ユウヤ達は、アクセル冒険者ギルドの裏手に来ていた。
「ここがアクセルか。けっこう大きな街だね。」
「用があるのは、ギルドくらいだからな。
全員、スキルポイントがたまったらテレポートを覚えてくれ。緊急脱出にも使えるし、場所を決めて落ち合うにも便利だからな。」
「でも私は、これから回復魔法を覚えなくちゃいけないんでしょう?」
「ねりまきも、ポイントがたまってからでいい。」
そうして一行がギルドに入ろうとすると、空き地のほうから、騒がしい声がした。
「ウヒョウ、大当りだぜ。」
「私のパンツ返して~。」
そこには、ゲスい顔をして女物の下着を振り回すサトウカズマと、片手をショートパンツの上から押さえて涙目になっている銀髪をショートカットにした盗賊風の少女がいた。
「カズマ、あなたは一体何をしているのですか?」
「おお、めぐみんか?昨日ぶりだな。
この娘に盗賊スキルを習ったんだが、スティール対決になってな、盗れたのが、このパンツだ。
言っとくが、ただで返す気はないぞ。俺も、それなりにリスクを背負っているんだからなあ。」
めぐみんは、何か言い返そうとしてやめた。
あっさり自分をパーティーから放り出した男だ。
ここで言うことを聞くはずがない。
「まあ、そういうわけだから、一緒にいる美人のお姉さん達も、余計な口出しは、……?」
カズマが違和感を覚え、自分の手を見ると、先程まで振り回したパンツがない。
慌てて見回すと、ちょうどユウヤが銀髪少女にパンツを手渡しているところだった。」
「そこの物陰でも手早く履いてきな。」
「うん、ありがと。私は盗賊職のクリスだよ。」
「俺は、ユウヤだ。言ってみれば、混血の紅魔族だ。それより早く!」
顔を紅くして物陰に隠れたクリスの方をみていると、 カズマがこちらに近寄ってきた。
かなり不機嫌な表情だ。
「ずいぶん余計な真似してくれたな。
正義の味方にでもなったつもりか?」
「おれ自身のためでもあるし、お前自身のためでもあるぞ、サトウカズマ。」
ユウヤがずいっと前に出ると、気圧されたカズマが一歩下がる。
「俺としては、あの娘に借りを作って、俺達に協力してもらうようにしたい。
そしてカズマは、“アクセルのクズ男”の評判を返上したいだろう?」
「お前、ちょっと何言ってるんだよ?」
「そこにいるクリスの連れの女騎士と俺達全員はお前が女物のパンツを振り回して絶叫してたのを見てるわけだ。
それに昨日は、往来でめぐみんを見捨てようとしていたのを街の住人にも見られてるだろう?」
苦虫を噛み潰したような顔になったカズマを余所に、着替え終わったクリスを手招きする。
「うん、何かな?」
「スティール対決ってことだけど、カズマがこう言う対応をする原因がクリスにあるんだろ?」
「うん………。最初、私がカズマ君の財布を盗って、取り返すためのスティール対決で、確率を下げるために小石を大量にポケットに入れたの………。」
クリスの告白にあるえも、なんとも言えない顔をしている。
「理不尽なことをされたと感じたから、それなりの対応をしたってわけね。呆れた。」
ねりまきがやれやれと首を振っている。
「原因を聞けば、なんとなく分かりますが、カズマの対応は、あなたのパーティーの評判が悪くなってこの先いいことはありませんよ。」
「まあ、そう言ってもカズマは納得できないだろうし、年下の俺達に色々言われて不愉快だってその顔に書いてある。だから、騙した形になったクリスは財布の中身を全部渡したらどうだ。」
言われたクリスがおずおずと不機嫌な少年に近寄って、初めに盗った物と、自分の財布を中身ごと差し出した。
「ごめんなさい。君は言わば初心者で私を頼って来たのに騙すようなことしたのは私なのに………、だからごめんなさい!」
「もう、いいよ。スキルはちゃんと教えてもらったし、クリスは謝ってくれたからな。
でも、勝負なんだから、戦利品の代わりに財布の中身はいただくぞ。」
「それじゃあ、私は割りのいいクエストを探しに行くから。」
その場を去ろうとするクリスにユウヤが声をかける。
「ああ、ちょっと待ってくれ。ベテラン冒険者の助っ人を頼みたいんだが?」
「level38の究極戦士には、手解きは要らないんじゃないの?」
「耳が早いな。でも、俺はともかく、ここにいるあるえとねりまきには、案内が必要だ。
それに、手っ取り早くクエストに行って金を稼いだ方がいいだろう?」
「OK、一緒についてくよ。ユウヤよろしくね。」
「決まりのようですね、我が名はめぐみん、よろしくです。」
「あるえだよ、よろしく。」
「我が名はねりまき。よろしくお願いします。」
「おい、俺の時と全然違うな?紅魔族特有の名乗りはどうしたんだよ?」
「サトウカズマさんでしたか?私とあるえもユウヤから色々聞かされたから、無用のトラブルは避けることにしたのよ。」
「まあ、そう言うことなんだけどね。
君が望むなら仕方ない。
我が名はあるえ。
紅魔族随一の発育にして作家を目指すもの!
