自作品クロスオーバー集 ※旧『オリ主たちが異空間でばったり遭遇するだけの話』 作:緑茶わいん
「これからはゲームも『もう一つの現実』を作る時代! 自由な冒険をしよう!
歴史を変えるまったく新しいMMORPG『Unlimited Experience Online』遂に正式サービススタート!」
「話には聞いてたけど、本当にフルダイブMMOが遊べる時代になってるなんて……」
持てる手段を尽くして帰還してきた日本にて。
あっさりと家に帰れるとは思っていなかったものの、普通の一軒家でご馳走を振る舞われながらテレビを見ることになるとは思わなかった。
フーリと、フーリ以上の腕前と思われる美人のメイドさん(!)の合作による和洋中取り揃えた料理は全員で頑張っても食べきれるかわからないほど。全員女子とは思えないほど健啖家が揃っているようなのだが、フーリもメイドさんも張り切り過ぎである。
というか本当に女子ばっかりだ。
レンとしては落ち着く空間でありがたい。相手も人間離れした力を持っているというのがまたいい。
「でも、たった十年でそんなに進化するものなんだね? なにか原因とかあったのかな?」
「……ぎ、技術の進歩は著しいものですからね」
「アリス、めちゃくちゃぎこちない。別に言っちゃえばいいじゃない。思いっきりあたしたちのせいだって」
「? どういうことですか?」
アイリスの不思議そうな声に、メイドさん──ノワールが「それはですね」と答えた。
ゲームのキャラやら小説のキャラやらに変身してしまい、その能力まで得てしまったアリスたち。彼女らは夜な夜な邪気祓いなる儀式を行ってモンスターと化した悪い力を排除、世界に不幸なことが起こりづらくなるように力を尽くしてきた。
その過程でノワールの出身世界から「架空の未来世界の戦闘用ロボ」が実体化、彼女を捕獲して協力を仰いだことによって日本の科学技術が一足飛びに進化したのだという。
これにはミーティアがため息をついて、
「何を言っているのかわからないというか……ねえ、レン? こっちの世界には魔法みたいな力はないって聞いていたのだけれど?」
「わたしだって初めて聞いたよ! わたしたちが異世界で戦ってたのが普通に思えるくらい
「あら。私たちだって寝耳に水だったわ。今までわざわざ力を隠してきたというのに、貴女たちのせいで台無しだもの」
「それはごめんない」
やっぱりサキュバスの姿のまま来るのはやりすぎだったか。
思わず謝ると、アリスが「お気になさらず」と微笑んでくれる。
「隠す必要性が下がった、と考えましょう。私たちもこれからの身の振り方がとても楽になります」
「そう言っていただけると助かります……」
「っていうか、堅苦しい話し方するのナシにしない? たぶん私たちって同じくらいの歳だと思うし。……ね、アリスって何歳?」
「私は二十七です。みなさんは高校一年生で転移して十年でしたよね? そうするとだいたい同い年ですね」
「うそ。これで二十七歳なの? 全然見えないんだけど」
「あんたたちに言われるとなんか馬鹿にされてる気分なんだけど!?」
朱華のツッコミももっともである。レンたちは全員二十歳前の外見──ぶっちゃけ十年分の成長というか老化というかがほとんど表れていない。アリスたちのほうは緩やかに歳をとってはいるものの、そのスピードがかなり遅いうえに「この子たちに老いた姿って存在するのかな?」という感じである。
レンたちは百年か二百年か千年か、ある程度経てば普通に老けてくるはずなので、ある意味ではアリスたちの方が羨ましい。
「えーっと、それで……手伝ってくれる、って話なんだけど、本当にいいの? 異世界についてきてもらうことになっちゃうんだけど」
「別に構わないわ。一度行けば私の魔法でいつでも戻って来られるもの」
「待った。ラぺちゃん、いまなんて?」
「あら、もしかして『ラぺちゃん』というのは私の愛称かしら? さすがにそう呼ばれたのは初めてなのだけれど?」
