メインストーリーは『星のカービィ スーパーデラックス』より、
『銀河に願いを』です!
これまでのあらすじ(もしあったら)
ナイトメアが倒れてから二年。
魔獣がいなくなり平和の戻った銀河だったが……
ナイトメア大要塞と共に消滅したはずのカスタマーサービスと、彼を拾った謎の企業Dark Matter Industry(ダークマター・インダストリー)のロゴがモニターに映し出される。
企業の存在を秘匿する代わりに、二年間魔獣デリバリー無料という言葉に釣られて即契約してしまったデデデ大王。
平和なはずのプププランドと銀河に強大な闇の魔の手が迫っていた……!
ナイトメアも恐れた暗黒の一族ダークマターの目的とは……?
がんばれカービィ! 負けるなカービィ!
少し話せるようになりました!
(けど中身は相変わらずである)
「いてっ!?」
ズサーッとピエロのような帽子を被った少年が大地に転がる。その体はボロボロで、アザだらけだった。
『落ちこぼれのマルク! 魔法の使えない落ちこぼれー!』
『マジカル族の落ちこぼれ! 手品しかできない落ちこぼれー!』
彼の名はマルク。
彼は魔法が得意なマジカル族。
しかし彼は魔法の使えない『落ちこぼれ』だった。
「お、落ちこぼれじゃないのサ!! ぼ、ボクはすごいんだ!!」
マルクは同い年のいじめっ子たちに魔法を見せようとするが、できるのは簡単な手品だけ。
『あはははははっ!!』
マルクは笑われる。
「笑うな! ボクを笑うなぁ!!」
マルクはみんなの笑いもの。
『まぁだマルクは魔法を使えないの?』
『相変わらずダメなやつだなぁ』
『はずかしい! 落ちこぼれ!』
『落ちこぼれ! 落ちこぼれ! 落ちこぼれ!!』
「────っ、うぅっ!!」
大人も子供も、みんなマルクをバカにする。
赤ん坊でも魔法を使えるマジカル族の中でも、マルクはただ一人、魔法を使えなかったのだ。
「みんなみんなボクをバカにしやがってサ!! ちくしょう、ちょきしょう……!!」
マルクは広い星でただ一人だった。
一人で泣いていた。
「絶対に許さないサ……ボクをバカにした奴らをボクがバカにしてやる! 大魔法使いになって、偉くなって……いつかは……」
みんなをボクが見下し笑ってやる。
そう星の見えない暗い空を睨んでいると。
『────かわいそうに。こんな広い星で、こんな沢山の人々のなかで、君はたった一人』
「!?」
どこからか声が聞こえる。
暗い空が突然マルクへと語りかけてくる。
「だ、誰なのサ!?」
『怖がることはない────君にいいことを教えてあげよう』
声はマルクに話し続ける。
話の内容を聞いて、マルクは目を輝かせた。
「ほ、ほんとうなのサ……? それならボクは……」
『そう。キミは誰よりも偉くなれる。誰もキミをバカになどできはしないさ』
マルクの瞳は揺れる。
『この試練を乗り越え、キミは誰も成し得なかった栄光を手にするんだ』
声は誰より優しかった。
パパよりもママよりも温かく、思いやりのある声。
マルクが心から欲していたものを声は最高のタイミングで与えてくれた。
かわいそうな少年マルクには、その声がまるでカミサマのように、日々泣いているマルクに差し伸べられた天の声に思えたのだ。
「けど……どうやって……お前の話が本当なら。それはとっても難しいのサ……」
『そうだね。過去にこれを成し遂げた人は今まで誰もいない。条件も厳しいものだからね』
「じゃあ……!!」
『諦めるのは早いよ、マルク。それに今しかない。これらの全ての条件は全宇宙で今この瞬間にしか揃っていない。時間はないんだ、マルク』
────この瞬間を逃せば、キミが生きている間にこの奇跡的なチャンスは無くなるよ。
そう声は告げた。
けどボクじゃ不可能な話じゃないか、とマルクの顔が悲しみに覆われる。
『かわいいマルク。これは試練だ。私からキミへの試練なのだ』
「……」
『だが試練だけを与えてはあまりにもかわいそうだ。だから────キミに力と情報を与えよう』
