Yu-Gi-Oh!! AVA-TARO   作:邪道キ

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 最近の趣味:YOASOBIの祝福のPVを遊作とアクセスコード・トーカーに頭の中で置き換えて聴く。

 これがめちゃめちゃ合う。

 最新話、どうぞ。




ユウレイテンシ

────TURN 3:DRAW────

 

 「今なら受けてやる」。授業中に届いたメールにはそう書かれていた。昨日は騒ぎでデュエルどころではなくなってしまった為に無視されても致し方ないと意気消沈していたが、あちら側から接触があったのは少し驚いた。だがこの誘いを逃したら次は何時出逢えるか分からない、葵は仮病を装い屋上に向かうと、LINK VRAINSにログインした。

 

 プレイメーカーが来たのは少し後、自分からメールしておいて心当たりがないように振舞っていたがここまでくれば些細な事。Dボードに両者飛び乗り、データストームを駆けるスピードデュエルが始まった。

 

 先行を取ったのはブルーエンジェル。トリックスターデッキが得意とする効果ダメージで相手のライフをじりじりと削り、バトルにおいてもホーリーエンジェルと罠カードを駆使してプレイメーカーのエースモンスター、《デコード・トーカー》を破壊して見せた。ライフは4分の1を切り、こちらはここまでノーダメージで来ている。

 

 間違いなく追い詰めた、そう思ったのに────。

 

「リンク召喚!現れろリンク3、《エンコード・トーカー》!」

 

《エンコード・トーカー》ATK:2300 LINK:3(↑,↓,↘)

 

 ここまでの全てが、相手の計算通りだったと直ぐに悟った。

 

 《ストームアクセス》。デュエル中1度だけ、自身のライフが1000P以下の時にデータストームの中(デッキ外)からサイバース族リンクモンスター1体をランダムでEXデッキに加える、プレイメーカーのスキル。突然自分を飛び越え、データストームの嵐に身を投じた彼は、風の中に潜む逆転の一手を掴み取ったのだ。

 そうして電脳の嵐から引き揚げられたのは巨大な盾を携えた水色の騎士。プレイメーカーのエースモンスター《デコード・トーカー》を思わせながらも細身の印象を与えるモンスターだ。

 

「バトル!《ディフェクト・コンパイラー》で《トリックスター・リリーベル》を攻撃!更に速攻魔法《戦線攪乱》を発動!」

 

 エンコード・トーカーの背後、円形のディスプレイを持った小型コンピュータのモンスターがエネルギーを収束させる。ディフェクト・コンパイラーの攻撃力は1000、リリーベルを容易く破壊できるが問題はもう一枚の魔法カードの方だ。

 速攻魔法《戦線攪乱》、相手フィールドのレベル4以下のモンスター1体を対象にそのモンスターがフィールドから離れた場合、自分フィールドの表側表示モンスター1体に“攪乱カウンター”を置く。このカウンターが置かれたモンスターがバトルする時にカウンターを外せば、モンスター1体の攻撃力を守備表示モンスターの守備力分ダウンさせられる。

 

 《トリックスター・ホーリーエンジェル》の攻撃力は2200、フィールドには守備表示のマンジュシカがいる。このままではホーリーエンジェルを破壊して大ダメージを受けることになるだろう。

 思考ここに至り、負けられない、負けたくないと、まだ胸に灯る戦意を震え上がらせた。この戦いに勝ち、兄に自分の存在を認めさせるために、もう一度振り向いてもらうために。

 

「させない…私は!スキル発動、《トリックスター・フロード》!相手ターンに手札のトリックスター1枚を墓地に送って相手に手札は三枚になるようにドローさせる!」

 

 頬に書かれたクローバーのフェイスペイントが輝き、2枚の手札の内1枚が消える。スキルはプレイメーカーだけのものではない、デュエル中1度だけ、こちらも使用することが出来るのがスピードデュエルだ。

 プレイメーカーの手札は0枚、よって3枚ドローする。相手に手札リソースを与えるだけに見えるが、彼女の、いやトリックスターデッキにとってはこれ以上なく脅威だ。

 

「あなたのライフは800!マンジュシカの効果で3枚分、600のダメージ!そしてライトステージの効果で200のダメージよ!」

 

 マンジュシカには“相手のドローに反応して効果(バーン)ダメージを与える”ことが出来る。ディフェクト・コンパイラーの攻撃よりマンジュシカの電撃の方が速い。

 これで丁度ライフ800を削り切れる、やった、プレイメーカーを倒した。

 

「それはどうかな」

 

 マンジュシカの電撃がプレイメーカーに当たる、よりも先にディフェクト・コンパイラーに直撃する。電撃は表面を流れて幾だけで、攻撃を終えたころには表面に「1」のカウントが表示されていた。

 

「ディフェクト・コンパイラーの効果!カード効果によるダメージをゼロにして、このカードにディフェクトカウンターを一つ置く!」

 

 プレイメーカーは既に自身の効果ダメージ戦術への対策を講じていた、再び勝利への光明がかき消された事実に愕然となるが、目を背けるように腕を振った。

 

「まだよ!私には、最後のカードがッ!!!」

 

 そうだ、デュエルはまだ終わっていない。一枚あれば戦況を覆すことが出来るからこそ、デュエルなのだ。

 残った手札の1枚、「トリックスター」と名の付かなかったから、スキルのコストに出来なかったモンスター。その1枚に目を向けた時、心を掴まれたように感じた。

 

