そして仲町千佳は過ちを正す   作:八人

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第5話 『思いがけず、わたしは彼に告白する』

それから三日後。学校も終わり冬休みに入った。

 

現在、わたしはワリンピアの近くの図書館で勉強している。

 

実はかおりと勉強しに来たのだが、待ち合わせ時刻ギリギリになってかおりから風邪ひいて行けないとドタキャンをくらってしまったのだ。

 

「こんな所まで来て勉強か……」

 

まぁ家に居ても勉強する気にはならないけどね。

 

そろそろお腹空いたな……。

 

スマホを見ながら歩いていると、誰かにぶつかった。

 

「あっ、ごめんなさい……!」

 

落ちたスマホを慌てて拾って顔をあげると、驚いた顔でこちらを見る比企谷くんが。

 

「ひ、比企谷くん!?」

 

図書館だというのにわたしは驚いて叫んでしまった。

 

「馬鹿、声がでけぇ」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

でも本当にびっくり。

 

まさかこんな所で比企谷くんに会うなんて……。

 

いや、ここは総武高校から近いから居ても可笑しくはないよね。

 

「比企谷くんも勉強?」

 

「まぁな。じゃ、俺はこれで……」

 

久しぶりに会ってドキドキしてるのに比企谷くんは冷静にその場を去ろうとする。

 

相変わらずだなぁ。

 

「ちょっ、ちょっと待ってよ」

 

「……何だよ」

 

「わたしこれからワリンピアでお昼ご飯食べようと思ってるんだけど一緒にどうかな……?」

 

うわぁ、恥ずかしい……!

 

「やだよ、恥ずかしい」

 

どうやら比企谷くんも少しはドキドキしてるみたい。

 

嬉しい。

 

「お願い!わたし、比企谷くんと一緒に行きたい!」

 

手を合わせてお願いすると、比企谷くんはそっぽを向いて頭をガシガシかきながら答える。

 

「……仕方ねぇなぁ。ちょっとだけだぞ」

 

やっぱり比企谷くんは比企谷くんだ。

 

何て言うの?捻デレってやつ?

 

比企谷くんはこの前会った時と変わらぬ態度で接してくれる。

 

それがわたしにとってはとても嬉しい。

 

「うん!じゃあ行こっか!」

 

わたしはつい頬が緩んでしまった。

 

 

 

 

ワリンピアのファミレスに移動したわたし達は向かい合ってパスタを食べる。

 

「良かったのか?ファミレスで」

 

珍しく比企谷くんから話しかけて来た。

 

嬉しい。

 

「うん。比企谷くん、ファミレス好きでしょ?」

 

「別に俺に合わせてくれなくてもいいんだぞ」

 

「いいの。わたしもファミレス好きだから」

 

「……そうか」

 

比企谷くんの微笑みにドキッとする。

 

比企谷くんは本当にファミレスが好きなんだなぁ。

 

いつもより少しテンションが高い気がする。

 

ファミレス最高だね!

 

それからお喋りしながら食事を楽しんでいると、急に周りが冷えた気がした。

 

何事かと思ったらこの前葉山くんに紹介されてた可愛い女の子達が驚いた顔でこちらを見ていた。

 

「あ!ヒッキー!」

 

「……あら、誰かと思ったら貴方だったのねヒキガエルくん」

 

「げ、お前ら……!?てか誰だよ、それ」

 

比企谷くんも気づいたようで、しまった!みたいな顔をしている。

 

てかロングの女の子、見た目に反して口が悪いんだね。

 

「何してるの、ヒッキー!」

 

「……通報しないと」

 

きっとこの子達も比企谷くんの事が好きなのだろう。

 

とても慌てている。

 

わたしはニヤリと笑って比企谷くんに抱きつく。

 

「何って見て分かるでしょ?デートだよ」

 

「お、お前!?」

 

比企谷くんは顔を真っ赤にして照れる。

 

可愛いなぁ。

 

「あ!この間の女の子!デートってどういう事!?」

 

「……まさか二人は付き合ってるの?」

 

「ううん。でもそういう関係になりたいと思ってるよ」

 

「は!?」

 

比企谷くん、驚きすぎ。

 

てか言っちゃった。

 

何かこの子達には負けたくないんだよね。

 

「……貴方、名前は?」

 

「仲町千佳だよ」

 

「……仲町さんね。この前は比企谷くんの事を馬鹿にしてたようだけど、どういった心境の変化かしら?」

 

「あの後、かおりと一緒に謝って三人でデートしたんだ。その時、好きになっちゃった」

 

「……それだけ?」

 

「うん。なんて言うの?ギャップ萌えってやつ?ぶっきらぼうなのに優しいとことかグッと来るでしょ?」

 

「……いいえ、全く」

 

「ほんとかなぁ。あなた達も好きなんでしょ、彼の事が」

 

「……そんな事はないわ」

 

強情な子だなぁ……。

 

「本当に?あなたはどうなの?」

 

こっちのギャルっぽい子の方が素直そう。

 

「あ、あたしは……」

 

恥ずかしそうに俯く彼女にわたしは一歩近づく。

 

「どうなの?」

 

あれ、なんかわたしムカついている?

 

「そこまでにしろ、仲町」

 

そこで比企谷くんが止めにはいる。

 

「ご、ごめん、比企谷くん。でもお願い。ハッキリさせたいの」

 

「……ちっ。分かったよ」

 

比企谷くんはガシガシと頭をかきながら席に座る。

 

「で、どうなの?」

 

「わたしは……好きだよ、ヒッキーのこと」

 

「ちょ……!?由比ヶ浜さん!?」

 

ギャルっぽい子の告白に黒髪の子は驚いた表情て慌てふためく。

 

「やっぱり……。で、あなたはどうなの?」

 

「……私は……そこの男がどうしてもと言うなら付き合ってあげなくもないわよ」

 

「あなた、本当に素直じゃないね。ねぇ、比企谷くん」

 

「……なんだよ」

 

黙ってわたし達のやり取りを見ていた比企谷くんに問いかける。

 

「わたしは比企谷くんが好き。わたしと付き合ってくれますか?」

 

かおり、抜け駆けしてごめん。でも約束したもんね。

 

ライバルである以上、手は抜かないよ。

 

「……はぁ?お前、本気か?俺達まだ出会ったばかりでまともに話すので今日で二回目だぞ」

 

「好きに時間とか関係ないよ。わたしは本当にあなたが好き。あなたの隣にいさせて欲しいの」

 

「……考える時間をくれ」

 

「あ、うん。そうだよね、急すぎたよね。わたし達以外にも比企谷くんの事が好きな女の子はいる。比企谷くんも気がついてるんでしょ?」

 

「……」

 

「だから沢山悩んで、考えて、最後にわたしを選んでくれる事を願ってるよ」

 

「……あぁ」

 

比企谷くんは難しそうな顔で頷く。

 

「いきなりでごめん。困惑させちゃったね。わたし、もう帰るね」

 

強引告白しちゃったけど、正直、泣きそう。

 

わたしは無理に笑顔を作って別れを告げる。

 

その日は中々寝れなかった。


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