「!?」
マルクの身体を宇宙の闇が覆っていく。
「あ、あ、」
最初は苦しがっていたマルクだが、身体を包む闇が次第に心地よく、身体に馴染む。次第に口元が緩み、笑みがこぼれ出して────
「あ……はは、ははははっ!! おーっほっほっほっ!! すごい! すごいのサ!! これさえ、これさえあれば!!」
────過去に味わったことのない愉快な気分。
マルクは高揚した。
『キミの潜在能力を解放した。この力をもって、ポップスターという星に行きなさい』
「あぁ、あぁぁぁ……!! ありがとうカミサマ!! そこにいるんだね! ボクの願いを叶えてくれる人が!!」
『あぁそうともさ。……そして見つけるんだ。────「星のカービィ」を』
嬉々として翼を広げるマルクは気づかなかった。
『星のカービィ』の名を出した時、
カミサマと呼ばれた声の主が、赤く、不気味な笑みを浮かべていたことに。
‘****’*
【おねがい! ギャラクティックノヴァ! 前編】
*******
「あははっ!」
緑の生い茂るポップスターで一番平和な街、ププビレッジ。
「ブンー!! パスパス〜!」
「へへっ、オッケー!」
ブンと街の子供たちはサッカーをして遊んでいた。
「ブン〜!! ぼくにもパス〜!」
「いやカービィは敵チームだろ!?」
もちろんカービィも一緒だ。
最近はカービィも成長して言葉を学び始めていた。
「そうだった……てへ」
「もうカービィったら。……のんびり屋なところは相変わらずね」
勉強熱心なフームのおかげだ。
彼女はサッカーに参加せず、木の麓で本を読んでいた。
「チャンス! シュ──ト!!」
『あっ!?』
ブンがゴールキーパーの隙を逃さずシュートを決める。
「へへーん! これなら間に合わないだろ!」
ブンの蹴ったボールがまっすぐゴールへと向かっていく。
「────おっと!!」
『!?』
しかし、突如割り込んだ何者かにボールは止められてしまう。
ブンや子供たちだけでなく、フームもこれには驚いた。
「ごめんごめん、つい面白そうだったからサ。参加させてもらってもいいサ?」
ボールを器用にもお手玉のように操る少年に子供たちは見入ってしまう。
「よっ、ほっ、せっ! ヘイヘイヘーイ!」
「すげぇ……」
「ポヨォ……」
「すごい……誰なのかしら、あの子」
無言はYesと受け取るのサ、と少年は笑って言う。
「負けてる方のチームはどっちサ?」
少年はブンに尋ねる。
「えっとカービィの……この」
「はーい! ぼく、ぼくー!」
カービィは手を上げてアピールする。
「ピンク色の子のチームね。ボクはマルク。よろしくなのサ、カービィ!」
マルクはカービィに笑みを向ける。
カービィは両手を振ってそれに応える。
「足は使ってないからセーフでしょ? じゃあ、いくのサ!」
『!!』
全員身構え、ブンのチームは謎の少年マルクの持つボールを捉えようとするが、
「そこだ!!」
「ほっ」
「隙アリだぜ!!」
「隙なんてないのサ!」
マルクのボール捌きに翻弄され、あっという間にゴール近くにボールを近づけられてしまう。
「すごい……ブンが全く歯が立たないわ」
フームが絶句してると、隣のトッコリが口を開く。
「へー、けっこうやるじゃん、あのマルクってガキ」
「トッコリ? あなたいつからいたの?」
「ずっといたよ!! カービィがボールにされてるか見たくて笑いにきたんだよ」
「サイテー」
「……いやすげーな。みんな手も足もでねぇじゃねーか。大道芸士かなんかかーあいつ? ピエロみてぇなカッコしてるし」
今にもマルクがシュートしようとしたその時だ。
「絶対にとおさねぇぞ!」
村の子供がキーパーの意地を見せようと壁としてマルクに立ちはだかった時、
「ほい、カービィ、パス」
「なっ!?」
マルクはなんてことないという顔で横にいたカービィにボールをパス。
「ありがとう、マルク! えいっ!」
『あっ!!』
マルクに目がいきすぎて、カービィはノーマーク。