 ドローで手札に加わった時から違和感はあった。いつデッキに入れたかは分からない(・・・・・・・・・・・・・・・・)このカードは、トリックスターたちと並べるには“異質”だったからだ。天使や花々をモチーフとした自分のデッキだが、このカードも天使の名を冠している。どことなく自分のエースモンスターに似ているから気にしなかったが、それでも与えてくる印象は“聖なる天使”とは真逆、闇に堕ちた“堕天使”と言ったほうがしっくりきた。

 だからだろうか、手にするだけで胸の奥底を揺らされているように感じられた。体中がじわじわと溶けてなくなっていくような感覚、だというのに全てを委ねたくなるような魅惑を。そして手札にこのカードだけが残り、改めて向かい合った時、背筋が凍るような“闇”を感じたのだ。

 

「私は…ワ、タシ…は…」

 

 自分という存在が揺れる。何処の、誰で、何の為に、誰の為に立っているのか。カードからあふれ出た“闇”が財前葵のアイデンティティを塗りつぶし、心というソースコードを書き換えていく────。

 

 『自分は、ハノイの騎士。プレイメーカーを倒す』と。

 

 異変に気づいたのか、やめろと咎める声が聞こえる。だが体はゆらりと闇のカードに触れようと動き続ける。あと少し、指先がカードに触れようとした時、ふと目に映ったのは、手の甲に着いたたった一枚の紙だった。

 

「カミ…フ、雪?」

 

 溶けて堕ちていく意識の中で口だけが動く。どうしてこんなとこに紙吹雪がおちてくるのだろうか?どうしてこうも胸がふつふつと沸き立つのだろうか?どうして、ここであいつを連想するのだろうか…忌々しくも頭に残るアイツの笑い声が遠くから聞こえてくるように思える。あの青い空に向けた大声が、どんどん大きくなって…。

 

「ハーッハッハッハッハッハ!」

 

 いや違う。幻聴じゃない。意識が明瞭になる、ブルーエンジェルは我に返った。

 

いよ~ッ!

「ハーッハッハッハッハッハ!やァやァやァお前たち!祭りを楽しんでいるか!」

 

 データストームが流れるビル街、その中でひときわ高いビルの頂上に、神輿が一つ。屈強な男たちがえんやほいさと担ぎ上げ、粋な男道を天女の舞いが祝福する。ど派手な演出と共に見下ろしていたのは、赤装束の暴太郎────ドンモモタロウ。

 

「アイツは…」

「うっわ~スゲェ目立ちたがりジャン…引くわ」

 

 突然の闖入者に言葉を失うプレイメーカー。ディスクのAiでさえ目玉を細めて引いていたが、ブルーエンジェルはわなわなと体を震わせた。この男には負け、大勢を呷るだけ呷って足蹴にされたのだ。

 

「…何ヲシニ来タノ!」

「ハッハッハッハッハ!お前こそどうした!その間抜け面は何だ!」

「何デスッテ!嗤イニ来タノナら帰って!」

 

 光を失った目で目一杯睨みつける。沸騰した怒りが暗示を吹き飛ばし、頭がぐらぐらと揺れ震える。だが怒りの視線を受けて尚、ドンはブルーエンジェルを見据え続けていた。

 

「笑わずしてなんとする!窮地でも笑えんようじャ、勝てるものも勝てるかッ!」

「…は」

「俺のライフを200まで削ッたんだ!そのしつこい天使はそんなもんじャないだろう!」

「何を…」

「お前ならやれる!お前なら勝てる!前を見ろ、ボードを踏みしめろ!」

 

 シートを踏みしめ、大声一喝。刺さるほどの真っすぐな視線に思わずたじろいでしまう。

 

「────忘れたか!俺との縁は超良縁だ!」

 

 大手を広げ、天高く声が届く。声の余韻が遠くへ消えていく中、耳の中にだけはしっかりと残っている。頭の奥を言葉でぐるぐると掻き回されていく中、今度は別の声が聞こえて来た。

 ドンの声より低い、或いは高い、そしてどちらでもない。確かなのは一人じゃない。

 

「さァお前ら!湧け、叫べ!声を以ッてこいつのケツを叩いてやれ!」

 

 ────がんばれーッ、ブルーエンジェルー!

 ────負けるなー!

 ────がんばってー!

 ────今日も可愛いよー!

 

 男の声、女の声。若いものもあるし、老けた声もある。だがどの声も自分に勇気を与えてくれる、力を湧き立たせてくれる。それがうれしくて、でも気づいた元凶を思えば如何しても癪に触って。

 

「言われなくたって!」

 

 ごちゃ混ぜの心、だが闇の靄はとうに晴れ渡り、先ほどより繊維は高ぶっている。まだデュエルは終わっていない、前を向いて一歩踏み出すために────。

 

「手札の《ダーク・エンジェル》を墓地に送って、効果発動!」

 

 ────使ってしまった。

 

────TURN 3:STANDBY────

 

 藤木遊作────プレイメーカーは苦虫を噛んだ。なぜこんなことになってしまったのだろうか。

 ハノイの騎士が現れた、この言葉を信じ授業を抜け出してログインしたが、待っていたのはブルーエンジェル。どういう訳だか自分が呼んだことになっているらしく、プレイメーカーは言い出しっぺのAiに詰問した。

 

 するとAiは嘘はついていない、と弁明した。彼女のデッキからハノイの騎士が使用するニオイ(プログラム)をかぎ取ったのだという。LINK VRAINSに跋扈し、他のユーザーたちのアカウントを消去、最悪の場合は仮想空間そのものを破壊するほどの高度なプログラミング技術を有したハッカー集団、そんな彼らのプログラムを、何故一介のアイドルデュエリストが手しているのか?

