自作品クロスオーバー集 ※旧『オリ主たちが異空間でばったり遭遇するだけの話』 作:緑茶わいん
「─────ッ!!」
敷地内に張られた結界の中、大きく咆哮を上げたのは炎を纏った巨鳥だった。
「すごい。これ、フェニックス……?」
「これは私たちも見たことなかったね。……じゃあ、お手並み拝見っ!」
笑みと共に飛び出したのは風そのものとも言える精霊・フーリ。
持ち前のスキルで勢いよく空へ舞い上がると、まだ実体化しきっていないのか動けない様子の不死鳥めがけて接近、その実体化が終わった直後に、
「
無数の風の刃を内包する見えない牢獄を形成。
胴体を見事に捕まえられた不死鳥は悲鳴と共に逃れようとするも、一手遅い。身に纏う炎ごとずたずたに切り裂かれた彼(?)はなすすべもなく倒れ、光の粒となって消滅していく。
その光景を眺めていたレンはなるほど、と頷いた。
現れるモンスターは確かに強そうだ。五十階で戦ったドラゴンほどとはいかないにせよ、フィールドによっては四十階のボス戦と同等の脅威度があるだろう。ただ、ゲームの如く戦闘開始時に多少の待機時間があるため、そこを狙えば大技で仕留められる。
分析している間に私立
先程とはうって変わって人型大の敵。人間そっくりのボディを持ったそれはシュヴァルツの同型機のようだが、意思を持っていないことを示すようにその目は虚ろで単なるモニターの役割しか果たしていない。とはいえ未来世界の戦闘ロボットである以上、自由にさせればどんな兵器を持ち出してくるかわかったものではないが、
すかさず飛んだ二本の矢が風の加護を受けて装甲を貫き、心臓と左目の位置を見事に破壊した。
衝撃にぐらりと身を揺らすシュヴァルツ・コピー。そこに二の矢、三の矢が届いて四肢の関節を破壊。矢を放ったアイリスとミーティアはそれで満足せずさらに矢を射かけ、敵を光の粒へと変えた。
「なら、これはどうかしら」
三体目は巨大なオーク。
装備からも大きさからもボス級だということがわかる。ここまで大きいとオークというかオーガだ。タフそう、という意味では最初の不死鳥以上の強敵かもしれないが、
「じゃあ、これはわたしが──っ!」
実体化が終わらないうちに近づき、終わると同時に尻尾を一閃。
「ドレインスラッシュ!」
頸動脈を切り裂かれたオークが咆哮を上げる中、レンは敵の背に取り付いて──
出血+致命的なエナジードレインを受けた受けたボスオークはなすすべもなく消滅。
そこへさらなる敵の影。
何本もの首を持った大蛇。ヒドラかはたまたヤマタノオロチか、もはやなんでもアリな感のある強敵にシオンが進み出て、
「狐火!」
九つの首にそれぞれ九連射された清浄なる劫火がオロチに再生する隙を与えることさえなく滅びを齎した。
「……呆れたわ。貴女たち、その強さは英雄級よ。世が世なら世界の敵として討伐されていてもおかしくないレベル」
「あはは。これだけ強くなってもまだダンジョンには終わりが見えないもので」
これ以上やっても同じだろう、と言わんばかりに邪気の実体化を止めるラペーシュ。
レンが苦笑しながら答えると、唯一出番のなかったメイが「もう一体出して頂けないでしょうか」と空気の読めないことを呟いた。
美少女魔王は面白そうな顔をして「まあいいけれど」と言い、軽く手を持ち上げて、
「──あら。なんだかお客様のようね?」
妙に呑気なその声とほぼ同時、レンは周囲の結界に異変が起こるのを察知した。
ごくごく小規模かつ迅速な干渉。破壊するのではなくすり抜けるようにして中に侵入してくる何者か。気をつけていないと気付けないくらいの違和感だったが、それはむしろ侵入者の弱さではなく強さを示している。
とん、と。
校庭に降り立った人影が二つ。黒い衣を纏って姿を隠した敵(?)の片方から魔力の反応。直後、空中に無数の火の玉が出現。
シオンの得意技を思わせる威力と数にレンは最大数のマジックアローを生み出そうとして──。
光の矢が全て、生まれた端から消滅させられていく。
「
すかさずフォローに回ったフーリ、アイリス、ミーティアが風の魔法で火の玉を吹き散らすと、メイが砲身を形成して火球弾頭を発射。着弾と共に爆炎が生まれて二人の姿を覆い隠し、
