・タロウ節が少ない
・筆が遅い(今更)
結構タロウさん小説にするの難しいキャラしてる…
我が腕の拙さを呪わざるを得ない…
「デュエル部?」
デンシティ・ハイスクールの一角、『DUEL CLUB』の看板が立てられた自動ドアの前に藤木遊作は立っていた。右へ流れる青い髪、それくらいしか特徴のない地味な風貌だが、その下から覗く翡翠の眼は鋭く物事を見据えているように見える。ドアの前で口を結んでいると、横から自分の名前が呼ばれた。
「藤木~」
目を向けると一人の男子生徒がこちらに手を振っている。自分より背の低く肉付きのいい、癖のある緑の髪を後ろの流したひょうたん顔の男子だ。
「お前…誰だっけ?」
「誰ってこの前話したろ!?島だよ、島直樹!」
「あぁ…同じクラス、だよな?」
「そうだよ…お前入部しに来たのか?デュエル部に」
「俺がデュエル部に…?」
島直樹の問いに遊作は視線を逸らす。どうやらデュエル部に用があると勘違いしているらしいが、ここに何の用もなく立っているのも不自然。ここは適当に流して離れたほうがよさそうだ。
「あ!ここデュエル部の部室か」
「とぼけんじゃねぇよ。ココはお前みたいなLINK VRAINSにまったく興味ナッシング野郎が来るとこじゃねぇんだよ」
「何騒いでいるんだい島君」
呆れたように島が人差し指を振っていると、不意にドアが開いた。声の主と思しき、眼鏡をかけた七三わけの髪型の上級生がこちらを見ている。デュエル部の所属だろう、島が事情を説明している中、遊作は口を結んだ。島一人ならごまかしは聞いたかもしれないが、二人だと怪しまれるのではないか。策を練るべく二人を凝視していると、不意に眼鏡の上級生がこちらを見た。疑心のない、優しい目だ。
「入部希望者は大歓迎だ。さ、はいって」
上級生はそういうと奥へ戻っていく。島の「デュエル部に興味がある」という言い分を好意的にとらえたらしい。だがこれ以上デュエル部に接近するのは気が引ける。
「あ…いや……」
『はい!ありがとうございます』
断ろうと二の句をつむごうとして、自分の声が礼を言う。だが自分の喉から出たものではない、一瞬自分の左腕を睨むが言ってしまったものはどうしようもない。観念した遊作はデュエル部の部室に足を踏み入れた。
黒く塗られた長椅子の周りに部員が集っている。恰幅のいい老け顔の男、逆に細い体躯のおかっぱ頭の生徒、中学生と見間違う背丈の人もいたが、遊作の目は一人の生徒に一瞬鋭く向けられた。
部員の中で唯一の女子、遊作がデュエル部の前に立っていた理由。予定は少し狂ったが、相手との面識を持つことができた。本来彼女に接近するために、ここまで来たのだから。
(財前、葵…)
(やっぱり有り得ない…無理だ)
(何が?)
遊作がデュエル部を訪れる前日、Den Cityの移動屋台の中で草薙翔一が観念したように首を振った。彼の前には料理に使えるとは思えない大型モニタ、屋台の壁に目いっぱいに設置されたそれに映し出されているのはDen Cityを日夜流れ行きかう情報の数々。それらを吟味し、取捨選択し、時には自らネットワークへ指を走らせ情報を勝ち取りに行く。遊作の知己の中で、草薙翔一ほど優秀で信頼のおけるハッカーは思い浮かばなかった。
そんな彼が顎髭に手を当て唸るほどの事態、只事ではないと画面をのぞき込む。表示されていたのはある一人のプロフィール。ショートボブの茶髪が特徴の、否、それくらいしか目立った特徴のない少女だ。
(財前葵、16歳。SOLテクノロジー社セキュリティ部長・財前晃の義理の妹。そして…彼女こそブルーエンジェルの正体)
草薙の読み上げたプロフィール、そこに記載されていない最後の情報に首をかしげる。たしかLINK VRAINSにそんな名前のデュエリストがいたような気がするが、あちらはもっと派手な印象があった気がする。
しかしLINK VRAINS、もといネットワークという世界では誰もが仮面をつけている。稀にGo鬼塚のような現実とVRの見た目が変わらない者もいるが、大体が「なりたい自分になるため」や「現実への忌避感」、または「正体を隠すため」に“架空の自分”を作り上げる。彼女もその例に漏れず現実とLINK VRAINSのギャップが存在しているだけ、草薙を苦心させるほどの存在ではないはずだ。
(それで?)
(それで、って…この制服見て気づかないか?)
遊作の疑問に草薙が半ば呆れたように顎で指す。画像の彼女は黒のブレザーにベージュのベスト、青いネクタイをつけている。指摘を受け、ようやく言いたいことに気づいた。
(うちの生徒?)
(そうだ。そこでだ…遊作が彼女と知り合いになればSOLの財前から“お前の事や俺の弟の情報”が得られるかと思ったんだが…やっぱりそれはあり得ない)
遊作と同じ高校に通う生徒なら、接点を持つことは容易だ。教室、廊下、食堂、部活などで面識を持ち、徐々に仲を深めていけばいい。
だが草薙はそれを否定した。言ってくれさえすればやり遂げてみせるというのに、そんな遊作の疑問を代弁したのは机の上のデュエルディスクの球体状ディスプレイに映り込んだ“目玉”だった。
(ありえないって、何が?)