 兎に角使わせてはならない。ハノイの騎士を倒すのだろう、と腕から茶々を入れられながらDボードに搭乗。ブルーエンジェルとのスピードデュエルが始まった。

 

 先行はブルーエンジェル。エースモンスター《トリックスター・ホーリーエンジェル》を呼び出し万全の布陣でターンが回り、ドロー。マンジュシカ、ライトステージの連続ダメージに苦しめられるが、切り札である《デコード・トーカー》を呼び出すことに成功。バトルでホーリーエンジェルを攻撃するが、罠カード《トリックスター・スキャッター》の効果で破壊されてしまう。リンクモンスターが破壊されたことで《サルベージェント・ドライバー》を呼び出す条件が整い後続を確保できたものの、次のターン、ブルーエンジェルは“ハノイのカード”を引いてしまった。

 

 そのターン、彼女は使わなかったものの猶予は残っていない。“ハノイのカード”の効果が分からない以上早急にケリを付けなくてはならない。4ターン目、ドロー。マンジュシカとライトステージの効果で、残りライフ800。プレイメーカーはここで起死回生の一手────スキルを発動した。

 

 引き当てたのは、リンク3《エンコード・トーカー》。サルベージェント・ドライバーの効果で呼び戻した《リンク・バンパー》と共に素材として呼び出し、これからだという時だった、というのにだ。

 

「使ったのか…!」

「マジで余計な事しかしねぇなアイツ!」

 

 目の前で紫電の閃光が走る。“ハノイのカード”から解き放たれたプログラムが、アバターを介して彼女を侵食していく。光と闇を明滅させた目で、だがブルーエンジェルは胸を抑えながらデュエルを続けようとした。

 

「リリーベルをリリース、ディフェクト・コンパイラーの攻撃対象をホーリーエンジェルに差し替エル!コの時ホーリーエンジェルの攻撃力はリリースしたモンスターの攻撃力分アップ!」

 

《トリックスター・ホーリーエンジェル》ATK:2200→3000 LINK:2(↙,↘)

 

 リリーベルが消え去り、残滓がホーリーエンジェルに降り注ぐ。するとホーリーエンジェルの体を赤黒いオーラが覆いかぶさり、ディフェクト・コンパイラーが放った光線をはじき返した。

 両者の攻撃力の差は2000、ディフェクト・コンパイラーは破壊され跳ね返ったダメージがプレイメーカーのライフを削り去る、そうすればプレイメーカーの負けだ。

 

「プレイメーカー、サッサとしねぇと精神が持たねぇ!抵抗している分、尚更な!」

「解っている!エンコード・トーカーの効果発動!このカードのリンク先のモンスターは戦闘では破壊されず、ダメージもゼロになる!」

 

 迫る光線、エンコード・トーカーが盾を掲げて防御する。これでディフェクト・コンパイラーは破壊されず、戦闘ダメージも受けない。

 

「そしてターン終了時までエンコード・トーカーの攻撃力をホーリーエンジェルの攻撃力分アップ!」

 

《エンコード・トーカー》ATK:2300→5300 LINK:3(↑,↓,↘)

 

 ホーリーエンジェルの攻撃力は上昇分も合わせて3000。ホーリーエンジェルを破壊できるようになったがそれでは足らない。防いでいる間も彼女は悶え苦しみ、僅かに残った目の輝きも陰り消えかけている。一撃でデュエルを終わらせなければ最早一刻の猶予もないのだ。

 

「まダ…ソれでもライフは残ル!」

「更にディフェクト・コンパイラーと戦線攪乱の効果発動!ディフェクトカウンターとエンコード・トーカーに置かれた攪乱カウンターをそれぞれ全て取り除いて、エンコード・トーカーの攻撃力を800Pアップし、ホーリーエンジェルの攻撃力をマンジュシカの守備力分1200Pダウンする!」

 

《エンコード・トーカー》ATK:5300→6100 LINK:3(↑,↓,↘)

《トリックスター・ホーリーエンジェル》ATK:3000→1800 LINK:2(↙,↘)

 

 攻撃力の差、5300。伏せカードもない、手札もない。この一撃で終わらせてやれる。

 

「エンコード・トーカーでホーリーエンジェルを攻撃!《ファイナル・エンコード》ッ!」

 

BLUE ANGEL:4000→0<LOSE>

 

 エンコード・トーカーの盾から展開された長剣が、ホーリーエンジェルを切り裂く。爆散する余波を受け、ブルーエンジェルは全ての力が抜けたように崩れ落ち、Dボードから落下した。

 髪が解け、翼を散らし、データストームへ落ちていく天使、助けようと手を伸ばしてもこの距離では届かない。そう思われた時、空から降り注いだ猛風がデータストームに穴をあけた。パックリと細長く開いた穴に吸い込まれ、ブルーエンジェルも、プレイメーカーも落ちて行く。揺れるDボードを抑えながら振り返ると、刀を降ろした体勢の赤い影が目の前に迫り、追い越していった。