どうだい、こんなもので?」
五人になった一行がぞろぞろと歩いて行く。
「ダクネスは、カズマ君に用があるようだから放っておこう。じゃあね、ダクネス。」
「ああ。」
残されたダクネスがおもむろにカズマの方を振り向く。
「じゃあ、私たちも行くかカズマ。」
「ちょっと待て。なんでお前が一緒に行動することになってるんだよ!」
ギルドの依頼ボードから無造作に一枚ちぎって受付に向かう。空いていたのは、露出気味の若い女性の受付だった。
「え、グリフォンとマンティコアの縄張り争いのクエストを受けるんですか?
高レベル向けの塩漬けクエストですよ?」
「問題ない。俺のレベルは足りてるし、魔法使いが複数いるから破壊力はある。
ベテラン盗賊のクリスが参加するから、不意打ちの心配もない。首とか、証拠に持ってくる必要もないんだろう?」
「ええ、まあ討伐証明は、冒険者カードに記録されますから大丈夫ですけど。」
「それじゃあ、行ってみよう!」
受付を済ませてさっさと出ていった一行を露出過多な受付嬢、ルナが呆然と見送っていると、大声が聞こえてきた。
「気に入らねえな。高レベル冒険者で女を何人も囲ってよ?気に入らねえぞ!」
「じゃあ、いつものごとく突っかかって殺されてみるか、ダスト?」
「どういうことだよ、ティラー?」
「さっき行ったのは、盗賊の女の子を除いて全員紅魔族よ。一番小柄なめぐみんて娘は、森でも建物でも容赦なく破壊してデッカいクレーターにしちゃう、はた迷惑な爆裂魔法を使うのよ。」
「リーンの言う通りだぜ。
先頭を歩いてた銀髪のガキな、この街でも鼻つまみだったあの“ノッポ”の手足へし折って使い物にならなくしちまいやがったんだ。
ガキを魔法使いだと思って油断してた奴を片手で持ち上げて地べたに叩きつけたんだ。
しまいには、相手が泣いて命乞いしてたぜ。」
「キース、それ本当なのか?」
「俺は、現場にいて見てたんだから間違いねえ。
あの銀髪のガキはな、毒とか呪いとかも効かねえんだよ。ダスト、お前が突っかかるんなら、死ぬ覚悟で行けよ。」
「チっ、そんなんじゃ割りに合わねえよ。
やめだやめだ。」
「まあ、あいつらはここにずっといるつもりもないようだしな。」
「そういうこと。触らぬ神に祟りなしってね。
最近来たもう一組のパーティーがいかにも初心者って感じなのよ。」
「おい、そっちにも紅魔の娘がいただろう?」
「あぁ、あっちは大丈夫だ。紅魔族の異常なところは目立たなかったからな。」
「よし、ターゲットは決まったな。
近いうちにそっちの狙い目のパーティーに難癖つけて、どうにかしてモノにしてやる。」
「あんたはその前に私に借金を返しなさい!」
大声で話していたので、ルナや、酒場にいる他の冒険者にも筒抜けだった。
結果、ユウヤのパーティーに手を出す危険性を皆が共有したという。
酒場でダストが管を巻くの図。
ユウヤに手を出すと命に係わるよと言う話。