Re:ゼロから時飛ばす異世界生活   作:きなこ餅君

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第三話 デス&リターンズ その1

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

「―――どうしたよ、兄ちゃん。 急に呆けた面して」

 

「は―――?」

 

厳つい顔立ちの中年にそう声をかけられ、思わず間抜け反応をしてしまう。

 

「だーかーら、また今度リンガ、買いに来るんだろ? 自分から言っておいて急に目がイっちまうからビビっちまったぜ。」

 

「あ‥‥ああ! そうそう。 そうだぜ! すまねえなおっちゃん! ちょっと立ち眩みしちまってよ~」

 

「なんだ〜 そんなことか! こんな所で立ち眩みなんかしたら危ねぇぞ? 気をつけな!」

 

「ああ! もちろんだぜ! また今度あったらそのうまそーなリンガ買わせてくれよ?」

 

「おう! とびっきりのを用意してやるぜ!」

 

___________

 

「‥‥一体全体どういうことだ?」

 

スバルは、今現在起きた異常な現象に問と疑問を開けだすのが精一杯だった。

路地裏に入って多少落ち着いてもこの疑問をぶち撒けることしか出来なかった。

 

「コレは何だッ!? お‥‥俺はッ!! 何を見せられているんだッ!?」

 

 

「俺は(ゆめ)を見ているのか!? 幻覚(げんかく)を見せられているのか!?」

 

「いや‥‥ いや違う!! あのとき‥‥ 死ぬ寸前に見たあの未来は‥‥」

 

 

 

 

『僕は契約に従い‥‥ この世界を終わらせる‥‥』

 

「アアァァァァァァアアア‥‥」

 

スバルが白い獣に氷漬けにされる直前に見た未来とは‥‥ 真っ黒だったのだ。

未来として映し出された映像は何も映さなかった。 テレビの電源を元からつけていなかったかのように真っ黒だったのだ。

 

 

 

 

「俺の能力は何も映し出さなかった‥‥ つまり俺の未来は無くなり命を落としたということの筈だ‥‥ だが‥‥ 生きている‥‥ しかも()()()()()()()()‥‥‥!」

 

スバルは、路地の入口で横切ったあのときの大型の爬虫類が通ったときにそのことを確信した。

 

「いわゆる、ゲームでのコンテニューってやつか‥‥ 残機と本人の意志関係無しで自動で復活‥‥ セーブポイント等は一切不明ってか‥‥ なにこれ? マリオのクソゲーバージョン? いや現実は元からクソゲーだったか‥‥」

 

自身に起きたことの正体は分かったがいまいちまだ飲み込めていない。

そのことからちょっと自虐的になってしまう。

すると、あることを思い出した。

 

「そうだ‥‥ あの獣をどうかしねぇと、また氷漬けにされてしまうぞ‥‥ というか‥‥あの獣は何処から出てきたんだ? 俺の記憶通りならあそこはただの路地裏だぞ‥‥」

 

スバルはしばらくの間、考えにふけていたが結局何も思いつかなかった。

とりあえず、あそこで何があったのかを調べるために記憶を頼りに獣がいた場所を目指すことにした。

しかし、その決意は一歩遅かった。

 

「また、てめえ等かよ‥‥ トン・チン・カン」

 

前の時にあった例の三人組だ。

 

「正直言って‥‥ めっちゃめんどくせー‥‥」

 

 

 

 

「おいおい、何ブツブツ言ってんだアイツ」

 

「状況が分かってないんだろ。 教えてやればいいんじゃないか?」

 

トンとチンの会話も前回のとほぼほぼ一緒だ。 スバルの気が滅入って来る。 が、げんなりする反面、舐めてかかってはいけないと思う気持ちがあるのも事実だ。 大柄の男もケッコー危ないし細見のやつはナイフを持っている。 

 

「かと言って、手傷を負うのも荷物を手渡して逃げるのもお断りだ‥‥」

 

前回通りにボコボコにして切り抜けるのがベストだろう。 するとスバルの脳にある考えがひらめいた。

この異世界にも警察的なものがあることを思い出したのだ。

  

「衛兵さーーーーーーん!!!」

 

予備動作なしの救命信号に、虚を突かれたトンチンカンが思わず飛び上がる。

 路地裏の静寂を打ち破り、大通りの喧騒にまで間違いなく割り込んだてあろう声量。 このような大声を出すからには多少の羞恥心が芽生えるものだがそのようなことは彼のプライドに傷すらつけない。

 

「誰かーーーー! 騎士の人呼んでーーーー!!!」

 

 

「てめ‥‥‥ッ。 ふざけんなよ!? ここで普通、いきなり大声を出すか!?」

 

「状況的にこっちの命令聞かなきゃ痛い目見る流れだろうが! 要求も聞かずにこれとかやんねーぞ、普通は!」

 

「黙らっしゃい! 何が普通だ! お前らのようなトンブツ チンピラ カンパン野郎どもにに常識ハズレも糞もあるか! さぁ選べ! 今からやって来る衛兵に捕まるか、それとも尻尾巻いてここから逃げるか二つに一つだッ!」