 

 ドンモモタロウは刀を右肩に構え、袈裟懸けに振り下ろす。データストームを切り裂く銀刃が空を裂き、押し出された空気が地面に激突、破裂し、頭から落ちていたブルーエンジェルの体をふわりと浮き上がらせた。

 

「アイツ…剣圧で落下の衝撃を!?」

 

 ゴロゴロと転がり、あおむけで止まった彼女を見て思わず声が出た。プレイメーカーは武道、武器を使ったものに関しては良く知らない。だがこうも荒唐無稽なことは電脳世界でもできない筈だ。

 着地したドンモモタロウはブルーエンジェルの下へ駆け寄ると、しゃがみ込んで起こそうとしているのか、頬をぺちぺちと叩いている。ボードを乗り捨てたプレイメーカーはディスクを掲げた。

 

「おい!しっかりしろ!」

「離れな、ハノイのウイルスはオレが喰う!」

 

 ディスクから飛び出たAiが大きな口に変化、ドンモモタロウを押しのけてウイルスを吸い上げる。紫に光る0と1のデータがAiの口に収まり、喉に当たる部位を通して分解されていく。あらかた吸い上げたのか、ディスクに引っ込んだAiに一瞥をくれずブルーエンジェルに近寄るも目覚める様子はない。ウイルスの効果は続いている、喉からの唸りを抑えながら、プレイメーカーは振り返った。

 

「お前…何をしにここに来た」

 

 振り向いた先で、ドンモモタロウは腕を組んでいる。背丈は自分と同じほどだが、少し反り立って見下ろすような目が如何にも偉そうだ。思わず眉間にしわを寄せて、語気を強めた。

 

「お前が来なければ彼女はあのカードを使うことは…」

「お前こそ、何をぼさっとしていた?」

「…何?」

「俺が気を引いているうちにデュエルを進めれば、そもそも使わせずに済んだだろう」

「ハァ!?言ってること無茶苦茶だぞ!」

 

 余りの暴論にAiが声を上げる。自分たちはハノイのカードを使わせないようにデュエルをしていた。それに比べこの男がしたことと言えばデュエル中にヤジを飛ばし、周りを煽動して彼女を追い詰めただけ。なのにこの男は心底不思議そうに首を傾げている、本気で自分に非はないと思っているらしい。

 

「話にならん…ログアウトするぞ」

 

 このような野次馬根性丸出しの阿呆に付き合っている暇はない。すぐ後ろから警備用プログラムが接近してきている、捕まればアカウント停止は免れないだろう。デュエルディスクを操作してログアウトした。

 

 夢から覚めるようなヒヤリとした寒気と共に、肉体の重力を感じる。重い瞼を開き、蛍光灯からの痛みを無視すると、遊作は立ち上がり駆けだした。

 

「おい、どこ行くんだよ」

「財前葵はこの校舎の何処かにいる」

 

 根拠は3つ。

 一つ、今日財前葵は登校していた。ならばログインも学校の何処かで行っていたはず。

 二つ、財前葵はブルーエンジェルとしての活動を隠している。ならば普段生徒の出入りが少ない場所に隠れているはず。

 三つ。授業中にログインしたのなら、隠れる場所は限られてくる。トイレもあり得るが、長い時間人が入ったままのトイレは怪しまれる。

 

 それらを踏まえた遊作は階段を駆け上がった。三つの条件に当てはまるような場所は一つしかない、階段を駆け上りその最果てに辿り着く。屋上のドアに手を掛けた時、勢いよくドアの方が開いた。

 風に押されて後ずさる遊作。ドアから出てきたのは赤みがかった茶髪。その横からはもう少し明るい茶髪の頭が覗いている。誰だ、遊作が訝しんでいると、赤い茶髪の方が都合よく顔を上げてくれた。

 

「お前は…桃井タロウ!」

「藤木、医者を呼べ!今すぐっ!」

 

 大声で怒鳴るタロウの背で、葵がぐったりとうなだれていた。

 

────TURN 3:MAIN1────

 

 予想外の出会いがあったとはいえ、そこからの対応は速かった。

 遊作は救急車を呼ぶと、すぐさまサイレンの音が学校へ近づいて来た。何事かと教員が慌ただしくなったが、遊作が事情を説明し彼女に付き添うことを許可してもらうことに。隣のタロウを見た教員たちが僅かに顔をしかめていたように見えたが、遊作は背中の葵を心配していると考えて救急車へ乗り込んだ。

 駆け付けた救急隊の下、Den City郊外の病院へ搬送された。担架に横たえられ救急車に揺られる間も、彼女は一向に目を覚まさなかった。今から検査室へ向かい容体を調べるそうだ。

 

「葵ッ」

 

 検査室前の廊下に声が轟いた。声の方を向くと、スーツ姿の男が血相を変えて走ってくる。眠る葵に駆け寄ろうとして看護師に止められている。

 

「離れてください、今から検査室に行きます!」

「私はこの子の兄だ!」

「検査室には誰も入れません!」

 

 どうやら家族らしい、学校からの連絡を受けたのだろうか。しかし看護師に諫められた男は顔を歪めながら、検査室の奥に運ばれるのを見送るしかなかった。

 自動ドアが閉まり待合の廊下には遊作達三人が残された。男は大きく息を吐くと遊作の方へ振り向いた。

 

