自作品クロスオーバー集 ※旧『オリ主たちが異空間でばったり遭遇するだけの話』   作:緑茶わいん

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オリ主たちが異空間でばったり遭遇するだけの話

 気づいたら異空間にいた。

 

「……え?」

 

 暗いような明るいような、はっきりとしない「無の空間」に俺はふよふよと浮くようにして存在している。

 原因はわからない。

 いつものようにベッドに入り、いつものように眠ったはず。

 寝ている間に誘拐されたとかなら百歩譲ってわからなくもないが、こんないかにも「異空間です!」な場所にいるのは普通に考えてありえない。

 可能性があるとしたら、

 

「ラペーシュさん? あなたの仕業ですか?」

 

 感覚的に「上」だと思う方向へ呼びかけてみるも、返事はなし。

 友人である美少女魔王はノリのいい性格なので、呼びかけられれば高確率で「ふふ、よくわかったじゃない? さすがはアリスね」などと答えてくれるはず。

 となると、別の存在の仕業、あるいは犯人のいない突発的現象なのだろうか。

 

「……どうしましょうか」

 

 きょろきょろと周りを見回してみる。

 仲間が一緒に来ている様子はない。急に敵が「がおー」とか現れるわけでもない。

 一体、なにがどうしたのやら。

 

 俺──アリシア・ブライトネスはある日突然、起きたら某ゲームの聖女になっていた、という経歴の持ち主だ。

 現在は似たような境遇の仲間たちと共に、夜な夜な現れる化け物を狩る『バイト』をしながら暮らしている。先程話題に出た美少女魔王はこの過程で知り合った人物。

 というわけで。

 自分自身、神聖魔法が使えたりする俺としてはこの現象も「絶対にありえないこと」ではない。明確な脅威が迫っていない以上、まあなんとかなるだろうと判断し、とりあえず異空間の探索に移ることにした。

 

 しかしここ、歩けるんだろうか。

 と、思ったところ、ふわりと見えない床に降り立つように姿勢が安定する。そのまま真っすぐ歩けるのを確認した俺は、適当な方向へ向かって移動を始めた。

 目星は何もつけられない。

 何しろ本当によくわらかない空間だ。何も出てこないかもしれないし、急に何かが現れる可能性も──。

 

「あ」

「あ」

 

 しばしそうして歩いた後、俺は、ばったりと何者かに出会った。

 女の子だ。

 中学生くらいだろうか。ショートヘアの可愛い子。何故か魔法少女めいたコスチュームを纏っている。

 彼女は、パジャマ姿の俺を見るなり「誰!?」と叫んで身構えた。反応が早い。杖と拳を構えたポーズも様になっている。

 というか、コスチュームと杖もただのコスプレ衣装じゃなさそうだ。丈夫な素材が使われている上、激しい動きをしても大丈夫なように配慮されているのがわかる。少女自身の気配も、俺の身の周りにいる異能者・異世界人同様、底知れぬ力を秘めた者のそれだ。

 

「あなたこそ何者ですか? 敵だというのなら容赦はしません」

 

 俺は咄嗟に後方へ跳ぶと、手に杖を召喚した。正確には錫杖。俺、そしてオリジナルのアリシアが信仰する神のシンボルが備わった強力な品だ。俺にはこの錫杖を自由に召喚する力がある。

 さらに──こちらは俺としても驚くべきことに、パジャマだった衣装まで慣れ親しんだ聖職者用のそれに変わる。

 衣装まで召喚できる力はないのだが、あれか、この空間自体にイメージの影響を受けやすい特性があるのか。だから「歩きたい」と思った途端、地に足がついたのだろう。

 こうした俺の反応に少女は目を瞬かせ「敵じゃないってこと?」と呟いた。

 

「ヴィランがしそうな格好じゃないもんね。……私はトワ。八百万永遠(やおよろずとわ)。一応ヒーローなんだけど、あなたは?」

「私はアリシア・ブライトネス。女子高生兼、聖女です」

「は?」

「え?」

 