“目玉”の主、
(何がって…遊作だぞ?遊作が女の子と話しているとこ、想像できるか?)
(確かに!想像しろってこと自体無茶だな)
(だよな、無理だ無理無理!絶対無理!ありえない!ありえるわけがない!)
思わぬ否定の嵐に困った顔をする遊作。
はっきり言って心外だった。自分は3つの目的達成と無関係な第三者による介入を防ぐために必要以上の接触を
無意識に反骨精神を滾らせた遊作は財前葵を捜索を開始、Aiの協力の下見事発見し、接点を持つべく後を付けていたところ彼女がデュエル部に入っていくのが見えた…というのがここまでのあらましである。
「1年の藤木遊作です」
当たり障りない挨拶と共に頭を下げる遊作。最初は余計な自己主張はせず、相手に出方を伺ってみる。すると部員の内の一人が「新型デュエルディスク見るかい?」と話しかけて来た。スマートウォッチを思わせる簡素な外観の腕輪、デュエルをサポートするAIが搭載されたSOLテクノロジー社製の最新機種だ。
「詳しいのね」
初めて見る筈のディスクを知っていたからか、葵が関心するように興味を示した。
「島が自慢していたからな。しかし、彼だけじゃなかったのか」
「別に俺だけなんていってねぇだろ、人聞きの悪いこと言うんじゃねぇよ!」
なんてことない遊作の物言いに島が噛みつく。このデュエルディスクは財前葵の兄、財前晃の伝手により優先的に配布されたものらしい。部室のほぼみんな同じデザインのディスクを付けているため、葵には遊作のディスクだけ妙に目に付いたのかもしれない。
「カード収納式デュエルディスク…プレイメーカーと同じね」
「そうなんだよこいつ、プレイメーカーの真似してんのか知らねぇけどさ」
遊作のディスクは他のものとは違い、手のひらサイズほどの円盤状ユニットが付けられた武骨な物だ。データのデッキではなく、物理的に存在する紙製のデッキをセットしてカードを読み込む“旧式”、SOL社製の物品の流通が著しいDen Cityでは珍しいのだろう。だから青いが次のように申し出てくることは、遊作の中では予想が付いた。
「デッキ見せてくれる?」
葵の申し出に部長──名を細田と言ったか、眼鏡をかけた上級生に失礼と咎められた。デッキはデュエリストの命、内容が分かれば対策も容易だ。それ以前にデッキを見せるのは一種のマナー違反として、デュエリストの間では暗黙の了解となっていた。
しかしそんなことは想定の内、遊作はズボンのホルダーにしまったデッキを渡した。四十枚一組、扇状に広げて中身を確認、納得したのか戻して返そうとした時、横から伸びた手にデッキが攫われた。島だ。
「ちょっと拝見~…プーッ!何だコレ、お粗末なデッキ!」
デッキの中身を見た島が噴き出す。《ゴブリンの秘薬》、《魔法剣士ネオ》、《落とし穴》…デュエルモンスターズが生まれたばかりのころ創造されたカードたち、非常に懐かしい面々で組まれたデッキ。だがこのデッキは種族も《カテゴリ》もバラバラ、カード同士の親和性も関連性もまるでない、“ただのカードの集まり”なのだ。
こんなデッキでは百戦百敗は必然だ、島は大笑いしながら遊作の肩を叩いた。
「まぁウチにゃもっとお粗末な奴いるけどな!気にすんなよ藤木!」
「失礼だよ島君。他人やその人のデッキを馬鹿にするなんて」
腹を抱える島だったが部長の注意を受けしおらしくなり、悪かったとデッキを返した。しかし遊作の興味は別の所に向いていた。
「…部員はこれで全員なのか?」
「いいえ、私は会ったことないけど、あと一人いるらしいの」
「そうそう財前さん。今日は丁度予定があったんですよ、桃井君が合流したら顔合わせがてらミーティングを始めましょう」
「えぇ~!?今日“変人タロウ”来るんすか?」
げんなりしたように島が呻く。その渾名に二人そろって首を傾げた。
「「……“変人、タロウ”?」」
その時ドアが開いた。振り向くと縦に重なった段ボール箱がドアを避けて入ってくる。かなりの高さが積み上がっているが、微塵の揺れさえ起こさず近づいてくるバランス感覚は少し驚嘆した。