仕方がない。だってカービィはシュートを決めるより、相手にボールにされてシュート
「ナイスシュート! すごいのサ、カービィ!」
「マルクこそ! すごかった!!」
二人は手を繋いで喜んで飛び跳ねる。
「やった! カービィがシュートした!」
『すげー!!』
フームやブンたちも二人を称賛し集まってくる。
******
「へぇー、マルクはマジカル星ってところからやって来たんだな」
「うん。ポップスターの近くにある星なのサ」
「違う星から!? すげー!!」
マジカル族は魔法使いの星。
マルクは放浪の魔法使いの少年で、修行のためにポップスターにやって来たのだとか。
「一人で修行かぁ……偉いのね」
フームはマルクに感心したように笑みを浮かべる。
一人で知らない場所へ行くなんて勇気がいりそうだからだ。
「まぁね。修行っていっても辛いことばかりじゃないサ。色んな場所を巡って色んな景色を見るのも楽しいのサ」
マルクは穏やかに微笑む。
「突然一人で現れるって、まるでカービィみたいだね〜!」
子供の一人が思い出したように言う。
そういえばカービィも一人で宇宙船に乗ってきたんだ、とフームは出会った時のことを思い出す。
「ぽよ? なぁに、フーム?」
「いいえ。わたしたちとカービィが出会ったばかりのことを思い出してたの」
「そっかぁ」
カービィは呑気にリンゴを食べている。
「マルクも食べる? ウィスピーウッズがくれたんだよ! よかったら一緒に食べよう、おいしいよ!」
「い、いいの? じゃあ……」
おそるおそるマルクはカービィからリンゴを受け取る。
「!! おいしい……」
「ほんと!? じゃあ、ぼくの半分あげる!」
「えっ……いいよ。それはカービィが食べなよ。キミの分じゃないか」
「ぼくはいつでも食べれるから! どうぞ!」
カービィは優しいな、とフームは笑った。
「マルクさん。カービィもこう言ってるんだし、受け取ったら?」
「カービィは食いしん坊だから、リンゴ半分くらいあろうがなかろうが関係ねーよ!」
ブンの一言でみんなが爆笑する。
「マルクでいいよ。ありがとう、カービィ。じゃあ……」
「────ワシがもらうゾーイ!! どはははっ!」
「ゲースッ!!」
突如横から車が現れ、カービィのリンゴが掠め取られてしまう。
「デデデ!!」
「何してんだよ! それはカービィがマルクにあげたリンゴだぞ!!」
フームとブンが詰め寄るが、デデデとエスカルゴンは意地悪な笑みをやめない。
「どはははっ!! カービィのものはワシのもの! ワシのものはワシのものゾイ!」
「特権階級の力でゲース! なははは!」
デデデはカービィから掠め取ったリンゴをその場でむしゃむしゃと乱暴に食べる。
「デデデ!! やめてよ!! それはマルクのリンゴだぞ!」
「……カービィ」
元気のないマルクを見て、カービィがむっとデデデの前に出る。
「もう遅いゾーイ! はーっはっはっは!!」
「さらばでゲース!」
『デデデ!!』
ブンとフームが近づこうとするが、その前にデデデの車が反転。
「これでも喰らうゾイ!!」
『うわっ!?』
高速回転するタイヤが土煙を撒き散らす。
視界の遮られたブンたちを笑いながら、デデデたちは笑いながら逃げていってしまう。
「あのやろー……!」
ブンは悔しそうに地団駄を踏む。
「こほっ、こほっ、さっきのは……?」
「────っ。デデデよ。うちのパパの上司で、いつもカービィに意地悪をするの」
咳き込むマルクに目をこすりながらフームは告げる。
「ぽよ……マルクのリンゴ……」
「カービィ……大丈夫よ。きっとウィスピーならまたリンゴを分けてくれるはずよ」
「そうだぜ。最近ウィスピーさん、優しいからきっともう一つくらい……」
マルクのために落ち込むカービィを愛おしく思いながらブンとフームは慰める。
「カービィ。ボクのために怒ってくれてありがとうなのサ」
「マルク……」
「あと、リンゴ……美味しいのサ! ありがとうなのサ!」
「ぽぉよ!?」
『!?』
