自作品クロスオーバー集 ※旧『オリ主たちが異空間でばったり遭遇するだけの話』 作:緑茶わいん
・TS転生令嬢は『カウンター悪役令嬢』を目指す
・視られるほどレベルアップ? 露出少女のフルダイブMMO
・クラス転移の特典が俺だけ「サキュバス化」だった
の主人公が増えています
「……ここは、どこでしょうか?」
私、アリシア・ブライトネスは気がつくと異世界にいた。
石造りの神殿のような場所。外周には階段があり、その下には見たことのない街並みが広がっている。私の記憶にある別の異世界──ゲームのファンタジー世界に比べると日本的なデザインを強く感じるのが不思議だが。
ひとまず、私は後ろを振り返って、
「どなたか、知っている方はいますか?」
私と同じく転移してきたらしい数名の少女たちに尋ねた。
「申し訳ありません。私にも何がどうしたのか全く……」
最初に答えてくれたのは白髪赤目──アルビノの特徴を持った可愛らしい少女だった。貴族めいたドレスを纏い、指先に至るまでを布で覆った彼女はそれでも足りないとばかりに日傘を差して顔や首を日光から遮っている。
続けて、アイドルっぽい衣装を着たピンク髪(!)の少女が目を輝かせ、
「もしかしてこれって異世界召喚っていうやつなのかな……!? でも、わたしどうしてゲームの中の格好のままなんだろ?」
「ゲームの中? もしかして、ゲームのキャラに変身してしまったとか?」
「うん。この格好、いつもはゲームで使っているわたしのキャラなの。……ってことは、ここもゲームの中なのかな?」
なるほど。彼女の場合はゲームキャラに変身してしまったのは「ついさっき」なのか。そうなると私とはだいぶ事情が違うし、私と違って異世界の自分と融合したのではなく「ゲームキャラの能力を得てしまった」だけ、という感じだ。
もともと女子だったみたいなので戸惑っている様子もあまりなく、少し残念なようなほっとしたような。
「召喚ね。……そのわりに召喚した人間が見当たらないのはどういうことかしら」
独り言のような独り言じゃないような。あたりを見回しながら呟いたのは紅の髪と瞳を持った美少女だ。ファンタジー風のドレスを纏い、腰には剣を差している。見るからに気の強そうな顔立ちをしているし、けっこう過激なタイプなのかもしれない。
とはいえ、話が通じないわけでもなさそうなので、ひとまず彼女に応じてみる。
「事故なのでしょうか。……それとも、この建物自体に秘密が?」
「ありえそうね。わたしの世界のものとは様式が違うけれど、膨大な魔力と緻密な設計によって作られた魔道具みたい」
「えっと、なんだか話が噛み合っているようで、みんな『常識』が違いそうだけど、誰もこの世界の人はいないんだよね?」
さらに、魔法少女みたいな服装をしたちっちゃい女の子が言った。口調はとてもしっかりしているので見た目よりは年齢が高いのかもしれない。
最後に黒髪黒目、この中では一番背の高い制服姿の女の子が首を傾げて、
「私は普通の高校生なんですけど、皆さんはなんだかこうなる心当たりがありそうですね?」
「うん(ええ)、わりと」
私の仲間には突飛なことを相談もなくしでかす魔王様がいるし、他の少女たちもトラブルの原因には心当たりがありそうだ。しかし、だとしても他の世界(?)の人間まで加えて異世界に飛ばす理由がわからないので、やっぱり事故の可能性が高いかもしれない。
と。
「なんか、人がいっぱい集まってきたね」
「武装しているわね。わたしたちは招かれざる客ってわけかしら?」
「……困りましたね。なんとか交渉でわかりあえないでしょうか」
「私もできれば穏便に済ませて欲しいです」
神殿の周囲にいつの間にか人が。
そのほとんどが黒髪黒目の日本人風なのに装備はファンタジー的な剣や槍、杖。いったい何が起こっているのか。私たちが顔を見合わせ「どうしたものか」と悩んでいると、彼らを代表するように二人の人物がこちらにやってきた。
一人はローブを纏った魔法使い風の中年男性、もう一人は翼と尻尾を生やした美少女。
私は思わず愛用の杖を召喚するとそれを構えて、
「悪魔……!?」
「あ、ううん。サキュバスなんだけど……戦う気はないから杖を下ろして欲しいな」
両手を上げて戦意がないことを示した彼女の様子に、私はひとまず言う通りにする。その仕草が慣れ親しんだ日本のそれに見えたのも理由の一つだ。
「あの、ここはいったいどこで、あなたたちは誰なんでしょうか」