「部長、倉庫の備品を持ってきた」
「桃井君!ちょうどいいところに来てくれましたね!」
箱の向こうから聞こえてきた声に細田が駆け寄った。荷物の上半分を取ると近くの机へ置くよう指示を出す。それに従い、荷物を降ろし出てきた顔に葵が思わず声を上げた。
「あなた…今朝の」
「アンタとは縁があるな」
黒いブレザーに赤いネクタイ、白いシャツを着た赤みがかった茶髪。腕には黄色いカード収納式デュエルディスクを付けている。
彼女とぶつかり、勝手に葵と縁を結んだ
「桃井タロウだ」
「…藤木遊作」
「これでお前とも縁が出来たな!」
差し出された手を握り、少しばかり上下に揺らす。軽く自己紹介を終えたタロウは踵を返して段ボールを開けた。聞けば倉庫に保管されていたソリッドヴィジョン用の機器を取りに行っていたらしく、説明書らしき冊子片手にバラバラに収められた部品を取り出していく。葵はそんなタロウの背に声を掛けた。
「あなた…デュエル部だったの?」
「ああ、部長との縁でな」
「桃井君は先月ウチに入ってくれた部員です。コレを倉庫で探していた時に手伝ってくれまして…」
曰く、新入部員勧誘の時期も終わり本格的に部としての活動を始めていこうと思っていたところ、確か学校創設時にSOL社製のAR対応型ソリッドビジョン投影機が配布されていたことを思い出したが、搬入されたのはかなり前だった為か、書類上あることは分かってもどこに仕舞われているか分からず、倉庫の中を探す羽目に。ホコリ舞い散る倉庫をひっくり返さんばかりに探し回るも見つからず、途方に暮れていた時に声を掛けられたのだという。
『探し物か?手伝おう、これでアンタとも縁ができたな!』
最初は見ず知らずの生徒に手伝ってもらうのは悪いと思ったが、半ば無理やりに手を貸してくる彼に根負けし手を貸してもらった結果、すぐさま発見。動作確認を終える頃にはデュエルに興味を持っていることを知り勧誘したところ心よく引き受けてくれたそうだ。
「…で、何で変人タロウ?」
「変人タロウじゃなくて桃井タロウだ」
「あ、ごめんなさい。財前葵よ」
「よろしくな。改めて、アンタとも縁が出来たな!」
零れた疑問をコンマ1秒で訂正され慌てて謝罪する。しかし当人はさほど気にしていないのか、朝も聞いたあの言葉をまた口にした。一瞬喉の奥が窮屈に感じたが、不自然じゃないように頬を釣り上げた。
「よく分からんが、主に島がそう呼んでる」
「アイツスゲェ変人だって有名だぜ?頼んでもねぇのに構ってくるし、勝手に縁が出来たとか言うし…正直怖い」
横から島が割り込んでくる。曰く…
幼い頃、川から流れて来たモモから生まれた、とか。
名を聞いた、すれ違った、果ては目が合っただけで縁を結ぶ、とか。
その癖に一切のお世辞や冗談を言わない、つまらない奴、とか。
だから生まれてこのかた、一度も嘘をついたことがない、とか。
最初と最後辺りは真偽が怪しいが、そのようなうわさが流れているらしい。なるほど、良くて奇人だろう、と失礼ながらも何処か腑に落ちてしまった。主に二つ目、朝方に直で感じた。
遠い目をしていると細田が注目を集めるべく手を叩いた。どうやらARソリッドビジョンの準備が整ったらしい。これから藤木を含めた8人でスピードデュエルを実際に体感する、それが今回の部活内容だった。
「そうだ…見てろよ藤木ィ────おい変人タロウ、デュエルだ!」
「いいだろう、受けてやる」
一番手に名乗りを上げたのは島だった。タロウを名指して指名すると、意気揚々と部室中央に立つ。タロウもまた段ボールを隅に積み上げると、島に向かい合う。
「よおっし、お前何出す?」
「チョキだ」
「おッけ―!最初はグー!じゃんけん、ポン!」
勢い良く振り上げられた拳が形を変え突き出される。出てきたのは握りこぶしと指二本、島はそれを確認した途端握ったままの手を天へ突き上げた。
「よっしゃ、俺の先行~!行くぜ!」
「……おかしい、何故だ?」
(…馬鹿なの?)