 なにそれ怖い。

 いや、ヴィランだのヒーローってなんだよ。「一応ヒーローなんだけど」なんて台詞、生まれて初めて聞いたぞ。なんだ、アメコミのキャラか何かか。

 一方、彼女には包み隠さず喋った方がいいという判断から俺が口にした立場もまた相手にとって不可解だったらしく、怪訝そうな顔をされた。

 

「聖女……ってことは、魔法とか使えるの?」

「使えますよ。例えば《小治癒(マイナー・ヒーリング)》」

 

 ぽう、と生まれた輝きが少女の身体を包み込む。

 回復魔法なので当然、相手に悪影響はない。むしろちょっと疲れが取れた感じになるはずだ。

 これを受けた少女は「すごい」と笑みを浮かべる。

 

「どういう《個性》なの? ──って、聞いてもたぶん無駄なんだよね?」

「はい。その、ジャンプマンガで聞いたような性質は持ち合わせていません」

「え、ヒロアカで通じるの!? ってことは、もしかしてヒーローとかヴィランとかいない平和な日本の人?」

「一応そうなると思いますが……そちらの考えている『平和な日本』に聖女とか魔王はいませんよね?」

「いないね」

「ですよね」

 

 うんうんと頷きあってから「なんだこれ」となる俺たち。

 とりあえずわかったのは相手に敵意がないこと、それから、どうやら別の世界の誰かと繋がってしまったらしいこと。

 

「あの、あなたも《個性》を持っているんですよね? どんな?」

「えーっと……ヒロアカで通じるなら言っちゃってもいいかな。私自身の《個性》は不老不死なんだけど、他にAFO(オール・フォー・ワン)とその他諸々」

「え、あの変態仮面はどうしたんですか?」

「倒したよ。倒したと思ったらいっぱいに増えて大変だったんだから」

「意味が分かりません」

 

 じゃあ内通者だったあの子とかどうなったのかと尋ねると「え、内通者だったの!?」と驚かれる。

 どうやら俺が知っているマンガとは若干設定が異なるらしい。そもそも、彼女自身がマンガには登場しない人物だし。

 

「えーっと、アリシアさん、だっけ?」

「アリスでいいですよ」

「じゃあアリス。ここがどうなっているのか、わかる?」

「いえ、さっぱりです」

 

 首を振ると、少女──永遠は「だよねえ」と頷く。色々《個性》を持っているらしい彼女でも原因はわからないらしい。

 っていうか、さっきはスルーしたけど不老不死ってなんだ。殺しても死なないってことか。

 いや、それはひとまず置いておくとして。

 

「永遠さんの《個性》で他に人がいないかわかったりしませんか?」

「あ、うん。わかるよ。探してみよっか」

「お願いします」

 

 《個性》ってそんな気軽なものだったっけ……?

 首を捻りつつ、永遠が「こっち」と示した方向に二人で歩く。

 並んでいると魔法使いと回復役(ヒーラー)という感じだ。できれば前衛が欲しいところではあるが、

 

「……疲れました」

 

 地面(仮)に座り込んで休んでいるドレス姿の女の子を発見した。

 白い髪と肌に赤い瞳。

 いわゆるアルビノというやつだろうか。知り合いの銀髪少女とはまた少し違った雰囲気がある。

 

「あの、大丈夫ですか? どこか悪いところでも?」

「あ、いえ。大丈夫です。ただ疲れただけですから。……ええと、それよりも、ここが何処なのかご存じですか? 私はリリィ・シュタットフェルトと申します。確か、自宅で休んでいたはずなのですが」

 

 顔を見合わせた俺と永遠は、とりあえずリリィに名前を告げた。

 すると、リリィはこてんと首を傾げ、困った、と言いたげに頬へ手を当てる。

 

