ユウヤ達が出ていって、ギルドには喧騒が戻った。カズマのパーティーも、元のテーブルに戻ってきたが、ゆんゆんはショックを受けたのか目の焦点が定まらず、ぶつぶつ独り言を呟いている。
「おい、あれ大丈夫なのかよ?」
「好きな男が自分の友人とすでに一緒に住んでいて、相手の家族も公認ともなればダメージも計り知れないだろう。」
「なんだよぉ。こちとら空飛ぶキャベツと大汗かいて格闘して、なんとかまとまった金が入るあてができたと思ったのに、パーティーの良心のゆんゆんが使い物にならなくなるのは、勘弁だぜ。」
「大丈夫よカズマさん、この水の女神たるアクア様とついでにクルセイダーのダクネスがいるのよ。大船に乗った気でいなさいな。」
「うむ、あてにしてくれ。」
「そういってもなあ。」
「なによヒキニート!私たち二人が頼りにならないとでも言うつもり?」
「うるせーこの駄女神とドM騎士が!
アクアは、キャベツに転ばされてただ泣いてただけだろう。
ダクネスに至っては攻撃を受けてもだえてただけだ。このパーティーで曲がりなりにもまともなのは、ゆんゆんだけなんだよ!」
その肝心のゆんゆんは、カズマたちの言い争いにも反応せず、うつむいていた。
「やっぱり、離れているのがいけないのかな?
めぐみんだけじゃなく、あるえやねりまきもどうして一緒にいるのよ?なんか、あのクリスって人もユウヤを見る目がなんだかあやしかったし……。」
「おい、ゆんゆん。大丈夫なんだよな?」
「カズマさん?どうしたんですか?私はどこもおかしくないですよ。」
(重症だよ………。)
「さあ、着きましたよクリス。ようこそ紅魔の里へ!」
めぐみんが以前より短くなったマントをひるがえし、ポーズをとる。
「ユウヤ、どうするの?暗くなるから、真っ直ぐうちの店に向かう?」
「いや、今日はパーティーの結成式みたいなもんだ。時間がかかるから、ねりまきの親父さんに料理を運んでもらおう。」
「それなら、うちだけじゃなく、あるえの家にも挨拶しといた方がいいと思うの。」
「ふむ……、それでは、クリスは私が連れていきましょう。私の方でも料理は用意しておきますから、貯蔵している材料を使いますよ。
すぐに暗くなります。あるえの家から先に廻って急いで行ってきてください。」
そう言ってめぐみんがクリスの腕をつかんで行ってしまった。
「それじゃ、俺はあるえの家に行ってくる。
後からねりまきの店に行くからな頼むぞ。」
「あるえをおまえんとこに泊まらせる気なら、末長く面倒見てもらうことになるぞ!」
「ちょっと待ってください。冒険者のパーティー仲間になるだけですよ?」
「あるえは、その気のようだがな?今さらジタバタするなよ?」
バタンッと音をたてて入り口の扉が閉められた。
「あるえのじいさんもあいかわらずだな。」
「祖父のことは謝っておくよ。でも、私も期待してないっていったら、嘘になるかな?」
「………さっさとねりまきの所に行くぞ。」
「よぉ、ユウヤ。うちの看板跡取り娘をかっさらおうとは、覚悟できてんだろうな?」
「親父さん、ねりまきはパーティーメンバーになってもらっただけですよ?」
「わざわざ、回復魔法を覚えさせるために
プリーストをどっかから連れてくるんじゃなくてよ。
もちろん、うちのねりまきじゃなきゃいけない理由があるんだよなあ?」
「私は、別に特別なことは言ってないよ。
宴会して、打ち合わせとか遅くなったら泊まるかも?とは言ったけど。」
「はあ‥……俺達二人しか住んでないし、それなりに部屋は空いてるから、ちゃんと一人一部屋で寝られるよ。」
ねりまきの父親にも手伝ってもらい、つまみと酒を運んでくると、めぐみんが貯蔵していた材料を使い料理の最中だった。
隣からひょいさぶろうとゆいゆい、それにこめっこも来ていて、すでに着席している。
「ユウヤ遅かったではないですか?