チョキのまま硬直した手を眺めるタロウに内心毒を吐く葵。先の噂に「嘘をついたことがない」と言っていたが、まさか本当に…と、そこで首を振った。そんなことはありえないだろう、流石に。
他の観戦者を見ると、一人を覗いて何とも言えない微妙な顔を浮かべている。察するにいつもの事らしい。そんな外野の様子を知らぬでか、二人はディスクを水平に構えていた。
「「デュエル!」」
SHIMA:4000
TARO:4000
「俺の先行!モンスターをセット、カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」
拳の上に転写されたホログラムのカードが動き、モンスターゾーンとその後列に1枚ずつセットされる。守備で固めて来た、出だしとしては上々。対するタロウは表情を変えることなくデッキに指を掛けた。
「俺のターン、ドロー。魔法カード《ヒーローアライブ》発動!ライフ半分と引き換えに、デッキからレベル4以下の《
旧型ディスク側面、下部が大きくかけサングラスのような黒いゴーグルから投影されたプレートへカードを叩きつける。ダメージ計算が行われ、デッキが自動シャッフル。せり出された1枚のカードを、スワイプで表示されたモンスターゾーンへセットした。
TARO:4000→2000
《E・HERO シャドー・ミスト》 ATK:1000 DEF:1500
「シャドー・ミストの効果!デッキから速攻魔法《マスク・チェンジ》を手札に加える!《E・HERO ソリッドマン》を通常召喚して、効果発動!手札から《E・HERO エアーマン》を特殊召喚!」
《E・HERO ソリッドマン》 ATK:1300 DEF:1000
《E・HERO エアーマン》 ATK:1800 DEF:300
漆黒のヒーローに続き、鋭角的な鎧をまとった白銀のヒーローと大きな翼を背にした青いヒーローが現れる。ライフは倍ほどの差があるが、使用できるモンスターゾーンを全て埋める展開力は他の部員をうならせるものがあった。
「エアーマンの効果!デッキから《E・HERO》を1枚手札に加えるか、自身以外の《E・HERO》の数まで相手の魔法・罠カードを破壊する!俺は島の伏せカードを破壊!」
「げ!なら罠カード《サンダー・ブレイク》を発動!手札1枚を棄てて、セットカードを破壊!」
慌てた島が伏せたカードを起き上がらせ、効果を発動する。罠カードから放たれた雷がもう一枚の伏せカードを吹き飛ばす、一見間違いにみえる行動、しかし島のデッキには必要な行為。
「この瞬間、手札の《森の番人グリーン・バブーン》の効果発動!自分フィールドの獣族モンスターが効果で破壊された時、ライフを1000P払って自身を特殊召喚する!」
SHIMA:4000→3000
《森の番人グリーン・バブーン》 ATK:2600 DEF:1800
大地を砕き、棍棒を振るうのは緑色のヒヒ。ヒーローたちを優に超える巨躯に空気が震え、高らかに島が笑う。
「どーだ!お前のモンスターじゃ破壊できないだろ!この島直樹、最強無敵のバブーンデッキの前に敵は居な────」
「────ちょっと黙ってろ、まだ俺のターンだ。来いサーキッド!」
しかし笑いを遮ったタロウは、空に手を掲げた。頭上に現れたのはリンクサーキッド。
「召喚条件は“『HERO』モンスター2体以上”!俺は全てのヒーローをリンクマーカーにセット、リンク召喚!リンク3、《
ヒーローたちはサーキッドに飛び込むと、その体を新たなヒーローへと作り変える。左腕に巨大な武器を携えた、黒鉄のヒーローに。
《X・HERO ドレッドバスター》ATK:2500 LINK:3(↙,↓,↘)
「ドレッドバスターの攻撃力は、墓地のHERO1体につき100Pアップする!カードを2枚伏せて、バトルだ!ドレッドバスターでグリーン・バブーンを攻撃!」
《X・HERO ドレッドバスター》ATK:2500→2800 LINK:3(↙,↓,↘)
ドレッドバスターが左腕を大きく掲げ、注射器のような武器から閃光が走る。収束された光子砲は部室を駆け、グリーン・バブーンを一瞬で焼き尽くした。
SHIMA:3000→2800
両者の攻撃力の差分、200Pのダメージが熱波として島に襲い掛かる。しかし、たかが200のダメージだ、ライフはまだ倍近く残っている。島は残った1枚の手札を選択した。
「まだまだ…俺のバブーンたちはッ!手札の《森の狩人イエロー・バブーン》の効果発動!戦闘で獣族モンスターが破壊された時、墓地の獣族2体を除外して特殊召喚できる!」
《森の狩人イエロー・バブーン》 ATK:2600 DEF:1800
爆炎を振り払って現れたのは、弓矢をつがえた黄色いマンドリル。攻撃力こそ劣るが、既にタロウのフィールドには攻撃可能なモンスターはいない。
「だったら速攻魔法《マスク・チェンジ》発動!ドレッドバスターをリリースして、同じ属性の《
タロウの宣言を受け、ドレッドバスターが懐から黒いマスクを取り出した。おもむろにそれをかぶると全身に売ろこのような装甲が展開。頭頂部から一本角を生やすと、手足に生えた赤黒い爪を鳴らし響かせた。
《M・HERO 闇鬼》 ATK:2800 DEF:1200
「闇鬼は自身の効果で
闇鬼がイエロー・バブーンの影を通り、島に爪を突き立てる。バブーンを攻撃するよりダメージを減らすことを優先したようだが、予想外だったのか島は呆けてしまう。
SHIMA:2800→1400
「ターンエンドだ」
「…あ、お、俺のターン!ドローッ!」