「諦めなさい。フーリが変なあだ名をつけるのはどうしようもないわ」
このメンバー、話が変な方向に逸れ過ぎである。
「ラペーシュさんは特殊な魔法の使い手なんです。望む効果をなんでも再現できるうえに無制限に連射できます。さすがに行ったことのない異世界に手がかりなしで行くのは無理みたいなんですが」
「なにそのチート……?」
「魔王だもの。それくらいできなければやっていられないわ」
「いえ、私たちの戦った魔王はそこまで出鱈目ではなかったんですけど……」
代わりに何回も変身してきたので出鱈目加減ではどっこいどっこいかもしれない。
「ま、そういうわけだから、あんまり気にしなくてもいいわ。ラペーシュさえいればあたしたちは用事を済ませて帰れるから」
「いいなー。うちにもラぺちゃんが欲しいくらい」
「後百年もあればそこのレンが似たようなレベルに達するでしょう。残念ながら、私は二人もいないけれど」
「レンさん、魔王になるんですか?」
「あいにくその予定はないかな……」
言いながらレンは箸を止めた。
普通の食事もできるけれど普段あんまり食べないので、お腹には余裕があるけど気持ちが満足してしまった。後はみんなに頑張ってもらうことにする。幸い、ノワールが「余ったら冷蔵庫に入れておきましょう」と言ってくれる。
「あ、でも、コードを抜いていたのですぐには冷えませんね。どうしましょう……?」
「あ、大丈夫だよ。冷蔵庫のコンセントも挿しておいたから」
「わたしたちはストレージ──異次元収納も使えるので、そこに入れておけば新鮮なまま保存できますよ」
「では、密閉容器の出番ですね」
文明の利器である密閉容器に入れた料理をストレージに収納。もはや最強である。容器を買えるだけ買い占めて帰りたい。
「あのさ、フーリ? さっきのアリスたちの話だけど、もしかしてわたしたちの『悪い予想』一つ外れたのかな?」
「え? ……あー、そっか。さっきの話聞いてる限り、こっちの世界って滅びそうにないよね」
「ちょっと待ってください、滅ぶってなんですか!?」
アリスが慌てて尋ねてきた。
「そんなに直近の話じゃないんだけど……」
世界は存在し続けている間に少しずつ綻んでいって、そのうち限界が来ると『闇』が世界の全てを吞み込んで無に還るという話。
レンたちも最近聞いたばかりの説について披露すると、アリスたちは揃ってため息をついた。
「そんなことが……。ラペーシュさんは知っていましたか?」
「知っていたというか、予想はしていたわ。滅びないものは存在しない。世界だって例外じゃないでしょう。邪気を祓えず蓄積していけば滅びが早くなるのも必定」
「でも、アリスちゃんたちが綻びを邪気っていう形で祓ってくれているから、こっちの世界はそう簡単に滅びなくなったと思うんだ」
異世界を救った後、地球が滅びないように手を打つ必要がなくなった。これは正直、非常に大きい。
「邪気祓いだっけ。わたしたちにできることがあったら協力させてくれないかな? こっちも助けてもらうんだからお相子ってことで」
「いいんですか? ……レンさん、ときどき人が良すぎるって言われませんか?」
「だからあんたが言うんじゃないわよ」
「あはは。わたしがこういう性格なおかげでみんなが助けてくれるのかなって」
話し合いは進み、レンたちに敵意がないことはアリスたちが証明してくれることになった。
異世界からの帰還者たちは健康診断や予防接種を受けたうえでこっちの世界の関係者に連絡を取り、面会したり棲み処を移したりできるように手配を行う。
転居等で同じ場所に住んでいない家族・親戚も多いはずなのでそのあたりも政府が協力してくれることになった。
「至れり尽くせりで本当に助かるなあ……」
「ほんと。予防接種とか私たちじゃ思いつかなかったよね」
向こうで生まれた子たちは当然、そういうのは受けていない。異世界生まれの子は基本丈夫なのでそうそう風邪をひいたりしないが、異世界特有の変な病気を持っている可能性とかはある。その辺も含めて先に確認しておいた方が安全という話だ。