三人は驚く。なんと、取られたはずのリンゴがマルクによって美味しくいただかれている最中だったからだ。
「マルク……あなた……!?」
「どうしてリンゴがあるんだよ!?」
「ぽぉよ!?」
「へへ……デデデには代わりに別のリンゴをくれてやったのサ!」
******
その頃、デデデ城。
「────ぐぉぉおおおおおおっ!? 腹が!! 腹が痛いゾーイ!!!」
「陛下ぁぁぁ!!」
デデデは腹を鳴らしながら床でゴロゴロ転がっていた。その顔は真っ青だ。
「どうやら……ひどく傷んだものを食べたようですね……何を食べたんですか?」
バンダナを巻いたワドルディが焦るエスカルゴンに告げる。
思い当たる節がありすぎる、とエスカルゴン。
「ば、バンダナワドルディ!! すぐにヤブイを呼ぶでゲス!! 下剤も買ってくるようにワドルドゥ隊長に言うでゲス!!」
寄生虫がいたらシャレにならんでゲス、とエスカルゴンは付け加える。
「寄生虫!?」
デデデは悲鳴をあげる。
「は、はいただいま!!」
「お、おのれぇぇカービィぃぃ!! いたたたたた!! 痛い────はぁぁぁぁぁぁ!?」
「うわ、ちょ、陛下っ!? トイレ!! 早くトイレに行くでゲス!! ぎゃぁぁぁもおおお!!!」
拾ったものなんて食べちゃダメでしょうに、と呆れながらヤブイを電話で呼ぶバンダナワドルディであった。
******
フームたち四人はデデデの様子を覗き見していた。
「あーぁ……もう」
フームは呆れて額を手で抑える。
「やるじゃん、マルク!! 見ろよデデデの顔!」
「おーっほっほ……盗人に情けは不要なのサ。さすがに寄生虫は入れてないけど」
「ぽよ……?」
何が起きてるか分からないのはカービィだけだ。
「お腹すいた! カワサキの店に行ってくるね!」
「さっき食べたばかりじゃないか!!」
「カービィ……ったら」
だってお腹すいちゃったんだもん、とカービィは呆れるブンたちを説得する。
「カワサキの店?」
「うん! レストランカワサキ! 美味しいんだよ!」
「へーえ、ボクも行っていい?」
あそこを美味しいと思ってるのはカービィだけだ……とブンとフームは心の中で思った。
‘****
「まっっっっっず……」
マルクはカービィについて来たことを後悔した。
「あの……店主さん。いったいどうやったらこうなるのサ……?」
「あははっ、いやーがんばってはいるんだけどねー☆」
「……自覚あるならもっとがんばれよサ。街の飲食店業独占してるからって浮かれるなサ……」
マルクは目をつむる。
「ぜったいにこの店、他のレストランができたら潰れるサ……」
「うまぁい!」
そんなマルクを気にせずに食べてるのはカービィのみ。
「そしてカービィの舌はどうなっているのサ……?」
「私たちにも分からないわ……」
「カービィの味覚については永遠の謎だな」
マルクはブンとフームに尋ねるがしっかりとした答えは返ってこなかった。
「ぽよ? マルクは食べないの?」
「ぼ、ボクの分をあげるのサ。ボクはさっきのリンゴでお腹いっぱいなのサ!」
「ありがとう! マルクはやさしいね!」
「……」
マルクは無言で器をカービィに差し出す。
「ぼくたち友達だね!」
カービィに思わぬ言葉を言われ、怯むマルク。
「……友だち?」
マルクは笑顔のまま。
けど、まるで何を言われたのか、分からぬような表情をする。
「そうだぜ、マルク」
「一緒に遊んで、楽しい時間を過ごしたのよ。私たちは友達よ」
「ぽよ!」
「……」
カービィから差し出された手に戸惑うマルク。
そしてしばらくしたのち、
「そうだね、ボクたちは友達サ」
マルクはカービィと握手をした。
その後、人知れずその手をマルクはおしぼりで拭った。
*****
カービィたちとマルクは一日中遊んだ。
そしてとうとう日が暮れて夕方になった。
「マルクはどこに泊まるんだ?」
「私たちの家に来ない? 歓迎するわ」
「いや、姉ちゃん。デデデのやつがマルクの顔を覚えてないとも限らないだろ?」