「申し訳ありません、寡聞ながら存じ上げないお名前なのですが、永遠さまは日本の方でいらっしゃいますか? アリシアさまは神聖ブリタニア帝国の? それとも『E.U.』の方ですか?」

「神聖ブリタニア帝国って『コードギアス』みたいだね」

「ですね」

「え、あの、『コードギアス』で話が通じるのですか!?」

 

 おい、さっきもやったぞこの流れ。

 とりえあず、自分たちにアニメやマンガの知識があることを伝えた上で、それぞれ別の世界から来たらしいことを明かすと、リリィは「なるほど」と頷いた。

 

「『Cの世界』とも異なるようですが……かなり特殊な場所であるのは確かのようですね。まさか異世界の方と交信ができるとは。どうやらここにいる私達は実体ではなく精神体のようですが」

「そんなことわかるの?」

「ええ、まあ。一応『コード』を保持している身なので、人よりも精神世界には詳しいのです」

「では、リリィさんも不老不死なんですか?」

「も、とは?」

「実は私も不老不死なんだ」

「まあ、それはそれは」

 

 もう何がなんだかわからない。

 それにしても、リリィは体力が無い癖に肝の据わり方と頭の回り方は凄いらしい。おっとりと微笑んだ彼女は「とりえあず、座ってお話ししましょうか」と立ち上がって──。

 途端、周囲の景色が落ち着いた庭園のものになった。

 

「な、何をしたんですか!?」

「落ち着ける場所をイメージしただけです。精神世界なのですから、そのくらいは自由になるかと」

「ええ……? なるかと、で、なんとかなるもの……?」

「なったのですから仕方ありません」

 

 言いつつ、四人掛けのテーブルを作って腰かけるリリィ。

 さらにティーセットと焼き菓子の盛り合わせまで出してお茶の用意を始める。

 うん、どうやらこの子も只者ではない。

 

「あ、もう一人反応があるんだけど、どうしよっか」

「せっかくですから、来て頂けばいいのでは?」

 

 言いつつ自分は動く気がなさそうだが……まあ、俺たちに行ってこいということか。歩き疲れて休んでたくらいだし体力はないのだろう。

 永遠を見ると、彼女は彼女で元気が有り余っているのか「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」と走っていき──あっという間に一人の女の子を連れてきた。

 黒髪に黒目。どうやら純粋な日本人らしい。背が高い──百七十センチ以上ありそうなことと美人系の顔立ちをしていることを除けばそれほど特徴がない。着ているのもどこかの高校の制服だ。

 

「あの、あなたは?」

 

 問いかけつつ名前を明かすと、彼女は「鶴見(つるみ)翔子(しょうこ)です」と名乗った。

 鶴、鶴か。

 

「もしかして、翔子さんも不老不死だったりしますか?」

「え、なんの話?」

 

 良かった、違った。

 

「いえ、そちらのリリィさんとこちらの永遠さんは不老不死だそうでして」

「どうも。コードユーザーです」

「不老不死の《個性》を持つヒーローです」

「ギアスにヒロアカ? え、なんで?」

「翔子さんも話が通じるんですね……。もしかして、あなたもどこかの作品から?」

「いや、私は普通の現代日本人だよ。趣味はバスケと料理」

 

 普通だ。物凄く普通だ。なんでこの子が大トリだったのか。

 とりあえず席について紅茶とお菓子をいただく俺たち。うん、美味しい。我が家のメイドさん(ノワール)の淹れてくれるものと甲乙つけがたい。

 紅茶の質はリリィのものが上、淹れる人間の腕はノワールの方が上といったところか。

 

「ところで、皆さんどうして自分の原作をご存じなんですか? 転生者か何かですか?」

 

 何の気なしに尋ねると、まさかの「うん」が三つ返ってきた。

 

「実はそうなんだ」

「ええ。突然前世の記憶が目覚めた時は動揺しましたが……」

「本当困るよね、あれ」

「あれ? もしかして私が仲間外れですか?」

 