爆風を突き抜けるように跳躍してくる影が二つ。
一つはふさふさの尾をいくつも携え、もう一つは黒い蝙蝠の翼と尖った尻尾を備えている。
「妖狐──!?」
「それに、サキュバス!?」
どちらもアリスたちと同じくらいの外見。その身体から放たれる威圧感と魔力の気配はレンたちの戦った異世界の魔王に負けていない。
「どなたかは存じませんが、敵意があるというのなら……!」
声を上げたアリスが空中に十を超える聖光を生成。その一つ一つが仲間の用いる《聖光》に匹敵することを感じたレンは味方のやることながらぞくりと寒気を覚えるも、この大技さえもサキュバスの女がただ睨みつけただけで霧散していく。
いや。
視線を媒介とした魔法が行使されているのだ。精度と速度はけた外れと言ってもいいレベルで、簡単にはだしぬけそうにない。
「非常事態。自己判断により承認プロセスを省略。武装展開」
進み出たシュヴァルツがマシンガンのような兵器から無数の弾を放てば、不可視の防御障壁がその全てを防ぎ切る。
強い。
向かい合ってよーい、どん、の勝負ならレンたちもいい勝負ができたかもしれないが、不意の乱入、こちらには相手の情報がない状況では一歩も二歩も先を行かれている。
シュヴァルツの攻撃を防ぎながらも妖狐のほうは右手を持ち上げて特大の火球を頭上に打ち出し、
──ぱぁん、と、美しい花火が空に咲いた。
沈黙。
「あれ……?」
もしかしてドッキリか何か? と疑問に思っていると、二人は敵意がないことを示すように両手を持ち上げてゆっくりとこちらに歩いてきた。
「お騒がせしてすみません。この方が自己紹介も早いかと思ったので」
「私たちは敵じゃありません。ただ、少しお話がしたいだけなんです」
プレッシャーは完全に霧散している。二人の笑顔からも敵意は感じられない。ついでに言うとどちらもかなり高レベルの美人だ。
アリスたちの方を窺うと、彼女らも「なんがなんだか」という顔をしている。
「アリスの知り合い、ってわけじゃないんだ?」
「レンさんたちのお知り合いでもないんですね?」
変身者でも転移者でもないならどこから湧いてきたんだこの妖狐とサキュバス。
二人して頭上に「?」を浮かべていると、謎の二人組はこちらの困惑を察して、
「私たちは地球産の異能者です」
もはや何がなにやら。
「ねえ、アリス? ちょっと政府と『お話』したくなって来ない?」
「そうですね。さすがに隠し事が多すぎるといいますか、この分だと他に宇宙人とか超能力者がいてもおかしくありません」
◇ ◇ ◇
立ち話もなんだから、と、とりあえず学校の屋上を借りることにして。
ビニールシートを敷いて水筒から注いだ紅茶でひと息ついた。
(ノワールが持たせてくれたものをレンのストレージに入れてあった)
妖狐のほうは羽々音悠奈、サキュバスのほうは羽々音沙羅、とそれぞれ名乗った。
「苗字が同じということは結婚されてるんですか?」
「いいえ。同性婚の成立がもう少し早かったらそれも考えたんですけど、今更いいかなって」
「悠奈ちゃんと私は従姉妹なんです。少なくとも戸籍上は」
「じゃあ付き合ってはいるんですね」
「でもレン。同性のペアを見て『結婚してるのかな?』って先に思うのも相当だよ」
確かに。
的確すぎるフーリのツッコミに悠奈と沙羅までくすりと笑った。どことなく気品を感じさせる笑い方だ。
と、シオンが「……羽々音」と呟いて、
「高校の同じクラスに同じ苗字の方がいらしたような気がします」
「私の親戚かも。羽々音家は天使の家系だから」
キリスト教系のお嬢様学校に通う子もいるのだと沙羅。
「天使の家系なのに貴女はサキュバスなのですか?」
「あ、えっと、私はもう一人のお母さんの血が濃く出ちゃって。天使の翼も出そうと思えば出せるんだけど」
見せてくれた羽毛の翼は堕天使の如く黒く染まっていた。
というか「もう一人のお母さん」って。どこかで聞いたような台詞というか、
「なんだかこの子たち、私たちに似ているわね」
「そうなんだ? じゃあ、あなたたちも女の子同士で?」
「私たちはレンさんとの間に娘がいます」
「奇遇だね。うちもなんだ」