「あっ、そうだった……」
悩むフームにカービィが声をかける。
「じゃあフーム! ぼくの家にマルクを泊めるのってどうかな!?」
「えっ」
マルクはカービィに驚く。
だって一日少し遊んだ相手を家にあげるなんて、考えもつかなかったからだ。
フームはデデデ城住まいで警護がいるだろうが、カービィはそうではないだろう。
「そうね。カービィなら安心だわ」
「マルク、こう見えてもカービィはあのナイトメアを倒した星の戦士なんだ!」
マルクは驚いた表情を見せる。
「あの……ナイトメアを? あんな恐ろしい魔獣たちをキミが追い払ったのかサ?」
「魔獣どころか、親玉も倒したんだ!!」
「今の宇宙が平和なのも、カービィのおかげなのよ」
自慢げに話すブンやフームにカービィは顔を赤くする。照れているようだ。
「キミが……あの『星のカービィ』!! 聞いたことがある名前と思ったら……キミが! 会えてとても光栄なのサ!!」
マルクは興奮してカービィの両手を握る。
「そ、そんなに興奮することか?」
「当たり前サ!! マジカル族はずっとナイトメアの魔獣に苦しめられて来たんだサ! けど最近はずっと魔獣が現れなくなって……! カービィはボクらマジカル族の英雄なのさ!!」
「えへへ……」
「カービィ、あなたのしたことは宇宙中の人を幸せにしたのよ」
「その通りサ!!」
マルクはカービィの家に泊まることになった。
カービィの家に訪れたマルクは一緒に本を読んだり、美味しい夕食を食べて仲良く過ごした。
「おやすみ、マルク……」
「おやすみ。カービィ」
灯りを消すと、カービィはすぐに寝息を立てて眠りについてしまった。
────こんなマヌケにナイトメアが倒されたのかサ? 案外ナイトメアもマヌケなのさ。ふふふ……。
マルクは一人、カービィの無防備な背中を見つめて邪悪な笑みを浮かべていた。
******
「なぬ!? 休業だと!?」
『────はい。本日宇宙ゴールデンウィークにつき、
「知らん!! 我がプププランドにそんな自堕落な連休はないゾイ!!」
「週七日休みなしの平常運転でゲス!!」
『そう言われましても困ります。私も引き抜かれてからあまり日が経っていないので……では、陛下。ごきげんよう』
「あっ、待てカスタマ!! 逃げる気か!!」
プツンと通信が切れる。
向こう側からの一方的な通信切断である。
「くそう、カスタマの奴め……一方的に切りおったゾイ」
「まぁ連休じゃ仕方がないでゲスな。組織を移って、あいつも大変なんでゲしょう」
ホーリーナイトメア社がなくなってしばらくして別会社Dark Matter Industryが魔獣販売サービスを再開。
「いつもならケチなカスタマーが上司のダークマターに取り次いでこっちの都合が良い方向にことを動かせたゾイ」
「お決まりの店長を呼んで来ーい、でなんとかできたでゲスな」
デデデは暇つぶしには困らなくなったが……。
「結構制約が多いゾイ」
「魔獣販売が二年間無料になるんでゲスから、それくらいは我慢するでゲスよ」
「くそう! 早く魔獣を買ってカービィに仕返ししたいゾイ!!」
******
暗黒の星、ファイナルスター。
その中心部近くの機械要塞。
デデデ城のモニターに写る放送室。
「デデデ陛下にはああ言いましたが……よろしいのでしょうか? ダークマター様」
カスタマーサービスが振り返った先にいるのは、一つ目の暗黒剣士。
「構わん。ゼロ様からの指示だ。進行中の作戦がうまくいけば、カービィもろともポップスターをいただくことができる……とのことだ」
「あぁ……なるほど。では余計な手出しは無用と」
「そういうことだ。私はゼロ様に報告に行く。貴様はそこで待機していろ」
「かしこまいりました。拾ってくださった感謝をお伝えください」
ダークマターと呼ばれた一つ目の剣士は浮遊し、ファイナルスターの中心部へと飛んでいく。
暗黒の星の中心部。
暗き闇の中には静寂のみ。
機械の駆動音も、生き物の呼吸音も何も無い。