「後者の問いはこちらも同じだが、ひとまず答えるのであれば、ここは異世界だ。この神殿には召喚機構が備えられており、一年に一回起動しているのだが──今回は時期的にも召喚対象的にもイレギュラーのようだな」
なんでも、ここは滅んだ異世界(推定)であり、彼らは日本から召喚されてきた難民というかそんな感じの人々。神殿の中にあるダンジョンを攻略していくことで日本に帰れる(かもしれない)ということで、ここ三十年以上にわたって戦い続けているのだとか。
なんとも気の長い話であり、気の毒な話でもある。
「話はわかったわ。つまり、わたしたちもこのままだと帰れないわけね?」
紅髪の少女がまとめると、サキュバスの少女──レンと言うらしい──が頷いて、
「うん。申し訳ないけど、まだダンジョンをクリアするには時間がかかりそうなんだ」
「そう。なら、わたしたちも協力するわ。こう見えて、腕にはそれなりに覚えがあるもの」
「そういうことでしたら私も参加させてください。見ての通り聖職者なのでお役に立てるかと」
さらに魔法少女風の少女も拳を振り上げて、
「私もやるよ。モンスターが相手なら思いっきり殴っても平気だろうし」
できれば戦いたくないと表明したのは残りの三人。
「申し訳ありません。私には戦闘能力がありません。というか、激しい運動をしただけで倒れかねないので……」
「私も、なにか裏方とかで役に立てたらそっちの方がいいんだけど」
「わたしは戦ってもいいんだけど、みんな強そうだし足手まといになっちゃうかも。歌って踊って応援、とかじゃ駄目かな?」
「ふむ。君達にも『祝福』が付与されているかもしれない。それがあればあるいは戦力の増強に繋がるかもしれんな」
『祝福』とはまるでゲームのようなウィンドウと種族、クラス、スキル、ストレージなどの恩恵のことだった。
私のクラスは「聖女」。スキル欄には私が使える魔法がずらりと並んでおり、そのほとんどが修得済みを示すように明るい表示になっている。スキルレベルもかなり高い。
「これ、バグってませんか……?」
「転移前から腕に覚えのある者は今までいなかったからな。なんとも言えないが、利用できるのなら利用しておけばいいのではないか?」
魔法少女の子──永遠の種族欄には「不死者」とか表示されているし、アルビノの子は「コードユーザー」だし、なにがなんだか、という感じではあったが、この世界的にレベルを上げればステータスが伸びるらしい。親切なことに私たちもレベルは1だったので、戦っていけば元の世界よりもずっと強くなれそうだ。
残念なことに非戦闘系の三人のうち二人は非戦闘系のクラスだったのでお留守番をしていてもらうことにして、
「じゃあ、ええと……アリスだったかしら? わたしは試しにダンジョンへ行ってみようと思うのだけれど、あなたもどうかしら」
「お供します。攻略するなら早い方がいいですからね」
「私も行くよ! 前衛なら任せて!」
「せっかくだからわたしも行こうかな」
四人パーティ。ピンク髪の少女──ミーナも戦闘スタイルは軽戦士系らしいので、前衛二人に後衛二人でバランスが良い。私と紅髪の少女──リディアーヌはぶっちゃけ白兵戦もそれなりにこなせるし、思った以上に連携できそうだ。
頷きあい、ダンジョンへの侵入方法を確認していると、中年男性が慌てたように、
「待て待て。君達だけで行かせられるか。……レン、念のためについて行ってくれないか?」
「え、わたしなの?」
「このメンバーに私が付いて行くのもまずかろう。フーリ達には私から説明しておく。……というか、残りの二人の相手を頼むことになるだろうな」
「なるほど。まあ、そういうことなら」
こうしてパーティメンバーが一人増え、五人になった私達はダンジョンに侵入。
新しい挑戦者がいると一階から攻略しなければならないということで、まずはゴブリンと遭遇して、
「なかなか面白いところだったわね」
「モンスターを殴るのって気持ちいいね!」
その日のうちに五階までクリアして戻ってきた。
◇ ◇ ◇
私は異世界の英雄アリシア・ブライトネスの経験を持っている。というか、アリシアが日本に生まれなおしたような存在であり、異世界と日本で都合二度、魔王との戦闘に勝利している。
ここに来た時点でゲームのクリア後データをレベル上げしまくったような状態だったので、当然、ステータスもかなり高かった。
