ワリクズ 気まぐれ投稿 サイドストーリー 作:名無しのクズ
「暇だなァ」
オレの口からそンな言葉が出たっつー事実にオレはオレ自身で驚いた。
これまでそンなことはなかった。
周囲に誰かがいても身近には誰もいない。
それがオレの当然だったはずだ。
なのに口をついて出ちまったのは孤独の退屈で。
「……はッ、ンなワケねェよ」
ふと脳裏を過ぎってしまった思考を振り払う。
たとえモノが違ったとしてもオレがあンな脳に口がついたみたいな直球バカに対して実験体以上の感情を割くなンてのはありえねェ。
いくら
近くて遠い記憶。
それは過去であり、過去ではない。
朧気で、けれどハッキリと思い出すことのできる思い出。
少し前から呪いのように脳に焼き付いて離れない。
自分が自分ではなくなり、けれどそこにあるのは確かに自分であるという得体の知れた得体の知れなさ。
「ちッ……クソがよォ……」
今日もいつものように記憶の海へと身を投げる。
それは果たして濁流に呑まれるのか、それともいまだ見えぬ新天地へと身を流すのか。
結末は彼女すらわからない。
それは誰にもわからない。
「あのバカ女はなンであそこまですンなり受け入れられたンだ? バカだからか?」
自分と同じであるはずなのに、自分とは異なる今に立っている女の姿を思い浮かべて忌々し気に舌打ちをする。
あンなヤロォのことなンぞどうでもいい……どうでもいいはずなのにオレはアイツを無視できねぇ。
オレ以外のオレが動きやがる。
くそッ、忌々しい。
ギリリと苦虫を噛み潰したような表情で紙に文字と数字を書き殴る。
その形は乱雑で、いつもよりも速い。
「あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ッ!! イライラする!!」
彼女は長い髪を掻き乱しながら、それでも理性の強さでペンを奔らせる手は止めない。
冷静さを彼女に欠かせるその要因は問題の中心人物である一人の男と、かつて一番を言い争った女。
はっきり言ってしまえば彼女はそれを無視したかったのだが、無視をしきれず、逃げるように問題を遠くへ送った。
このまま何もしなければ万が一の場合は自分は後悔し、忌々しい女にバカにされるのが目に見えている。
だから自分の中でどうにかして答えが出せるまでの時間稼ぎをしようとして、何とか一ヶ月の時間を勝ち取った。
そォだ、アイツは今オレよりも我慢ならンはず。
……いい気味だなァ。
いくら今は関係ねェとはいえ記憶にはちゃンとあるンだ、散々バカにした分苦しみやがれェ。
「フフフ……フッ、フフッ」
彼女は嫌いな女の辛そうな表情を想像して意地の悪い良い笑みを浮かべていた。
「けどなァ、一ヶ月会えねェのはァ…………オレは一体何を考えてんだよォッ!」
ふと湧いて出た思考に彼女は思わず叫ぶ。
柄にもなく叫んでしまった彼女は冷静になるように自分に言い聞かせた。
あの辺が今の時期どうなってるかは知らねェし……他ンところに行かせりゃ良かったかねェ?
つっても西に向かわせりゃ面倒な奴がいるはずだからなァ。
北は北でメンドクセェし、南はすることねェしなァ……。
やっぱりあの街が一番合ってるか……。
あそこもあそこで面倒なのがいるが他に比べりゃ幾分かマシだろォし。
流石のアイツでもピンポイントで遭遇なンて奇跡、起こしゃしねェだろォしな。
「……ほンと、メンドクセェヤロォだ」
そう呟くと彼女は癖でその特徴的な眉を撫でる。
口は悪いものの、その実口元は少し嬉しそうに見えた。
きっと嘘
きっと本編には関係ない