 

「クソタレがッ! そんな挑発にのるか!」  

「てめえからその手荷物を奪ってからおさらばすれば問題ねぇだろがァァァ」

「やっちまえェェェイ!!」

 

三人が一気に距離を詰めてくる。

数の暴力でスバルを倒す算段なのだろう。

 

「甘く見んなよなァ」(前回のやつで学んだことはあのデカブツは案外弱いことだ。 やはり注意すべきなのはナイフを所持しているチンのやつだ。)

 

スバルの身立てでは殺傷力があるのはチンの持つナイフだけ。 それ以外は問題なく対処できる程度の奴等だったことは前回の時に判明している。 瞬時にトンとカンの腹を蹴り、未来予知の能力を駆使してナイフを躱しチンを倒すという策を固めたスバルは身構える。

 

「―――そこまでだ」

 

その声は唐突に、しかし明確に、路地裏のひりつくような緊張感を切り裂いた。 凛とした声色には欠片も躊躇もなく、一切の容赦も含まれていない。 聞くものにはただ圧倒的な存在感だけを叩きつけ、その意志を伝わせるソレは天性のものだ。

 

スバルは顔を上げ、トンチンカンは振り返る。 その先には一人の青年が立っている。

 まず目を惹くのは、燃え上がる炎のような赤い頭髪。 その下には真っ直ぐで、勇猛以外の譬えようがないほどの輝く青い双眸がある。 異常なまでの整った顔立ちもその凛々しさを後押しし、それらを一目見ただけで彼が一角の人物であると存在が知らしめていた。 すらりと細い長身を、仕立てのいい黒い服に包み、その腰にシンプルな装飾―――ただし、尋常ではない威圧感のある騎士剣を下げている。

 

「例えどんな事情があろうと、それ以上、彼への狼藉は認めない。 そこまでだ」

 

言いながら、青年は悠々とトンチンカンの隣を抜けて、彼らとスバルの間に割って入る。 そのあまりに堂々とした行為に、スバルも男たちも声をあげられない。 だが、トンチンカンとスバルでは沈黙した理由が違うらしい。

スバルは突然の展開と青年の雰囲気に呆けていたのが理由だが、その顔から血の気を失い始めるトンチンカンは違う。

 

「ま、まさか‥‥」

 

紫色になりつつある唇を震わせて、チンが青年を指さした。

 

「燃える赤髪に空色の瞳‥‥それと、鞘に竜爪の刻まれた騎士剣」

 

確認するように各所を指差し、最後に息を呑んで、

 

「ラインハルト‥‥ 『剣聖』ラインハルトか!?」

 

「自己紹介の必要はなさそうだ。 ‥‥もっとも、その二つ名はまだ僕にはまだ重すぎる」

 

ラインハルトと呼ばれた青年は自嘲げに呟き、しかし眼光は決して緩めない。

 

「逃げるならこの場は見逃す。 そのまま通りに向かうといい。 もしも強硬手段に出るというのなら、相手になる」

「その場合は3対2だ。 数の上ではそちらが有利。 僕の微力がどれほど彼の救いになるかわからないが騎士として抗わせてもらう」

 

「じょ、冗談ッ! わりに合わねーよ!」

 

うそぶくラインハルトにトンチンカンは慌てふためき、獲物を隠す配慮すら忘れて蜘蛛の子を散らすように大通りに逃げ去っていく。 捨て台詞すら残せない彼らの慌てぶりはそれだけでこの青年の規格外さが知れるものだった。

 

「互い無事で良かった。 ケガはないかい?」

 

トンチンカンが完全に消えたのを見計らって、青年が微笑を浮かべて振り返った。 途端に路地裏を圧巻していた威圧感が消失。 それすらも青年が意図的にしていたことをスバルは理解した。

 

「ああ、お蔭で傷一つついてねぇよ」

 

「そうか。 それは良かったよ」

 

このとき、スバルの脳裏に未だかつてない一発逆転のアイデアが浮かんだ。 

彼はあのチンピラが見ただけでその存在を知らしめるほどの男。 恐らくそれを証明するほどの実力があるということだ知っている。 この男ならば、あの白い獣すらも倒せるかもしれないという期待が芽生えた。 

 

「えーっと、ラインハルト‥‥でいいのか、たしか?」

 

「ああ、それと別に呼び捨てで構わないよ」

 

「さらっと距離を縮めて来るなこの人‥‥ えっととりあえずありがとう、ラインハルト。 俺の叫び声を聞きつけてくれて感謝する。 お蔭で助かったよ。 俺はナツキ・スバルってんだ。 よろしく」 

 

「こちらこそよろしく、スバル。 君の行動は多くの人にとって、連中のような輩と反面するのはリスクが大きい。 だから、衛兵を呼んだ判断は正しかったよ」

 

「その言い方だと、ラインハルトって衛兵なのか? そうはとても見えないが?」

 

「よく言われるよ。 まぁ、今日は非番だから制服を着ていないのもだろうけど」

 