「…君たちが知らせてくれたのか」

「はい、屋上で倒れているところを彼が…」

「ありがとう、礼を言う」

 

 男は礼儀正しく頭を下げる。だがその表情は浮かないままだった。

 

「あの…こんなことを言っては何だが…君たちと葵は」

「只の同級生です」

「同じ部活に入っている、と言っても昨日会ったばかりだがな」

 

 二人の返答に男はふっと頬を緩めた。どうやら家族として、妹の異性交遊が気になったらしい。別にやましいことのない二人は素直に答えた、男も返答に納得して、

 

「そうなのか…ありがとう、もう戻っていい」

 

 と言われた遊作は会釈すると検査室に背を向けた。自分たちに出来る事はここまでだ、ここから先は医者に任せ自分たちは退散するとしよう。そう考えて病院を後にしようとした時、男が呼び止めて来た。

 

「あぁ、そうだ。君たち名前は?」

 

 遊作は振り返った。

 

「藤木…藤木遊作です」

「桃井タロウ、アンタは?」

 

 遊作に続いてタロウも名を名乗る。男は問い返されると思ってなかったのか、僅かに目を見開いた。

 

「私は財前晃、葵の兄だ」

「そうか、これでアンタとも縁が出来たな!」

 

 タロウは場違いなほど朗らかに笑うと、右手を差し出した。グイグイ来るタロウの態度にたじろぐ晃だが、生来の生真面目さからか、それとも会社員として染みついた癖か差し出された手を握りしめた。

 

「何かあったら力になる」

「あ、あ…どうも」

 

 何だこの男は。はっきり言って不躾すぎる、ぽかんとする晃を見て遊作は顔をしかめると、晃が噛み締めるようにはにかんで力なく首を振った。

 

「気持ちは嬉しいが…君たちの力は借りない。これは私個人の問題だ」

 

 そら見たことか、遊作は嘆息した。今日初めて会った人間にこれほどずけずけと助力を申し出ても警戒されるだけだ。場合によっては気味悪がられ、遠ざけられるだろう。

 だが晃は不快に顔を歪めることなく、寧ろ微笑を浮かべていた。どうやらタロウの厚意と受け取ったらしい。

 

「葵を…妹のことを思ってくれて、兄として心強い。だが気持ちだけ受け取っておこう。彼らは君たちのような普通の学生ではどうにもならない」

「下手人に心当たりがあるのか?」

「ああ、だから心配は無用だ。必ず彼らを追い詰めて見せる。」

 

 明は目を伏せながら検査室へ向き直る。以前ランプは点灯を続け、中の様子を窺い知ることはできない。だが何故このような目に合わねばばならないのか、妹がいったい何をしたというのだ。目が覚めるかもわからない妹を思う兄は、静かに拳を握りしめていた。

 

「許しはしない…プレイメーカーを…ドンモモタロウを」

「…………そうか」

 

 晃の口から洩れた怒りは静かに、そして低く廊下に響いた。

 

 検査室を離れ、階段を降り、1回のエントランスに降りるまで二人は何も語らなかった。話すようなこともない、偶々葵を運んだだけ。それ以上関わる理由もない、重苦しい雰囲気の中そうやって互いに納得しようとした時、タロウが足を止めた。

 

 病院の入り口近くの柱に一人の男がいる。スーツの上からくたびれた灰色のコートを羽織った男はこちらを見ると、遠慮気味にこちらへ手を振った。

 

「タロウ」

「仁…」

 

 

────TURN 3:BATTLE────

 

 桃井仁が学校から連絡を受けたのは午前の仕事が一段落したころだった。

 SOLテクノロジー社セキュリティ部門に属する彼は、日夜SOLテクノロジーのデータバンクの防衛、昨今はハッカー集団「ハノイの騎士」対策の為のファイアウォール構築の為の新しいファイアウォール構築に尽力していた。先の襲撃で破壊されたファイアウォールを修復し、課題とされている部分の改良・改善を始めようとした時に、懐のスマホが鳴った。

 表示されたのはデンシティハイスクールの番号。一瞬心臓が跳ねあがってしまった、保護者ならだれでも頭の片隅に入れている番号だが、何かとトラブルの絶えない義息の事を考えてアドレスも登録していた。心して電話に出ると、教員から「タロウが病院へ向かった」と告げられた。

 

 予想の斜め上を行く言葉に思わず声を上げてしまった。タロウは生まれつき体は頑丈で、例の状態(・・・・)でもなければ病院沙汰になるコトなど有り得ない。なのにどうして、仔細を聞くと何でも学校で昏倒した女子生徒の付き添いらしい。

 仁は同僚に相談し仕事を家に持ち帰ることに決めると、有休を使って病院へ直行。中に入ったところで帰りがけのタロウと遭遇した。

 

「聞いたぞ、倒れてた女の子を運んだそうだな」

 

 学校には早退すると既に連絡を入れてある。今からでも戻って残りの授業を受けるとグイグイ進むタロウを何とか宥めた仁は、病院からずっと険しい顔のタロウにこう切り出した。

 

「違うぞ仁。どうやら俺は、また人を傷つけたらしい」

 

 タロウの返答ははっきりと、だがどことなく後ろめたさのあるものだった。

 

