Re:ゼロから時飛ばす異世界生活   作:きなこ餅君

1 / 5
第一話 エピタフその1

これは、もしとある少年が危機を乗り越えるための力があったもしもの物語。

 

▽▽▽▽▽▽

 

―――これは本気で不味いことになった。

 

 

一文無しで途方に暮れながら、彼の心中はそんな一言で埋め尽くされていた。

いや一文無しというのは正確ではない。 彼の財布の中には日本で見慣れた沢山の小銭が入っているし、少ないが野口さん(千円)が数枚と津田さん(五千円)が2枚入っているし彼の全財産である。

地元から一番近いショッピングモールの本屋で買い物をして昼飯を食えるくらいどおってことないぐらいのモノ。

にも関わらず、今回は一文無しと表現するしかない。

 

 なにせ、

 

「やっぱ、貨幣通貨とかって全然違うんだよな‥‥」

 

手の中の十円玉―――希少な『ギザ十』を指で弾いて、少年は長いため息をこぼした。

 これといった特徴のない少年だ。 長い間散髪もしていない長髪の黒髪に高くも低くもない平均的な身長。 体格は鍛えてあるのか筋肉質で、安物のグレーのジャージと相まってスポーツマン風である。

三白眼の鋭い目だけが印象的だが、今はその目尻も力なく落ちていて覇気がない。

 

群衆に紛れれば一瞬で見失いそうなほど凡庸な見た目だ。

 が、そんな彼を見る人々の視線には『珍奇』なものでも見るような不可解な色が濃い如く

 

それもそのはず、

なにせ少年を眺める彼らの中には一人として『黒髪』なものや『ジャージ姿』の者もいない。

 彼らの頭髪は金髪や白髪、茶髪を始めとして緑髪から青髪まで様々で格好は鎧やら踊り子風の衣装やら黒一色のローブやら『それ』らしすぎる。

 

無遠慮な視線の波にさらされて、少年は腕を組みながら納得するしかない。

 

「つまり、これはあれだな」

 

指を鳴らし、自分を見る人々に鳴らした指を向けながら、

 

「―――異世界召喚もの、ということらしい」

 

目の前を、巨大なトカゲ風の生き物に引かれた馬車的な乗り物が勢いよく横切った。

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

少年こと菜月(なつき)(スバル)は平成日本生まれのゆとり教育世代出身である。

 

彼の人生は17年、その全てを語り尽くすにはそれこそ17年の時間を要する。

 それらを割合し、彼の立場を簡単に説明すると『大学受験を控えた高校3年生の男子高校生』である。

受験のプレッシャーというストレスの元凶と戦いながら日々を引き抜いてきた受験戦士だ。

 因みに彼が長髪の理由は単に髪切るたまに散髪に行くのが面倒臭くいっそのことファッションにした結果である。

通っていた高校には頭髪自由なので文句は言われなかった。 追伸 学校から言われなかっただけで母親にはキツく言われた。 父親はそれを見て爆笑していた。

 

 

「なんで異世界召喚? マジで意味分かんないだけど‥‥」

 

 

改めて状況を再確認して、スバルはもう何度目か分からないため息をついた。

 

先程までの好奇の視線を浴びていた通りから場所を移し、今は少し薄暗い路地裏に腰を下ろしている。

 地面は舗装されていて、現代日本と比較すれば雑な仕事だが悪くはない。

 

「現状が異世界ファンタジーと仮定して、文明はお約束の中世風ってわけ? 見渡した限り機械類はないし、建築物も木材や石材でほぼほぼ統一されているし‥‥」

 

路地裏で腰を下ろすまでに見た光景を思い返し、脳内の情報を整理していく。

 受験のストレスを乗り切るために日頃からなろう小説を読破してきたお陰か現状の判断能力は上出来だ。

 

「よし、いい感じだぞ俺。 伊達に5年半異世界系小説を読んできただけあるぜ。 ここの文明レベルはまぁよし、そして頼みの綱のマイマニーは通用しない。 あんときの店主には話で問題なく意思疎通出来たから言語についてもモーマンタイ」

 

召喚されたと気づいて、スバルが最初に行ったのが『八百屋?』との交渉だ。 店先で並んでいた『りんご?』を買おうとして日本円を拒否されたのだ。 違う国から来たと言ったら店主がこの国の金銭を親切に教えてくれた。