ついでにこめっこ達も呼びましたよ。」
「やったーお呼ばれだ~♪」
楕円形の大きなテーブルに持ち帰った料理を並べた途端にひょいざぶろうとこめっこがほとんどたいらげてしまった。追加でめぐみんが作っていた料理も置いたそばからなくなっていく。
全員、競争のようにがっつき、ゆいゆいは、それをニコニコしながら眺めていた。
さいごの料理を運んでめぐみんがユウヤの隣のイスに座った。
「やっと一段落です。なにげにこの家で調理するのは初めてですが、材料ほとんど使ってしまいましたよ。」
「また、ためこんでおくよ。腐らないように地下に仕舞っておいたんだがすぐに分かったか?」
「えぇ、大人数なので思いきって大量に作ったんですがどうですか?」
「さすがだな。ゆいゆいさん直伝の味なのかな?
美味いよ。」
「それなりに仕込まれましたからね。
材料は、過保護な誰かさんがこまめに補充してくれたので私が料理する機会もたくさんあったというわけです。」
いつもは口一杯に食べ物をほおばるめくみんが、比較的ゆっくり食べながらうれしそうに笑って会話をしている。
それをあるえやねりまき、特にクリスは、驚いて見ていた。
「めぐみんてば、言っちゃなんだけど、ユウヤと再会する前と全然印象が違うね。
今すごいっ、おしとやかに見えるもん。」
「恋は女を変えると言うやつかな?」
「なんか別人みたい。雰囲気柔らかいって言うか‥……。」
少女たちの感想を彼女は余裕の表情で受け止めた。
「ふっ!あなた達に何を言われてもこたえませんよ。
ユウヤは私の夫です。パーティーに加入できたことで満足し、この男に色目を使うのはやめてもらおうか?クリスも分かりましたね?」
「イラっとくるね。ひょいざぶろうさんの前だけど
諦める気はないよ。」
「なんか、むかつくな。手は引かないよ。」
「私はその気はないんだけどな………。」
「嘘をつくのはやめなさい。どうして顔が赤くなっているのですか?」
「これは、お酒を飲んだからだよ。」
「「「なんだか怪しい!」」」
料理も空になり、持ってきた酒も飲み尽くされて、こめっこ達は、隣家に帰っていった。
夜も更けたので、クリスを置いてあるえとねりまきは帰り支度を始めたのだが、そのクリスのことで相談があるからとユウヤに引き留められたのだ。
「地下にある風呂は広めに造ってある。
先に女同士で入ってくるといい。」
そう言われて女四人で入浴したのだが他の三人がさっきからじっとめぐみんを見ている。
「なんですか?私の体をじっと見て言いたいことがあるなら、聞こうじゃないか。」
「めぐみんて、髪を伸ばしてるのってユウヤと知り会ってからだよね?彼の好みに合わせてるの?
それだったら私にもチャンスアリだよね♪」
「ねりまき、寝言は寝てから言いなさい。」
「じゃあ、めぐみんの胸は前より成長したかい?」
「もしかして、もう、いろいろしちゃってるの?」
クリスも顔を赤くしながらも興味津々で追及する。
「何を言うかと思えば………。
成長したのは、胸だけではありませんよ。
栄養状態が改善したので、身長もしっかり伸びてます。ユウヤに感謝ですね。
さあ、ユウヤが順番を待っているはずです。
私は、先にあがりますよ。」
そう言ってめぐみんはさっさと風呂場から出ていってしまった。
「あっ、いろいろしてるのか聞きそびれたな。」
少女三人がめぐみんに根掘り葉掘り聞こうとしますが、当人は余裕の対応です。