「そちら側の代表はレンさんということで構いませんか? たぶん、いろんなところに引っ張り出されることになるかと……下手をすると総理とも面会することになると思うんですが」
「わたしが異世界側のリーダーで間違いないけど……うん、誰かに代わってもらいたくなってきた」
「だーめ。いまさらレン以外が出て行ったらどっちも混乱するでしょ」
総理大臣と面会とか聞いていない。アリスは「さすがに合衆国大統領は来ないと思いますので」と言ってくれたものの、なんの慰めにもなっていない。というかそれは来るフラグだ。
「さて、話も食事も終わったかしら?」
みんなが落ち着いたところで美少女魔王──ラペーシュが告げた。
「協力してくれると言うのなら、さっそく今夜、付き合ってもらおうかしら。私たちの戦い、邪気祓いに」
◇ ◇ ◇
「それで、このような趣向が用意されたのですね」
「うん。いきなり呼んでごめん、二人とも」
「いいえ。むしろこんな面白そう──重要な場に呼んでいただけないのは困ります、ご主人様」
その日、レンたちはアリスたちが「シェアハウス」と呼ぶ場所に宿泊することになった。
戦いがあるということでシオンたち他のメンバーも呼び寄せ、娘たちも(こっちに来ている子は)全員集めた。今はノワールや朱華が面倒見てくれている。
向こうのメンバーからここへやってきたのはアリスとラペーシュ、それから新顔である一人? だけである。
「ところで、ご主人様? そちらのそこはかとなくシンパシーを感じる方はどちら様でしょうか?」
「初めまして。異世界のゴーレムごときと同類にされるのは心外ですが、類似した性質を持つのは確かのようですね。私はシュヴァルツ。この日本よりも遥かに進んだ未来技術によって造りだされた戦闘兵器です」
「ああ、例のゲームが作られた原因の子」
「そこ説明はどうかと思うのですが──アリシア・ブライトネス? 私に関する説明が雑では?」
「すみません。口で説明するより話してもらった方がわかりやすいかと思いまして」
ノワールによく似たメカ娘はアリスをジト目でにらむと頬をつんつんつっついたりし始めた。見た目よりもお茶目なところもメイに似ている。この分だと「戦闘兵器」というラベルから想像されるほど危険な存在ではなさそうである。
「あの、それで、私としてはそちらの方が気になって仕方ないんですが……」
「お初にお目にかかります、アリシアさま。わたくしはシオン。ご覧の通りの妖狐でございます」
「これはご丁寧に。私はアリシア・ブライトネス。聖職者をしております。妖狐ということは人間の姿にもなれるのですか? それと、その、触っても?」
「ええ、どうぞ」
許可を得たアリスはシオン(通常サイズ・狐モード)を抱きしめると「ふわふわです……」と恍惚の表情を浮かべ始めた。アリス自身もシオンに負けず劣らず可愛いので、レンとしてはついどきっとしてしまう。すかさずラペーシュが「貴女にはあげないわ」と囁いてきた。
ひとしきりアリスがシオンを撫で終わったところで、
「ところで、こちらは私立萌桜学園……ですよね?」
「はい。もしかしてご存じでしたか?」
「ええ。高校進学する際に調べたことがありましたので。こちらも良い学校ですよね」
「はい、とても」
初対面とは思えないほど穏やかに会話を交わすシオンとアリス。けっこう気性が近しいのかもしれない。仲間であり異世界の聖女であるエル(現在は異世界でお留守番中)ともよく似たところがあるし、アリスはこのままレンたちのパーティに入ってもやっていけそうな逸材である。
本当にいい人たちと巡り合えたな、と思いつつ、レンはラペーシュに視線を送って、
「それじゃあ、そろそろ」
「ええ。始めましょうか。……化け物退治を」
寄り集まった邪気が変化して化け物になる、という不可思議な光景の後、レンたちの前に大型のモンスターが姿を現した。