「葵が倒れたのは俺のせいだ。」

「それは…どうして?」

「そう遊作と晃が言っていたからだ」

「晃…財前部長に?」

「許さないと言われた。俺が来なかったらあのカードを使わなかったはずだともな」

 

 今一つ漠然とした主張に首を傾げた仁の眼に街頭ビューイングが映る。今日LINK VRAINSで話題となったデュエルが映されているが、出だしは「応援虚しく、アイドルに何が!?」。

 今日の午前にLINK VRAINSのログイン数が急激に増えていたような、と思い返しながら見ると、ブルーエンジェルとプレイメーカーのデュエルの様子、その途中でブルーエンジェルが苦しんでいる場面が映った。普段の可憐な彼女からは想像もつかないほど険しい形相、アバターに纏わりつく異様なオーラ。やがてデュエルが終わり墜落していく彼女、それを助けたドンモモタロウの姿で映像が停まる。

 

「仁…俺は何をしてやれる?」

 

 何時から映像を見ていたのか、立ち止まっていたタロウの眼を見て、仁は事の流れを何となく察した。晃が血相を変えて会社から出て行った理由も。タイミングが良すぎるのだ、上司の妹が病院に担ぎ込まれた時間とブルーエンジェルの異常が。

 そしてタロウは、その責を背負おうとしているのだろう。仁はタロウの顔を覗き込んだ。

 

「タロウはどうしたい?」

「償いをしたい。アイツが目を覚ますように」

「じゃあそうしたらいい。何時もそうしてるだろ」

「だが相手が分からんのではどうしようもない。何処の誰があのウイルスカードを作ったのかもわからん」

「人体に感染する、コンピュータウイルスだというのか」

「間違いない。アイツの脳に流れていくのが見えた(・・・)

 

 ウイルス、という単語に仁は唸った。これまでセキュリティに携わる者として、人体にえ卿を及ぼすプログラムは聞いたことがない。出会ったことのない未知の存在への対応にタロウは苦慮しているのだ。

 

「わかった、俺もSOLの方で調べてみるよ」

「なに?」

「今日のデュエルのログが残ってるはずだから、そこからカードのことが調べられるはずだ」

「勝手に見ていいのか?」

「今日みたいなことがあったんだ、明日から忙しくなるしな」

 

 眉を顰めるタロウに、仁は肩に掛けたバックに手を添える。明日からまたセキュリティ強化やユーザーへの安全保障の為にセキュリティ構築をするのだ。その合間を縫ってデュエルログを調べることぐらい容易い。

 仁の頼もしい言葉をうけ、タロウはニカリと笑った。

 

「そうか…助かる、仁」

 

 タロウは再び歩き出す。きびきびとした動きだ、先の悔いを一切に残さない。やることが見えた、後はわき目もふらず彼女を助ける為に何とかしてしまうのだろう。

 子供のころからタロウに出来ない事はなかった。唯一デュエルに手を出していなかったが、高校に上がって、デュエル部の部長と知り合って、そしてドンモモタロウになった日から既に腕もカリスマデュエリストたちと同格以上と言っていいだろう。

 

 だがそれでもまだ子供だ。出来る事にも限度や制限がある、だからこそと思い頬がほころぶと同時に胸がちくりと痛んだ。どれほど多芸であることを知っていても、力になれるとしても、桃井タロウにとって桃井仁が桃井仁以上になるコトはない(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「仁、か…いつもの事だ」

 

 タロウの背を追う仁の小さな背中は、Den Cityの闇に溶けて行った。

 

────TURN 3:MAIN2────

 

 結局検査を終えても、日をまたいでも、財前葵が目覚めることはなかった。

 

 身体的に異常はない、だがどうしてか目覚めることがないのだ。原因は脳にあるのではないかと言われているがそれ以上のことはわからないらしい。

 このことをタロウが聞いたのは、次の日学校に来て質問攻めに合った時だった。昨日学校に救急車が来たことは既に騒ぎになっている。誰が運ばれたなど周知のことだし、最近は情報だって異様に回りやすい。恐らく教員辺りが話しているのでも聞いたのだろう、生徒の間には慎ましくも不安が広がっていた。

 

「桃井君、財前さんは大丈夫ですか?」

 

 放課後、部室に立ち寄ったタロウは部長からいの一番にこう聞かれた。救急車騒動の当事者であることも広まっているのだろう、昨日早退したこともあって部長の顔は険しい。

 

「まだ目は覚めないが、俺がどうにかする」

「そうですか…あ、今日部活はおやすみにしようと思ってますから」

 

 当然だろう、タロウは首肯した。部員の一人が急に意識不明になったのだ、いつも勢いだけで一番乗りの島がいないことからもうなづけるように部活をやれるような空気ではない。一言断っておこうと思っていたタロウにとっても好都合だった。

 だがタロウが部室を出ようとした時、部長がエッと声を上げた。

 

「ブルーエンジェル?元気そうですね…」

 

 部長がつぶやいた名前にタロウは思わず振り返った。有り得ない、彼女は今もまだ眠っていてログインできる状況じゃない筈だ。タロウは部長の元まで戻ると彼の手元にあるものを引き寄せた。

 

『プレイメーカー!この前はよくもやっちゃってくれたよね!この映像を見てるなら出てきなさい!』

 

 部長のタブレットに映っていたLINK VRAINSのライブ実況に、でかでかと青い天使が映っている。カメラに顔を寄せプレイメーカーへ再戦を呼び掛けているようだ、元気そうだと独り言ちる部長の横で、ただ低くうなった。

 

「違う」

「え?」

「アイツじゃない」

 

 画面を睨み据えたタロウはデッキをディスクへ叩き込んだ。

 

「ここを頼む」

「え、タロウ君!?」

Into the VRAINS(アバターチェンジ)!」

 

いよ~ッ!