 この世界の通貨は金貨、銀貨、銅貨などのようだ。 貨幣自体が価値を持つ世界観の分かりやすさはまさしく異世界ファンタジーと言ったところだろう。

 

再び通り馬車を引くトカゲが通過。 砂埃が盛大に待っているが、行き交う人々は見慣れているのか無頓着だ。

 

「それでも自動車に比べれば数は少ないか。 ‥‥そういえば、今の所犬や猫も見ないな‥‥」

 

馬車を引かせていた巨大トカゲは、スバルの知る馬より一回り大きかった。 その分細見だが爬虫類があれだけ大きいと違和感が凄い。

 

「一般的‥‥なんだろうな。 あのデカいトカゲも、人間の見た目も」

 

そして確認を最後に回した部分、この世界における人間の特殊な、見た目だ。

 髪がカラフルなのはいい。 染めれば何色にでもなる。 日本だってアキバに行けば色んな意味でカラフルなのはいっぱいいる。

 問題はそこじゃあない。 例えるなら『獣耳』だ。

 

ざっと見渡した限り、『イヌミミ』とか『ネコミミ』は発見した。 『バニー』もいれば、変わり種と『リザードマン』っぽいのもいる。

 かと思えばスバルと何ら変わらない普通の人間もいる。

これらから叩き出せるこの世界観は

 

「ジャンルは異世界ファンタジー。 文明は中世ヨーロッパ。 亜人ありありで、恐らく戦争やら冒険もありあり。 動物に至っては地球のモノと全く違うが役割的に変化なしってところか‥‥ 何にせよ言語がオーケーな時点で充分、ありがたい。」

 

それだけ整理して、スバルは長いため息を吐く。

 

「いきなり召喚とかふざけんなよなぁ‥‥!? こちとら親孝行とか豊かな生活とかのために必死こいて勉強してただけなのによォォオ? こんな変則的な仕打ちはあんまりじゃあないのォォォ?」

 

気づけば彼は現状の文句を垂れ流していた。 まぁ当然といえば当然だろう。 コンビニで今日の夜食ついでにジャンプを買って帰宅しようとしたらこうなっていたのだから‥‥

 

「あ、そうだ。 確かこういう異世界ファンタジーは初期装備がケッコー重要だってどっかのゲーム実況者が言ってたな」

 

スバルは早速自分の手持ちを確認した。

 まずスマホ、携帯充電器、財布、コンビニで買ったカップラーメン(豚骨醤油味)、おにぎり(ツナマヨ2つ)、スナック菓子(コンポタ)、今着ているジャージ、スニーカー以上だ。

 

「ふざけんなァァァ!? なんでこんな絶望的に役に立たねぇものばかりじゃあねえか!? スマホなんて回線が飛んでない異世界でどう活用するんだよォォォ!?」

 

唯一役に立ちそうなものは小腹を満たすおにぎりと弁当くらいだ。

 

「と、とりあえず当面はなんとか生きることを目的として頑張っていこう‥‥ コミュニケーションに関しては学校で友達10人いる俺だ! きっとやっていけるさ!」

 

染み込んで来る不安を押しのけようと声を張る。 と、その時彼の表情が変わる。 理由は足音だ。

不意に路地裏に響いた足音―――見れば路地の入り口、3人ほどの男が道を塞ぐように立っていた。

 

 

 

―――これは本気で不味いことになった。 パート2

 

 

男たちの侮蔑と嘲弄混じりの視線、それを受けながらスバルもまた彼らを値踏みしていた。

見た目はおそらく二十代半ばくらい。 薄汚い身なり、内面の嫌らしさが顔に現れている雰囲気。

亜人ではなさそうだが、善人でもなさそうだ。

 

 

「やっべえ‥‥ ありゃあ明らかに物盗りじゃあねえか」

 

 

 彼は背中に悪寒が駆け抜けるのを本能で感じた。

しかし、いっそのこと開き直ることで精神を落ち着かせる。

 緊急事態のとき、何よりも優先することは冷静でいることだと、刑事ドラマなどで学んだ。

 

 

「よぉーあんちゃんよぉ なにガン見してんだよォ? アアンッ?」

 

「アアンッ!?」

 

「やんのかァコラ!?」

 

案の定、言いがかりで難癖をつけてくる三人組。

しかし、ここで慌ててはいけない。

こういうときに大切なのは相手をよ〜く観察すること。

一人は小柄 一人はナイフを携帯しているヒョロヒョロ 一人だけムキムキの大柄

 

(警戒するべきはヒョロヒョロが持っているナイフと大柄の男だな‥‥ ちびは無視していいだろう‥‥)

 

「何ガン無視くれてんだ? ぶち殺すぞ?」

 

「そりゃこっちセリフだっての!」

 

先手必勝!