淡々と宣言され、漸く我に返った島がディスクに手を翳す。手札は0枚。このドロー次第で勝敗が決まるかもしれない。思わず目を閉じスワイプ、引き抜いたカードを確認すべく恐る恐る目を開けた。
カードを確認した島は嬉々としてそれを掲げるとすぐ行動に移る。
「よっしゃあ!装備魔法《猛獣の牙》をイエロー・バブーンに装備、攻撃力・守備力を300Pずつアップして、バトルだ!イエロー・バブーンで闇鬼を攻撃!」
《森の狩人イエロー・バブーン》 ATK:2600→2900 DEF:1800→2100
トラバサミを思わせる牙をマスクのように付けたイエロー・バブーンが、弓矢を棄て闇鬼にかじりつく。バキバキと亀裂を立て鎧が砕け、やがて闇鬼の体が粒子になって消滅した。
だが。
TARO:2000→1900
「この瞬間、リバースカードオープン!《ヒーロー・シグナル》!自分フィールドのモンスターが戦闘で破壊された時、手札・デッキからレベル4以下の《E・HERO》1体、《E・HERO オーシャン》を特殊召喚!」
《E・HERO オーシャン》 ATK:1500 DEF:1200
伏せられたカードから放たれる「H」のシグナルが天井を照らす。闇鬼の断末魔を聞き受けた青いトサカを持つヒーローが三叉槍を振るい上げた。
「…またなんか出た!ターンエンド…」
「俺のターン、ドロー!このスタンバイフェイズ、オーシャンの効果で墓地の《HERO》モンスターを1体、エアーマンを手札に加える!」
ディスク手前の墓地ホルダーからエアーマンがせり出す。それを素早く手札を加え、先ほどドローしたカードを掲げた。
「魔法カード《融合》を発動!オーシャンとエアーマンを融合して、来い!《E・HERO
頭上に広がる渦に、オーシャンとエアーマンが飛び込み一つになる。黒いマフラーを撒き、翠緑のヒーローが旋風を纏いフィールドへ降り立った。その余波は周囲を吹き飛ばし、イエロー・バブーンを部室の隅まで転げ落とす。
《E・HERO Great TORNADO》 ATK:2800 DEF:2200
「Great TORNADOの効果!このカードの融合召喚に成功した時、相手モンスターの攻撃力・守備力を全て半分にする!」
《森の狩人イエロー・バブーン》 ATK:2900→1450 DEF:2100→1050
目まぐるしい突風に完全に意識をやられたのか、イエロー・バブーンはもはや立つことはできない。万事休すか、島は互いのフィールドを見比べると、目を凝らすように互いのモンスターを眺めた。すると何かに気づいたのか、安堵したように笑いだした。
「…あれ?なんだよ~それでもライフ50は残んジャン!やっぱ始めたばっかのお前には────」
「────だから、まだ俺のターンだと言ってるだろ。バトル!Great TORNADOでイエロー・バブーンに攻撃!」
問答無用とばかりにGreat TORNADOが肘先を回転。伸びているイエロー・バブーンは遥か彼方へ。島の髪が在らぬ形に変形するが、その間もダメージ計算が行われる。
SHIMA:1400→50
「そ、そら見ろ!削り切れてねぇじゃん!」
「だからこうする!リバースカードオープン!《融合解除》!Great TORNADOの融合を解除して、来い!エアーマン、オーシャン!」
前のターンに伏せた最後の1枚、Great TORNADOが分離し、オーシャンとエアーマンが姿を現す。最初からこうする気だったのか、相手はもう真っ白になっているだろう。
「エアーマンの効果で、デッキから《E・HERO ブレイズマン》を手札に加え、追撃しろ!これで最後だ!」
SHIMA:50→0<LOSE>
上段から槍を叩きつけられ、今度こそライフがゼロを刻む。ソリッドビジョンシステムが停止し、ヒーローたちが姿を消すと、島が髪を乱雑にかき戻した。
「おぉい、お前ぇ!嘘ついたな!デュエルやったことねぇって言ってたじゃんかよ!」
「嘘じゃない、仁がやっていたのを横から見ていただけだ」
「じゃ何でこんなにうまいんだよ!」
「何を言ってる、やれば誰でもできるはずだ。」
剣呑としたやり取りが行われる中、間に細田が割って入った。
「というか島君、それ1ヶ月前の話でしょ?それだけあればデッキも出来ますし、上手くもなりますよ」
「…あれ、そうだっけ?」
「そうですよ~忘れたんですか?」
指摘を受け、思い出したようにそうだった~とごちる島にドッと笑いが起きる。その後代わる代わる部員がスピードデュエルを体験。終始和やかな空気のまま部活動を終えた。
タロウに対し終始顔をしかめていた葵と、遠くから彼女を観察する遊作を除いて。
夕暮れ時。西日が差し込み、暗がりの部屋をオレンジ色に染める。帰宅し自室へ戻った葵は、荷物を置いてベッドへ横たわった。
体が沈み込む感覚に大きく息を吐く。今日一日は変に神経を張る一日だった。何故か考えるのも面倒だからこのまま目を閉じたが、途端に感じられない人気に寂しさがこみあげて来た。
「お兄様…」
ポケットからスマートフォンを取り出し、電話帳から「お兄様」を選択。数秒のコール音の後、通話時間のカウントが刻まれ始めた。
「こんばんわ、ニュース見たわ」
『────お前は一体何が不満なんだ?いつまでアイドルごっこをやるつもりだ?』
開口一番に聞こえたのは呆感。ビデオ通話で映し出された兄の顔は険しく、葵の胸を絞めた。