ドン!ドン!!ドン!!!ドンブラコ!!!!

暴太郎(アバタロウ)

 

「ちょ、ここでログインしないで────」

 

 ディスクについたスクラッチが回り、制止の声が遠のく。ブレザーが赤く燃え上がり、戦装束へ早変わり。天から降って来た刀を掴むと、エンヤライドンへ飛び乗りデータストームへ着風する。

 

 重量に押し広げられた波が戻って、エンヤライドンを押し上げる。瞬間アクセルを振り絞り、反動と加速でビル高く舞い上がった。

 LINK VRAINSを一望し、ブルーエンジェルらしき人物の位置を探る。するとひと際大きいビルの屋上に青い影が仁王立ちしているのが見えた。重心を移動させ、彼女と正面向かい合うように着地するとブレーキを掛けた。突然の乱入者、撮影していたカエルとハトのアバターが騒ぎ出すが、ブルーエンジェル(?)は呆れたように首をすくめた。

 

「何?また現れたの?」

「誰だお前」

 

 ドンモモタロウは刀を抜くと、思い切り振り抜く。風圧に押されブルーエンジェルが後ずさるが、ドンは構うことなく刀を振り続ける。雨霰とぶつかる剣圧の嵐に耐え続けるブルーエンジェル(?)、やがて風が止み、文句を言おうとした時、何故か周囲のざわめきが聞こえた。

 

「お前は誰だ!何故アイツの姿をしている!」

 

 細めた目を開いたブルーエンジェルのアバターが歪み、その下から黒い女性の体が見えている。矢鱈滅多に剣を振り回していたのではない、偽装アバターを破り、その下の本当のアバターを曝け出したのだ。

 ブルーエンジェルではないことへ周囲が驚きを隠せない中、偽装アバターを自動修復させるブルーエンジェル(?)は頭を掻きむしった。

 

「…あ~もう、これでプレイメーカーをおびき出す作戦が台無し。全くやってくれたわね!」

 

 怒号と共に緑色の光弾が放たれる。ドンはそれを袈裟懸けに切り捨てるが、ブルーエンジェル(?)はその隙にビルから飛び降りた。逃がしはしない、奴は何か事情を知っているに違いない。急いでエンヤライドンに乗り込み後を追うと、そこにいたのはブルーエンジェル(?)ではなく。

 

 ブルーエンジェルと同じ外見、だが白いトップスは黒く、青いスカートは妖しいピンクに。頬のペイントの代わりに真っ赤な口紅を塗り、背中の白い羽は黒々とした悪魔の翼へ変化している。それは純潔の天使ではなくむしろ真逆の存在────

 

「────“誰”と聞いたわね?…幽霊(GHOST)…私はあなたたちを呪いに来た、ゴーストエンジェルってところかしら?」

「そうか、なら俺が祓ッてやろう!」

『SPEED DUEL MODE ON. AUTO PILOT.』

 

 ゴーストエンジェルは口元に指をあて微笑んでくる。可憐さなど微塵も感じない妖艶さに、ドンはデュエルディスクをコンソールに叩きつけた。

 シャッフルされたデッキからカードを4枚とる。相手もディスクから4枚カードを取ると、高らかに開戦の合図を出した。

 

「「スピードデュエル!」」

 

GHOST ANGEL:4000

DON-MOMOTARO:4000

 

「私の先行よ、私は《オルターガイスト・マリオネッター》を召喚!」

 

《オルターガイスト・マリオネッター》ATK:1600 DEF:1700

 

「マリオネッターの効果!召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《オルターガイスト》罠カード一枚をセットできる!」

 

 先行はゴーストエンジェル。現れたのは不気味なドレスを纏った人形じみたモンスター。くるくると回転しながら、フフフと笑い続ける。

 

「更に2枚、カードを伏せて、ターンエンドよ!」

「俺のターン!」

 

 ドンのターンが回り、デッキからカードをドローする。相手モンスターは1体のみだが、場には3枚の伏せカード。何を仕掛けてくるか分からない、警戒しながらドンは手札のカードを手に取った。

 

「《Z・HERO ゼンカイジュラン》を召喚!」

 

《Z・HERO ゼンカイジュラン》ATK:2000 DEF:100

 

「カードを1枚伏せて、バトルだ!ジュランでマリオネッターに攻撃!」

 

 先陣を切ったのは紅い恐竜の機械戦士。肉厚の大剣を振り上げると、マリオネッターに振り下ろそうとする。

 

「ジュランのこう────」

「向かってくるのね…馬鹿な子!罠カード《炸裂装甲》発動!ジュランを破壊する!」

 

 しかしマリオネッターは回転を速めると竜巻に変化、外皮をはじけ飛ばしてジュランを逆に粉砕してしまった。

 

「ターンエンドだ!…この程度か?安い呪いだな」

「あらあら、自分の不利さえ分からないなんてね!私のターン!」

 