スバルは男たちが動くより早く行動した。

まず、大柄の男を鎮めるために素早く懐に近づき土手っ腹の正拳突きをお見舞いする。

 

「うぼっあ!」

 

意外とあっさり撃沈に腹に手を抑えうずくまった。

仲間がいきなりやられたことに気づいたちびが驚いている隙きにもう一度腹に正拳突き。

 

 

「うべっ!」

 

ちびの奴が軽いせいがそのまま後方にに吹っ飛んだ。

 

「て、てめえ!」

 

ヒョロヒョロの男が激昂じゃあナイフを取り出した。

 

「ぶっ殺してやる!」

 

ブンッブンッとナイフを振り回してくるヒョロヒョロの男。

スバルはバックステップで後ろに後ろに下がりながらナイフを躱していく

なんとか、かすりもぜず順調に躱していけたが、背中に何が当たる。 

当たったのは壁だ。 建物の壁だ。 これ以上後ろに躱すことは出来なくなった。

 

 

「し、しまった!」

 

「へへへ、『今一歩のギルディラウ』てのはこのことだなぁwww」

 

だんだんと距離を詰められるスバル。

 

「死ねぇ!」

 

絶体絶命のピンチ。

しかし、このときスバルの身に不思議なことが起きた。

 

(何だ! コレは!?)

 

突然脳内に映像が映し出されたのだ。

映像には、ヒョロヒョロの男がナイフを振り上げ、勢いよくスバルを切り裂こうとしてスバルがぎりぎりで躱す映像だ。

しかし、スバルのあたまの中には疑問しか出てこなかった。

何故なら、現実ではまだ()()()()()()()()()()()()()最中だからだ。

スバルはとりあえず攻撃を躱そうと画面の通りに動いた。

 

「何ィィ!?」

 

ヒョロヒョロの男が驚愕した。

まるで攻撃が偶然当たらなかったのではなく

どこから来るのか分かっているかのようにかわされたからだ。

スバルも同じだった。

彼もまた、この奇妙な出来事に驚いていた。

両者とも静寂に包まれた。

―――そのときだ。

 

「ちょっとどけどけどけどけ! そこの奴ら、ほんとに邪魔!」

 

 切羽詰まった声を上げて、誰かが路地裏に駆け込んできた。 ギョッと顔を上げるヒョロ男とスバル。

その二人の視線を少女が横切っていく。

 

セミロングの金髪を揺らす、小柄の少女だ。 意思の強そうな瞳に、イタズラっぽく覗く八重歯。 小生意気そうな顔立ちだが年相応として見れば可愛げもあるかもしれない。

 着古した汚い格好の少女は、この現場に出くわした。

 

スバルと3人は呆然としたまま、少女が駆け抜けていく様を見届けた。

まさに台風のように一過していった少女。 啞然としたのはこの場にいた全員に共通した。

―――1人を除いて

 

ヒョイ!

 

「あッ!」

 

「フフフ‥‥‥ 駄目だぜ? そんなに女の子に夢中になったら‥‥ しつこい男は嫌われるって知らねえの?」

 

スバルである。 ナイフを持ったヒョロ男が意識を金髪の少女に向いた瞬間、生じた隙を狙ってナイフを掠め盗ったのだ。 作戦が成功したスバルは実にいい笑顔でナイフを3人に向けて言った。

 

「形勢逆転だな。 このトンチンカン野郎共」

 

 

「「「すみませんでしたァァァァァァ!!!」」」

 

ゲームセット! WINNERスバル!

 

 

 

無事、勝利を収めたスバルは3人組をしばき倒し

ナイフと所持金の半分を喧嘩を売った詫びに頂いた。

 

頂いた所持金は、銀貨が3つくらいと銅貨が5枚くらいだった。

なんとか今日は生きていけそうだな~ と思いながら路地裏を出ようとすると

 

「―――そこまでよ、悪党」

 

可憐な少女の声がこの路地裏に響いた。

 

 

 

 

To Be continued

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。