疾れイグニース!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1レース(3)女の子が気になるの?

「ご、誤植……そうだったの……」

 

「ああ、それよりもCクラスの女子はどうなんだ?」

 

「え? 気になるの?」

 

 真帆が急にジト目で炎仁を見つめる。炎仁が戸惑う。

 

「い、いや、話の流れ的に聞くだろう、それは……」

 

「ふ~ん……」

 

「連絡とか取り合ってないのか?」

 

「まあ、ぼちぼちね……」

 

「そ、そうか……」

 

「飛鳥さんは色々と忙しそうよね」

 

撫子飛鳥(なでしこあすか)さんか……」

 

 炎仁はおかっぱボブのヘアスタイルで綺麗に切り揃えられた髪に混ざる桃色のメッシュが特徴的な女性を思い出す。真帆が笑う。

 

「名門と呼ばれる厩舎に入ったから、片時も気が抜けませんわ!って、この間すれ違った時にぼやいていたわ」

 

「プレッシャーとかが大変そうだな」

 

「そうね、親戚の撫子(なでしこ)グレイスさんも同じ厩舎に入ったことだし」

 

「ああ、関西競竜学校を出た彼女か……」

 

 炎仁は金髪の縦ロールで、縦ロールの部分にピンク色のメッシュが所々入った派手なヘアスタイルの女子のことを思い出す。真帆が頷く。

 

「ジパングと英国のハーフの方ね」

 

「ご両親ともジョッキーなんだっけ?」

 

「そうね、英国や香港などを拠点に活動しているわ」

 

「娘さんは日本でデビューか……」

 

「その辺りは色々と考えがあるんでしょうね」

 

「飛鳥さんとお互いに意識し合っている感じか?」

 

 炎仁の問いに真帆が首を傾げる。

 

「どうかしらね? 以前トレセンで見かけた時は和やかに談笑していたけどね」

 

「それ、本当に和やかだったのか?」

 

「う~ん、そう言われてみると、若干バチバチ感が漂っていたかも……」

 

 真帆が苦笑を浮かべる。

 

「やっぱりな……」

 

「でも、そういう対抗心はあっても良いんじゃないかしら?」

 

「まあ、それはそうだけどな」

 

「問題は彼女よ……」

 

「彼女?」

 

「青空ちゃん」

 

「ああ、朝日青空(あさひあおぞら)か……」

 

 炎仁は明るい髪色をしており、やや短い毛先を遊ばせているのが印象的なスタイル抜群の女の子を思い出す。真帆が頷く。

 

「そう」

 

「関西の厩舎に行ったんだよな?」

 

「ええ」

 

「さっそくやらかしたのか?」

 

「やらかすのは前提なのね……」

 

「まあ、あのキャラクターだからな……」

 

「同じ厩舎に入った火柱(ひばしら)ほむらさん、覚えている?」

 

「ああ、彼女も関西競竜学校出身だったな……」

 

 炎仁はやや長身で赤毛のポニーテールで、かなり荒っぽい関西弁が特徴的な女の子のことを思い出す。真帆が頭を軽く抑える。

 

「これは噂レベルなんだけど、青空ちゃんと火柱さん、栗東トレセンで取っ組み合いのケンカをしたとか……」

 

「ほ、本当かよ?」

 

「でもやりかねないでしょう?」

 

「確かにな……連絡は取っていないのか?」

 

「電話では元気そうだったけどね……」

 

「マジだったら謹慎処分とかが下るから、こっちにも伝わってくるだろう」

 

「それはそうね……」

 

 真帆が顎に手を当てて頷く。

 

「それくらいマジな気持ちで取り組んでいるってことじゃないか?」

 

「そうだと良いんだけど……」

 

「取っ組み合いをしても不思議じゃない組み合わせではあるけどな……火柱さんに関してはほとんどイメージだけど」

 

「心配ではあるわね……」

 

「そもそもなんで関西に行ったんだ?」

 

「あっちの方が自分に合うって思ったみたいよ」

 

「ふ~ん、まあ、本人が決めたことだから、俺らがとやかく言ってもな」

 

「青空ちゃんの場合、直感で動いているところがあるから……」

 

「勝負事の世界だ、直感で動いた方が良いかもしれないぞ」

 

「それはそうかもしれないけどね……」

 

 真帆が頬杖をつく。炎仁が尋ねる。

 

「直感と言えば、理論派の彼女はどうなんだ?」

 

「え?」

 

「我らがクラス長だよ」

 

「ああ、海ちゃん?」

 

「そう、三日月海(みかづきうみ)……」

 

 炎仁は藍色の髪を三つ編みにして片側に寄せた髪型で眼鏡をかけた小柄な女の子のことを思い出す。真帆が首を捻る。

 

「あれ? 最近会っていない?」

 

「いや、何度か見かけただけだな」

 

「そう……調教の様子を見学させてもらいましたとかって言っていたけど……」

 

「そうなのか?」

 

「声はかけられなかったの?」

 

「いいや、全然」

 

 炎仁は首を振る。真帆は苦笑する。

 

「……彼女のことだから、何らかのデータを取るだけだったのかもしれないわね……」

 

「そこは声をかけて欲しいところだぜ……何のデータを取ったんだよ……不気味だな」

 

「今度会ったら聞いてみるわ」

 

「答えを聞きたいような、聞きたくないような……」

 

 炎仁が軽く頭を抱える。真帆が笑う。

 

「まあ、Cクラスの女子陣は大体そんな感じよ」

 

「そうか、みんな頑張っているんだな」

 

「そうね」

 

「俺も負けずに頑張らないとな!」

 

 炎仁が両手を力強く握る。

 

「あら? 落竜で落ち込んでいるかと思ったらそうでもなさそうね?」

 

「うん?」

 

「あ、貴女は⁉」

 

「な、撫子瑞穂(なでしこみずほ)! ……さん」

 

「お久しぶりね、紅蓮炎仁君と紺碧真帆さん」

 

 ピンク色の派手なトレーニングウェアに身を包んだ、桃色のメッシュが特徴的なショートボブで小柄な体格の美女が炎仁たちに向かって微笑む。

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