夕方の喧騒。
酒臭い息の冒険者達が管を巻く冒険者ギルド。
気だるげな雰囲気だったそこは、入り口からの血の匂いと複数の足跡で騒然とした。
「おいおい、どうしたんだクリス。
お前だけじゃなく全員血だらけじゃないか?」
「あぁティラーじゃない♪これね全員返り血だよ。
なんと、私達は、依頼を受けた当日にグリフォン二体とマンテイコアを討伐しました~♪」
「おい、冗談だろ?そのクラスの依頼なら、下手したら複数の高レベルパーティーの仕事だぜ。」
その場にいた他の冒険者も疑わしそうにしていたが、後から入ってきたメンバーを見てギョッとした表情になる。
全員が深紅の瞳を輝かせ、てんでに討伐の証としてグリフォンの頭部と翼を二体分、マンティコアの頭と尻尾を携えていたからだ。
「みなさん、討伐帰りなのは分かりますが床が血だらけになってしまいます!」
「あ~悪かったな。“スペシャルクリーン”」
ギルド職員の声でユウヤが魔法を唱えると、入り口から続いていた血の痕や、彼ら全員の反り血や汚れがぬぐったようにきれいになった。
「じゃあ、急いでるから今回は皆で受付に並ぶぞ。
クリスも来てくれ。」
「はーい。今日は財布をぶんどられちゃったけど、結構な臨時収入になってウハウハかな♪」
「おい、銀髪野郎と一緒にいたのは、はた迷惑な爆裂娘だぜ。」
「服装が変わってたけど間違いねえ。
あの小娘は、口ばっかりで全然役に立たねえから、俺は見捨てたんだけどよ。
あの銀髪野郎も含めて全員紅魔族だぞ。」
「うかつにチョッカイかけられねえな。」
他の冒険者の注目を集めている少年たちは、クエスト完了の報告をしている最中だった。
「討伐報告は、冒険者カードを提示頂ければ、証明できるとご説明したはずですが?」
「外見が子供の青二才だ。証拠でも持ってきた方が説得力があるかと思ってな。」
「私とねりまきは、今日が冒険者デビューの様なものだからね。派手にいかないと。」
「うん、インパクトは大事だよね。ほら、私たちは紅魔族だし♪」
カウンターでわいわいやってるので、奥にいたカズマパーティーがこっちに近づいてきて、ゆんゆんがやって来た。
「めぐみん、グリフォンやマンティコアを討伐してきたって本当?」
「おや、ゆんゆんじゃないですか。私は一人でマンティコアを仕留めましたよ。
その他にも一緒に出てきたオーガをあるえとねりまきとクリスの三人で十体も血の海に沈めました。」
「えぇ?オーガを十体も?あれ、じゃあグリフォンは?」
カードをまとめてカウンターに出したユウヤが振り向いて親指で自らを指差す。
「あっという間に私たち囲まれちゃったんだけどね~。ユウヤの魔法障壁?で守るように周囲を囲んでもらったら、私達へのモンスターの攻撃が全然っ、効かないんだよ。
加えて、支援魔法までかけてもらって勇気百倍、楽勝だったね♪」
「私たちも初クエストなのに、緊張しなかったもん。」
ねりまきも興奮して大声になり、あるえも楽しそうにしている。
「そう言えば、ゆんゆんとは久しぶりだね。
昼は声をかけられなかったけど、変わりないかい?」
ゆんゆんが返事をしようとしたところで、計算をしていたルナが顔をあげた。
「提示されていた報酬は500万エリスですが、グリフォンが一体多かったことと、追加でオーガ十体の討伐が確認されました。
持参されたグリフォンの頭部と翼、マンティコアの頭と尻尾を買い取りにしていただけたなら、合計で1100万エリスを支払うことができますが?」
「じゃあ、それで頼む。あ、皆ここで分配してしまうからな。」
彼らは、皮袋をもらい、その場で分配を済ませてしまった。
金を受け取ったクリスが浮き浮きして注文しようとするとその手をめぐみんがつかんでいた。
「どうしたのさ?クエストが成功したんだから、打ち上げしようよ。」
「ええ、打ち上げはしますとも。
クリス、あなたは助っ人とはいえ、私たちと同行し、一緒にクエストを成功させたのです。
言わばもう、私たちパーティーの仲間、一蓮托生と言っても過言ではないでしょう。
なので打ち上げは、我々の紅魔の里にて行うことにします。クリスも強制参加ですよ♪」
「ええ?」
盗賊少女は、困惑した。いつのまにか近くによって来たダクネスを見たがクルセイダーの金髪美人は、無反応だった。
「それにですね………。」
つかんでいるめぐみんの力が強くなって微妙に痛い。抗議しようとしたら彼女の目の光が強くなってて怖い。
「ユウヤがクエストに誘った時、あなた、ずいぶん、うれしそうにしてましたね?
そのこともじっくり聞かなくちゃいけません。」
「あの、もう遅いから出発は明日に……。」
「それなら、大丈夫だよ。ユウヤのテレポートであっという間だから。」
「ふむ、そうだね。ねりまきの処で宴会してもいいし、そのまま泊めてもらってもいい。
なんなら、ユウヤとめぐみんが一緒に住んでる所にお邪魔するかい?」
めぐみんたちの会話を聞いていたゆんゆんは愕然とした。たった今、聞き捨てならない言葉を自分の耳が拾ったのだ。
「ねえ、どうゆうこと?今、ユウヤとめぐみんが一緒に住んでるって聞こえたんだけど?
ねえ、ちゃんと説明してよ、めぐみん!」
「何を驚いているのですか?
ユウヤは私の夫ですよ?この男は、有り金はたいて、コメッコ名義で家族の家を。そして、隣に私たちの家を建てていてくれたのですよ。
里では、周知の事実です。」
目眩がしてへたりこんでしまったゆんゆんを放り出して、クリスの手をつかんだまま、めぐみんは外に出てしまった。あるえとねりまきもそれにつづく。
「せっかく、加入できたパーティーだ。
しっかり頑張って経験を積むようにな。」
すっかり元気のなくなってしまったゆんゆんに声をかけて、最後にユウヤが出ていった。
「おい、ゆんゆん大丈夫か?」
心配したカズマが声をかけるが、へたりこんだ少女の目は虚ろだった。
「ユウヤ‥……、ユウヤ………。」
めぐみん、ゆんゆんに対して強気に出ました。
そして、独占欲全開でクリスを威嚇してます。