 いやまあ、俺もオリジナルのアリシアの記憶を持っていたりするし、実際は転生者だったりするのかもしれないが。

 普通だと思われた翔子が普通でないことが判明し、なんだか納得してしまう。

 なお、当然の如く翔子もこの場所のことは何も知らなかった。

 

「転生ってどんな感じなんですか? やっぱり前世知識で無双とかするんですか?」

「……あー」

「……そうですねー」

 

 目を逸らした人間が約二名。

 

「永遠さん? リリィさん?」

「し、してない。原作知識を使って引っ掻き回したりとかしてない」

「ええ、もちろんです。ゲーム会社を興して一儲けなんてしておりません」

「つまり、やったんだね」

「やってますね」

 

 うんうん、と、翔子と頷きあう。

 彼女はただの女子高生らしいし、無双のしようがなかったか。

 翔子はしみじみと息を吐いて、

 

「私はむしろ大変だったよ。何しろ、前世が男だったから」

「え」

 

 今は女性にしか見えない。仕草もちゃんと女の子らしいし、制服の着こなし方にもセンスが見えるというのに。

 と、思っていたら、

 

「あら、奇遇ですね。実は私もそうなのです」

「ええ!?」

 

 リリィまで衝撃のカミングアウト。見えないと言えば彼女が一番そうは見えない。どう見てもか弱いお嬢様だ。

 まさか、こうなると永遠も?

 

「永遠さんは……?」

「私は違うよ。前世も女。仲間だよ、アリス」

「あ、いえ、その、すみません。私、転生はしていませんが、男子高校生からこの身体に変わっていまして」

「え、じゃあ今度は私が仲間外れ!?」

 

 不老不死が二名。

 転生者が三名。

 性転換経験者が三名。

 どうやったらこんな面子が集まるのかと首謀者に聞きたい。いや、この様子だと首謀者とかいないのかもしれないが。

 この中だと一番普通っぽい翔子がしみじみと紅茶を飲んで、

 

「三人の中だと誰が一番強いのかな」

「私は不老不死なだけで戦闘能力がないので、少なくとも一番弱いかと」

「うーん、アリスと戦うと浄化されそうでなんか怖いかな」

「いえ、私は不老でも不死でもないので、リリィさんにも老衰で負けます」

 

 なお、翔子も腕っぷしだけならそこそこ自信があるという。バスケをやっていると言っていたし、スポーツなら俺より上かもしれない。

 

「翔子さんはバスケ部なんですか?」

「うん。そこまで強い高校じゃないけど、楽しくやってるよ」

「強豪校じゃないバスケ部かあ」

「実はどこかのマンガの世界だったりしないでしょうか。スラムダンクですとか」

「大丈夫。少なくともスラムダンクは違ったから。うちの世界にもあるし。……私なんて、小学生にバスケットボール教えてるくらいの一般人だよ」

「はいダウト」

「え?」

 

 小学生、という単語から永遠が作品名を引っ張り出してきた。

 最初は一笑に付していた翔子だったが、関係者の名前を次々に言い当てられると「原作あったんだ……」と驚いていた。いや、まさか原作知らずに転生した人間がいたとは俺たちも驚きである。

 なんでもメイドさんも出てくるらしいので帰ったら読んでみようと思う。ちなみにマンガではなくラノベだそうだ。

 

「でも、どうやって帰りましょう?」

「それはおそらく心配ないかと」

「え?」

「リリィちゃん、何かアイデアがあるの?」

「いえ、その、私はもう高校も卒業しているのでおそらく年上なのですが……それはともかく、精神世界なわけですから、私達は夢を見ているのと同じなわけです。つまり」

「つまり?」

「目を覚まそうと思えば覚ませるのではないかと」

 

 覚ませた。

 

「……まさかの夢オチでした」

「何言ってるのアリス?」

 

 愚痴をこぼしたら紅髪の同居人にものすごく怪訝そうな顔をされた。

 なお、件のラノベは彼女が持っていたので借りた。

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