具体的には基本攻撃魔法の《聖光》を放っただけで雑魚が二、三体まとめて消滅していくし、杖で殴ってもゴブリン程度は一撃である。
異世界の令嬢らしいリディアーヌは剣が使える上にえげつない殺傷魔法をいくつも持っていた。こちらもゴブリンの百や二百どうとでもなりそうである。
パラレルワールド的な日本でヒーローをやっていたらしい永遠は「死んでも復活する」能力を持っているうえに怪力を誇り、ゴブリンだろうがダンジョンの壁だろうが平気でぶち抜く。ボス部屋までの最短距離がわかっていれば壁を壊して進むことさえ可能だった。
VRMMOのキャラクターになったミーナはだいぶまとも。踊りながらでないと戦闘能力が発揮できない難儀な能力の持ち主だったものの、スキルによりその場にいるだけで味方を強化できる。歌ったり踊ったりすればさらに効果が上がるため、直接攻撃できなくても十分だった。
監視役兼サポート役についてきたレンも様々な魔法を操り、その魔力量は無尽蔵に近いレベル。私やリディアーヌでさえ感嘆してしまうほど無造作に範囲魔法を放っており、他のメンバーに負けてはいなかった。
そして、神殿に戻った私達は、
「お帰りなさいませ。現地の方々との話はつけておきました」
「美味しいご飯も作ったから、みなさんで食べましょう!」
神殿に残っていた二人がばっちり裏方の仕事をこなしてくれたことを知った。
白髪のリリィは日常生活さえ困るレベルの虚弱体質ながら交渉能力に長けており、短時間で街の人たちと打ち解け、家に生活物資、食材までもたっぷり分けてもらっていた。その脳内には異世界の兵器の理論や設計図が眠っているらしく、そちらを利用すればこの世界でも家電くらいは再現できるかもしれないとのこと。
黒髪長身の翔子は普通の女子高生だったものの、家事全般が得意らしい。リリィが手に入れた食材や調味料を使い、大量のご馳走を用意してくれていた。年の功があるぶん、私の仲間であるノワールさんの方が腕は一枚上手かもしれないが、この歳でノワールさんに匹敵しているだけで偉業である。
友人の芽愛と話をしたら気が合いそうだ。コスプレも嫌いじゃないらしいので縫子とも相性が良いかもしれない。さらに実家は棋士らしく、着物の着付けもできるお嬢様らしいので鈴香とも──うん、なんだか他人の気がしなくなってきた。
夕食はレンの仲間たちも一緒に摂った。
風の精にハーフエルフにゴーレムに妖狐にダークエルフ。人間が一人もいない驚異のパーティだったが、異種族がたくさんいる異世界出身である私としてはこうした光景もまたなかなかに落ち着くものだった。
「でも、この分なら思ったより早くダンジョンをクリアできるかも」
一年くらいでクリアできたら、と、料理を味わいながら口にするレンにリディアーヌがふっと笑って、
「一年じゃ長すぎるわ。むしろ、半年もかけないつもりよ」
「え。でも、これからどんどん敵も強くなるんだけど」
「あら。わたしたちだって強くなるわ。それならお相子でしょう?」
強気の発言は現実のものになった。
私たちは二日に一回くらいのペースでダンジョンに潜っては複数階をクリアして帰ってくる、を繰り返した。強い敵を倒せばより多くの経験値が入り、ドロップ品も良くなるのだからレベル上げなど必要ない。可能な限り最速でボスに到達しては撃破していくパターンだ。
(普通の転移者は真似してはいけません)
「……十階のゴブリン軍団が簡単に薙ぎ払われていくのとかもはや悪夢じゃないかな」
「そう言われましても、私の《聖光連撃》はああいう時のための魔法ですし……」
ゴブリンが、オークが、リザードマンが、ダークエルフが、オーガが、その他さまざまなモンスターたちが現れては薙ぎ払われていった。彼らはゲームのように倒すと光の粒子となって消えていくので良心も傷まない。そうでなくとも人に牙を剥く悪しき者を許すつもりはなかったが。
「訂正するわ。三か月もあったら十分かもね」
「ごめんなさい。わたしたちが付いていけなくなるのでもう少し手加減してください」
ちょっと情けない懇願をするレンとそのパーティと共闘したりしつつ、私たちは結局、リディアーヌの宣言通り三か月でダンジョンをクリアし、無事に日本へと戻ったのだった。
◇ ◇ ◇
「……っていう夢を見たんですが」
「配信のネタにするかラノベでも書けば?」
せっかくの長い夢だったのに、同居人からはあまり良い評価が得られなかった。