相談をしてプランを練ったのが同日の11時半。

 

 順に整理していこう。

 

 カフェテリアでマスカルポーネチーズをふんだんに使用したバスクドチーズケーキをテイクアウトしてトレーナー室へ向かっていた私は、その道中に背後から声をかけられた。

 ケーキというのは鮮度と温度が重要であり、貧弱な紙の箱に入れたまま長時間持ち歩くのは菓子への愚弄だ。とはいえその声が駿川たづなであるから無視する事も出来ず、私は満面の作り笑いをしながら振り向いた。

 

「どうか、されましたか?」

「はい。実は鵜海さんにご相談が……」

 

 ご相談、それはケーキの敵だ。この女はそれを理解しているのだろうか。いいやしていない。していたらもっと場を選ぶはずだ。

 ただ、ここで嫌な顔をして後から何か言われるのも困るので私は迅速に対応する事にした。

 

「どうですか? 歩きながらで良ければ」

「聞いてくださるんですか? ありがとうございます。実はですね──」

 

 駿川たづなは歩く前から話し始めた。

 その相談内容というのは、理事長である秋川やよいが働き詰めなので休ませたいという内容だった。秋川やよいは見た目通り、理事長と呼ばれるには似つかわしくない年齢である。ただ、海外に行った母親から理事長の座を引き継いでいるので仕事の量というのは果てしなく多い。それらを助けるのが駿川たづなの仕事でもあるが、結局は休む間もなく働いていた。

 同世代のウマ娘に囲まれながら遥か上の立場として振るまい、同世代と遊ぶ事も出来ず働く姿を駿川たづなは不憫に思ったらしい。

 そこで、休ませる作戦を立案したいらしい。

 

「あの、普通に休んでもらえれば良いのでは?」

「それが……理事長は仮にお休みでも常に生徒さん達の事を考えてしまうのでお休みにならないんです。前にお休みを取ってもらった時も結局そんな感じになってしまいましたので……」

 

 なので理事長を休ませるなら学園から離すしかない。しかし、自身も忙しくそれが出来ない。それで私に白羽の矢が立ったらしい。

 至極どうでも良かった。

 今、私の中にある優先順位はチーズケーキが再優先であり、その次に他の事だ。

 

「因みに……なぜ私なんですか?」

「それがですね、他の方にも声をかけてみたのですが皆さんお忙しいようで……」

 

 つまり、私も断ろうと思えば断れるのだ。それは当然である。凡百のトレーナー達は日夜あくせくとウマ娘のために働いている。私はそれが嫌なので使い勝手の良くて手がかからなそうなサクラバクシンオーを選んだのだ。

 こういう時ばかりはそこらのトレーナーが羨ましい。彼らには私と同様に断る自由がある。しかし私にだけは断れない理由もある。

 私だけが思い描く最良の仕事結果を図式にした時、この頼みごとを断るのは大きな機会損失としかいえず、秋川やよいに近づく絶好だった。

 結局、私は朗らかに承諾した

 また、チーズケーキの事だが普通に食べるぶんには問題無いだろうが私が食すには相応しく無くなってしまったので、近くを通りかかったサクラバクシンオーにあげた。サクラバクシンオーにはこれくらいが似合っている。何も知らずに喜ぶ姿は滑稽であり、まあ優しいんですねなどとほざく駿川たづなもまた滑稽だった。

 それで私は再びカフェテリアからチーズケーキをテイクアウトする事にした。 

 これが夕方の出来事。

 

 トレーナー室でケーキを食べながらトレーナー職の定期義務として報告書を虚偽を織り交ぜつつ作成。その後駿川たづなに秋川やよいを学園から連れ出す手順と向かう場所をインターネットサイトのリンク付きでメール。

同じ部屋にいたサクラバクシンオーに明日は休みにする事を伝えると、彼女はごちそうさまでしたと空の皿をこちらに向けた。私はそれを勝手に脳内で『分かりました』に変換した。

 その後、駿川たづなから了承のメールが届き私は夕食のためにカフェテリアへ向かった。 

 これが夜の出来事。

 

 その深夜、私はとある男に電話した。

 

「──やあ、久しぶりだな」

「その声……前と変わっているがお前なのか?」

「そうだな。喉は二回くらい弄ったからあの時とは違うだろうが。元気にしてるか? S」

「ああ。おかげさまでな、O」

 