兄・財前晃はSOLテクノロジー社セキュリティ部長に就任している。昨今はLINK VRAINSに現れた謎のデュエリスト・Playmaker関係で手を回しているようで、今朝のニュースで話題が出ていたGo鬼塚とのデュエルにも一枚噛んでいるらしい。こうして電話に出られることも減って来ていた。
『スピードデュエルは危険だ。下手をすれば命に関わるし昨日だって落ちかけただろう、今すぐやめなさい』
「はい、お兄様」
『ドンモモタロウのような危険な輩もいるんだ…分かってくれるね?』
「…分かっています、お兄様」
『お前がブルーエンジェルであることは気づかれてはならない。私の立場も考えてくれ』
晃の言葉を首肯し続けていると電話が切れた。思わずかけてしまったが仕事の合間だったらしい。兄のジャマをした罪悪感が胸に滲むが、同時にフツリと沸き立つものもあった。
兄が自分を思ってくれているのは解っている。両親が亡くなり、友人とも離れ、一人だった自分に寄り添ってくれた。今日こうして学校に通い、勉学に励み、部活動に勤しんでいられるのも兄の努力によるものも理解している。
だからこそもどかしい。自分だってもう縋るだけの子供ではない。デュエルの腕も上げ、カリスマデュエリストと呼ばれるまでになったのだ。その方面であれば、必ず兄の役にも立てる。
「お兄様…私やるわ」
お兄様の為に、ベッドから起き上がった葵はデュエルディスクを外し、机に置いてあった花弁のようなもう一つのディスクを装着し、ソファーに体を預けた。深呼吸、吸って吐いて精神を落ち着かせると自分を憧れに変える魔法の言葉を発した。
「
手足の感覚が抜ける。僅かな落下するような感覚と共に“財前葵”という存在が書き換わる。茶髪のショートボブが青いツインテールへ、高校の制服が白のトップスと青いスカートへ。そして背に一対の天使の羽根を生やすと、
ログイン早々デュエルボードに乗り、データストーム上を滑走する。
「ブルーエンジェル、僕とデュエルしない?」
「パス!」
寄せ来る誘いを一蹴し、先へ先へと進む。彼らの相手などいつでもできる、目指すべき相手を探しビルを横切ろうとした時、反射でボートを引き寄せた。
目の前に現れたのは、赤い侍。片わなに結わえた立派な髷、ぴっしりと揃った着物と袴、その上から羽織った陣羽織をきた男がボードに乗ってすれ違う。相手はこちに気づいたのか、目を見開いて────。
「…ぶ、ブルーエンジェルさん、ぼ、ぼ、ボクとデュ────」
「…パス」
自分でも驚くほど低い声が出た。だがアイツはあんな声高くないし、挙動不審でもない。不快だ、ボードを立て直して一気に跳躍する。
飛び上がり見渡してみると、まったく同じアバターがあちこちにいる。LINK VRAINSでデュエリストが名を挙げると決まってその見た目を模倣する者がいる。自分が有名になり始めた時もそうだった、今回もその類だろうが、無性にはらわたが煮えくり返った。
だが目的のものは見つけた。LINK VRAINSをふらふらと飛ぶハトとカエルのアバター、ライブ中継でよく見かける記者二人がこちらに気づいたのを確認すると、着風して人気のない場所まで滑走する。データストームの影響でデータの一部が破損し、むき出しの骨組みに飛び移ると追いかけて来たカメラに目線を投げた。
「ハーイ!みんな~来たよ~!そこのあなた、そこの君も!チューモーク!」
“アイドルとして”のブルーエンジェルの笑顔で周囲を見渡す。自分を見る目こそ少ないが、この映像はDen City中に配信されている。ならばここで今から行うことを、誰もが知ることになるはずだ。ブルーエンジェルは大きく息を吸い、片手をあげ布告した。
「私、ブルーエンジェルはプレイメーカーとデュエルし、そして必ず勝つことをここに宣言しま~す!」
LINK VRAINSからどよめきを感じる、このよどみは恐らく仮想空間だけではないのだろう。これで宣戦は完了した。これほど大々的にやったのだ、デュエリストであれば何かしらの反応があるはず。出て来ないのならば所詮はその程度の存在に過ぎないということだ。さぁ出てこい、と煽り立てようとした時だった。鼻先に何かが落ちた。何かと鼻を触るとクシャとした触感を摘まみ上げた。
「…紙吹雪?」
人差し指に乗るほどの大きさの紙切れが形を歪めている。形状は自分が摘まんだからだろうが、崩壊しないところを見るとポリゴンの破片ではない。どこから降って来たのか、顔を上げた時ハッとなる。
指の紙と同じものがそこかしこに降り注いでいる。はらりひらりと舞い散る様はもはや紙吹雪だ、作為を感じる。胸に去来する既視感に周囲を見渡した、その時だった。
聞きたくない、あの声が頭上から落ちてきたのは。
「やァやァやァ、祭りだ祭りだ!“俺”祭りだ!!」
「────はぁ!?」
向かいのビル、目に映ったのはバイクが乗せられた神輿と、それを運ぶ青い法被の男衆。彼らの道を祝福する様に天衣を靡かせた三人の天女が扇子を両手に舞い、積まれた花弁を巻き上げる。
そして舞い落ちる花吹雪にあおられて、一人高笑いする男が。神輿に鎮座する真っ赤なDサイクルにまたがり、赤い着物に赤い丁髷、ただでさえ視覚に暴力的な赤備えだというのに、これでもかと個性を上増しされてはもう後ずさるしかない。
だが同時に確信した、コイツ本物だ、と。
「踊れ、歌え!袖振り合うも他生の縁、躓く意思も縁の端くれ!共に踊ればつながる縁!この世は楽園!!悩みなんざ吹ッ飛ばせ!!」
空を割りそうな勢いの笑い声に、LINK VRAINS中の注目が向く。その中には本物を見ようとドンと同じアバターも多数存在する。数多の視線を受け、ドンは手にした扇子を放り投げた。
