「ほら、着いたぞ。」
「はあ、テレポートの呪文は便利なものですね。」
めぐみんが閉じていた目を開ければ、ついこの間出発した紅魔の里があった。
彼女を背負ったまま、ユウヤは目の前の大きな屋敷にずかずか入って行く。
「あら、ユウヤさんおかえりなさい。」
「ああ、族長はいるかな?手紙を持ってきた。」
「先程、出先から戻ってきたばかりですよ。」
そのまま奥に通され、二人は並んで座る。
「ゆんゆんは、サトウカズマとアクアと言う冒険者のパーティーに加入した。
しばらくは、アクセルで活動するだろう。」
「ごくろうだったね。手紙には、めぐみんはユウヤと一緒にいることになったとあるが?」
「駆け出しの町の新人冒険者が大半だ。
めぐみんにはきつかったようだ。だから、こいつ自身を強くする。まあ、外に出て戦うんだ。それなりに動けるようじゃなければ、パーティーメンバーに棄てられないかと怯えることになるからな。」
屋敷を出て、暗くなった夜道を二人で歩く。
「ユウヤ、族長の家に留まらないのですか?」
「俺はこっちに戻ってきてから寝る場所を変えたんだ。………着いたぞ。」
めぐみんの目の前には、見慣れた旧い自宅ではなく、広い工房がある真新しい家屋があり、その隣にも同程度の広さの住宅が並んでいた。
彼女はとまどったまま、工房付きの家屋に入った。
ユウヤに手を引かれて、リビングに通るとそこには懐かしい顔が揃っていた。
「おかえりなさい、めぐみん。」
「ねえちゃん、おかえり!あいかわらず兄ちゃんと仲良いね。」
「………。無事によく戻ったな。」
「ただいま帰りました。こめっこ、いい子にしてましたか?」
「うん!」
「さあさあ、いい時間だし、夕飯にしましょう。
ユウヤさんもどうぞ。」
「ありがとうございます。今日はアクセルに行って来たので、これお土産です。ひょいざぶろうさん、どうぞ。」
「あぁ、有り難くいただくよ。母さん、台所に。」
「それにしても………。ここが新しい我が家ですか………。日々の生活に精一杯だったのに、どこから家を新築するようなお金が?」
「費用は全てユウヤさんが出してくれたわよ♪」
「何をやってるんですかあなたは?」
「まあ、そう言うな。新しく工房を造ってな、試行錯誤の時間が増えたから、以前よりもひょいざぶろうさんの作品の完成度か上がってずっと売れるようになったんだ。もう、こめっこも食べ物の心配しなくて良くなったんだぞ。」
「うむ、材料集めも時々してもらっているし、ユウヤ君には感謝しているよ。」
「なんと!他人に頭を下げるのが嫌いな我が父が感謝の言葉を口にするとは!!熱でもあるんですか?」
「めぐみん、ひどいいい様だぞ。」
食事を終えて風呂に入り、さて寝る段になるとユウヤは帰り支度を始めた。
「あれ、泊まっていかないのですか?」
少年に尋ねれば、不審な顔をされた。
「何を言ってるんだ。めぐみんも早く帰り支度をするんだよ。」
「え……ここが私の家ではないですか?」
「違う、ここはこめっこの家だ。入る前に見ただろう。隣に建ってるのが俺とめぐみんの家だ。」
「聞いてませんよそんなこと!」
「今言っただろう。」
ひょいさぶろうは、当然といった顔で澄ましている。母のゆいゆいと妹のこめっこはにこにこしているだけだった。
「めぐみん、俺がこの里を出るとき、お前は俺に自分の夫になれといったな。あの時から里ではお前は、俺の嫁なんだよ。」
そう言うと、呆然としている少女を“お姫様だっこ”で出口まで歩いて行く。
「姉ちゃん、兄ちゃんお休み~」
二人が出ると背後でバタンと戸口が閉まってしまった。真っ赤な顔をしてめぐみんはユウヤにしがみつく。彼が手をかざすだけで、家の入り口が自動で開き、進むにしたがって背後でひとりでに閉まっていった。
真っ直ぐ寝室まで来ると下ろされたが、そこにはキングサイズのベッドがあるだけだった。
「あの………私はどうすれば?」
尋ねるめぐみんの目は泳ぎまくっていた。
「もちろん一緒に寝るんだよ。これだけデカイベッドなんだから、狭いことはないだろう?
心配しなくても、おまえが結婚年齢に達するまで俺から襲ったりしないよ。」
そう言うとユウヤは、さっさとベッドに入り目を閉じた。
しばらく、めぐみんは佇んでいたが深呼吸してから少年のとなりにもぐり込んだ。
そして向こうを向いているその背後から抱きつき目を閉じる。暗闇の中、沈黙が支配していたが、やがて穏やかな寝息が聞こえてきた。
恥ずかしがってますがめぐみんは拒絶してません