聞けば悠奈にはもう一人、実質上の結婚相手がいてそれぞれとの間に娘もいるという。異種族同士の混血、しかも女の子が複数。さらにどこかで聞いた話である。
「妖狐が重婚かあ。ひょっとしてサキュバスが重婚するくらい大した話じゃなかったのかな」
「だそうですよ、アリシア・ブライトネス」
「そもそも女同士も妻が複数いるのも大した話じゃないでしょう。ねえ、アリス?」
「なんで私に振るんですか!?」
例によって話が全く進まないが、まとめると悠奈たちは「実は地球上に存在していた」妖狐やら天使やらサキュバスの末裔であるらしい。部外者にはその存在を隠して生活している彼女たちだが、TV中継された帰還者たちの中に妖狐がサキュバスがいるのを見て接触してきた。
なんかいきなり戦闘になったのはレンたちが戦っているところにちょうど出くわしたからで他意はないらしい。
なお、悠奈たちはアリスたちよりいくつか年上。やっぱり実年齢通りにはとても見えない。
「それで、話ってなんなんですか?」
「うん。そこのシオンちゃんに各地の稲荷神社の清めをお願いしたいんだ」
日本の妖狐は崇拝の対象とはされているものの、属性としては「魔」あるいは「無」寄りの者が多く、神社をパワースポット化することはできても神聖な力を与えることにはあまり向いていない。
そこで、妖狐という共通要素を持ちながら清浄な属性を併せ持つシオンの力で神社のご利益をさらにパワーアップさせたいらしい。
これにシオンは「なるほど」と頷いて、
「そういうことでしたら是非協力させてくださいませ」
「ありがとう。手伝ってくれるとすごく助かるよ」
「でもさ、シオンちゃんが神聖な妖狐だってことまでテレビで見ただけでわかったの?」
「ううん。それは実際会ってみてわかったこと。……お願いしたかったことが実はもう一つあってね、当初の目的はそっちだったんだ」
前置きした上で悠奈が口にしたのは、
「私も異世界に連れていってくれないかな? 老後のために今のうちに見ておきたいんだ」
「老後、ですか?」
きょとん、とアリスが首を傾げた。
たぶん「まだまだ先の話では?」と思っているんだろう。それはアリスも同じだというか、常人以上に長生きしそうなメンバーが多すぎて不思議な感じである。
ただ、悠奈たちはすでに三十目前にはなっているわけで、
「悠奈さまと沙羅さまは長命ではないのですか?」
「ううん。今は周りから浮かないように老化をわざと早めてるだけ。その気になったら全盛期まで若返れるし、普通にやれば百年二百年は普通に生きられるよ」
「じゃあ、ずいぶん先の話なんじゃ?」
「そうでもないよ。このまま行ったら私たちは文明社会から弾きだされちゃう。これからますます世界は狭くなっていくからね。田舎で隠居するにしても戸籍がないと怪しまれるし、ほいほい偽造戸籍作るのもアレでしょ」
話がだんだんわかってきた。
「娘たちに孫ができるくらいまでか、もう少し先か──私たちがいなくても十分なところまで来たら、余生を過ごせる場所が欲しいんだ」
「それで、わたしたちの世界に」
「うん。詳しくは実際に見てからになるし、話し合わないといけないこともあるだろうけど、候補は多いほうがいいでしょう?」
まさか、レンたちの世界に移住希望者が出るとは。
一般人から希望されたら基本的に断るつもりでいた。ただ、悠奈たちみたいな人種なら話は別だ。異能を持った彼女たちはむしろ異世界のほうが生きやすいだろうし、受け入れることに異存はない。
「悠奈さんたちの娘さんとも会ってみたいですね」
「あ、そうだね。私もレンちゃんたちの子どもに会いたいな」
異世界に召喚されてサキュバスになって戻ってきたら地球が大変なことになっていた──というか、大変なことになっていたことが発覚した。
世間は意外と狭いというか、不思議なことで溢れているのかもしれない。
とりあえず既執筆分は打ち止めです
続きがあるかはノリ次第ということで……
調子に乗ってさらに別作品のキャラを増やしました
羽々音悠奈と羽々音沙羅は小説家になろうで完結済みの
『ゆりこめ ~呪いのような運命が俺とあの子の百合ラブコメを全力で推奨してくる~』
の主人公とヒロインです