「そらそらそらァ────!さァ無数の俺よ、勝負勝負ゥ!」
Dサイクルのエンジンを吹かし、神輿から飛び出す。上空へ上がった車体はやがて設定された重力に惹かれ落下を開始、ビルに直撃し、貫徹し、突き抜けた。
「「「「「ええ!?」」」」」
大穴をあけたビルの惨状に思わず悲鳴が上がる。阿鼻叫喚の中でドンは着地し、エンヤライドンから飛び降りると近くにいたコピードンモモタロウを蹴り飛ばした。
LINK VRAINSの倫理コードに抵触するようなことがいともたやすく行われたことに、思わず顎を外す人々、ドンはその間を通り抜け次のコピーを殴り飛ばし、その近くで身構えたコピーの足を掴んで別のコピーへ叩きつけた。
「どォしたどォした!俺の癖にそんなものか!?」
「おいデュエルしろぉ!」
余りの暴れっぷりにコピーの一人が思わず声を上げた。我に返ったユーザーたちがそうだそうだと罵声を上げる。その中で一人、ドンは目を光らせた。
「何ィ!?良いだろう、俺についてこォい!」
ドンは締め上げていたコピーを蹴り飛ばすと、入って来た穴からデータストームへダイブ。下にスタンバっていたエンヤライドンに乗り込み加速した。
傍若無人の後を追い、多数のコピー達がDボードに飛び乗る。ザっと数は10人弱、バックミラー越しの確認した怒気をはらんだ眼を見ても、ドンは笑っていた、笑い続けた。
「俺の姿を借りる奴、俺の名をかたる奴!良いか、俺の前に俺はいないし、俺の後ろに俺はいない!だがこうも同じ見た目の奴がいちャあ、決めるしかあるまいよ!」
ハンドルに足を駆け、立ち上がる。刀を抜き、傷一つない刀身を天に掲げる。切っ先を背後に振るい、ドンは高らかに宣言した。
「どの俺が真に俺であるか、ドンモモタロウ決定戦の始まりだァ!」
背後より迫るコピー達はその言を受け、一気に雄たけびを上げた。それの呼応するようにビルの影や風の下から度と王のデュエリストが殺到してくる。有名人とデュエル出来る、はみ出し者を叩き潰せる、これを機に名を挙げられる、何か面白そう、欲と快楽と功名心と物見遊山が混ざり合い、呆然としていたブルーエンジェルを巻き込んでLINK VRAINSを押し流そうとしていた。
「…え、待ってうそでしょ────」
「かかッてこい、勝つのは俺だァ────!」
「きゃあああああああああああああああああ!?」
押し寄せた大衆に流されブルーエンジェルは叫んだ。だが悲鳴は叫声にかき消され、麗しい姿が人ごみに消えていく。嵐が過ぎ去ったのち、残ったのはススと汚れで半べそを書いた、足跡だらけの天使だった。
「何なのよアイツ…」
「何なのでしょうね?」
「────えっと、どうも」
「あ、どうも。ファンです」
「あ、ご丁寧に」
いつの間にいたのだろうか、横に立つ白服の男、所々足跡で汚れた男へ会釈する。恐らくコピー達に踏まれたのだろう、乱れた髪を撫でつける男に同情しながらため息をついた。もう今日は疲れた、さっさとログインしよう、不幸に空を仰ぐブルーエンジェルは気づかなかった。
「ええ…先ほどの貴方の思いに、深く感銘を受けました」
亡霊の口元が歪つに笑っていたことに。
次の日。遊作は変わりなく高校へ登校していた。昨夜は思わぬ誘いを受けたが、受ける意味合いが一切感じられなかったため無視を決め込んだ。相手の誘いを無下にした、無礼な態度に見ず知らずの者たちは憤り、ネットには誹謗中傷が────。
「あんまり叩かれなかったね」
「…もういい、聞き飽きた」
────結局Playmaker来なかったね?
────いやアレは出ずらいわ…
────踏まれたんじゃねw
────Playmakerダサいと思った人挙手
意外や意外、勝負を受けなかった事より騒ぎのせいで出れなかったと同情されてしまった。本人としてはアレがなくとも勝負するメリットなど一切なかったが、こう予想外の世間の声に内心戸惑いはあった。
また騒動を起こした主犯は自分のアバターをコピーした者たちを全員相手取り、結果50人抜きしたらしい────とAiからの情報を適当に無視していると、横から見知った顔が通りがかった。
「お前は…」
「縁があるな」
「あ、変人タロウじゃん」
桃井タロウがこちらへ手を振っていた。思わず声を出すAiだが遊作は黙れと口にしようとした。だがタロウは遊作の腕を掴むと、中央の眼玉に話しかけた。
「…やっぱり、昨日から面白いのを連れているな」
「あ、気づいてた?」
「ああ。それと俺は桃井タロウだ」
「俺は…まぁAiって呼んでくれよ」
「よろしくな、これでお前とも縁が出来た」
離せと腕を振るう。旧式ディスクに流ちょうにしゃべる性能を有したAIを入れている、というのは新型が普及しはじめた最近では目立つ。Aiの事は隠さなければならないし、最悪“彼ら”に察知されるかもしれない。遊作はその場から逃げるように去ろうとした時、一つの影と鉢合わせた。
「藤木遊作君…だったわね。おはよう」
「あぁ…おはよう」
「今日も縁があるな」
財前葵は一瞬口をへの字に曲げるが、おはようと会釈する。だが前と後ろに挟まれた遊作は逃げることは叶わず、仕方なく三人並んで教室へ向かうことになった。
「藤木君はどうしてデュエル部に入ろうと思ったの?」
「それは…」
「デュエルが好きだから、なんて言わないわよね」
少しばかり棘のある彼女の言葉に遊作は首を傾げた。まさかこちらの目的がバレたのだろうか、彼女を介し兄へ近づくことが遊作達の目的、だが昨日会ったばかりでそのような結論に達するだろうか?
