はめつでふらぐ   作:霧里

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機械仕掛けの龍

 

 

廃墟。そう、何もかもが終わった場所

その施設も建物も、そうであったと示すばかりで、ここには何も残っては居なかった

 

「ルインさま、ルインさま。コレは何かしら?」

「ああ、サイバードラゴンの残骸だね」

「ドラゴン? おとぎ話に出てくるようなの?」

「よく知っているね。ただし、これは機械仕掛けだが」

「機械の? ゼンマイでも巻けば動くのかしら」

「さてね? 探してごらんよ?」

 

本気とも冗談ともつかない しずくの言葉

ルインが苦笑している間にも、好奇心のままに 少女は指を伸ばす

 

「ダメね…びくともしないわ」

 

無機質な冷たさと、触れた指先に残る茶色の錆

突いてみても、叩いてみても、朽ちた機龍はうんともすんとも言わず、ただ残骸を晒していた

 

「どうかな。しずく、これで触れてごらん?」

「それは? カード? なにも…描かれてはいないけれど」

 

言われるままに、しずくは受け取ったカードを朽ちた機龍に触れさせる

しかし、変わらない様子に少女の首は傾いたまま「ねぇ?」と口が開きかけた時だった

 

「へ? あ、なんか出てきた、これは…この子と同じ? へぇ、前はこんなに綺麗だったのね」

 

浮かび上がった絵柄に目を丸くして

ただそれだけの事に「すごい、すごい」と少女は全身で喜びを表していた

 

「ぬぅ…」

 

喜ぶ しずくとは対象的に、デミスは変わらない表情の向こうで息を漏らす

 

「デュエリスト…素質はあるみたいだね」

「で、あろうよ。でなくば…」

「喜ぶべきか、嘆くべきか」

「押し付けるものでもあるまい」

「それはそう」

 

罪悪感か、湧いてしまった情に名前を付けるなら何になるのだろうか

絆されているのを自覚しながらも、そう悪い気も起きず

益体もない考えを打ち切ったルインの向こう側で、しずくは一人廃墟の奥へと渡っていった

 

「しずく。勝手に遠くに行くものではないよ?」

「分かっているわ、ルインさま。すぐそこなんだから、意地悪を言わないで」

「意地悪を言っているわけでは…。そんな所に何があるっていうんだい?」

 

瓦礫の中を踏み分けながら、かざしたサイバードラゴンのカードに導かれるように足を進めていく

そのまま、何かの設備の上で足を止めると、今度はルインからもらった空のカードを掲げてみせた

 

「ルインさま、デミスさま。見てて、見てて? 魔法カード発動「パワー・ボンド」!」

「なっ!」「ぬっ!」

 

その瞬間、少女の背後から朽ち果てていたはずのサイバードラゴンが動き出した

1体、2体、3体と、再起動を始め、動力から火花を散らしながらも出力を上げていく

赤熱する装甲は、浮いた錆を溶かし尽くし、3体のサイバードラゴンのプログラムが切り替わる

 

変形、合体、融合…

 

放出される膨大なエネルギーは光となり。その輝きの中から白銀の影が姿を表す

 

「うわぁ…すご…」

 

感嘆と漏れた言葉は一雫。その力強い輝きに少女は目を奪われていた

だが、慌てたのはデミスとルインの方だった

収まりのつかない力の本流が暴走寸前にまで差し掛かり、周囲の瓦礫さえも吹き飛ばしていく

もちろん、少女の体でそんなものに耐えられる訳もなく

安々と吹き飛ばされると、すってんころりんと何かの角に頭を打つ前にルインに庇われた

 

「ふんっ!」

 

光を遮るように、間に入ったデミスの戦斧を振るわれる

そして、終焉の力を炸裂させると、サイバー・ドラゴンがまた元のガラクタへと返っていった

 

「怪我はないかい、しずく?」

「え、あ…はい。ありません、ルインさま…。でも、ルインさま、お顔に傷が…」

「良いんだよ。このくらいは構わない、が…」

「娘よ。そのカードは与ろう」

 

返事も待たず、デミスの太い指先は少女の小さな手からカードを奪い去っていく

 

「あ、デミスさま…」

「…」

 

取り戻そうと伸ばした少女の小さな手

しかしそれは、何も言わないデミスの視線に射すくめられてしまう

 

「いいえ。何でもありません、ごめんなさい」

「良い。些事である…」

 

とは言ったものの、少女の目には涙が浮かび

残ったサイバー・ドラゴンを握る指先は微かに震えていた

 

「ちょっと、デミス。何も取ることはないだろう?」

「玩具は選ぶべきだ。火遊びには早すぎる」

「過保護かい?」

「ぬぅ…。貴様に言われるか、が…」

 

デミスとて、その顔に思う所はある

泣き顔なんて似合わない。陳腐な言葉ではあるが、それは正しい

やがて、観念したかのように しずくに向けていた背中を裏返すと

 

「娘よ。コレを…」

「デミスさま? これ…は?」

「機械じかけの龍。ソレよりは幾らか扱いやすかろう」

「…どら、いとろん? ふぁ、ふぁ…ふぁふにーる。あ、動いた…」

 

しずくの呟きと同時に天空に刺した影は、母艦とも要塞とも呼べる巨大な龍だった

 

「うわぁ…おっきい」

 

高く高く、空を見上げ、背筋が曲がるほどにしずくは それに見入っていた

 

「意外と、なんでも良いんだな?」

「力に惹かれるは幼子の性質よ」

「それはそう…。まあ、デミスにしては気が利く。アレらを使うなら私達も手伝ってやれる」

「扱えればの話だが、な」

「まぁ、そこは…」

 

彼女の努力次第だろうと

ギリシャ文字を頭に浮かべ、こんがらがっている少女を眺めながらルインは微笑んでいた

 

 




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