 幽霊天使がデッキに手を掛ける。ドンの伏せカードは2枚、だが場にモンスターはいない。仕込みを整えれば、取り殺せない相手じゃない。

 

「私は、2体目のマリオネッターを召喚して、効果発動!デッキから《オルターガイスト》罠カード一枚をセット!」

 

《オルターガイスト・マリオネッター》ATK:1600 DEF:1700

 

 現れる二体目の電子人形。魔法・罠ゾーンに一枚カードが増えると今度は先のターンに伏せたカードが起き上がった。

 

「現れなさい!罠モンスター《オルターガイスト・エミュレルフ》!この罠は発動後、モンスターとして特殊召喚できる!」

 

《オルターガイスト・エミュレルフ》ATK:1400 DEF:1800

 

 罠カードから投影された黄金の人形がデータストーム上で踊り狂う。これで3体、すべてそろった。

 

「さぁ──私の前に開きなさい、未知なる異世界へ繋がるサーキッド!アローヘッド確認、召喚条件は“『オルターガイスト』モンスター2体以上”!私はマリオネッター2体とエミュレルフをリンクマーカーにセット!サーキッドコンバイン!」

 

 ブルーエンジェルと違う、足元に現れたサーキッド。3体のモンスターはリンクマーカーへ飛び込み、電脳の海を探り求める妖精へと変化していく。

 

「リンク召喚!リンク3、《オルターガイスト・プライムバンシー》!」

 

 サーキッドから現れたのは赤茶色のラミア。両腕から4本の蛇を生やし、頭からも幾多の蛇を生やしながら相対するモノを嗤う魔物だった。

 

《オルターガイスト・プライムバンシー》ATK:2100 LINK:3(↓,↘,→)

 

 リンク3、これが彼女のエースモンスターなのだろう。だがここでゴーストエンジェルの動きは止まらない。

 

「更に永続罠《オルターガイスト・マテリアリゼーション》発動!墓地のマリオネッターを特殊召喚しこのカードを装備!そしてマリオネッター第2の効果発動!さっき伏せた《オルターガイスト》カード1枚を墓地に送って、墓地の《オルターガイスト》モンスター1体を特殊召喚する!戻りなさい、マリオネッター!」

 

 墓地へ行ったはずのマリオネッターが二体とも復活。合計攻撃力でライフを削り切れるが、プライムバンシーのリンクマーカーが輝きだした。

 

「プライムバンシーの効果発動!自身のリンク先の《オルターガイスト》モンスター、マリオネッターをリリース、デッキから《オルターガイスト・シルキタス》を自身のリンク先に特殊召喚する!」

「…長いな、まるで意味が解らんぞ!」

 

《オルターガイスト・シルキタス》ATK:800 DEF:1500

 

 マリオネッターと入れ替わるように現れたのは茶色い翼をはためかせた猛禽じみたオルターガイスト。攻撃力はマリオネッターに劣るが、これでいい。準備は整ったとばかりにパンパンと手を叩いた。

 

「カードを1枚伏せて、バトル!マリオネッターでダイレクトアタック!」

 

 真っ先に仕掛けたマリオねったが、一陣の風になってエンヤライドンに突っ込む。ギャリギャリと車体を削り弾き飛ばすが、直ぐに何事もなかったようにドンは体勢を直した。

 

DON-MOMOTARO:4000→2400

 

「あら、何もないのかしら?シルキタスでダイレクトアタック!」

 

DON-MOMOTARO:2400→1600

 

 シルキタスの突撃を受け再び車体が傾くがドンは何もしてこない。あの伏せカードは攻撃反応型じゃない、恐らくはもっと違う要因で発動するはずだったもの、或いは単にブラフか。

 スピードデュエルのデッキ枚数はマスターデュエルと比べて半分ほどだ。その中に戦術、戦略の粋を集めて一つの剣に仕立て上げていくが、所詮はぽっと出の目立ちたがり屋だったのだろう。“融合”を使うから周囲も驚いたようだが、

 

「心底残念ね…散々人を振り回して、この程度?プレイメーカーに比べて安い男ね」

 

 最早時間をかける意味さえない。さっさと終わらせないと雇い主の堪忍袋の緒が切れるだろう。既にプライムバンシーも両腕を上げて光を集めている。この一撃が、奴を焼き滅ぼすのだ。

 

「残念だけど、空気の読めないトラブルメーカーには退場してもらうわよ!ファイナルバトル、プライムバンシーでダイレクトアタック!」

 

 

 プライムバンシーから放たれた閃光が、ドンに迫る────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

45(バァーン)

────TURN 3:END────

 




じか~い、次回…

私は、ハノイの騎士を統べる者。
目的はただ一つ、人類の未来の為…

「貴様が親玉か!」

ッ、プレイメーカーの持つ…

「俺とデュエルしろ!」

イグニスの抹…

「勝負勝負ゥ!」

私に喋らせろォ!

『ハノイのほうとう』

…というッ!お話ィッ!






今日のカード

○A・HERO サルブラザー
効果モンスター
星6/水属性/戦士族/攻2000/守500
①:1ターンに1度、自分メインモンスターゾーンにカードが無い場合に発動できる。自身を守備表示で特殊召喚する。
②:このカードが「HERO」融合モンスターの融合素材として墓地へ送られた場合、デッキから1枚ドローする。

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