「昨日島が言ってたアンタの兄さんの話…」
「やっぱり…新型ディスクが優先的にもらえないかとか、卒業したらSOLに就職できないかととか…私に近づく人間はそんなのばっかり」
合点がいったような葵は嘆息し、少し俯いた。
「でもごめんなさい。私お兄様からそんなに信用されてないの」
そして突き放すようにそう告げると、足早に教室へ入って行ってしまった。どうも彼女の兄を目的としていたのは自分だけではなかったらしい、当人としては不快なことのようだ。今回の接触は失敗だ。
後姿を見送り、タロウが驚いたように声を上げた。
「アイツ兄貴が居たのか」
「知らなかったのか?」
「一昨日縁が出来たばかりだからな…」
どうやらこの男だけは財前晃目的ではないらしい。そういえば部長との縁がどうと彼女と喋っていたはずだ、遊作は忘れかけた記憶を掘り起こしながら目の前の男を見ていると、不意にタロウが振り返った。
「またデュエル部に来い。まだお前ともデュエルしていないからな」
「別にいい、島から聞いてるだろう…大したデッキじゃない」
「だったら胸ポケットのデッキを使えばいい」
一瞬心臓が跳ねた、ように感じた。この男は自分の“本当のデッキ”について知っている。何故、どうやって知った?自分の前を少し先に進む男を遊作は睨んだ。
「お前…」
「俺も昨日は予備のデッキだったからな、楽しみにしているぞ」
背中越しに手を振ったタロウはそのまま教室へ入って行く。どうやらただの変人という訳ではないらしい、彼への警戒度を心の中で挙げていると、Aiがまた騒ぎ出した。
────ハノイの騎士が現れた、と。
「デッキセット!
(なんだ?)
教室に入り1限目が始まってしばらくしたころ、頭に縫い針を刺したような違和感が頭上から降ってきた。周囲を見渡すも、見なシャープペンシル片手にノートと向き合っている、教室ではない。
気分が悪い、そう教師に伝えたタロウは教室を飛び出すと、痛みが降って来ただろう先へ走った。3階、4階と階段を駆け上がるが、頭に刺さるノイズの元凶らしきもののはまだ遠い。そして屋上まで駆け上がると、外へ飛び出した。
晴れ晴れとした青空と裏腹に、頭痛は更に増した。どうやら不快感の元凶はここにあるらしい。屋上の中央へ躍り出ると、辺りを見渡すように回る。そして屋上へのドアの影に細い足が見えた。
近寄るともたれ掛かっていたのは今朝兄がいると言っていた少女。ディスクが発光し、眠っているように見えることからLINK VRAINSにログインしているらしい。本来は授業を受けなければならないだろうに何をしているのか、と考えながらもタロウは直感する。頭痛の元、彼女のディスクからは“悪縁”を感じ取れる。ならば断ち切るのが道理だ。
「すまない先生…緊急事態だ」
罪悪感をにじませたタロウは二、三歩下がると、ブレザーを翻しデッキホルダーの留め具を外す。中に収められたデッキを掴むと、既に展開されたディスクのホルダーに差し込んだ。
「デッキセット!
デュエルディスクに映された筆文字の「暴太郎」、炎が噴き上がるそれらがディスクから飛び出すと、タロウに体に纏わりつき真紅の戦装束を成す。残り火に髪を染め上げられ立派な髷として結わえ付けられると、降って来た刀をキャッチして腰に差した。
轟、横でマフラーが振れる音が響く。既にエンジンを温めていた
じか~い、次回…
Hi!私は電脳ハンター、ゴーストガール♪
どうやらブルーエンジェルが急に倒れたらしいの。妹のピンチに晃カンカン、私にプレイメーカーをおびき出すよう依頼してきたわ
「お前は誰だ!アイツじゃないな!」
知りたいの?だったら捕まえてごらんなさい!
で・も…坊やに構ってる暇ないのよね!
『ユウレイテンシ』
…というお話♡
今日のカード
○ZA・HERO ガオキング
融合・効果モンスター
星6/地属性/戦士族/攻2700/守2300
「Z・HERO ゼンカイガオーン」+「A・HERO」モンスター1体
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分にダメージを与える効果は、自分のLPを回復する効果になる。
②:このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
9/17 エラッタしました。
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