無の世界。光なき漆黒の闇の世界。
そこに白き闇の王は鎮座していた。
普段は漆黒の闇と赤き瞳だけ。
その真のお姿を見ることができるのは、一族の中でも選ばれし者のみなのだ。
「────ゼロ様。ご指示通り、カスタマめに魔獣販売を中断させました」
「……そうか」
赤い瞳がダークマターの姿を捉える。
ゼロは悪の親玉とは思えぬほどの穏やかな声で言葉を紡ぐ。
「では作戦に邪魔は入らないということでいいかな?」
「はっ! リップルスター、ホロビタスター並びに他の星の暗黒化も滞りなく進んでおります」
「当然だな。我らダークマター一族がその気になれば、全惑星をあっという間に我らの手中にできるのだから」
「我らを苦しめたギャラクティックナイトもおりませぬ故、この後の侵略も容易に……」
「────その名前を。私の前であまり出さないほうがいいぞ、ダークマター」
失言をお許しください、とダークマターは頭を下げる。
「我々の最終目的はナイトメアのような銀河征服ではない。侵略はあくまでも通過点に過ぎない」
「はっ、心得ております」
ゼロたちの眼下には黒雲に覆われた妖精の星、リップルスターが映る。
「我らが母星ファイナルスターの再生も間も無く完了する。リップルスターと他の星々の住民には悪いけど────彼らには我らのために生け贄となってもらおう」
そしてゼロは眼前に映るポップスターを睨む。
「忌々しい星の戦士。私の目的のためには君にはどうしても消えてもらわなくてはならないんだ」
ゼロは放った刺客のもたらす惨劇に心を躍らせる。
その声は優しくはあったが、冷たく、とても恐ろしい。底知れぬ闇。
「ナイトメアを倒した君だけだ。君だけはどうしても最後に我ら一族の邪魔になるだろう」
ダークマターは自らの主の抱く怨讐の念に心底震え上がった。
「それも惨たらしく、どこまでも救いようが無い絶望の中で……。君には消えてもらわなくてはな」
ポップスターを睨むゼロの瞳は、復讐の炎で満ちていた。
「『星のカービィ』。ナイトメアが作った最強の魔獣、最初にして最強の星の戦士……ギャラクティックナイトの末裔よ」
アニメ二期でありそうな設定
ダークマター一族
闇の王、ゼロを首魁とする暗黒の一族。
ナイトメアよりもはるか昔から存在する宇宙の闇そのもの。
生き物の欲望、怒り、悲しみといった心の闇に寄生し数を増やす生態を持つ。
寄生された宿主は心の闇や欲望が増大する代わりに強大な闇の力を得ることができる。その宿主の中でも強力な個体は、星の支配者として君臨し星を闇で覆う。
このプロセスを幾度も繰り返し、過去に数え切れない星々を暗黒に包み滅ぼしている。
悪夢の存在そのものであるナイトメアは無数の魔獣を生み出し、銀河中に悲しみと怒りを撒き散らしていた為、相性が良かった。
故にナイトメアとダークマター一族は不可侵協定を結んでいた。
最強の星の戦士ギャラクティックナイトにより、ダークマター一族の母星ごとゼロ以外のダークマター一族は全滅。
ナイトメアとダークマター一族の共同戦線によりギャラクティックナイトは倒れるが、深手を負ったゼロは数百年の眠りにつく。
ナイトメアが倒れ、カービィが言葉を話すだけの知恵を蓄えた後。
機を見計らったゼロは傷を癒やし活動を再開。
過去に滅ぼされた同胞たちを復活させた。
そしてDark Matter Industry(ダークマター・インダストリー)という名で再び歴史の表舞台へと姿を現したのだ。
一族の復興と、一族を滅ぼそうとした宇宙全ての生命体への復讐を胸に秘めて……!
キャッチフレーズは、
『願望、欲望、野望。全ての望み、叶えます。
Dark Matter Industry(ダークマター・インダストリー)
サービスのご利用をご内密にしてくださった貴方に、魔獣デリバリー二年間無料!』
ナイトメア残党軍に見せるため、カモフラージュ用としてカスタマーサービスを営業窓口として採用している。
マルク様
今回の被害者。けど遅かれ早かれ闇堕ちは確定。