苦笑いしながら両手を広げるラインハルトに、スバルは内心で反論。

彼が衛兵に見えない最大の要因は、そんな泥臭い感じのイメージとはかけ離れた雰囲気が為せる技だ。 それにプラスアルファすることがあるとすれば、

 

「『剣聖』とか呼ばれていた気がするが‥‥」

 

「家が少しだけ特殊でね。 かけられた期待の重さに潰れそうな日々だよ」

 

肩をすくめてみせる気軽さに、ユーモアも持ち合わせているらしい。

 

「珍しい髪に服装、それに名前だと思っていたけど‥‥ スバルはどこから? 王都ルグニカにはどんな理由で来たんだい?」

 

「ああ、日本という東の国から来たんだ。」

 

「ニホン? 聞いたことのない国だな? それにルグニカより東‥‥まさか、大瀑布の向こうって冗談かい?」

 

「大瀑布?」

 

聞き慣れない単語に首をひねるスバル。

瀑布、というと滝か何かだったとスバルは記憶している。 そもそもこの世界の地理にはかなり疎いので聞き慣れないもクソもないのだ。

 

「別に誤魔化しているって訳でも無さそうだけど、そこはいいか。 とにかく、王都の人間じゃないのは確かみたいだけど、何か理由があって来たんだろう? 今のルグニカは平時よりややこしい状況にある。 良ければ手伝うけど」 

 

「!!」

 

キタ! とスバルは思った。 これからラインハルトをどう説得するのかを考えていたのにまさか本人が手伝うというのは驚きだったがこれを利用しないと手はない。

 

「助かるよラインハルト!」

 

少し興奮気味に返答してしまうスバル。

 

「どうかしたのかい?」

 

「ラインハルト‥‥ 落ち着いて聞いてほしい‥‥」

 

スバルは真剣味でラインハルトに事情を話した。

 

「ここ、ルグニカは夕方頃に滅亡する」

 

「!? ソレは一体どういうことだい!?」

 

当然、ラインハルトは驚愕する。

 

「信じられないかもしれない‥‥ でもこの未来はどうにかしなければ必ず起きることなんだ」

 

「その根拠は?」

 

ラインハルトは、スバルの言うことに理解が追いついていなかった。

そのことを証明する根拠が欲しかった。

 

「俺の能力」

 

「!?」

 

「俺の能力とは『未来を見る能力』だ」

 

「未来を‥‥? そんなことが‥‥」

 

「ラインハルト。 とにかく時間がない! 夕方になる前に現れるあのどデカい獣の化け物をどうにかしなければならないんだ‥‥」

 

「分かった。 君を信じよう。 その化け物が現れる方向は何処に現れるんだい?」

 

「ここからの方角だと‥‥ あっちだ!」

 

「その方向は‥‥ 貧民街だな」

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

貧民街

 

スバルは死ぬ寸前に見た獣の位置を記憶を頼りに進んでいた。

 

「俺の予知と記憶が正しければ大体この辺だが‥‥」

 

「かなり奥まで来たね‥‥」

 

ザッ ザッ ザッ

 

すると、スバルとラインハルト以外の気配と足跡が聞こえた。

二人は一先ず身を隠すことにした。

しばらくして気配の正体が姿を表した。

 

「アイツは‥‥!」

 

前回の時にトンチンカンと対峙している時に横切った金髪の少女だった。

よく見ると、手に何かを持っている。

恐らく、あれがあのときに会った銀髪の少女から盗んだ物だろう。

 

 

その金髪の少女は、目の前にある建物に近づいた。

その建物こそが少女の隠れ家なのだろう。

 

コンッ コンッ コンッ

 

少女は少し強めに3回ノックする。 すると扉の向こうから、くぐもった声が聞こえた。

 

「大ネズミに」 「毒」

 

「白鯨に」  「釣り針」

 

「我らが貴き―――」 「ドラゴン様にクソったれ」

 

この返答を聞くと建物の扉が開き、少女がその中に入っていく。

 

(しっかし、最初の2つはともかく、最後の合言葉は皮肉気味に決めてんな~ それだけ、この国に恨みがあるということか?)

 

ルグニカ王国では、あるドラゴンが祭り上げられている。 いわば象徴と言ってもいい。

そのドラゴンを蔑むということはこのルグニカ王国を蔑むと同じなのだ。

 

「あの少女は獣の出現とは無関係そうだな」

 

スバルが呟く。

 

「たが、君の予知通りならもうしばらくしない内にナニカの要因があるはずだ」

 

スバルの呟きにラインハルトは返答した。

 

「確かにな。 たがあと一刻ぐらいで夕方‥‥ そろそろ進展があるはずだ‥‥」

 

ザッ ザッ ザッ

 

「「!」」

 

再び、ナニカの足音が聞こえた。

足跡の音からして走ってきている。

 

「ここが、盗品蔵‥‥?」

 

(!!)

 

来たのは、金髪の少女同様、前回の時に会った不思議な存在感を秘める銀髪の少女だった。

 

 

To Be continued

 

 




次回でエルザ戦行きます。 もうすぐキングクリムゾンの出番もありますのでお待ち下さい。
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