結論から言うと、本当に楽しかった。
てか比企谷くんってホント可愛い。
インテリアコーナーではわたし達とベッドに寝転がっては顔を赤くし、服屋ではわたし達のファッションショーを見ては顔を赤くし、雑貨では肩や手がぶつかる度に顔を赤くする。
本人は正常なつもりだが、恥ずかしがってるのが直ぐ分かる。
口ではひねくれているのに体はとても素直だ。
かおりの言う通り、比企谷くんって面白い。
そして色々な店舗を歩き回って疲れたわたし達はお昼にする事にした。
「比企谷〜あたしお腹減った」
「.......そうか。じゃあこの前のカフェ行くか」
「それもあるけどさ、サイゼ、行こっか」
「うん、そうだね」
実は今日、お昼はサイゼにする事は前から決めていた。
「は?何で?」
「だって比企谷、サイゼ、好きなんでしょ?」
「.......別に好きじゃねぇよ」
そんな事言って本当は行きたいくせに。
顔を見れば直ぐ分かるんだから
「まぁまぁ、今日はカフェって気分じゃないし、行ってみようよ」
「.......そうか。まぁ、二人が行きたいならそれでいいけどよ」
比企谷くんの顔は嬉しそうにしている。
本当に分かりやすい。
そしてわたし達はサイゼへと向かった。
「いや〜久しぶりに入ったね、サイゼ」
「だね〜何年ぶりかな〜」
「.......やっぱり女子高生はサイゼ行かないのか?」
「そだね。比企谷くらいじゃない?」
「いや、俺は女子高生じゃないから」
「ふふ。そうだね」
頼んだメニューが届くまで雑談を楽しんでいた。
「そういえば比企谷くんって葉山くんと仲良かったんだね」
「は?別に仲良くないし、てかまだあいつの事好きなの?」
「何それ、口説いてるの?」
「べ、別にそんなつもりで聞いてねぇし」
「ふふ。分かってるよ。それに葉山くんはただ憧れてたってだけで好きじゃないよ」
「.......そうか。もしかしたらあれのせいだったりするのか?」
「あれって怒られた時の事?確かにショックだったけど、そのお陰で間違いに気づけたし、結果的に良かったと思うよ」
「そうか。なら良かった」
「もしかしてわたしの心配をしてるの?優しいんだね」
「別に、そんなんじゃねぇよ」
「ふふ。そっか」
何だろう。凄く楽しい。
内容は凄くひねくれているのに全く腹が立たない。
むしろ愛着が湧いてくる。
「ちょっと、二人とも。あたしを無視しないでよ!」
「ごめんごめん」
かおりが不貞腐れていると、丁度料理が来た。
わたし達は比企谷くんがお気に入りというミラノ風ドリアを頼んだ。
食べてみるとトロトロでとてもクリーミーだった。
「おいしい〜」
「ね!」
「たまにはサイゼもいいかもね」
「そうだね〜」
「.......喜んで頂けたようで何よりだよ」
比企谷くんは嬉しそうに微笑む。
死んだ魚のような目が少し柔らかくなった気がする。
「よし、お腹もいっぱいになったし、次行こっか」
「えぇ〜.......まだ行くのか?」
「当たり前でしょ」
「.......帰りたい」
「え、もしかして比企谷くん、家に誘ってる?」
本気で帰りたそうにする彼にわたしは少し意地悪をしてみた。
「ち、違ぇし!マジで帰りたいんだって!」
「ふふっ。分かってるって。確かにお家デートもいいけど、それはまた今度ね」
「.......やだよ」
「もう、照れちゃって〜!」
「.......」
照れる比企谷くんを小突いていると、かおりがジト目で見てきた。
「な、なによ」
「.......ううん。何でもない」
「そ、そっか.......。じゃあ次行こう!」
「.......うん」
かおりは何だか気に入らないような顔をしている。
それもそのはず、たとえ友達でも自分の好きな人と仲良くしていたらヤキモチを妬いてしまう。
かおりは自覚してないと思うけど.......。
.......そうだよね。わたし、かおりが比企谷くんに惹かれてるって分かってたのに軽率だったね.......。
けど、どうせ比企谷くんと会うのは今日で最後だ。
わたし達は友達の友達でしかない。
だからもう会う事なんてない。
だからせめて今日だけは.......。
午後は比企谷くんの行きたいところへ行こうと元から決めていた。
すると、「家」と即答したけど、却下した。
彼は渋々、本屋に行きたいと言い、本屋に向かった。
比企谷くんは本が好きなようで、おすすめを聞くと、沢山の漫画やラノベ?と、いうものを薦めて来た。
ぶっきらぼうながらも嬉しそうに語る比企谷くんを見て、わたしは確信した。
わたし、彼に惹かれている。
ぶっきらぼうながらも優しさがあり、一喜一憂する彼がとても可愛いらしい。
だけど、彼は昔、かおりの事が好きだったみたいだし、かおりは現在、彼に夢中だ。
わたしの入る余地なんてないんだ.......。
だから彼とは今日でお別れだ。
夕日が沈む頃、わたし達は帰る事にした。
「比企谷くん。今日はありがとう。とても楽しかったよ」
「そうか.......。俺も、まぁ、つまらなくはなかったよ」
「そこは楽しかったでいいんだよ」
「.......そうだな」
「あたしも楽しかったよ。比企谷。また遊ぼうね!」
「.......気が向いたらな」
「うん!じゃあね、比企谷!」
「バイバイ、比企谷くん」
「.......おう」
わたし達と比企谷くんはそれぞれ別の道へと帰っていく。
わたしは彼の背中姿に思わず泣き出しそうになった。
でもダメ。泣くのは帰ってから。今は我慢しなきゃ。
そんなわたしに気づいたのか分からないが、かおりは何も言わなかった。
無言で帰り道を歩き、分かれ道になってかおりは
「バイバイ!」
と笑顔で家へ向かった。
「バイバイ!」
とわたしも笑顔を作ってそう言う。
こぼれそうな涙を我慢し、足早に自宅へ向かった。
家にたどり着いたわたしは親に挨拶もせずにまっすぐ自分の部屋へ向かった。
鍵をかけ、声を殺すように泣いた。
もう2度と会えない。もう2度と彼の声を聞く事は出来ない。
彼はかおりのものだから。
だからこの恋も今日でおしまい。
「比企.......谷.......くぅん.......」
わたしはその日、始まったばかりの恋を終わらせた。