 電話の相手は以前、とある仕事で協力した詐欺師のS。主に結婚詐欺を生業としており、私からすれば侮蔑の対象だが今回の場合では価値のある男として使わざるを得ない。

 我々詐欺師はよく顔も声も名前も変わる。だから互いに何か呼び名をつけたりする。このSとOはそれぞれ本名からとった名だ。

 ここで秋川やよいに休暇を与えるだけではなく、より深く近づくにはこの男の持つ技が必要だった。ただこのSという男は金のためだけに結婚詐欺をするのではなく、いつか運命の女性と出会うまで結婚詐欺を繰り返し式などの費用を貯めている歪んだ人間だ。なので、そんなSの持ち出すプランが使えるかどうかは私自身ではんだんしなくてはいけない。詐欺師が最も信頼してはいけない相手が詐欺師なのだから。

 

「それで? 誰とどんなデートをしたいんだ?」

「場所は東京、江戸川区にある水族館を併設した公園施設。相手の素性は明かせない」

「江戸川区、あの水族館か? なぜそんなところへ行く? 学生デートでもするつもりなのか?」

「その通り。相手が“学生”だからだ」

 

 電話口の向こうから息を漏らす笑いが聞こえる。ロリコン扱いするならすればいい。仕事相手の年齢も容姿も関係ない。私が関心を持つのは資産と利用価値だけだ。

 

「そこまで考えてあるならプランは決まっているだろ? いや、調べれば個人ブログとかでいくらでも出てくるぞ。なにせ学生に人気だからな」

「なんだ、池袋の水族館に行って夜は高級フレンチとかでもないと思いつかないのか?」

「いーや、俺はお前と違って相手の金回りを気にしない。それが運命の相手かもしれないからな。ただ、違っていたら金を騙しとるだけさ」

 

 反吐が出るような屑。こんな状況でもなければ相談なんてしたくない男だ。

 

「──おい、聞いているのか? とにかく、俺は安いデートプランにも精通している。任せろ、ただし一度きり口頭でしか伝えないから」

「ああ、頼んだ」

 

 私はSの言う魅力あるプランを聞きながら目の前のパソコンを叩いて一日の行動計画を立てていった。勿論、全ての提案は受け入れなかった。何をどう考えても葛西のラブホテルに連れ込むプランは実行出来る訳が無かった。

 それのもう一つ、私はSの背後の声が気になった。この時間にしては何やら騒がしいのだ。

 

「お前、今どこにいるんだ?」

「ん? ああ、今回も運命の相手に出会えなかったから貰った授業料で飲み会してるんだよ。まあ安心しなって、お前の事は話さないし誰もお前と面識なんてないから」

 

 貰った、授業料──奪った、結婚資金の間違いだろう。私は眠気と疲労で思考から言葉が滑り落ちそうになったので電話を切った。

 気分が悪い。

 明日の事もある。早くベッドに潜りたかった。

 と、以上が瞼を閉じる前にした回想である。

 

 

 

 翌朝、府中から中央線と京葉線を使って潮風のする駅前に降り立った私は深く深呼吸をした。

 何か相応しい格好をしたかったが急な話だったのでスーツしか無く、クリーニングしたての清潔な一着で茶を濁す。

 そして学園から車で送り届けられる重要物、または仕事相手の秋川やよいを待っていると青空の下にいつもの幼い声が聞こえてきた。

 

「──困惑! ここは幕張ではない!」

 

 さあ鵜海晴希、デートを始めよう。

 

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終了時点、鵜海晴希への主要な登場人物からの信頼度(%表示)

 

秋川やよい60% 前話よりの変位なし

三ノ宮優歩70% 前話よりの変位なし

乙名史悦子50% 前話よりの変位なし

サクラバクシンオー97% 前話より2ポイント↑

ライスシャワー?% 信頼せざるを得なくなったゴールドシップ0%

 

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オッス! オラゴルシ! 愛とは何か? って乙女座星人に聞かれたからよ、ゴルシちゃんなんて答えたと思う? あ? こんにゃく? おいおい少しは真面目に考えろよ。正解はプラスネジ! 愛とはな、プラスネジなんだよ。回して留める、回して外す! 分からない? キャハ♡ そんな事言う悪い子のお耳を♡ マイナスドライバーでほじっちゃうぞ♡ というわけで次回!

 

『詐欺師トレーナー、秋川やよいとデートする②』

 

絶対読んでくれよな!

 

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次回の更新は4月8日午前8時頃を予定しております
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